こんな小説を読んでいただいている皆様に精一杯の感謝を。
新学期早々に始まった試召戦争は、開始から10分が経過した現在、奇妙なこう着状態になっていた。
先陣に人数の大半を投入したFクラスは数の暴力でDクラス先陣を蹴散らし、そのままD教室前まで足を進めている。その初戦はDクラスが戦死者4人を出したのに対し、Fクラスは0人だったことからも、一方的な展開ということが読み取れる。
これでDクラス側は、教室を出ても片や物理的な壁、片やFクラス生徒らによるある意味物理的な壁に囲まれる事態となってしまい、教室内に引きこもっている。顔を出したのは、先ほど外の様子を見るといった男子生徒一人くらいのものだ。
対するFクラスはどうか。言うまでもなく、格上相手に完勝したことで、士気は上がっている。敵の城に攻め入るとすれば今が最善のタイミングだろう。士気が低いと突撃したとしても及び腰となってしまい、あと一歩踏み込めば勝てる戦でも誰も前に出ずに負けてしまう恐れがある。ついでに言えば、時間が経てば経つほど下がっていくため、突撃するなら今しかない。
しかし・・・
「いいか、押すなよ!じゃない動くなよ!絶対に動くなよ!!」
「頼む須川!少しでいいから敵の様子を見てきたいんだ!」
「代表の命令だ。余計な事は一切してはいけないって言われているからな。諦めろ」
「お願いだ!先っぽだけでいいから!」
廊下に響く2人の口論。先陣の隊長に任命されている須川と、一人の男子生徒のものである。前に出ようとする男子を須川が止めている形となっている。
が、代表の名前が出てからは男子生徒の声の勢いが少しずつ小さくなっていった。その後も言い争いは続いたが、最終的には須川が押し切った。
「駄目だ。下手に刺激して団体さんで来られたらどうする?勝てるとでも思っているのか?」
締めとばかりに、全員に聞こえるように、それでいてたしなめるように須川が言った。その言葉を聞いた生徒らはバツが悪そうな表情になり、そっぽを向いた。恨みがましく須川を睨みつける者もいたが、当の本人はどこ吹く風といった顔をしている。
声には出していないものの、何人かはこのまま突撃して、一気に勝負を決めるつもりだったのだろう。勢いをつけた状態で敵陣に攻め入り、代表を討ち取る・・・理想的な展開、結末だ。『衝撃!Fクラスの底力!』という見出しと共に、明日の校内新聞の一面に掲載されるであろう。
が、勿論それは理想でしかない。初戦とは何もかもが違うのだ。人数がほぼ同数となってしまえば今度こそ点数の差が勝敗の要因となってしまう。そこに士気を加味しても、勝てる構図が思い浮かばない・・・
『・・・だから、敵を閉じ込めたらそこから動かないでくれ。絶対にだぞ。時間を稼ぐことが、一番の勝利への近道だ。そして・・・』
雄二の言葉を誤りなく実行している須川。朝、一人的確に雄二に質問したことで、その冷静さを買われ隊長に任命されたが、その抜擢は今の所、成功していると言えた。
代わってDクラスはどうか。4人戦死したとはいえ、『今現在』では戦力で勝っている状態だ。いくら相手が大勢とはいえこちらとて大勢、全員で打って出れば、悪い結果になることはないだろう。
それでも動かないのにはそれなりの理由があった。
「不味いぞ・・・早めに先生を連れてくるべきだった・・・」
代表の平賀が呟く。教室内にいるのは生徒46人だけ、他はいない。
油断があった。格下相手ということもあって、ほとんど何も準備しないままDクラスは戦争に突入したのだ。教師は相手が用意しているであろうからそれで戦おう、さっさと終わらせて帰ろう、と作戦も何もあったものじゃない。逃げ帰ってきた男子生徒の報告を聞いてようやく真面目に戦争について考え始めたのだから手遅れもいいとこである。
とはいえ、これで平賀を責めるのはお門違いだ。他のクラスメートも多かれ少なかれ、同じような思考だったからだ。『馬鹿どもがイベント感覚で仕掛けてきた』と思ったものもいたくらいだ。本気でFクラスが自分たちに勝とうとしているとは思わなかったのだ。
学校が始まって1日どころかその半分も経っていない状況で、どうやって上位クラスに勝てるというのか。
後悔ばかりが浮かぶが、頭を抱え込んだところで何も事態は好転しない。一旦気持ちに区切りをつけ、今の状態を冷静に考えようとする。
深くまで攻め込んだFクラスと閉じ込められたDクラス。頭の中に構図を浮かべたところで自然と出てきたのがさっきの言葉である。
準備をしていなかった、つまりフィールドを展開する教師どころか、回復試験用の教師すら呼んでいなかったのである。教室内にいるのは生徒だけだ。回復アイテム縛りで一狩りしようぜ!というようなもので、結構つらい。
