「初めまして、というのはちょっと違うかもな。坂本雄二だ。よろしくな、姫路」
「・・・・・・」
・・・なんでしょうか、この状況。にこやかな笑みを見せながら話しかけている雄二、対してじっと雄二を睨みつけている瑞希。雄二には瑞希の表情が真正面から見えているはずである。それにも関わらず笑っているのは余裕からくるものなのか、はたまた能天気な馬鹿の為か。まあ、前者だろう。雄二だし。
「おいおい、そんな怖い顔しないでくれないか?せっかくの美人が台無しだぞ」
「・・・・・・」
雄二は、一昔前のナンパで使いそうなセリフを堂々と出す。陽気というかなんというか。でも雄二さん、今の台詞で瑞希の顔が一層歪んだよ。冷たい空気がこっちまで届いてきてるんだよ。誰ですか?春告精が近くにいるなんて言った人。
「「「・・・・・・」」」
そんでもって皆無言。この雰囲気を作り出した2人以外、誰も口を開こうとしない。ラグナの時もそうだったが、その時とは空気の重さが全く違う。さっきはなんかこう、微妙なというかふわふわしていたというかそんな感じだったけど、今は一触即発状態。いや、やばいってこれ。ガチで瑞希がキレそうなんだって。空気が重い、というより寒い。
平然としているのはラグナくらいで、あとの観衆は(自分も含めて)おろおろしている。自分には2人の間に割って入る勇気も度胸もない。出しかけた右足がずっと動かないままだ。このままではまずいと思い、ラグナとコンタクトをとる。
(ラグナーどうにかして~)
(おいおい、こっちに振るなよ。俺にだってどうにもできねぇぞ)
(そこをなんとか!原因分かんないけどこのまま初日から仲間割れなんて目も当てられないよ!)
(そりゃあ、そうだが・・・お前の方が瑞希との付き合い長ぇだろ)
(瑞希があんな状態での対処方法なんて分からないよ)
(いつもみたいにどつけば機嫌直るんじゃねぇのか?)
(はっはっはっ、ラグナの冗談は面白いね)
駄目だ、ラグナ使えねぇ・・・。なんて役に立たない奴なんだ!と自分のことを棚にあげながら小声での会話を終わらせる。
そうだ、まずは冷静になろう。なんで瑞希があんなに怒って(?)いるのか分析してみよう。まず一つ目が、さっきの雄二とラグナとの会話で不快な思いになったという可能性だ。さっきの会話・・・・・・
・・・・・・えーっと、何だったっけ?
いや違うんだよ。認知症でもないしお空でもないんだよ。2人が同盟組んだことは分かるんだけど、細かい内容が全然頭の中に無い。原因は9割方、あらぬ妄想のせいで話を聞いていなかった所為だろう。いや、その所為だと断言する。人間なのに鳥頭なんてシャレにならない(ああ、おぼろげながら思い出してきた)。
まあ、自分で挙げておいてなんだがその可能性は薄いんだけどね。瑞希は屋上に来てから最初、雄二に名前を呼ばれたときに睨み返していたのを覚えている。つまり、屋上に来る以前から雄二に恨みを持っていたと考える方が妥当だ。
だけど、その二つ目の可能性となると、原因が分からなくなる。さっき言った通り2人とも初対面に近い関係のはずだ。前世からの因縁とかそんな痛い設定でない限り、あんな邪険な雰囲気になることはないはずである。う~ん・・・
・・・と考えが迷走しかけていた時だった。
「・・・坂本君」
ずっと口を開かないでいた瑞希が、ゆっくりと口を開いた。全員の視線と意識が彼女に集中する。とりあえず停滞は崩されたことで、心なしか皆が安堵した空気をかもし出している。何も解決していないんだけどね。
「ん、何だ?」
雄二は、ようやく瑞希が喋ったことを何とも思っていないかのように、言葉を返す。もちろん、にこやかな笑み付きで。もうあの表情、一種の策略なんじゃないかと思ってしまう。
瑞希は一旦深呼吸をした後、言葉を繋いだ。
「朝、Fクラスで、何であんな、酷いこと言ったんですか」
紡ぎだされた言葉は、糾弾と疑問が入り混じったものだった。
「酷いこと?どんなだ?」
「ッ!!」
雄二からの返答を聞いた瑞希の顔が、今度こそ歪んだ。まずい。そう思った僕は素早く、2人の間に割って入った。
どうやらそれが正解だったみたいだ。瑞希は怒りで雄二に突っ込もうとしていたようで、結果として、間に入った自分に、勢い余って飛び込んできた。いくら自分がひょろっとしているといっても、女子一人の体当たりでぐらつくほど貧弱ではない。瑞希を受け止めることに成功した自分は、役得だなあという思いを頭の片隅に胸大きいなあ押し込んで、目の前の事態に目を向ける。
