僕と翔子はFクラス   作:青い隕石

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 アンチ要素を巧みに描写できる方々が羨ましいです。映画やドラマでは、悪役に一番演技がうまい人を当てると聞いていますが、納得です。アンチや悪役の描写が本当に難しい(汗)。人の負の感情の表現をもっと学んでいきたいですね。

それ以外の表現もダメダメじゃね?っていうツッコミは無しの方向でお願いします<m(__)m>
 
  


2話:自己紹介は大抵時間通りには終わらない

 「えー、ではこれからHRを始めます。私がFクラス担任の福原です。今年一年よろしくお願いします」

 

 

 なにかと締まりのない声が教卓上から響いてきた。眼鏡をかけ、いかにも真面目そうな姿にもかかわらず、厳しさオーラを感じない。よく言えば親しみやすい、悪く言えばなめられそうな人物だった。

 

 

 てっきり、最低クラスには鉄人や高橋女史(2年クラスの学年主任も兼任している)といった厳しい教師が担任をすると思ったが、違ったようである。

 

 

 「皆さんにはちゃぶ台、座布団が支給されているはずです。Fクラスでは、それ以外の物は原則自分たちで調達することになっています。ただし、最初に渡した用紙に記載されている物は、抜き打ち検査の時に即没収の対象となりますので、注意してください。今までのことで何か質問はありますか?」 

 「先生、エロ本はここに書いていないんですが、持ってきていいんですか?」

 「記載されていない物に関しての判定は、検査を実施する教員に一任されます」

 「おおおおおお!で、その先生とは誰ですか!?」

 「西村教員です」

 「「「「「馬鹿なああああああああああああああああああ!!!!!」」」」」

 

 

 Fクラスに紳士たちの雄叫びが響き渡った。文月学園の守護者である鉄人直々の検査ともなれば勉強関連以外の物の没収は確定的に明らか。鉄人の怒りが有頂天となり、憐れ聖典(エロ本)は裏世界でひっそりと幕を閉じることとなる。

 

 

 密かに自分も悔しく感じたことは、翔子には絶対に知られてはいけない秘密である。

 

 

 「はいはい、静かにしてください。そろそろ自己紹介をしましょう。廊下側の人からどうぞ」

 

 

 

 残酷な宣告後、結構な時間をおいて喧噪が収まり、自己紹介が始まった。

 

 

 

 

 

 

 HR20分前、ようやく正気に戻った明久はとりあえず真ん中の一番後ろの席に陣取った(翔子はその隣)。その後、人がいないのをいいことに自分と翔子の座布団とちゃぶ台を、よりマトモそうなものと取り替えた。そこ、卑怯とか言わないで。

 

  

 HR5分前、足音が近づいてきた。ようやく他の生徒も来たか、とドアのほうを見ると、「おはようございます。おや、まだ二人だけですか」と言いながら眼鏡のおじさん(福原先生)が入ってきて、黒板の周辺を確認し始めた。

 挨拶を返し、じっとその行動を見守っていると、眼鏡のおじさんは何かを手に取り、安心したのかほっと息を吐いていた。目を凝らすとそれが短いチョークであることが見て取れた。

 なんでチョークをもって安心しているんだろう?と考えた。のちにチョークすら不足していることを知ることになるのだが、それは別の話である。

 

 

 結局生徒は2,3分前になってからどたどたと教室に入ってきた。が、一気に大勢来たためか、知り合いがいるかどうか確認することができなかった。まあ、自己紹介で確認すればいいだけの話だ。

 

 

 

 

 

 その自己紹介が始まり、一人目が立った。・・・あれ?あの髪型って・・・

 

 

 「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。皆の者、これからよろしく頼むぞ」

 「秀吉、秀吉じゃないか!」

 「ん?・・・あ、明久!?」

  

 

 見たことのある後姿がくるっと周り、秀吉が驚愕の表情と共にこちらを見た。

 

 

 「な、なぜおぬしがこのクラスにいるのじゃ!?」

 「・・・え?もしかして、僕と同じクラスになるの嫌だったの・・・?」

 「だ、誰もそんなこと言うておらんに!」

 「そんな・・・ずっと親友だと思ってたのに・・・ウウッ・・・」

 「・・・秀吉、許さない」

 「き、霧島!?おぬしも何故・・・い、いや、さっきのは誤解じゃ!そういう意味ではなく・・・」

 「はいはい、私語は自己紹介を済ませてからにしてくださいね」

 「はーい、すみませんでした。茶番に付き合ってくれてありがとうね秀吉」

 「へ?」

 

 

 

 先生に注意されたため、泣き真似を止めた。秀吉はポカンとしたが、僕の言葉の意味を理解すると一つため息をつき、席に着いた。

 

 

 今の人物は羽b・・・豊t・・・木下秀吉、一年次からの親友である。特徴としてはしゃべり方とその容姿があげられる。

 

 

 さっきのジジくさいしゃべり方は一年前と何にも変わっていない。いや、僕が秀吉を知った時には件の口調だったため、少なくとも一年以上は変わっていないと言ったほうがいいかもしれない。大河ドラマや時代劇が好きだとは言っていなかったが、それらから何か影響を受けていることは確かだろう。  

