雨が止むまで   作:シャール

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これを開いてくれたあなたに最大級の感謝を、そしてこの作品があなたに楽しんでもらえるものでありますように

一月近く経ってから大幅に文章が抜けてたのに今更気づいて修正しました(遅い)
今後もこういうのがあるかもしれないので、気づいた方は教えてくれると嬉しいです


一日目

「ハァ、雨が降るのは夜中からじゃなかったのかよ」

 

俺は今大学の敷地内のコンビニに来ている

理由はこの豪雨だ、天気予報では23時以降と言っていたのだが今は19時

天気予報も100%ではないとはいえこれは流石に文句の一つも言いたくなる

愚痴っていても雨は止まないのでビニール傘を買って大学のキャンパスを後にする

 

「・・・・・そりゃいきなりこの雨ならみんなバスで帰ろうとするよ」

 

バス停には多くの人が集まっていた、いきなり降り始めたから傘を持ってない人が多かったのだろう。もしくは歩いて帰りたくないのか

──────────────十中八九後者だろうな

俺の家はバスで30分ほどの場所にある、歩くなら1時間ほどかかるのだが

ここで待っていてもそれ以上待ちそうなのは一目瞭然、ならば

 

「しょうがない、歩いて帰るか」

 

俺はバス停を背に家へと歩き始めた

 

 

 

傘をさしているせいかいつもより歩くのが遅くなって、1時間ほど歩いたがまだ家までは少しある

心の中で突然の雨に文句を言いつつ歩いていくと。家の近くの神社への石段が見えてきた

やっとここまで来たかと思うと同時に石段の場所に何かあるように見える

────────────あれは・・・・・人か?

少し近づいたところで確信を持つ

見たところ女の子のようだ、体育座りして膝に顔を埋めているため細かくは分からないが中学生ぐらいだろうか

黒髪を肩ぐらいまで伸ばしていて、白いワンピースを着ている

梅雨のまだ温度が上がりきってないこの時期、それにこの雨の中ではワンピースだけなのは流石に寒そうだ

それにこんな時間に女の子が一人でいるなんて不用心なことだが・・・・・

声をかける義理もない

そう思い声をかけることなく通り過ぎる

 

少し歩いてから振り返ってみるとあの子はまだあそこに座ったまま

──────────なぜだろう、街灯に照らされたあの子がとても儚げに見える。放っておくとそのまま街灯の光に溶けて消えてしまいそうなほど

あの子をあのまま置いて行ってはいけないと俺の勘が告げてくる。俺の勘はこういう時無駄に当たるのだが・・・・・

俺は大きくため息をつくと進路を変える

来た道を引き返すと少女の前に立って傘を差し出しながら

 

「お前、大丈夫か?」

 

声をかけると少女はゆっくりと顔を上げこちらを見る

彼女の黒い瞳はこちらを見ているようで、何も写してはいないのではないかと思わせるほど黒々としていた

 

「こんな時間に一人で雨の中にいるなんて、迷子か? それとも家出か?」

 

家出というフレーズのところで少女は曖昧に頷く

 

「なるほどな。でももう夜になるし、こんな時間に女の子が一人でいたら危ないだろ? 家まで送ってやるけど、案内できるか?」

 

だが少女は家という言葉を聞くとビクッと反応した後、怯えるように縮こまったあと震えだす

その反応を見た俺は先ほどの彼女の家出に対する曖昧な回答の意味にうっすらと当たりがつく

 

「・・・・・・家にいられない理由でもあるのか」

 

その問いに少女は弱々しく頷く。なるほど、どうやらこの子は家であまりいい待遇を受けてはいないようだ

最悪のパターンだと虐待、なんてこともあり得るだろう。どうすべきか決めかねた俺は深く考えずに、思ったことをそのまま口に出していた

 

「─────────────家に帰りたくないなら、俺の家に来るか」

 

その言葉に彼女は驚いたようにこちらを見る

正直俺も何故こんなことを言ったのか自分の行動が不思議だが、言ってしまったからには責任を持たねば

 

「あー、家には帰りたくないんだろ、俺もお前のことを今すぐ親のところに返そうとかは考えてないんだよ。でもだからといってお前をこんな雨の中置いてくことはさすがにできない。

