僕と翔子はFクラス   作:青い隕石

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遅れてしまい、申し訳ございません。第6話になります。よろしくお願いします。


※予想以上に投稿が遅れたことと、艦これで金剛さんが轟沈し、2~3日間書く気力をなくしたことは何の関係もありません。ありませんったらありません。


5話:軍隊では先にムチ、後にアメらしい

 

 「では、最後に代表の坂本君、こちらで一言お願いします」

 「ああ」

 

 

 先生の言葉に反応した男子がゆっくりと教卓に向かって歩いて行った。代表、という言葉に反応したのか、まばらだった視線が一人の人物に集中する。

 

 

 

 坂本こと、坂本雄二。今までたくさんの友人が出てきたが、付き合いの長さでいえば誰よりも、それこそ翔子よりも長いと断言できる人物だ。

 おしゃべりが終わり、何気なく部屋を見渡した時に視界に入ったのだが、少し意外な気がした。去年の雄二の実力を見る限り上位クラスは無理でも、Dクラスくらいになら入れる力があったはずだ。

 話しかけようとしたが、なにかぶつぶつ呟いていたため口を半開きにした所で言葉を飲み込んだ。試験に失敗したことを嘆いているのか・・・。いや、違う。雄二はそんなことでは悩まない。過去のことを引きずるくらいなら、そこら辺に捨てて前に行くタイプのはずである。それ以前に、試験という重要な場所でミスをする人物ではない。

 だとすると・・・

 

 

 

 (絶対何か企んでいるな)

 

 

 この結論に達するまでそう時間はかからなかった。

 

 

 (翔子、どう思う?)

 (・・・雄二の自己紹介が、何もなしで終わることはなさそう)

 (だよね)

 

 

 翔子も雄二とは結構な付き合いだ。その翔子も予想しているあたり、無事には終わらなそうである。

 

 

 (面倒くさいことじゃなければいいけどなー・・・まあ、無理か)

 

 

 「坂本雄二だ。Fクラスの代表を務めることとなった」

 

 

 そんなことを考えているうちに、雄二が教卓に立ち、口を開いた。赤に近い茶髪、高い身長からは活発なイメージを連想させる。が、実の所自分に負けず劣らず面倒くさがり屋だ。常時炬燵に入っているかのような行動範囲の狭さを持っている。が、動くときは動くため体は鍛えられているという。理不尽だ。

 

 

 「俺もほとんどの奴とは初対面だが、坂本でも代表でも好きなように呼んでくれ」

 

 

 ・・・ほう、好きなように呼んでいいのか。なら、ここは一つ。

 

 

 「よろしくね、ゴリr」

 

 

 ドコォ!!

 

 

 受けを狙って口に出した言葉を言い切る前に凄まじい風圧が頬をかすめていった。数峻遅れてけたたましい音がした。

 ギギギギギ、と壊れたブリキのおもちゃのように後ろを振り返ると、シャーペンが煙を出しながら壁の奥深くまで突き刺さっていた。めり込んだ状態になっており、奇跡の救出劇は到底無理そうであった。

 

 

 「久しぶりだな、明久。前に借りたシャーペン、返すの遅くなっちまった。すまねえな」

 「そ、そう・・・。中々ダイナミックな返却方法だったね。でも、あの有様じゃあもう使えない、というより取り出せない気が・・・」

 「そうか、ならこの新品のシャーペンを」

 「あ、結構です」

 

 

 再びシャーペンを構えた雄二を見て慌てて手を振った。誰が好き好んで二度もダーツも的になるものか。まっぴらごめんである。ダーツが許されるのはゲームセンター、バー、所○ョージさんだけでいい。

 

 

 「さ、あのバカはほっといて、皆に質問がある。この教室を見てくれ」

 

 

 バカゆうな、と言いたいのをこらえて、雄二の言葉に従った。言い争ったところでかなわないのは分かってるし、シャーペン以上の凶器が飛んでこないとも限らない。

・・・残念ながら見渡したところで、初めて見たときと感想は変わらなかったが。

 古びた設備、というだけなら別にかまわないが、古い=汚いと方程式が成り立っているのがまずい。この教室そのものが不衛生なため換気をしても意味が無く、常にどんよりとした空気を感じる。ここで学校生活となると、体が丈夫でない人はすぐに参ってしまうだろう。

