これほど雄二の発言に振り回される日も珍しい。頬杖をつきながら、そんなことが頭に浮かぶ。
やっと落ち着いた瑞希を座らせてから、我らが代表の説教に耳を傾けていたのだが、あいつはFクラスにこれでもかというほど立場を自覚させたすぐ後に、試召戦争の提案をしてきた。しかも相手は、先ほどまで話題の中心だったAクラスである。
あれだけAとFの差を説いていきながら・・・AとFか、うん、随分大きさがちgいやそうじゃなくて、説いておきながら挑もうというのだ。発言したのが雄二じゃなかったらその人の頭を心配する自信がある。
試召戦争・・・正式名称を試験召喚戦争というが、実際の、国と国とが行うような戦争のことではない。文月学園に存在する、クラス間同士の戦闘のことを指す言葉である。
このシステム・・・ルールかな?まあ、ざっくばらんに言えば、他のクラスとあるシステムを使って勝負を行い、勝利できればクラス設備の交換ができるのだ。もしAクラスに勝つことが出来れば、築うん百年のオンボロ教室から一転、貴族さながらの充実したスクールライフを送ることが出来るのだ。
なんだ、じゃあ振り分け試験のクラス替えなんてあんまり意味ないじゃん。って思ったそこのあなた、そんなに世の中は甘くないわけで・・・この試召戦争で武器となるものは、『自分の成績』である。言うまでもないが、成績が良ければ良いほど有利である。
さて、成績が一番いいクラスはどこだろうか。もちろん、Aクラスだ。
では、成績が一番悪いクラスはどこだろうか。もちろん、Fクラスだ。
少年よ、これが絶望だ。過去に行われた試召戦争は少なくないが、大半は防衛側(試召戦争の宣告を受けた側)の勝利に終わっている。侵攻側が勝利した戦争もあるが、自分より1つだけ上のクラスに挑んだものばかりだ。FクラスがAクラスに勝つこと、いや、挑むこと自体が前代未聞なのだ。
「な、なに言ってんだ、代表・・・」
再三どころでは済まない雄二のぶっ飛び発言に、ついに声が上がった。最前列の生徒だ。声の主は最初の雄二の説教が効いているのか、言葉を選ぶような口調だった。
「ん?どうした?」
「・・・いや、どうしたもなにも、話が全く分からないんだが・・・」
「Fクラスは馬鹿ばっか→Aクラスは賢い→Aクラスにのりこめー^^ってことだ。簡単だろ?」
それで理解できるのはあなただけだと思います。
「それにだな、AとFは差があるとは言ったが・・・適わないなんて一言も言ってないぞ?」
「へ?」
「お前ら、このクラスに誰がいると思ってるんだ?」
雄二が教室の奥・・・僕らのほうに視線を向ける。つられるように他のクラスメートがこっちを見てきて・・・急に顔が明るくなった。露骨すぎる。
「そうだ!俺たちの頭上には希望の星が輝いている!!」
「こんなに天才がいるんだ!Aクラスも夢じゃない!!」
「そんなことより姫路さんと霧島さん!お付き合いを前提としたお付き合いをさせていただけませんか!?」
いや、頭上には天井のシミしかないんだけど・・・それと最後の奴、月が出ていない夜には気を付けろよ。
「翔子らの成績を知らない奴はいないだろう。この学園の中で、これ以上の成績を持つ者はそう何人もいないはずだ。俺たちは最底辺でありながら、最強の武器を持っている訳だ。」
おおおおお!!、と野太い歓声が上がった。さっきまでの気まずい雰囲気はどこへやら、クラスに熱気が生まれてきた。「勝った!来週からはAクラスだ!」と叫んでいる者もいる。
・・・ちょっと早すぎないか?確かに翔子たちの点数は高いけど・・・肝心の人数は数人しかいない。確かにAクラスの大半の人には負けないだろうが、あっちは50人いるのだ。次々に来られたらアマネの珠波衣羅盧(スパイラル)のようにどんどん削られて負ける未来しか見えない。
雄二に言ったほうがいいのかな?でも、この雰囲気の中でネガティブ発言してまた空気を悪くしたら、どんなあだ名がつくか分かったもんじゃない。冗談抜きにしても盛り上がっているこの雰囲気に水を差すようなことはしたくないs
「代表、言っちゃあ悪いが、その数人だけじゃ、どうやってもAクラスには勝てない気がするぞ」
「須川くーーーーーん!空気読んでえぇぇぇ!」
単刀直入にバッサリと質問した須川君。いや、正論だよ。その指摘はたぶん間違っていないよ。でも、時と場所を考慮したほうがいいと思うんだ。せっかく、クラスのみんながやる気を出してきた所じゃないか!
ほら、雄二だって今の発言でちょっと待って雄二。何でにやけているわけ?なんで笑っているわけ?なんでちっとも動揺していないわけ?もっとなんかアクションあってもいいよね?まさか、今の須川君の発言も予想の範疇とかそんな感じですか?いくらなんでもそれは・・・
「その質問、待っていたぜ」
今の僕には理解できない。さとりの能力が心から欲しい。
「さてみんな、須川だったっけ?そいつの言うとおり、今のままでは勝つことが難しい。戦力が数人だけじゃ、人海戦術で押し切られるからな」
のんびりとした口調で雄二は喋っていく。何気に今の発言は酷いものだったが、反論するものは誰もいない。
「そこで重要となってくる人物を上げよう」
一旦言葉を切ると、雄二は手を大きく広げた。その姿は、太陽の光を全身に浴びる格好と言えばいいか?いや、『welcome』という言葉を表す格好、といったほうがいいかもしれない。
クラスメートの注目を集めつつ、その姿勢のままで雄二は言った。
「お前ら全員だ。俺も含めて、文字通り、50人全員だ。」
かくして、Fクラス代表の演説は、終盤を迎えた。
須川亮
所属・・・2年Fクラス
趣味・・・ゲーム
得意科目・・・日本史
苦手科目・・・科学
モブキャラに近いのに、アニメでは専用グラフィックをもらったすごい人。発言には正論が多いが、どこでも関係なくいうことが玉に瑕(きず)。日本史が若干点数がいい。