雨が止むまで   作:シャール

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待っていてくれた方はいないと思いますが、いたとしたら感謝感激です。
この作品はすでに出来上がっているので毎日投稿となります




二日目

スマホのいつも通り騒がしいアラーム音で目を覚ます

時刻は朝7時半、全国の大学生が怠惰に過ごしているとすればそれなりに早起きな方だろう

外からはまだそれなりに大きな雨音がしている、それに風が窓をガタガタと揺らす音も

眠気を押し切りのそのそと布団から出てきてベットを確認する

楓はまだ眠っているようだ、こちらに背を向けたまま寝息を立てている

これで床の上で寝ていたらどうしようかと昨日は心配していたが杞憂だったようだ

 

 

俺はキッチンに行って起きる時間には炊きあがるように設定しておいた米を茶碗によそう

朝からおかずを作るのも面倒なので納豆のパックを開けて一緒に食べるだけで済ませる

昔は作ってくれる人がいて、その人がいなくなってからも少しの間は作っていたが

次第に面倒になっていき今ではきちんと作るのは夕食ぐらい

その夕食も昨日のように雑に済ませる日が最近は多いのだが・・・・・

 

朝食を食べ終えると昨日のうちに準備していたものをまとめ身支度を済ませる

 

 

家を出る時間になり寝室の楓を確認するとまだぐっすりと眠っている

 

「・・・・・書き置きぐらいしといた方がいいか」

 

ルーズリーフを一枚取り出し大学に行くこと、炊飯器の中の米や冷蔵庫の中のものを好きに食べていい旨をササっと書き終えると家を後にする

 

 

 

 

 

 

バスは雨のせいで混んでいたが乗れないほどではなかった、やはりこの雨の中では普段歩きのやつもバスを使いたくなるらしい

そのまま30分ほどバスに揺られ大学に着く

余裕を持って出たため講義の時間まで余裕がある

 

この大学はレベルで言えば中堅の最上位層でそれなりに人も多い、そのため大学の敷地もかなり広く時間を潰すための施設もチラホラとある

それらで講義までの時間を潰そうか考えていると後ろから聞き覚えのある声で呼ばれた

 

「センパ〜イ、久しぶりですね〜」

 

振り返るとピンクの傘が目に入る、そこからさらに視線を落とすと上目遣いでこちらを見ている女子がいる

 

「先輩とは講義の時間が被ってるせいであんまり会えなくて寂しかったんですよ〜?もちろん先輩も私に会いたかったですよね?」

 

彼女の名前は 岡崎 麻衣

身長は小柄で150程度しかないらしい

服はおしゃれに気を使うらしく毎日違う服を着ている印象だ

まあ服なんて毎回意識して見てないからもしかすると被っているかもしれないが

彼女とは大学の友人に数合わせとして合コンに付き合わされた時に知り合ったのだが、俺を見つけるたびにこうして声をかけてくる

ただ話しかけてくるなら問題ないのだがいつもこうしてからかうようなことを口にしてくるため話してるだけで疲れる

そのため俺はあまりこいつのことが好きではないのだが向こうが絡んでくるため毎回仕方なく話している

 

「・・・・・お前、誰にでもそんなことしてんのか?」

「まさか〜先輩だけですよ♡」

「やめろウインクすんな寒気がする」

「流石にひどいですよ〜私だって傷つくんですからね?こんな可愛い乙女な私を傷つけた先輩は私のお願いをなんでも1つ聞くべきだと思うんですけど〜」

「寝言は寝てから言ってくれ、あとお前のお願いとか怖すぎるから死んでもうけない」

 

出会い方もそうだがいちいち絡んできて毎回こうなのだ、俺のことが気になっているのかと思い、もしそうなら断ろうと思い聞いてみたら

 

『え〜? 私が先輩のことを好きなんじゃないかって? アハハ、そんなわけないじゃないですか〜先輩ってばおもしろ〜い』

 

若干目が泳いでいた気がしたが彼女がそうだというならばそうなんだろう

・・・・・しかし、女心は難しすぎるな

 

 

俺が昔のことを思い出していると麻衣は楽しそうに話し始める

 