呼んでくればいいじゃないか。
ごもっともな質問である。いないなら職員室まで行けばいい。問題は、道を塞ぐFクラスが通してくれるかどうかだが、抵抗なしの素通りはありえない。必ず、戦闘が起きる。その時の教科は何か。日本史だ。自分たちより高い点数をたたき出している生徒(須川)と戦わなければいけないのだ。ここで問題が発生した。
『お前が逝け』・・・この一言にDクラス生徒の感情が集約されているといえた。
何度も言うが、今ぶつかればどう考えてもFクラスのラインは後退する。須川一人の、仮に須川以外にも高得点者がいたとしても数人が高得点程度では支えきれない。精々、Dクラスの何人かを道連れにできるくらいだろう。
そう、裏を返せば、最初に突撃したものは点数の減っていない状態の須川と当たることになり、戦死する可能性が高いのだ。
Dクラス生徒は学年全体から見ると、平均より少し下に位置する人々で固められている。頻繁に、というほどではないが、昨年に鉄人の補習を経験している者が多く、その恐怖を身に持って知っている。戦死すれば、あの惨劇をもう一度味わうことに・・・。
まとめると、名誉ある一番槍の譲り合いという日本人特有の精神()により、先頭が決まらないまま時間だけが過ぎていっているのだ。
平賀は気が強い方ではないため、他生徒に「お前が逝け」とは言いたくない。仮に心を鬼にして突っ込ませた場合、後々根に持たれないかという心配もある。
「・・・誰か、先頭に立ってくれる者はいないか?」
この言葉を言うのも何度目だろうか。皆の反応・・・全員が目を逸らす・・・を見るのも何度目だろうか。平賀は頭を抱えた。
最終的に批判を最小限に抑えるじゃんけんで決めることになるが、Dクラスは結構な時間を無駄にすることになった。
「おい、本当にそれでいいのか?」
「ああ」
再び視点が変わってFクラス。須川は戸惑いの表情を見せるクラスメートの言葉に、しっかりと頷いた。前々から知らされていた数人を除いて、他の皆も困惑している。ここでも雄二の名前を出すことで理解してもらったが、納得までしている者は多くないようだ。
(・・・まあしょうがないか。俺も最初は同じ反応したしな)
苦笑いを浮かべる須川。彼自身も初めは納得がいかなかった作戦だ。懇切丁寧に雄二から説明されていなければ、何を馬鹿けたことを思っただろう。冷静な今、考えてみれば、その方法が一番いいことが分かる。
ふと、前方で音がした。Dクラス教室内からだ。今までしなかった音だ。
(・・・そろそろだな。)
時計を見る。長針は4を指していた。それは、膠着状態が優に10分以上続いていたことを表している。
上出来だ、と須川は呟いた。
「木下、そろそろだ」
「わかったのじゃ」
呆れたような顔を浮かべる木下。その顔を見て、やっぱり女子なんじゃないかと思ったが、口に出す前に、遠くから大声が聞こえてきた。その大きさたるや、Fクラスと比べてもそん色ない。後ろは見えないが、間違いなく、自分たちと同じくらいの人数はいる。
恐らく、数と点数に物を言わせて、こちらを壊滅させるつもりだろう。
・・・そう上手くはいかないだろうけどな。
敵が迫ってくるのを見ながら、自らも肺に息を溜め、叫んだ。
「走れお前らああああああ!!!」
自分が大声を出すと同時に、Fクラスは体の向きを180°変え、走り出した。ちらっとこちらを見て、すまん、という者もいたが、自分の言葉には従ってくれた。
段々と近づいてくるDクラス生徒らは驚きの表情を浮かべている。逃げたぞ、という声も聞こえてきた。
残った味方は5人。予め、作戦内容を言い渡されていたメンバーである。内容は至極単純なものだった。
『死んで来い』
「いくぞお前らあああああああああ!!!!!」
「「「「ひゃっはあああああああああああ!!!!!」」」」
多勢に無勢の中、5人は覚悟を決めた目で敵に飛びかかった。
・・・これは余談だが、
「という訳で他の奴らを逃がして死んでくれ」
「断る。誰が好き好んで鉄人の補習受けに行くか」
「「「「そうだそうだ!!!」」」」
「・・・ムッツリーニ、あれを」
「・・・(スッ)」
「「「「「乗った」」」」」
という会話が交わされていたのだが、取引に応じた5人の名前を出すのは、本人の名誉のために控えさせていただく。また、その様子を見ていた秀吉がため息をついていたが、殿方とはそのようなものであると彼女も知ることが出来たであろう(ぇ
まさかの正邪自機に吹きました。ともあれ、例大祭で買う物(全部委託ですが)がまた増えた・・・。
・・・・・・
ドロー!カードをATMにセットし諭吉さんを特殊召k