僕と翔子はFクラス   作:青い隕石

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書き終えて思ったこと
「・・・あれ、今回ほとんど進行していなくね?」

遅れて申し訳ありません、最新話です。


16話:壁に耳あり障子に目あり

 カリカリカリ・・・とペンの動く音が聞こえてくる。

教室の中には代表の雄二、補充試験中の明久、ラグナ、その他数名しかいない。腕組みをしてじっと目を閉じている雄二、真剣な表情で問題用紙と向き合い、回答欄を埋めていく明久、ラグナ。

他の生徒らはくっちゃべっている・・・訳はなく、極力声を落としてヒソヒソと会話をしていた。

本音を言えば静かな空気よりも騒がしい空気の方が好きなのだが、夢のようなAクラスの設備、そのきっかけとなるものがかかっているのだ。そのきっかけを掴むには、詳しいことは聞かされていないが今問題を解いている2人がカギとなることくらいは分かる。その2人にちょっかいでも出そうものなら、代表から物理的なちょっかいが飛んできそうですごく怖い。

そんな状況ではさしものFクラス生徒らも大きな声を出す勇気も無い。騒ぐことが好きとはいえTPOは弁えている。

 

では、Fクラス生徒らは何を話しているか。その答えは彼らの目線の先にあった。

 

 「・・・・・・」

  

 

 補充試験を受けている1人、吉井明久である。

 

 

 彼らは、明久とは親しいわけではない。去年同じクラスだったものは1人いるが、あくまでクラスメートという関係であり、グループ活動の時会話をしたかどうか、という程度である。そのほかの生徒とは接点が無いと言っていい。1年の時の関係を言葉にするとすれば、同学年だろうか。実際、明久は彼らの顔を名前を一致させることができないだろう。

 

 

 しかし、彼らは明久の顔と名前がはっきりと分かる。

 別に明久を恨んでいるわけでは、いや、確かに霧島翔子さんという才色兼備な方と絶賛両想いラブラブ中というのは万死に値する行為であり今すぐ極刑にかけたいのだが決して恨んでいるわけではない。パルパルしたいが。ものすっごく妬ましいが。

 また、明久に恩があって覚えている、という訳でもない。

 

 理由は、彼の肩書にあった。

 

『観察処分者』

 

 文月学園生徒、吉井明久につけられている肩書である。処分、という単語からいい意味ではないことが感じ取れるだろうが、実際、かなり悪いものである。まだ創立から四半世紀も経っていない学園とはいえ、その中でたった一人しか任命されていないと言えばその凄さが伝わるだろうか。

 重さとしては停学より一段階軽い懲罰であり、なった者は定期的な生活指導と学校の雑用を強制的にすることとなる。生活指導は鉄人との面談が主であり、雑用は書類運搬を中心としたものである。

 なにしろ学校初のことであり、明久の名前は悪い意味で有名になった。どんなことをしでかしたのかはプライバシーということで公表されなかったが、秘密としたことでかえって黒い噂が広まったりもした。特別明久と接点が無い生徒が今回の件で彼をどう思ったか、わざわざ言葉で表す必要はないだろう。

 だからこそ、それから2か月後、明久と翔子が交際を始めた、という事実は文月学園中を仰天させた訳だが。

 

 その彼を代表はあたかも切り札のような口調で語っていた。ラグナが切り札なのは分かる。去年から熾烈なトップ10争いをしており、今回の戦争の勝敗を左右する存在だ。

 

 では明久は?

 

 一言で言うなら、『馬鹿』だ。去年、観察処分者になった直後のテストで学年最下位になっていたのを見ており、点数がモノをいう今回では、一番戦力にならない奴だと感じている。

 

 そんなのに何故、代表は補充試験を受けさせているのか。

 そして何故、そいつが霧島翔子さんとお付き合いをしているのか。

 

 橋姫が寄ってきそうな嫉妬と疑問に満ちた空気を出しながら会話を交わすFクラス男子生徒たち。代表、明久、ラグナとは距離を十分に取って話していたため、彼らに聞こえることはなかった。

 

 彼らには。

 

 

 「・・・・・・」

 

 教室の壁にもたれかかるような姿勢をして立っている女子生徒、島田美波。彼らの会話を、ぎゅっと唇を噛み、睨みつけるような表情で、聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「戦死者は補習うぅぅぅ!!」

 

 「「ぎゃあああああああああ!!」」

 

