僕と翔子はFクラス   作:青い隕石

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あけましておめでとうございます(遅い)
 
 

 


9話:第一印象は大事なもの

 

   扉を開けると、そこは雪国だった。

 

 

 

 

・・・なんてことはなく、下はコンクリート、上は青空が広がっていた。

 

 

「・・・よし、誰もいないな。他の奴らも来ていいぞ」

 

 

 先に様子を確かめに行っていた雄二の許可を聞き、自分たちもぞろぞろと出ていく。

 

 

「へぇー、初めて来たけど、中々いい場所だね」

 

「ん?明久は来たことなかったのか?こんな昼寝に絶好の場所を見逃しているとは・・・」

 

「何、雄二?君は普段から僕を昼寝しかしない人物だとでも思っていたの?」

 

「「「え、違うの?」」」

 

「OKお前ら表でろ」

 

「まあこの場所も一応表なんだがな」

 

 

 ラグナの突っ込みを聞きながら、上げかけていた拳をゆっくりと降ろす。ぐるっと周りを見ると、小さなコンクリートの小屋、人工芝で出来た隅にある芝生以外は灰色の地面が広がっている。

世間一般的には『屋上』という名前がついている場所であり、自分もこの場所の名前を聞かれればそう答えるだろう。

 

 

 中央付近まで歩いていき、そこで大きく背伸びをする。途端に春の陽気な太陽と風に包まれるような錯覚を覚えた。夏は勘弁願いたい天気でも、今の時期なら大歓迎である。

 

 なるほど、雄二が昼寝云々言っていたのもうなずける。こんな、春告精がすぐ近くにいるような天気なら、すぐに夢の世界に行けるだろう。いや、行くなという方が無理だ。雨の日以外はちょくちょく来る事にしよう。

 

 

「ところで雄二、ここで何するの?」

 

 

 伸びを終えて振り向き、雄二に尋ねる。

 

 

 

 

 

 近藤君がDクラスから(息絶え絶えで)戻ってきた後、我らが代表はクラスメートに自習を命じた。それも、日本史だけを勉強するようにと言った。

雄二が演説で言っていた通り、総合的に点数を上げるのではなく、数を絞って点数を上げるつもりなのだろう。

 しかも、「これを使って勉強してろ」と全員にプリントを配っていた。あとで聞いた話だが、春休み中に日本史の教師に掛け合って、50人分用意してもらったらしい。始業式に勉強道具を持ってくるFクラス生徒など多くないと予想して(実際、持ってきたのは数人だけだった。僕?漫画とゲームに決まってる)準備していたというのだから、用意周到である。

 

 早速自分も取り掛かろうとしたのだが・・・

 

 

「明久」

 

 

 と肩を叩かれた。振り返ると雄二が笑っている。

 

 

「りょーかい」

 

 

 その笑顔をみて適当に返事を返した。傍から見れば雄二が自分に声をかけただけのように見えるだろうが、自分には、それだけで雄二が何を言いたいのか分かった。『ちょっとついてこい』、で間違いない。長い付き合いだとこういう所が便利である。

 

 何の用事かは分からないが、十中八九、試験召喚戦争に関することだろう。万が一、先月借りたゲーム返せ、という催促だったら不味い。思いのほか難しく、まだクリアできてない。その場合は、今まで温存していたバック転☆土下座を披露するしかない。

 

 一抹の不安を胸に出しかけていた筆記用具を閉まって立ち上がったのだが、その間に雄二は他の人にも声をかけていた。

 

 ちなみに他に呼ばれたのは、翔子、ラグナ、秀吉、瑞希、康太だった。

 

 

 

 

 それで、皆で屋上まで来たんだけど、・・・なんだろう。知っている顔しかいない気がする。選ばれたメンバーが偏っている気がしてならない、というより絶対偏っている。

 

 

「まあ、やることは2つだな。1つは自己紹介、もう1つは作戦会議だ」

 

 

 雄二はそう言いながら、フェンスに体を預けた。そこで話をするつもりなのだろう。自然と自分たちも雄二の周りに集まっていった。とりあえず自分も、翔子と一緒にフェンスに寄り掛かった。話の内容を聞いて、密かにほっと胸をなで下ろす。

