魔法狂気 マジキチ☆なのは   作:トロ

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第五話ラスト部分抜粋。

「なのは!?」
「ごめんねぇ、ごめんねユーノ君!」
「でもさぁ! 止められないよぅ! こんなに気持ちがいいのに止められるわけがないよぅ!」
「止めて……止めろぉ! それ以上は――」
「あははっ! もう遅いんだからさぁぁぁ!!」

なんかNTRっぽいなぁと思ったので更新が遅れました。


第六話【災禍、此処より彼方より】

 

『次のニュースです。先日、正午、■■県海鳴市にて発生した謎の閃光によって駅付近のビルが崩壊した事件ですが、現在までに死者八名、重軽傷者合わせて三十八名を出し――』

 

『目撃者の証言によれば、遠方より突如走った桜色の閃光がビルを薙ぎ払ってそのまま空へと消えて行ったと――』

 

『日本を対象としたテロという見解もありますが、一部では地球外生命体の襲来――』

 

『政府は今回の件について未だ発言を控えていますが――』

 

 いつもの朝、私は朝ご飯を食べながら家族みんなでここ数日世間を騒がせている事件についてのニュースを眺めていた。お父さんとお兄ちゃんは真剣な表情で見ていて、お母さんとお姉ちゃんが不安げな表情を浮かべる中、女子アナの人が淡々と告げるその内容を聞いて、居た堪れない気持ちになる。

 だって、この事件の犯人は私だ。ユーノ君が外界への被害を防ぐために展開した結界を、あの時の全力でぶち抜いたことで現実世界に溢れ出たディバインバスターが運悪くビルに直撃、その後は見ていなかったけど、ニュースの映像を見る限りわりと酷い事件になってしまったようだ。

 申し訳ないと思う。

 一時の気持ちに身を任せて、私は取り返しのつかないことをしてしまったのだ。

 許されざる罪人だ。

 本来、すぐにでも犯人として名乗り出て処罰を受けるべきだ。

 

「だけど、気持ち良かったなぁ……」

 

「何か言ったか、なのは?」

 

「ううん。何でもない」

 

 お兄ちゃんに慌てていつも通りの笑顔を向けて、私は朝ご飯を食べると「ごちそうさま」と一言告げてさっさと自室へと戻った。

 確かに私は自分の快楽のために人殺しをした最低な人間だ。

 だからこそ、これからはもっと上手にやろうと思う。

 二度とこんな悲劇を繰り返させないために、私は強くならなきゃいけない。

 丁寧に慎重に、誰かに危害が及ぶ前に、ジュエルシードの暴走体と戦って、それらの全てを封印するんだ。

 

「だからユーノ君、早く帰ってきてよ……」

 

 戻ってきた自分の部屋には、一緒に居たはずのユーノ君はもう居ない。

 胸元で輝くレイジングハート曰く、『もう君とは一緒に戦えない』ということで、本当はレイジングハートも一緒に連れていかれるところだったんだけど、私が肌身離さず持っているために断念して、伝言だけ残していったのだ。

 それが今から三日ほど前のこと。あれからユーノ君には念話を送っても返事は無い。

 

「やっぱり、私がいけないんだよね」

 

 だけど、ユーノ君を責めるつもりは私には起きなかった。

 むしろいなくなったユーノ君のことを思えば、より強くこれからの戦いを頑張っていこうと思うほどだ。

 それに、彼が私と一緒に居たくないという気持ちも何となくわかる。

 

「自分の魔法を壊されたら気分良くないよね……」

 

 私はユーノ君の得意とする魔法を呆気なく上回ってしまった。それも、魔法を知ってから数日しか経っていないような素人同然の少女にである。

 フェレットを人間と同じに考えることはおかしいかもしれないが、まぁ人語を喋るのだから人間と似たような存在と思っていいだろう。

 ともあれ、素人に上回られた事実にショックを受けたに違いない。それはつまり、高町なのはの才能が天才と呼ばれる領域にあるという証明になるので嬉しかったり……っていけないいけない。

 あくまで私が凄いのではなくて、高町なのはが凄いだけなのだ。それを自分のことのように思うのは違うような気がする。

 

「……ともかく今は、次の戦いに向けて魔法の特訓しなきゃね、レイジングハート」

 