 

 

 もう一つ、容姿の件についてだが・・・

 

 

 

 

 「美少女」だ。

 

 

 

 いや、秀吉って名前だから男子だろ。・・・って思う人よ、確かに秀吉はれっきとした男だ。だが、顔を見たらもう一度その台詞は言えないだろう。

 例えるなら可愛さに性格補正+努力値極振りした130族(翔子はツボツボもびっくりの250族)だろうか。

 セミロング+オカッパ(?)のような髪型も彼の魅力を増大させているといっていい。

 

 

 あと、去年初対面の秀吉と会話をして、30分弱のうちに恋と失恋を経験した事実は墓まで持っていこうと決めている。女と勘違いしたっていいじゃないか、人間だもの。

 

 

 

 「はい、木下さんありがとうございます」

 「せ、先生。できればさんではなく君を付けて欲しいのじゃが・・・」

 「それでは次の人お願いします」

 

 

 最後に秀吉が何か言っていたようだが気にしない。さっさと、その後ろに座る人物に目を移した。

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 「・・・次の人?」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・」

 「いや、カメラいじってないで自己紹介をしてください」

 「・・・(スクッ)・・・土屋康太・・・(スチャ)・・・」

 「・・・・・・そ、それだけですか?」

 「・・・・・・(コクッ)・・・」

 「そ、そうですか。」

 

 

 で、では次の人、と言う先生の声を聞きながら、未だにカメラをいじっている人物を見つめた。随分とひどい自己紹介だったが、あれが彼のデフォだ。秀吉同様短くない付き合いなので、それくらいは理解できる。

 

 

 土屋康太、彼には随分とお世話になっている。自分よりも小柄だが、毎日体を鍛えているようで、身体能力では全く敵わない。部活に所属していないにも関わらず体力テストで学年トップクラスと言えばその凄さが伝わるだろうか?加えてカメラ(デジタルや使い捨てでなく本格的な一眼レフカメラ)の扱いにも長けている。この二つを使い、あることをしているのだが・・・

 

 

・・・・・・本人の名誉のために伏せておく。今はクラスメートの顔と名前を一致させる時間だ。

 

 

 

 

 

 「・・・です。よろしく」

 「はい、次の人お願いします」

 

 

 自己紹介が始まって、約10分。全体の3分の1ほどが終わっただろうか。康太以降は名前と顔が一致しない人(要するに初見)ばかりで、記憶の作業に時間の大半を取られた。

 このまま自分まで来るかと思ったが、そうはいかなかった。席を立った人物に見覚えがあった、いやありすぎた。

 

 

 「島田美波です。趣味は・・・特にありません。よろしくお願いします」

 「あ・・・し、島田さん・・・」

 

 

 長髪をポニーテールでまとめた女子・・・、島田美波は僕のつぶやいた声に反応し、ちらっとこちらを見た。

 が、文字通り一瞬で向き直り座布団に座った。

 

 

 彼女、島田美波とは間違いなく友達であった。今も、「あいつとはどんな関係だ?」と質問されたら迷いなく「友達だ」と答えるだろう。

 が、島田さんに同じ質問をしたらどんな答えが出るか分からない。

 1年の前学期、知り合った頃は毎日のように話しかけられた。中学校まで外国育ちの彼女は日本語一つ話すにも四苦八苦していたが、身振り手振りで補いながら全身で言葉を表現していた。僕自身、島田さんとの会話は楽しかった。

 それが、半年前から少なくなっていった。話を振られる回数が徐々に、しかし確実に減っていったのだ。喧嘩といった原因があれば話が早いのだが、それもなかった。

 冬休みが明けてからは両手で数え足りるほどにまで減った。それも大半はこちらから話しかけたものだ。いずれも会話は長く続かなかった。

 

 

 「島田さん、その・・・僕、何か悪いこといちゃった、かな?」

 

 

 

 雪が降り積もる2月、思い切って言葉をぶつけた。もし自分に原因があるなら最悪な質問の仕方だが、他の言い方が思い浮かばなかった。

 

 

 「あ・・・ううん、違うの・・・。ごめんね、これはウチの所為なの・・・ごめん」

 

 

 島田さんは今まで聞いたことがないような小声でつぶやくと、すぐにその場を去った。後を追うことはとても出来なかった。

 

 

 

 それ以来は会話を交わせず、現在に至る。話しかけるとき、顔を顰められたりはされていないため、嫌われた訳では無いと思う、いや、思いたい。

 正直、会話がなくなって心の中に小さな穴が開いた気がする。まだ一年足らずだが、彼女との会話は間違いなく、自分の学校生活の一部になっていたのだ。だが・・・

 

 

 (さっきの反応見る限り嫌っているのかなぁ、僕のこと・・・。)

 

 

 

 笑顔を返されれば違う結論に辿りついたかもしれないが、どんどん悪いほうに考えが言ってしまう。  

 機会を見てもう一度話しかけよう、と考えがまとまるころには自己紹介の順番がすぐ目の前まで迫ってきていた。

 

    

 

 




 
 
 
 

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