「あっ! 先輩次の休日は空いてます? よかったら私とお出かけしましょうよ〜」

「たとえ空いていたとしてもお前と一緒に過ごす気はねぇよ」

「ひど〜い、せっかく先輩と可愛い服買いに行って最初に見せてあげようと思ったのに〜

でも気が変わったらいつでも電話してくださいね♡」

「・・・・・・・・」

「きゃ〜先輩怒ってて怖〜い」

 

彼女の懲りないウインクに盛大な渋面を返してやると笑いながら小走りで去って行った

 

 

ハァ 大きく溜息を吐いてから腕時計を見ると講義まではあと15分ほどだった

これなら移動する時間も考えればちょうどいい頃合いだろう

結果的に時間を潰すという目的があいつで果たされたことが何とも言えない気持ちにさせる

あいつが現れるときはいつも俺が手持ち無沙汰になった時だ、そして程よく時間が経つとあいつは帰っていく

ひょっとして俺のことを観察してるんじゃないか?そんな考えが頭をよぎったが寒気がして考えるのをやめる

あるわけがない、そう自分に言い聞かせつつ講義に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では本日はここまでにします、次回は────────」

 

最初の一言とほぼ同時に多くのため息が響く

まだ前で話しているが最初の一言で完全に気が抜けた学生たちは聞いていない

かくいう俺もその一人なわけだがやめるつもりはない

一コマが長いが故の弊害だろう

今は昼頃、今日の大学での予定はもうないためさっさと帰ってもいいのだが・・・・・

 

 

 

 

 

食堂でカツ丼を頼んで端の方の席を取る、ちょうど講義の間ということもありかなり混んでいる

割り箸を手に取り食べようとしたら

 

「ここ、空いてますか〜?」

 

誰が来たのかを見るまでもなく声で判断した俺は即座に追い払いにかかる

 

「残念だったな、そこの席はすでに先客がいるぞ」

「いないんですね〜、じゃあ失礼しますよ〜」

「話を聞け」

 

追い払うことにいつも通り失敗した俺は彼女との昼食が確定する

朝に会っただけでも疲れが溜まったのに昼食までこいつと一緒なんて

 

今日は厄日か

 

「今先輩失礼なこと考えてませんか〜?」

「根拠のない言いがかりはやめろ」

 

彼女はエスパーの持ち主なのだろうか、考えを読まれた

 

「先輩カツ丼好きなんですか〜?」

「その日の気分で選んでるだけだ」

「つれないですね〜、でも今日はどうして学食にいるんですか〜? いつも午前中しかない日は早く帰っちゃうのに」

「なんでお前が俺の予定をそんなに知ってるのかは追求しないでおいてやるが、・・・・・・今は家にいると気まずいんだよ」

「気まずい? あれ〜でも先輩一人暮らしでしたよね?」

 

 

・・・・・・完全に墓穴を掘った

一人暮らしなのに気を使う相手がいるなんて不自然極まりない

俺だって変だと思うだろう

 

「あー、親戚の子が来てんだよ」

「なんのためにですか〜」

「なんでそんなに気にすんだよ、えーっと確か観光のためとか言ってたな」

「ふ〜ん、たしかに東京は観光名所多いですからね〜」

 

若干含みのある言い方をされたが納得してくれたようだ

これ以上追求されると面倒になる、そう思った俺はカツ丼を急いで食べ終えると

 

「じゃあ俺は行くから、ゆっくり食べてていいぞ」

 

ゆっくりの部分を強調していうと席を後にする

彼女は「また一緒に食べましょうね〜」と手を振っている

こちらとしてはもう遠慮したいものだ、また追求されるとボロが出かねない

 

 

その後はスーパーで夕飯の食材を買ってからバスに乗って帰る

家に帰ると人の気配がした、どうやら楓はまだここに居るようだ

勝手にいなくなるなんてことはないと思っていたがなぜかいることがわかると不思議と安心する自分がいる

テーブルの上に置いていった書き置きもそのままだった

食材を冷蔵庫にしまってから寝室に行くとベットの膨らみが一定の間隔で上下している

どうやら寝ているらしい、夕飯ができるまでは寝かせてあげよう

そう思い静かに戸を閉める

 