『了解です。昨日の訓練データを元に新たな訓練メニューの設定を行いました。今後は日常生活を阻害しないように、分割思考と仮想空間を用いた訓練となります』

 

「そう、じゃあ学校にも行けるんだね」

 

『はい。ちなみに、本日のメニューは飛行魔法の基礎と砲撃魔法のバリエーションとなります』

 

「あぁ、それはとても素敵ね」

 

 指先に展開したシューターをクルクルと回しながら、レイジングハートの提案する訓練内容に胸を躍らせる。

 そう、今はいなくなってしまったユーノ君のことよりも、より素晴らしい力を手に入れることが先決だ。

 そうこうしている間に寝間着から私服に着替えた私は、展開したシューターで遊びながら、これまで以上に爽やかな心地でこの数日訓練用に使っている公園へと出かけるのであった。

 

 

 

 

 

 進入禁止のテープの向こう側、ユーノ・スクライアは上半分が崩壊したビルを、かれこれ一時間以上見上げていた。

 視線を落とせば、崩れたビルの残骸によって粉砕されたアスファルトの地面が広がっている。既に残骸や、潰された人々と溢れ出た鮮血は拭われているものの、よく目を凝らせば拭いきれなかった血の痕が僅かに残っていた。

 なのはの下を出てから暫く、ユーノは当てもなくジュエルシードを探して休憩する度に、ここで失われた命に対して悔恨していた。

 

 ――僕の、責任だ。

 

 自責の念にユーノは胸が引き裂かれる心地だった。

 あの日、暴走したなのはによる砲撃魔法が起こした惨劇。このような事件にならないように努力した結果がこの始末。しかも、ジュエルシードは未だ殆どの回収が終っておらず、間違いなく次の暴走が起きた場合、高町なのはという怪物が動くことは間違いない。

 だからと言って、暴走前のジュエルシードを見つける手段は乏しく、そもそもユーノ一人では暴走体を封じることすら出来ない。

 こみ上げる不快感のままなのはの下を去ったユーノだったが、結局なのはと近いうちに再び出会うことは確定していた。

 そしてまたこの悲劇は繰り返されるのだろう。

 否、同じ規模ではない。天才とも呼べる才能を秘めた高町なのはは段階を飛ばして成長し続けている。こうして出会わなくなった数日で、彼女の力はさらなる飛躍を果たしていることだろう。

 結界を貫通されたとはいえ、デバイスを介さずに魔法を行使するユーノの魔法を操る技量は未だなのはを上回っている。

 だからこそ言える。あの砲撃魔法はまだまだ成長する余地があると。

 高町なのはは決して躊躇うことはないだろう。むしろ嬉々として破壊力を増した砲撃魔法を暴走体ごと海鳴市へと叩き込むはずだ。

 

「……どうすればいいんだ」

 

 ジュエルシードが暴走すれば海鳴市は地獄と化し、高町なのはが戦えば海鳴市は地獄となる。

なる。

 そして、そのいずれも全てはユーノが切っ掛けなのだ。

 そもそも自分がジュエルシードを見つけなければよかった。

 そもそも高町なのはに助けを乞わなければよかった。

 あぁ、認めよう。責任の一端ではない。今まさに戦後最悪の危機に人知れず見舞われているこの海鳴市の悲劇は、自分にこそ責任があるのだと。

 

「だけど……でも……う、うぅ……」

 

 項垂れて嗚咽したところで現状が変わるわけではない。

 それでも、幼い少年が背負うにはこの現実は過酷に過ぎた。願いを暴走させる凶器と、超常により掘り起こされた狂気。この二つを前に抗う方法は殆ど残されていない。

 唯一の希望は、事前に救援を送っていた管理局の魔導師が一秒でも早く来てくれることだが、それすらも果たして救いとなるかもわからない。

 ジュエルシードはいい。問題なのは、管理局という組織を前にした高町なのはの狂気。

 普通に考えれば、ロストロギア案件に駆り出されるような管理局の魔導師が敗北する可能性は考えられない。

 だがアレは。

 もしもアレが、管理局ですら糧とした場合――。

 

「ッ……!?」

 

 そこまで思考を巡らせた直後、ユーノはジュエルシードの反応を察して背筋を凍り付かせた。

 考えに答えを出す暇すら許されず、そも、今回の事件による被害者への償いすら叶わない。

 それでもユーノは行くしかない。

 もうこのジュエルシード事件とも言うべき代物が自分の手から離れたものだとしても。

 それでもユーノはこの事件の責任者として、地獄のような戦地へと赴く必要があったのだった。

 

 

 

 

 

 ――気晴らしにプールにでも行きましょう!

