僕と翔子はFクラス   作:青い隕石

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Dクラス戦終結。いつも以上に駆け足となっており、読みづらい部分ばかりですが、よろしくお願いします。


20話:チートってレベルじゃねえぞ!

 

 一旦、わずかに教室内まで作用していた半透明のフィールドが消え、すぐに教室全体を覆う大きさのフィールドが展開し直された。

 

 

 「今だ明久!」

 

 

 雄二がそう叫ぶ前に、自分は教室から飛び出した。

 

 

 試験召喚戦争開始時の時点では、全教科0点だったため補充試験を受けなければならず、40分ちょっとの間に一教科の点数を回復させた。選んだ、というより雄二に指定された教科である日本史の補充試験を必死に解いて5分前に先生に提出、つい先ほど採点が終わり点数補充が完了したところだ。

 自分に課せられた作戦自体は至って単純、『点数補充後、日本史のフィールドが展開され次第、思う存分暴れてこい』というものだった。実は試験を受けている間も、

 

 

 (暴れてこいって言われたけど、そうそう簡単に狙った教科が展開されているかなあ)

 

 

 と疑問に思ったりもしたがさすがは雄二、ベストの状態を作ってくれた。

 ここまでお膳立てをしてもらったのだ。やる気が起きないわけがない。自分の採点を担当した教師が何か驚いた表情をしているみたいだったが、そちらに注意を向けることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「この瞬間を待っていたよ!試獣召喚!」

 

 

 叫びながら教室を出ると、島田さんとばっちり目があった。

 

 

 「「あ・・・」」

 

 奇しくも声が被る。ついさっきまで彼女が戦闘をしていたことは聞こえてきた音から分かっていたが、目を合わせると、今までの件もあり、戸惑いが生まれた。

 しかし今は試験召喚戦争中である。個人的な感情をなんとか抑えて、島田さんを守るように前に出た。

 

 

 「し、島田さん!作戦成功したから後は下がって!」

 

 

 「・・・う、うん・・・」

 

 

 背を向けていたため島田さんがどんな表情をしているのかは分からなかった。・・・正確に言えば、これ以上彼女の態度をこの目で見るのが怖かったから、前にでたのかもしれない。

 島田さんは自分の登場に驚きをみせたが、その後の返事とともに気配が遠ざかって行った。戸惑いながらも聞き入れてくれ、教室にもどったみたいである。

 

 

 このまま島田さんとモヤモヤした状態を続けていくのは不味いと思いつつも、目の前のことに集中する。勝敗は自分にかかっているのだ。よそ見して戦死なんて真似をすれば雄二に殺される。いやマジで。

 

 

 廊下を見渡すと、全員の生徒とその召喚獣がこちら側を向いていた。どうやらFクラスは自分一人だけのようである。となると島田さんが最後の一人だったみたいだ。まったく、最後まで女の子を前線に立たせているなんてダメじゃないか雄二。そうゆう役は瑞希が適任だって。今瑞希いないけど。

 

 

 『日本史

  Fクラス 吉井明久 562点』

 

 

 562点。まあ、一時間フルで受けることが出来なかったししょうがない。本音を言えば、この人数相手だったらもう少し点数がほしかったところだ。といっても最初は直接戦うわけではないのだが。

 

 

 

 

 

 「・・・お、おい、なんだよその点数!ふざけてるのか!?」

 「よ、吉井!?なんであの吉井がFクラスなんかにいるんだ!」

 「いや吉井ったら観察処分者の馬鹿だろ!Fクラスにいて当然じゃ・・・」

 「馬鹿はお前だ!吉井だぞ!?首席候補の!」

 「首席!?お前こそ何言ってんだ!」

 

 

 自分を見たDクラス相手がギャーギャーと騒ぎ始める。こちらを見ながら怒鳴る者もいれば、クラスメートの言葉に反応して、後ろを振り向いて声を挙げる者もいる。僕自身についての内容のようだが、意見が食い違っているようだ。自分の召喚獣をフィールドに出しているにも関わらず相手から目を離すなんてと思ったが、自分にとってはありがたい行動のため、わざわざ注意する必要はない。

 

 

 手加減はしない。一気に決める。

 

 

 深呼吸をした後、自分の利き手である左手を見た。そこには、フィールド内に入るまでは存在しなかった、黒と紫の色が混じった、毒々しい腕輪が手首に嵌っていた。

 

 

 それは高得点者の証にして、一つで試験召喚戦争のパワーバランスと一変させる希望の、相手から見れば絶望の道具である。

 

 