「きょう二回目かな?瑞希、落ち着いて」
「・・・明久君、どうして止めるんですか」
瑞希さん、上目遣いはヤバいですよ・・・、とか思いながら引き離す。そのままでも良かったんだけど、恋人とカメラマンの機嫌が大変なことになりそうなので止めておいた。
「どうしてって・・・もし止めなかったら大惨事になっていただろうからね」
「・・・ええ、なっていたでしょうね」
こっちを睨みつけてくる瑞希。でもその焦点は自分に合っていなかった。
「おお、怖い怖い」
わざとらしい声を上げながら雄二が体を震わせる。反応して瑞希が一歩前に来ようとしたので押しとどめた。雄二もうその態度止めて。慣れない仲介役をする自分の寿命がストレスでマッハなんだって。
「瑞希落ち着いて!ほら、確かに雄二の台詞は辛辣だったけど最後には皆納得してたでしょ?」
「そのことだけじゃありません!ここに来てから、坂本君は明久君のことを馬鹿呼ばわりしました!」
いや、それは事実なんだけど・・・と思いながら必死に瑞希を宥める。
ともあれ、今の一言で話は繋がった。『親友を馬鹿にされたから』、怒っていたのだろう。瑞希は、自分の事なら何て言われても気にしないが、親しい人を馬鹿にされるのを酷く嫌う。教室で飛び出そうとした時もしかり、今回もしかり・・・あれ、根本的な原因って自分?灯台下暗しどころか灯台自身が原因だったってことですか。
だったら、自分がなんとかするしかないか・・・。
「瑞希。屋上での会話で、雄二の馬鹿発言に腹を立てていたんでしょ?」
「・・・ええ」
「だったら、それに肯定したラグナに対してはどう思っているの?」
「え?」
厳しい表情が一転、戸惑いの表情になる。あの時、ラグナだって雄二の言葉に賛同して、笑っていた。瑞希の言葉を基準にするなら、それに関しても怒りを抱くはずである。が、もちろん、そんなことはありえない。なぜなら・・・
「いや、だって、ラグナさんは本心から口にしているわけではないので・・・」
「でしょ。雄二も同じだよ。教室でも言ったけど本心から口にしているわけじゃない。一種のスキンシップみたいなものだって。大丈夫、雄二の性格は僕が保証するから。」
教室での発言はスキンシップどころか起爆剤だったけど、結果的には大成功だったしね。雄二の台詞を自分や秀吉、ムッツリーニだったらいつものことだと軽く流す。雄二のことを知らない瑞希が真正面から受け取ってしまったために起きた事態といえるだろう。
瑞希は少しの間黙っていた。そして、おもむろに体の向きを変える。
「・・・ラグナさん、坂本君のことを信用してもいいのでしょうか?」
僕以外の親友の一人であるラグナに質問をした。ラグナは肩をすくめて返答する。
「それは俺が決めることじゃねぇだろ。ま、俺自身は坂本に対しちゃ悪い感情は持ってないさ」
「そうですか・・・」
呟くように言葉にした後、また体の向きを戻した。自分は、2人の間から離れた。
最初にしたように、瑞希が2度目の深呼吸をする。その表情は、幾分柔らかくなったとはいえ、笑顔には程遠かった。
「姫路瑞希といいます。正直、第一印象の所為で坂本君のことを信じきれません。でも、信じられるように努力します」
「坂本雄二だ。ま、信じてくれた方がありがたいな」
言葉を交わした後、雄二は手を差し出したが、姫路は握り返さずに離れた。雄二は苦笑いをした後、手を引っ込めてこちらの近くまで来た。
自分としては仲良くなってもらいたいけど、その原因のことを考えると、なんとも言えない気分になる。まあ、小さな勘違いから生まれたものなので、時間がたてば溝は埋まるだろうと考えている。
「・・・さて、これで俺が知らない奴はいなくなったな。次に行くぞ」
一段落したと思ったら雄二はぐっと腰を下ろし、胡坐をかいた。次と聞いて一瞬何のことだか分からなかったが、屋上に入ってきた時のことを思い出した。
「次ってことは・・・」
「ああ、作戦会議だ」
雄二はニヤリと笑った。
「ここからが本番さ」
美鈴もう少し順位上がってほしかったです・・・まあ動かないからこそ『人気投票の門番』と言われているわけですが。
ポケモンXYでは、ようやくポケバンクが復帰しました。今までは旅パに近い編成でしたが、今は第五世代の相棒たちで対戦できるようになりました。やっぱり環境が変わりましたね。以前は嫌というほど当たった雨パがほとんどいなくなったのはありがたいのですが、その分新たな脅威も増えました。これから少しずつ対策を考えていきたいです。