 

 そう笑顔で告げたアリサの気遣いに感謝しながら到来した休日。すずかは照り付ける日光に目を細めながら、アリサと一緒にプールを満喫していた。

 

「ほらほら! 行くわよすずか!」

 

「ま、待ってよアリサちゃーん!」

 

 クラスメートではなく、嫌悪の別名として二人の間で暗黙の了解となっている少女、高町なのは。以前の接触によってすっかり気落ちしてしまったすずかのはしゃぐ姿に、微笑みの裏側でアリサは安堵の心地であった。

 その心情まで聞いたわけではないが、親友を自称している以上、すずかがなのはに感じている感情は、自分とは少し違うということをアリサは何となく感じ取っていた。

 だが無理にそのことを問いただそうという気になれないのは、単純になのはのことを話題に出すことすら嫌だったからである。

 別にわざわざ掘り起こすことではない。それでもここ数日の落ち込み具合を察したアリサによる休日デート作戦は概ね上手くいっていると言っても良かった。

 

「ふぅ……沢山泳いじゃったな」

 

「ハァハァ……ま、前から思ってたけど、すずかって性格のわりに運動得意よね」

 

「そ、そうかなぁ? 普通だと思うよ」

 

 暫く泳ぎ回ってから、一度上がって休憩に入る。プールでは家族で来た人たちや恋人同士、あるいは自分達のように友人同士ではしゃぎまわる人々でにぎわっている。

 そんな人たちの姿を眺めながら、不意にアリサは「元気になったみたいでよかった」と呟いた。

 

「そんなに落ち込んでたかな?」

 

「えぇ、もう毎日心ここに在らずみたいな感じだったし、吹けば飛びそうなくらいに頼りなかったわよ?」

 

「……心配かけちゃったみたいでごめんね」

 

「別に……すずかが落ち込んでるとアタシが楽しくないから、それだけよ」

 

 それを心配しているというのではないか。ということを口にするほどすずかは野暮ではない。不器用な親友の気遣いに「ありがとうね」と小さく微笑む。そっぽを向いているが、きっとアリサの顔が真っ赤になっているのがすずかには手に取るようにわかった。

 

「もう大丈夫だよ。いっぱい遊んだらすっきりしちゃった」

 

「本当? 無理して抱え込んだりしない?」

 

「あはは、アリサちゃんは心配性だね」

 

「だから! 心配してるわけじゃないわよ!」

 

「それでも、ありがとうね」

 

「……うん」

 

 か細い返答にすずかの微笑みが深まり、なのはと接触したことによってささくれだった心が癒されるのを感じた。

 本当に、彼女には申し訳ないことをしたと思う。そして、たかだか一瞬触れただけでここまで落ち込んだ自分の弱々しさに馬鹿らしさすら覚えた。

 

「私ね、高町さんが怖かったの」

 

「怖い?」

 

「うん。嫌いだとかそういうのよりも、私はすっごく怖かった。上手く言えないんだけどね、高町さんは人間になりかけてると思ったから」

 

「何それ、アタシだって人間よ?」

 

「えっと、勿論そうなんだけどそうじゃなくて……何て言ったらいいのかな。アリサちゃんは良い人で、高町さんは人間で……えっと、分からない?」

 

「分からないわよ、何? トンチでもきかせてるわけ?」

 

「そうじゃないんだけど……まぁともかく、私は高町さんが怖いけど、でもこうしてアリサちゃんと遊んでたらどうでもよくなっちゃった」

 

 なのはに感じる得体の知れない恐怖は、きっといつまでもすずかから払拭されることはない。

 だがすずかがなのはと関わることは殆どないのだ。そして彼女が幾ら恐ろしくても、その本質を発揮させるだけの力が無い。

 だからもう気にしなければいい。関わらなければいい。考えなければいい。

 それを逃げと呼ぶ人もいるかもしれない。だが時には臭い物に蓋をすることも必要であり、そんなことで親友との大事な一時を棒に振るのは損をするというものだ。

 