 

 

「何だ?自己紹介ならさっきしたんじゃねーのか?」

 

 

 皆の動きが止まった所で、胡坐をかいたラグナが口を開いた。コンクリートが地面だと学生服に傷がつきそうなのだが、そんなことはお構いなしの用だ。もう少し服を大事にすればいいのにと思ってしまう。そんな服が傷みやすい床で昼寝をしようとする人物がいたことなんて忘れた。

 

 

 「ああ、もう少し深く聞いておきたかったもんでな。ブラッドエッジ、そして姫路」

 

 

 腕を組みながら雄二は2人の人物の名を言った。ラグナは名前を呼ばれても微動だにしなかった。対する瑞希はビクッと体を震わせ、じっと雄二を見つめた・・・いや、睨んだ、と言った方が正しいだろうか。

 

 

 そんな2人の反応が見えているのかいないのか、雄二はフェンスから体を離し、ラグナに向かって歩いて行った。ラグナも気付いたのか、ゆっくりと立ち上がる。雄二がその目の前で足を止め、手を差し出した。

 

 

 「面と向かって話すのは初めてだな。坂本雄二だ。よろしくな」

 

 

 

 「ラグナ=ザ=ブラッドエッジだ。自由に呼んでもらって構わない」

 

 

 

 

 2人は簡単な会話の後に握手を交わした。並んでみると、ほとんど身長に違いが無い。それだけではなく、体格もガッチリとしており、揃って、第一印象で頼りになりそうな雰囲気を出している。・・・羨ましい限りである。自分もああいうオーラを出したい。

 

 

「・・・大丈夫、頼りなさそうな明久が大好きだから」

 

 

「翔子、僕はその言葉にどう反応すればいいのかな?」

 

 

横から聞こえてきた言葉に思わず声が上ずった。

由々しき事態である。自分は普段、翔子からそのように見られているのだろうか?だとしたら男として、彼氏としての沽券におおいに関わってくる。そうだ、今までに翔子に頼られたことを思い出せばいいんだ。さあ、記憶よ甦れ!

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・

 

 

 

 

「・・・・・・・・・翔子」

 

 

「・・・何?」

 

 

「・・・こんな僕だけど翔子のことが大好きだから、これからもお願いします」

 

 

「・・・うん////」

 

 

漢として強くならねばと決意した、吉井明久16の春になった。

 

 

 

 

 

 

 ・・・で、落ち込んでいる自分を尻目に雄二がラグナをじっと見つめていた。まだ握手を解いていないため、さほど距離は離れていない。見方によっては一部の女子が喜びそうな構図だが、雄二の眼は真剣そのものだった。対するラグナも物怖じせずに雄二を見ている。

 

 雄二とラグナの共通の友人である自分だから分かることだが、二人とも口数は多い方ではない。こう言うとさっきの雄二の演説は何だったんだ、と言われそうなので、無駄口は多い方ではないと表現するべきか。挨拶や受け答えはしっかりとするものの、友人との会話以外では必要以上に口を開かないように思っている。

 

 

 さて、そんな2人が挨拶を終えたらどうなるか?

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「「「・・・・・・」」」

 

 

 沈黙が支配するのは当然のことと言えよう。響いているのは風とカメラのシャッターの音ちょっと待つんだムッツリーニその写真どこの女子に売りつけるつもりなんだだけだった。

 

 かといって、他の人物が声を出せるような空気ではない。未だに手をほどかないということはどちらかが(おそらくは雄二が)手を強く握っているのだろう。それだけ相手を離したくないということか。

 

 

・・・あれ?やっぱりホm

 

 

「なるほどな」

 

 

 

 

 考えがいけない方向に飛躍しそうになった瞬間、雄二が長い沈黙を破った。表情を崩し、手を緩めてラグナから離れた。

 何だったんだ?と考えるより先に、言葉が続いた。

 

 

 

 

 

 

 「ラグナ、頼みがある」

 

 

 

 

 「・・・何だ?」

 

 

 

 

 

 

