「うーん、やっぱり立候補に頼るのは無理なのか?1人だけでいいんだ。誰か引き受けてほしいんだが・・・」
「もー、代表がやればいいじゃん。そうすれば万事解決よ」
「だから、僕が生徒会員になるわけにはいかないんだよ。クラス代表と生徒会は掛け持ちできない決まりなんだ。」
今朝、担任の教師から渡された生徒会関連の資料を広げながら、僕は顔を上げる。が、すぐにため息をつくこととなった。
いくら見ても、僕の望む状況にはならない。ここの・・・Dクラスの生徒はそれぞれが好き勝手なことをしている。
友達と話に華を咲かせている者、スマホをいじっている者、机に突っ伏している者(おそらく意識は夢の世界だろう)と様々である。こんな者たちが大半を超えているのだから、代表兼進行役の自分としてはたまったものじゃない。
もちろん自分の話を聞いている者もいる。いるが、だからといって立候補してくれるとは限らない。僕が目を合わせようとすると、こっちを見ている者がさっと視線をそらす。「自分はやりませんよ」というメッセージを暗に、というかモロに示している。
まとまりが無いのは明らかであった。
朝、クラス代表を通告された時こそ、少しばかりの嬉しさはあった。代表と言っても、AクラスではなくDクラスであり、学年全体から見ればそう褒められた成績ではない。
それでも、クラスで1番をとれたことは事実である。その後の自己紹介をした時は、高揚感さえ感じた。普段は持たない責任感も多少なり生まれた。
自分がこのクラスを引っ張っていこう・・・そう決意した。
・・・そして今、早くもその決意は折れかけている。
クラスから輩出する役員決めが全くといっていいほど進まない。さっき述べたように、誰も協力してくれないのだ。
先生がいてくれれば良かったのだが、「決まったら教えてくれよ」と言ってさっさとどこかに消えてしまった。教師の監視なしで、上位でも無いうちらDクラスがマトモにしているか。勿論、否だ。
相も変わらず教室はザワザワとしている。強く出るべきだろうか?いや、それはまずい。新学期初日で、自分と初顔合わせの人も多い。怒鳴ったりして変なイメージをもたれたらこの先うまくいかなくなる。第一印象というものは結構長い間付きまとうから怖い。かといって穏便な方法をとったとしても、なめられそうで不安が残る。
嗚呼、自分にもっとリーダーシップがあれば、と思う。そうすればこんなに悩まずに済むのに・・・、と考えてしまう。
とはいえ、このままというわけにはいかない。時間は無限にあるわけではないし、他にも決めなければいけないことが残っている。
(うーん、クジで決めるべきか?それだったら後腐れなくて済むし・・・)
妙案が浮かばず、確率の神様に頼ろうと考えていた時だった。
『ガラッ!』
「し、失礼します!」
扉が開き、1人の男子生徒が1歩、教室の中に入ってきた。まだ授業中の時間なのに、だ。
扉の音に、ほとんどの生徒が反応し、一斉にそちらを見た。先生ではないことを確認して安堵する者が大半だった。おい。
ともかく、来訪者の出現により皆の関心が一手に、そちらに向いた。クラス中の視線を受け、男子生徒は開きかけた口を閉ざした。
「どうしたんだ?何か用事があって来たんじゃないのか?」
先陣を切って、自分が声をかける。注目を浴びて戸惑っていたその生徒は、僕の言葉に顔を上げる。そして、意を決したように話した。
「Fクラス、近藤だ。Dクラスの代表に伝えることがある」
男子生徒・・・近藤君の言葉に、ぎゅっと眉を寄せる。彼とは初対面である。あちらも僕の名前を言わないで『Dクラス代表』といったことから、少なくとも僕個人への用ではなく、代表としての自分に用があるのだろう。
「僕がDクラス代表、平賀源二だ。どんな事だ?」
教卓についていた手を離し、そちらに体を向ける。近藤君はこちらを見たまま、言葉を続けた。
「Fクラス代表からだ。・・・俺たちFクラスはDクラスに試験召喚戦争を申し込む!」
力強い声だった。なるほど、FクラスがDクラスに試召戦争を
・・・・・・・・・ん?
彼は何と言った?
何をするか?試召戦争をするといった。
FクラスがDクラスに申し込こむといった。
Fクラスは?彼のクラスだ。
Dクラスは?自分のクラスだ。
Fクラスが、Eクラスではなく自分らに?しかも新学期初日に?
頭が混乱してうまく働かない。意味は分かる。だが、理解が追いつかない。
クラスメートも同じように、呆然としている。
沈黙が支配する。その原因となった生徒、近藤君は入ってきた時よりも表情を固くしていたが、ゆっくりと片手を上げ、側頭部に添えた。
皆がその光景を見守っている。近藤君は不意に表情を崩し、ただ、一言を発した。
「てへぺろ☆」
クラスメート全員がゆっくりと席を立ちあがった。そして一歩ずつ、1人の人物に向かって歩みを進めていった。その顔は、絵に描いたような無表情だった。
もちろん僕も、だ。ああ、近藤君、君には感謝しなくちゃいけないね。
・・・ありがとう。今、皆の気持ちが一つになったよ。
「さあぁぁぁぁかあぁぁぁぁぁもおぉぉぉぉとおぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「お、近藤、戻って来たか。ちゃんと伝えてきたか?」
「なにがてへぺろやれば万事解決じゃあああああ!!危うく三途の川わたるとこだったぞ!というか船に乗りかけちまったぞ!!」
「・・・・・へえ?マジでやったのか。あっはっは、馬鹿だなーお前」
「どういう意味じゃごらああああああ!!!!!!!!!!」
Dクラスが修羅場になった10分後、Fクラスに1人の絶叫が響き渡ったとか何とか。
今年1年のイメージですが・・・
リリーホワイト「春ですよ~ぽかぽかですよ~」
幽香「ふふふ・・・いい天気が続くわね」
レティ「我が世の冬が来たあああああああああ!」
秋姉妹「」