だから、雨が止むまで。

その間だけでも俺の家に来ればいい。・・・・・と思うんだが、どうだ?」

 

彼女はこちらの目をじっと見てくる、まるで俺の心を読んでいるかのように

 

「・・・・・・・・・・わかった」

「────────そうか、なら早いところ帰ろう。お前も体が冷えてるだろうしな」

 

長い沈黙の後に少女は了承してくれた、内心ホッとしつつ立ち上がり手を差し出す

彼女は差し出された俺の手を少しの間見つめていたが、手を掴み返してくれた

 

「よっ」

 

掴んだ手は力を入れると折れてしまいそうなほど細く、か弱い印象を与えてきた

 

「手、離すなよ」

「・・・・・・・・・うん」

 

俺は彼女の手を引いて家に向かって歩き出した

 

 

 

 

 

 

お互い無言のまま歩くこと15分、自宅のあるのアパートに着く

このアパートは2階建てで俺の部屋は2階、1階には知り合いの先輩も住んでいるがこの時間はいつもバイトだ。出くわすことはないだろう

ちなみにこの先輩はロリコンなので会わなくて心の底から良かったと思える

鍵を開け中に入る、少女を玄関に待たせ自分はバスタオルを取りに行く

タオルを渡してよく水気をとってから中に入るように言っておき風呂の準備をする

戻って来ると彼女は床に座っていた、目の前にはきちんと畳まれたバスタオル

 

「そんなとこ座ってないで、こっちの椅子使っていいぞ」

 

そう言って指差すが少女は動かない、

 

「あー、まあ、それでもいいならいいんだが。とりあえず風呂沸いたら先入っていいぞ」

 

少女はまたこくこくと頷くとそれっきり黙ってしまう

 

 

 

しばらくの気まずい沈黙を破ったのは俺だった

 

「なあ、今更だけどお前名前なんて言うんだ?」

 

『雨が止むまで』な短い関係といえど名前を知らないと困ることも多い

 

「・・・・・・・・・・・楓」

「楓か、いい名前だな。苗字はなんていうんだ?」

 

その問いに楓はあまり答えたくなさそうな顔をしてこっちを見ている

 

「あーうん、あんまり詮索すんのは良くなかったな。悪かったよ」

 

そう返すと楓は

 

「・・・・・・・・別に・・・・・・・気にしてないから」

 

やや突き放すような返しをしてくる

────────まあそりゃ警戒もするよな

 

「あっ、俺の自己紹介がまだだったな。俺の名前は 三枝 雅紀 だ、よろしくな楓」

 

そう言いつつ握手のために手を差し出す

 

「・・・・・・・・・・」

 

が、返してはくれないようだ。いきなり呼び捨てはまずかっただろうか?

そもそもこの場面でよろしくと言うのもおかしい気もしてきた

そんな益体も無いことを考えていると風呂が沸いたことを知らせる電子音が響く

 

「おっ、沸いたみたいだな。ほら風邪引く前にさっさと入ってこいよ、服とかは洗っちまうから俺の服でも代わりに着てくれ、置いとくから」

 

「・・・・・・・・・わかった」

 

それだけいうと楓は脱衣所に入っていく

てっきり嫌な顔をされると思っていたが存外そんなことは気にしないようだ

─────────────楓の感覚は少々危ない気がする

そんなこと思いつつ風呂に入ったのを確認したのち脱衣所に入って服を洗濯機にかける

下着は見ないようにしたがワンピースはいいだろうと思い視線を戻すと

うっすらと血の跡があった

血というのは時間が経つと変色してこびりつき洗濯してもなかなか落ちなくなる

この血もその例に漏れず茶褐色になって服に染み付いている

────────虐待、という可能性が俺の中で高くなり複雑な気分になっていると

ガチャ と扉の開く音がする

驚いて振り向くとそこには風呂上がりの楓が立っている

もちろん彼女は風呂に入っていたのだから何か着ているわけもなく

 

「うおっ!わ、悪い!すぐに出るからちょっと待っ──────────」

「・・・・・・・・・・別に、気にしないから」

 