 雄二からの質問にラグナは眉をひそめる。握手したと思ったら長い間手を離されず、やっと終わったと思ったら頼まれごとだ。そんな表情になるのも当然だろう。

 なにをラグナに頼むのか?もし「俺と付き合って下さい」とかだったら、自分は雄二との友情を太平洋に向かって全力投球する自信がある。太平洋どころか学校の敷地内も超えないと思うがそこは気にしない。

 

 

 

 

 

 

 「試験召喚戦争で、俺の右腕になってくれ」

 

 

 

 

 

 

 ・・・ごめんなさい、どうやら真面目な内容だったみたい。

 

自然と安堵の息を漏らす。翔子や秀吉も大きく息を吐き、安心していたのが見えた。どうやら考えていることは一緒だったようだ。

 

 

 

 

 

 

 「俺が?」

 

 

 

 

 

 

 ラグナが言う。表情だけでなく、声にも不信感がこもっていた。が、そんなこと関係ないとばかりに雄二が口を開く。

 

 

 

 

 「ああ、あんたなら信じられるからな」

 

 

 

 

 

 

 ほぼ初対面の人に向かって言える言葉ではない。が、雄二の口調には確信めいたものがあった。

なるほど、信用は時間でなく行動で勝ち取るもの、と堂々と言っていた雄二のことだ、さっきの握手の最中にラグナを見極めていたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 突然の事だったが、もちろん僕自身も異論はない。ラグナが信じられるかどうかは言うに及ばず、頭も切れ、なんだかんだで面倒見も良い。事前に雄二に聞かれていたら二つ返事で了承していたはずだ。

 それをしなかったのは自分の目で見て決めたかったからだろう。

 

 

 

 

 一方のラグナは、その言葉を聞いてバツが悪そうな顔になった。少し顔をそらして、返答する。

 

 

 

 

 

 

 「・・・買い被りすぎだ。それに、俺はまだお前のことを全然知らねぇ。精々、明久から何回か名前を聞いたくらいだ。お前が信じてくれても、俺はまだお前を信じられない・・・」

 

 

 

 

 

 

 「構わんさ」

 

 

 

 

 

 

 間髪入れずに、遮るように、迷いのない返答が雄二の口から出た。

 

 

 

 

 

 

 「重要なのは俺がどう思うかだ。それに、人を見る目は持っているつもりだ」

 

 

 

 

 

 

 響く声だった。どこを見ても揺らぎが無い。心からの、嘘のない言葉だった。

 

 

 

 

 ラグナはしばしの間、身動き一つ取らなかった。やがて、ゆっくりと顔を戻す。雄二を視界の正面に収め、質問を返す。

 

 

 

 

 

 「・・・俺より明久の方がいいんじゃねーか?」

 

 

 

 

 「バカ久は駄目だな。あいつは頭がいいだけの馬鹿だ」

 

 

 

 

 

 油断しきっていた所に雄二からの流れ弾が直撃した。おい、と抗議の声を出そうとしたが、ラグナの出した笑い声にかき消されてしまった。

 

 

 

 

 

 「ぷっ・・・はははっ!なるほど、確かに人を見る目は持っているみたいだな」

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・明久、気持ちは分かるけど落ち着いて」

 

 

 

 

 

 

 

 「翔子離して。僕は今抱いた感情をすっきり解消させたいんだ」

 

 

 

 

 

 真っ赤に燃える右手を2人に叩き込もうとして、翔子に抑えられた。

 ラグナはひとしきり笑ってから咳払いし、今度ははっきりとした声で答えた。

 

 

 

 

 

 「ま、ほどほどにやらせてもらうさ」

 

 

 

 

 

 ラグナは教室で見せていた微笑をした。

 

 

 

 

 

 

 「頼んだぞ。・・・さて」

 

 

 

 

 

 

 マジで爆裂ゴ(ryする5秒前な僕などに目もくれずにいた雄二は、ラグナの答えに満足そうな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 が、それも一瞬のことですぐに表情を戻し、体の向きを変えた。その先にいたのは、瑞希だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瑞希は、最初の顔のまま・・・険しい顔で雄二を見ていた。

 




 
 改二の噂を聞いた途端、今まで見向きもしなかった那珂ちゃんのレべリングをし始めた提督がいたらしい。
 


 
 木曽「確か、俺の時もそうだったよな?」

 駄文提督「・・・返す言葉も、ございません」







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