 俵担ぎの体勢で担がれる2人の生徒。2人は何とか逃れようと手足をばたつかせるが、そんな悪あがきが通用するのは一般人が担いでいる場合だ。人間の域を一歩はみ出していそうな鉄人に効果があるはずもなく、絶叫のハモリを響かせながら中央階段へと消えていった。

 残って廊下を埋め尽くしているのはDクラスの生徒だけだ。対戦相手がいなくなったことで召喚フィールドが徐々に薄らいでいき、10秒と経たないうちに完全に消えてしまった。

 

 見て分かる通り、Dクラスの圧勝に終わった。Fクラス5人は最初の内は頑張ったが、須川が集中攻撃を受けて最初に戦死するとその後はあっという間だった。いくら叫んだところで状況が変わるはずもなく、最後は2人同時に倒されて特攻隊は全滅となってしまった。

 焦らずに攻めたことでDクラス側の戦死者は0人。須川を相手した何人かは点数を大きく削られたが、戦死してなければリカバリーはいくらでも効く。懸念していた生徒を倒すことが出来て代表も満足、

 

 

 「・・・何故だ」

 

 ・・・とはいかなかった。

 

 

 

 

 

 「何故、あの場面で下がった?いや、下がらなかった?」

 

 ぽつり、とつぶやく。

 こちらが総力を上げれば相手が下がっていくことは一応、考えてはいた。相手がどんな作戦を立てているのかは分からないが、点数に物を言わせた押上げには敵わないだろうと。

だが、ぶつかる前にほとんどが逃げて行ったのは予想外だった。そして、話に聞いていた点数の高い 生徒が残ったのはさらに予想外だった。

 昔でいう捨て奸(すてがまり)戦法に近いが、100点台後半の生徒はFクラスにとって大変貴重な戦力のはずだ。

 何故、こうもあっさりと戦死させたのか。

 

 悩む平賀、そんな彼の心を知らないクラスメートが話しかける。

 

 「おっし、楽勝だったな!こんな早く決まるんだったら何もじゃんけんしなくて良かったな」

 

 「あ、ああ・・・」

 

 悩みに思考を持って行かれていた所為で、そっけない返事になってしまった。不味かったかと思ったが、幸い相手は気にしていないようだった。なおも明るい声で話しかけてくる。

 

 「教師もFクラスが置いて行ってくれたし、このまま突撃して決めちまおうぜ。早く帰りてぇよ」

 

 何気ないその一言。適当に頷こうとして、

 

 (・・・まてよ)

 

 ぴたっと動きが止まった。

 

 今の戦闘で使われたのは日本史である。Fクラスがいなくなったことで、フィールドを展開していた教師はDクラスが抱えることとなった。このまま突撃して・・・

 

 (それが罠だったら・・・)

 

 嫌な汗が流れた。

 そう、最初は教師0、相手の一人が高得点者と最悪なスタートだった。それが今、『偶然』にも教師を奪い取ることが出来、『何故』か高得点者が無駄死に近い戦死となった。

 うまくいっている。否、うまくいきすぎている。

 高得点者が一人とは限らない。もしかしたら、さらに高い生徒を隠しているかもしれないのだ。そう考えれば、先ほどの戦死者の説明も理由がつく。自分らを油断させるためにはもってこいの人物だからだ。

 なら、日本史は避けるべきだ。

 

 

 「・・・いや、まずは他の教師を確保しよう」

 

 

 皆に聞こえるように出した提案。確実性を求めたそれは、

 

 

 「ええ~なんでだよ」

 

 

 批判でもって受け取られたようだ。さっきの生徒が口をとがらせてくる。表情も芳しいものではない。早く終わらせたいというオーラをかもし出している。他の生徒も口には出さないだけで、同じことを考えている者多そうだ。

 

 

 「えっと・・・まあ、万が一に備えてだ」

 

 

 「万が一って・・・まあ、いいけどさ。なら早く連れてこようぜ」

 

 

 先ほどの考えを話すとなると、多少の時間が必要となる。敢えて明言は避けたが、何とか納得してもらえたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 Dクラスは職員室にいる教師を呼びに行くため、とりあえず中央階段前まで固まって進んだ。

 

 

 そして平賀が指示を出そうと前に出た所で・・・

 

 

 「先生、お願いします!」

 

 

 「承認します」

 

 

 聞き慣れていない教師の声が聞こえた。

 




 
 姫様もっと出したい・・・。でも出せない・・・。
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