 

 

 「皆、来る前にAクラスの設備は見てきたんじゃあないのか?個人エアコンにリクライニングシート、食べ放題に飲み放題・・・不満か?」

 「「「「「あたりまえじゃあああああ!!!」」」」」

 

 

 Fクラスが爆発した。そういっても大げさではない喚声が上がった。あまりの大きさにとっさに耳を塞いだが、キーンと耳鳴りがした。

 

 

 「同じ学年、同じ学費だろ!?なんなんだよこの差は!」

 「理不尽すぎる!クラス替えを要請する!」

 「「「「「そうだそうだ!!」」」」」

 

 

 

出るわ出るわ、湯水の如く苦情が出てくる。もう少しボリュームを押さえてほしかったが、クラスの殆どが騒いでいる状況では何を言っても聞こえないだろう。おうふ・・・まだ耳鳴りがする。

クレームに参加していないのは秀吉、康太、島田さん、ラグナ、瑞希、翔子、あとは・・・須川君だっけ?あの人。それくらいしかいなかった。

 秀吉や瑞希は皆を止めようとあたふたいているけど、効果はないみたいだ。このような場合は時間の経過か鉄人の召喚しか手がないのだが、そういったところで2人は聞き入れずに仲裁に入るはずだ。性分というやつだろう。得か損かは置いといて。

 翔子や島田さん、須川君はじっとしているし、ラグナはニヤニヤしながら事の成り行きを見守っている。人生楽しそうでなによりだ。

 ああ、康太。いい加減カメラのメンテ終わらせようか。

 

 

 

 

 「・・・なるほど、分かった。お前らの意見はよーく分かった。」

 

 

 そんな折、不意に発した雄二の一言。そんなに大きな声ではなかったが、不思議と、クラスのざわめきが小さくなっていった。なるほど、皆騒いでいたが、声を上げながらも雄二の、クラス代表の動きに注目していたのだろう。

 

 

 

 

 「そんなお前らに、俺からの言葉がある。」

 

 

 そういうと、彼は一つ、息を吸い込んだ。

 

 

さっきも言ったが雄二のことだ、平凡な自己紹介で終わらないとは感じた。現に、FクラスとAクラスの差を皆に意識させ、苦情を誘発させた。そこに何の意味があるのかをこれから解き明かしていくはずだ。ここで、「では自己紹介を終わります」なんて後腐れ満載なことはしない。

・・・とか何とか考えていたが、その予想は大方、外れることになった。雄二の考えは、思った以上に過激だったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負け犬共が、わめくな」

 

 

 

 

 

教室に、鈍い声音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ガタッ!!!!』

 

 

 誰かが立ち上がる音が聞こえた。教室の後ろだ。ピンクの髪を伸ばした女子・・・姫路がこちらに突っ込んで来ようとしたのを、明久が両肩を押さえて止めていた。姫路はそれでももがきながら前に来ようとしていたが、力の差がずいぶん離れていたようで、気持ちは前でも足は一歩も進まなかった。

 明久が姫路を押さえながらこっちを見た。苦笑いの表情だった。やるなら先に教えてくれ、とでも言いたそうだな。悪い、ラグナほどじゃねーが俺も寝坊して余裕がなかったんだ。目覚まし時計が悪いんだ。目覚ましが。

 もう少し姫路を頼む、とアイコンタクトして教室全体を見渡した。ポカンとしていた奴らも、徐々に俺の言葉が脳に染み込んできたみたいだ。何人かが、口をわなわなと震わせた。

 

 

・・・もう一言、これでどうだ。

 

 

「いいか、お前らがFクラスになったのは当然の結果だ。分相応って言葉を知っているか?お前らの努力の量がこの結果だ。自業自得なんだよ」

 

 

一気に話し、一息ついてクラスを見渡した。

 

 

 

 

 

・・・なるほどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・これなら期待できそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「み―ずき、ほら、落ち着いて」

 

 

 周りに聞こえないような小声で、未だ暴れる瑞希に囁く。瑞希は一度は収まったのだが、続いた雄二の暴言を聞き、再び突進をしようとしていた。

 

 

 「あ、明久君は・・・何とも思わないんですかっ・・・」

 

 

 肩を押さえられながらもこちらを向き、小声で、しかし、しっかり響く声をぶつけてきた。

 