「だからねアリサちゃん。これからはもっと一緒に遊ぼう。次のお休みも何処か一緒に行こう。わたしは、アリサちゃんと一緒ならいつだって笑えるから」

 

「そっか……えぇ、そういうことなら任せなさい! もう駄目ってなるまでいろんなところに連れ回してあげるんだから!」

 

 すずかの思うこと、言うことがアリサはあまり分かっていない。だが少なくとも、この大事な親友が自分と沢山遊びたいということだけは分かった。そして、それだけが分かれば十分だということも。

 だからもういい。

 これできっと、二人の間にあった高町なのはという棘も徐々に抜け落ち、いずれは消えることになる。

 そしてその時こそ、二人は心の底から笑い合って、変わらない毎日を――。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

 

 賑やかながら穏やかな一時。だがそれは、突如として二人を覆うように現れた影と、先程まではしゃいでいた人達の悲鳴によって一瞬にして砕かれることとなった。

 突然のことに困惑するのも束の間。アリサとすずかが、そこにいた誰もが空を見上げる。

 それはきっと、暖かな日常を破滅させる最悪の始まり。

 少女達の小さくも美しい絆を砕く、災禍の時はここより。

 

「な、なによこれ……」

 

「あ、あ……」

 

 二人が見上げた影。それは十メートル以上にはなる巨大な水の竜巻であった。明らかにプールの水量以上の水で練り上げられた竜巻に巻き込まれた人々が最初の悲鳴を最後に水の中に飲まれてもがき苦しんでいる。

 その姿を見てアリサとすずかは言葉を失った。

 荒波に揉まれる人間を外より見ているような光景。足掻き、苦しみ、抵抗すら叶わず、終わりの間際まで苦悶を表情に張り続ける地獄。

 だがそれすらも地獄の始まりに過ぎない。唖然と見上げていた竜巻、その遠心力によって加速した人間の一人が弾きだされ、弾丸の如き勢いで地面に激突した。

 かつて人間だった存在の何かが地面を中心にその全身を四方八方へとぶちまける(・・・・・)。着弾した場所を中心に広がった鮮血と弾け飛んだ脳漿。ぴちゃりと粘性の音を奏でて壁や人に付着したそれを人々が自覚した瞬間、異常現象に思考を停止させていた人々が一斉に恐慌の渦に飲まれた。

 

「ひぃぃぃ! なんだよこれぇぇぇ!?」

 

「た、助けてくれぇぇぇ!」

 

「誰か! ウチの子が! ウチの子があの中に!」

 

 突然の惨劇にアリサ達と同じくプールに居なかった人達が叫び喚く。そしてそれはアリサとすずかも同じだ。だが顔を青ざめさせながらも悲鳴をあげずにいただけでも賞賛される胆力だろう。

 だが幾らか周囲の中でも冷静であったところで状況が良くなるわけではない。むしろ冷静だからこそ、今にもこちらに襲い掛かりそうな竜巻を見上げて、どうしようもないという事実に打ちひしがれそうになる。

 

「すずか! 早くこっち!」

 

 それでもアリサは震えるすずかの手を取って走り出した。遅れて膨れ上がった竜巻が先程まで二人の居た場所を飲み込む。その内側に何か得体の知れない存在が居たように見えたが、アリサは振り返ることなく全速力で出口へと走る。

 だが少女達の足では竜巻から逃れることは出来ない。迫りくる竜巻は、二人の抵抗を嘲笑うようにその全てを飲み干そうと迫り。

 

「ッ……すずか!」

 

「アリサちゃん!」

 

 せめて離されてたまるかと抱き合った二人が目を閉じた瞬間、綴じた瞼越しでも感じられる閃光と共に二人の小さな体が空を舞った。

 

「きゃあぁぁぁ!?」

 

「ッ! うぐぅ!?」

 

 とうとう悲鳴をあげたアリサを庇ったすずかが、地面に激突して呻き声をあげる。二度、三度、水着で打ち付けられた体は至る所が出血していたが、それでもすずかはどうにかアリサだけは庇うことに成功していた。