 

 

 

 

「おーい、夕飯できたぞー」

 

今夜はカレーだ、簡単に作れて味もいい一人暮らしの味方な料理

ほんとはもう少し量を作ったほうが美味しくなるのだが楓はそんなに食べないだろうからしかたない

自分の分を皿によそいつつ声をかけるが返事はない

 

「まだ寝てんのか?」

 

皿を机の上に置いて寝室の扉を開ける

案の定楓はまだベットの中だ

 

「おーい楓ー、夕飯出来てんぞ」

 

少し肩をゆするが起きない、というか若干呼吸が荒い気がする

心配になって少し大きめな声で声をかけつつこちらに顔を向けさせる

 

「おい楓、お前大丈夫か─────────って!」

「ハァ、ハァ」

 

楓は顔を赤くして汗をかきながら苦しそうにしている

慌てて額に手を当てると

 

「かなり熱いな・・・・・多分風邪だろうけど、風邪薬まだあったか?」

 

本来なら病院に連れて行った方がいいのかもしれないが俺は彼女の保護者じゃない

保険証なんかも持ってないのに病院は行かせられないだろう

幸いにも風邪薬はまだ余っていた、少し前に買ったものだが使用期限なども問題なかった

コップに水を汲んで薬と一緒に持っていく

 

「ゲホッゲホッ、ハァ、ハァ」

 

帰ってくると楓はさっきよりも苦しそうにしている、起こすのも気の毒な気がしてくるが薬を飲まなければ治るものも治らない

 

「おい楓、大丈夫か?薬持ってきたぞ」

 

そう言って少し強めに肩を揺する

 

「ん、んぅ・・・・・あれ・・・?」

「起きたか、とりあえず薬飲め。食欲はあるか?おかゆぐらいなら作るが」

 

楓はボーッとした目で薬と水を受け取りそのまま飲み込む

少し飲みにくそうだったがうちにゼリー状のものはないので我慢してもらうしかない

なんとかコップ一杯の水で飲み込めた楓はこっちを見て少し止まったが俺の質問に答える

 

「・・・・・食欲は・・・・無い」

「そうか、なら早く布団入っとけ。暑いと思うけど毛布はかけとけよ」

 

そう言うと楓を寝かせ毛布をかけてやる

濡れタオルなんかも必要だろう、それから押し入れに仕舞いっぱなしの加湿器なんかもあったほうがいいか

準備するものを頭で整理してから持ってくるために一度離れようとすると後ろから服を軽く引っ張られる

首を回して確認すると毛布から片手だけ出して服の裾をつまみこっちを見ている楓と目が合う

 

「・・・・・・・・」

「どうした? なんか欲しいもんがあんなら買ってくるぞ」

 

そう聞くと楓はゆるゆると首を振る

 

「じゃあやっぱりおかゆ食べるか?それとも────────────」

「ここに・・・・・・いて・・・・・・」

 

いつも通り無表情にそう言ってくるが楓の目の奥には寂しさが感じられた

 

 

─────────────ああ、俺も昔風邪ひいた時は無性に寂しかったっけ

楓も昔の俺と同じで人の温もりが近くにないと不安なのだろう、そう思うと楓のこんなわがままも可愛く思えている

 

 

「・・・・・わかったよ、お前か寝るまでここにいてやる」

 

そういってベットに寄りかかるように座る

少し体をひねって彼女の方を向くと目が合う

 

「・・・・・どうして・・・・・そこまで、してくれるの?」

「自分で言っといて変な奴だな。─────────昔の俺に、似てるからかもな」

 

そういって頭を撫でてやると楓はほんの少しだが嬉しそうに笑い目を閉じる

 

 

しばらく頭を撫でていると静かな寝息が聞こえてきた

無事に寝てくれたことに安心しつつ離れようとすると服が引っ張られる

 

「────────まったく、服掴んだまま寝てんじゃねぇよ」

 

そう言う俺の声色も、どこか嬉しげなものだった




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