 

 「あの言い方は酷いですっ。クラスメートへの暴言にしか聞こえません!」

 「ああ、それは・・・」

 「それに・・・明久君がここにいるのを坂本君は知っているはずですっ。それを努力の量だなんて・・・明久君への冒涜です!」

 

 

 涙を浮かべながら喋る瑞希を見て、はぁーっと息を吐く。そういえば瑞希と雄二は僕を基準にした、友達の友達みたいな関係だった。雄二の言葉を鵜呑みにしてしまっても無理はない。

 

 

 「瑞希、僕と雄二が何年親友やってると思ってるの?あれが本心じゃないことくらい分かるって。それに、周りを見てみて」

 「周りを見てって・・・・・・・・・・・え?」

 

 

 

 

 あれだけのことをいったのだ。誰かが坂本君に詰め寄っているだろう・・・瑞希はそんなことを考えて見たはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クラスメートの殆どはバツが悪そうな顔で雄二から視線を外していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 分相応に自業自得。言われてみればこれほどFクラスを象徴する言葉はない。振り分け試験が行われた時期は1年次の学年末であり、入学から10か月も先のテストだった。試験の存在は入学時に学園長から言われている。勉強する時間は十分すぎるほどにあった。

 

確かに、1年頑張っただけでは、幼少のころから勉学に励んだ者より優秀になれないかもしれない。が、時間は平等に与えられていた。頂上は無理でも、途中まで上る余裕はあった。Aクラスは無理でも中堅クラスに入るチャンスはあったのだ。

 

 その時間をどのように使うかは本人の自由であり、権利だ。そして、それに伴う結果を受け止めることが義務だ。

 

 何てことはない。山の頂上にあこがれるだけで一歩も登ろうとしなかった、登らなかった選択をしたのはFクラスの生徒たちだ。

 

 

 

 今更ながらにそのことに気付いたのだろう。誰も坂本雄二に反論しようとはしなかった、いや出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「学園長も言っていたな。努力した人間としていない人間がうんたらかんたらってな。じゃあ、もう一度聞こう。お前ら、今の設備に不満か?」

 

 

 

 誰も首を横に振らなかった。えらい違いだ。さっきはあんなに文句を言いながら・・・とは感じたが、嫌な感情は湧いてこなかった。

 むしろ、逆である。しいていうなら期待か。思い描いていた絵を寸分違わずに書けている。むしろ期待以上だ。明久がFクラスだったのは嬉しい誤算だ。あいつは面倒くさがりだが、・・・・・・・・・・・・まあ、ゲームで釣るか、うん。翔子も明久についてくるだろう。姫路は印象を悪くさせちまったか。第一印象は重要だっていうのにな。明久経由で一度話したほうがいいな。

 ラグナは・・・正直じっくりと話してみたい。さっきの出来事の最中、他の連中が騒いでいる中でずっと不敵に笑っていた。俺が暴言を吐いた後もそれは変わらなかった。明久と知り合いみてーだからこれも明久経由か。・・・バカ久のことだ、ゲームもう一本貸せば丸め込めるだろう。うん。

 

 

(先生、まだ時間は来てませんよね)

(あ、はい。まだまだ余裕はありますね)

 

 

小声での返答にニンマリと微笑む。あらかじめ自己紹介の他にしたいことがあるといっておいたおかげで、たっぷりと時間を貰っている。そうじゃなければ、こんな悠長に構えていることなどできない。

ま、俺の言葉について何か説教が来ることは覚悟していたが・・・終わってから呼び出しを食らうかもしれないが、それならいい。重要なのは今だ。

 

 

さて、ここからがもうひと山だな。

 

 

 

「そんなお前らに一つ、提案がある」

 

 

 

低く作ったさっきとは違い、自然体である高さの声を発した。うつむいていた何人かが違いに気づき、顔を上げる。それでも大半は俺と顔を合せなかったが。

が、別にかまわない。どうせ次の台詞で否応なしに合わせることになるのだから。再び喧噪が起きるのだから。

 

 

 

今日の晩御飯は何にしますか?・・・そんな軽い口調で提案してみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Aクラスに試験召喚戦争を仕掛けてみないか?」

 




次あたりに登場人物紹介を書く予定です。
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