 

「う……あっ……すずか? ねぇ! すずか大丈夫!?」

 

「ぅ、ぅ……」

 

「あ、あぁ、そんな……どうして……」

 

 どうにか起き上がったアリサは、地面にぶつかり、あるいは擦ったせいで全身が血塗れになったすずかを見て言葉を失った。

 一体何がどうなってこうなったのか。

 立て続けに起きた異常に対して、聡明とはいえ未だに十を越えない少女のアリサの思考はパンクしていた。

 自分を庇ったせいで傷ついたすずかと、そんなすずかの血で濡れた自分を見て震えるしかない。

 最早、何かを考えて行動するという選択肢すらアリサにはなかった。

 いつも通りの日常だった。

 大好きな親友を励ますためのお出かけは、素晴らしい天気と相まって最高の一日となるはずだった。

 だがそれはもう全て過去の話。僅か一分にも満たない惨劇の結果、アリサが思い描いた最高の一日は、彼女の人生で最悪の一日と化してしまう。

 

 崩壊したプールの跡地には、謎の衝撃によって吹き飛んだ瓦礫と人間の部品(・・・・・)が散乱している。

 未だ渦巻く竜巻は内部に蓄えた人達を窒息させ、弾きだされた水死体が地面に勢いよく激突して奇妙なオブジェと化していた。

 

「何なのよぉ……何でこんなことになったのよぉ……!」

 

 傷ついたすずかを抱きしめて嗚咽するアリサの声には誰も答えない。答えられる者は何処にも居ない。

 そう、答えるつもりすら、そいつにはなかった。

 

「げひっ」

 

 奇妙な笑い声が惨劇の場に響いた。不意に、アリサは涙で濁った瞳で空を見上げる。

 

「げひゃ! あひっ! ひひひっ! ひひゃひゃひゃ!」

 

 そこに、それは居た。

 恍惚の笑みを浮かべ、糞尿のような笑い声を吐き出して、それは悠然とそこに在った。

 

「ひ……ぃ……」

 

 引き攣るような悲鳴がアリサの口から漏れた。その眼に発露する感情は恐怖。惨劇への憤りと悲しみすら一瞬にして消え去る程の絶望と対峙したことへの恐れ。

 そして同時にアリサは意味不明ながらも直感的に理解した、してしまった。

 アレだ。

 空に浮かぶアレこそが、あの衝撃と閃光の正体だ。

 それは、純白の衣を纏い、両足のくるぶしから桜色の羽根を生やして空を舞う姿は、さながら地上に舞い降りた天使――などではない。

 腐敗した内臓を美しい衣で包み、天使のような姿で腐臭を放つアレこそがすずかを傷つけた、白い悪魔。

 穏やかな日常に破滅をもたらす悪意の名を――アリサ・バニングスは知っている。

 

「高町、なのは?」

 

 無意識に呟いた声を聞いて、白い悪魔がアリサへと視線を移す。その伽藍洞の眼に射竦められ体が硬直した。

 怖い。

 恐ろしい。

 今すぐにこの場から逃げ出したい。

 そんな思いを抱きしめたすずかの温もりが許さない。今や、アリサの正気を保つ最後の一線は、瀕死となったすずかだけだった。

 

「……それじゃあ。楽しもうか」

 

 だがそれも一瞬、アリサへの興味を失った悪魔はさらに膨張した竜巻へと視線を戻した。

 そして、その手に持つ杖にあの破滅の閃光が再び灯る。それが一度解放されれば、今度こそアリサ達が死ぬという事実すら一切考慮せず。

 

「すずかぁ! 起きてよすずかぁ!」

 

 アリサは叫んだ。すずかの傷が開くのを知りながら、その体を引きずって少しでも遠くに逃げながら叫んだ。

 だがすずかは起きず、破滅の光は今にも解放される瞬間を待ち、それでもアリサは親友を見捨てることは出来ず。

 

「誰か助けて……! 助けてよぉ!」

 

 どうにもならない現実への咆哮は、ついに解放された光へと一瞬にして飲み込まれるのであった。

 

 

 

 

 




次回、頑張れユーノ君。
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