そう言うと彼女は本当に俺のことなど気にせず横のタオルを手にとって体を拭きだす

一瞬しか見てなかったからよくわからなかったが全身の、しかも普段は服に隠れているような場所に痣が多かった気がする

────────────やはり虐待を受けていたのか

薄々感づいていたが実際にそうだとわかると複雑な気持ちが渦巻く

 

 

 

 

 

「夕飯、カップ麺でもいいか?」

「・・・・・・・・うん」

 

楓は常に無表情なためイマイチ感情がつかめない、多少なりとも表情筋が動けばわかるのだが・・・・・

3分待ってればいい出来てしまう時代に感謝しつつ2人で食べる

相変わらず楓は無表情のままカップ麺を食べている

────────────昔はもっと笑う子だったのだろうか

・・・・・・・こういう詮索はやめたほうがいいな

早々に食べ終えると容器をゴミ箱に突っ込む

カップ麺を2人で食べたあと今度は俺が風呂に入る、風呂から上がってくると楓の姿がない

どこに行ったのかと目を走らせると部屋の隅っこで小さくなっている楓を見つける

 

「あー、別にそんな隅っこにいないでもっとくつろいでていいんだぞ?」

「・・・・・・・・・・居させてもらってるのに、そんなことできない」

 

それっきり膝に顔を埋めて黙ってしまう

困ったものだ、そう思いつつも強引に動かすわけにもいかないので明日の支度を済ませる

天気予報によるとここから一週間ほどは雨が止まないらしい

梅雨は過ぎて今は夏だというのにここまで長引くとは珍しい、のだが

約束では『雨が止むまで』

────────まさか、一週間も置いておくわけない。頃合いを見て返すさ

そう思う俺と

────────一週間、匿ってやるぐらいならいいじゃないか

真逆の考えの俺がいる

俺は、どちらに従うべきなのだろう。

 

 

そうこうしていると時刻はもう23時になっていた

明日は1コマ目から授業だ、そろそろ寝ないと遅刻しかねない。そう思い予備の布団を出し

敷き終えてから楓に声をかける

 

「俺はこっちの布団で寝るから、お前はあっちのベットで寝ろよ」

 

反応はない、ひょっとして寝てしまったのだろうか?

 

「おい、そんなとこで寝ると体に良くないぞ」

 

肩をゆすりながら声をかけると

 

「・・・・・・・・・・もう慣れたから、このままで大丈夫」

 

という返事が返ってくる、寝てはいなかったようだが────────

 

「お前、慣れたって・・・・・いつも床で寝てるのか?」

 

返事はないが聞くまでもないだろう、もはや彼女の親への怒りよりも楓に対しての哀れみの感情のが強くなっている

 

 

 

決めた、せめて俺の家にいるときくらいは、その間だけは彼女に苦しい思いをさせない生活をさせてやろう

そう決めた俺は無言のまま彼女を抱き上げるとベットまで連れて行く

見た目どうり重さを感じないほど軽い楓を持ち運ぶのは難しくない

目を丸くしてこちらを見る楓をベットの上に座らせてから肩を掴んで強引に寝かせる

乱暴されると思ったのかギュッと目を固く閉じ肩に力を入れる楓を見て悲しい気持ちになりながら毛布をかけてやる

そのまま横に座って頭を撫でてやると恐る恐る目を開いてこちらを見てくる

 

「何も・・・・・・・・・しないの?」

「アホ、お前みたいな女の子に手ぇあげるやつは男じゃねぇよ。お前の家ではどうだったかなんて知らねぇけど、ここではなにも心配しないで寝てろ。朝起きて床で寝てたらそれこそ怒るからな?」

「・・・・・・・わかった」

 

そういうと彼女は布団に潜り込む

心なしか顔が穏やかだったのは俺の見間違いだろうか

しばらくすると静かな寝息が聞こえてきたので俺も電気を消して布団に入る

 

「─────────────これから短い間だけど、よろしくな楓」

 

言ってから寝ている相手に何を言ってるんだと思い恥ずかしくなって布団を頭からかぶる

 

布団に包まれれば自然と眠気がやってくる、俺はそれに抗うことなく意識を手放した




ここまで読んでくださった方がいるかはわかりませんがいたらあなたの心は天使級にやさしいです。

うぷ主的には評価、感想をつけてくれると嬉しいです
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