 「さあ、『潰れろ』!」

 

 

 腕輪を相手に見せるようにして起動する。自分の声を聞き、喧騒の中でもじっとこちらを警戒していた何人かが、召喚獣を動かそうとした。

 

 

 

 

 

 

 だが、動かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 指示ミスをしたのかと思ったらしい。Dクラスの生徒らはしっかりと召喚獣を見て動かそうとし、異変に気付いた。

 

 

 召喚獣たちが、地面に倒れていた。

 

 

 いくら動かそうとしても、召喚獣は動かない。

 

 

 手を付き、必死に起き上がろうとしても、体が地面から浮かない。

 

 

 まるで、糊で貼られたように。まるで、『重力に押しつぶされるかのように』。

 

 

 数人単位ではない。明久を囲うようにしていたDクラス召喚獣のほとんどが地面に倒れていた。

 

 

 そして10秒後、廊下を埋め尽くさんばかりだった召喚獣は

 

 

 

 

 

 

 ぺしゃんこになって消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『日本史

  Fクラス 吉井明久  237点

        VS

  Dクラス 平均136点×4人

  Dクラス 0点(戦死)38人 』

 

 

 

 

 喧騒にまみれた廊下に再び静寂が訪れた。

 

 

 腕輪の効果は聞いていたし、観察処分者という身分柄、ほかの生徒より召喚獣のことについて詳しいと自負している。それでも言わせてもらおう。

 

 

 「・・・チートすぎるっしょ、これ・・・」

 

 

 いや、強力だっては聞いていたけどここまでだとは思わなかった。なんだろう、爽快さを通り越して寒気がする。廊下にいたのが自分だけで本当に良かった。もし、ほかのクラスメートがいたらもれなくFF(フレンドリーファイア)して、リアルファイトが始まっていただろう。

 予定としては腕輪の能力で4~5人くらいを戦死させ、Dクラスの戦意を削いでから突撃する作戦をとっていたのだが、その必要もなくなったみたいだ。

 

 

 それと同時に、納得もできた。自分たちより前の世代に行われた試験召喚戦争では、Aクラスが下位クラスに負けることは一度もなかったという。こんな能力を持っている腕輪を持っている生徒が何人も、下手すれば10人以上いる可能性があるクラスなのだ。そりゃあ下剋上なんて起きないはずである。・・・と目の前の惨状を見ないようにしながら、考えていた。

 

 

 さて、Dクラス生徒はみんなぽかーんとしている。影響を与えた自分でも軽い放心状態となったのだ。影響を与えられた方が平常心を保っていられるはずがない。

 戦死を受け入れられず何度も試獣召喚と言っている生徒、力が抜けへたり込んでいる生徒、魔王を見るような目で自分を見ている生徒と様々である。

 共通しているのは、全員戦死しているとことか。

 

 

 「・・・・・・あ、ああ・・・」

 

 

 少し遠くから、うめくような声が聞こえてきた。

 初めから後方にいたのだろう。自分が発動させた腕輪の効果範囲外にいた4人、そのうちの一人の言葉だった。

 

 

 面識はないが、このような戦闘中に後ろで待機している人物、となれば限られてくる。

 ゆっくりと4人の方向に歩いていく。4人は元々フィールドの端付近に待機していたため、動くことが出来なかった。

 4人の顔は、一様にひきつっている。

 

 

 「どうも、君たちの内誰が代表かは分からないけど・・・まだ勝負する?」

 

 

 

 一応は提案のような口調で言ったつもりだったが、相手には全く別の意味で聞こえたかもしれない。

 4人全員がこれでもかというくらい、首をふっていたからね。

 

 

 

 

 

 こうして、自分の一撃が原因となって、Fクラスの勝利が決まった。

 




~明久の腕輪~
『重力』を武器とする腕輪。元ネタは金色のガッシュべルに出てくる、ブラゴの技から。今のところ、想定している効果は二種類。

・「グラビレイ、グラビドン」系統
今回、明久が使った能力。点数を消費してフィールド内の召喚獣に重力をかける。相手より自分の点数が高ければ高いほど効果があり、相手を押しつぶすことも可能。

・「ボルツ・グラビレイ」系統
重力場を発生させる能力。相手を重力場に引き寄せたり、自分が重力場に向かって飛ぶことで疑似的な加速を発生させることができる。


 いずれも相手が自分の点数と同じかそれ以上でいればあるほど効果が薄くなるため、強敵との1対1という状況ではあまり役に立たない腕輪である。逆に言えば、自分より点数の低い相手には滅法強い腕輪であるといえる。
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