雨が止むまで   作:シャール

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今回は少しシリアス風味かもです

気づいたらお気に入りがついてました!お気に入りしてくれた方、ありがとうございます。


三日目

窓が揺れる音がする、それに雨の打ち付ける音も

目を開けると薄暗いいつもの寝室が目に入る窓の揺れはどうやら外の風が激しいからのようだ

ひとまず起きようとすると全身が凝り固まっていて違和感を感じた

なぜ?と思いあたりを見回してからようやく気づく

あの後楓が服を掴んだままだったため動くことが出来ずそのまま床に座って寝たのだ

ならばこの違和感も当然だろう

 

 

楓を見てみると昨日のように呼吸が荒い、なんてことは無い

額に手を当ててみると少し熱い気もするが微熱程度だろう、後で熱も測ろう

しかし

風呂に入る前だったため少々臭うのが自分でもわかる

楓も起きて目の前にいる男が臭いのは嫌だろう、幸いにも手はもう離れている

起きてくるまでに上がってきてしまおうと早足で着替えを揃え風呂に入る

 

 

十分ほどで上がってくると楓が起きていた

 

「起きてたのか、調子はどうだ? 食欲は?」

「・・・・・体調はもう・・・・・大丈夫、食欲は・・・・・あんまり無い」

「そうか、でもおかゆぐらいは食べろよ。なんも食わないとぶり返すかもしれないからな」

 

そう言って台所に向かう、お粥なんて作ったことはないが調べながらやれば問題ないだろう

 

 

 

お粥は問題なく作れた、味は塩のみだがそっちの方が食べやすいだろう

 

「ほら、お粥作ってきたぞ。熱いから食べるときはよく冷ませよ」

「・・・・ありがとう」

 

ベットの上で食べるのはあまりお行儀が良くないのだがこんなときくらいいいだろう

楓はスプーンで少しすくうとふー、ふーと息をかけ冷ましてから口に入れる

 

「・・・・おいしい」

「そうか、ならよかった」

 

笑って返すとなぜかそっぽを向かれた、耳が赤いが体調がまた悪くなったのだろうか

 

「やっぱりまだどっか悪いのか? それならまだ寝てた方が─────────」

「大丈夫・・・・・だから」

 

食い気味に答えるとこちらを向くことなくお粥を食べ続ける

 

「それならいいんだが・・・・・、なんかあったら言えよ?」

 

俺の言葉を聞いた楓は食べるのを止めてこっちを見つめてくる

 

「・・・・・・あなたは・・・・・・どうして」

 

そこまで言ってから一度言葉を切り、再度、今度は切らずに言葉を紡ぐ

 

「どうして、見ず知らずの私にここまで優しくするの?」

 

そう聞いてくる楓の瞳には様々な感情が渦巻いている

昨日、同じ質問をしたことは覚えてはいないらしい。まあ熱で意識が虚ろだったのだろう

 

「──────────────そうだな、お前には話してもいいかもしれない。

でもその前に飯食っちまえ、それからタオルと着替え持ってきてやるから汗拭いて着替えろ。話はそれからだ」

 

そう言うと楓はジッと俺を見たあと「わかった」と言って食べ始める

俺は立ち上がって着替えとお湯で温かくしたタオルを準備しにいく

戻ってくるのと楓が食べ終わるのはほとんど同時だった

入れ替わりで食器を受け取り着替えとタオルを渡す

そのまま寝室の扉を閉め、終わるまでに食器を洗っておく

 

 

洗い物を終え少し待ってから声をかけようか迷っていると

ガチャ と寝室のドアが開き出会った時のワンピース姿の楓が出てくる

 

「もう寝てなくてもいいのか?」

「・・・・・うん」

「そうか、じゃあそこらへんに座ってくれるか」

 

そう言って俺と対面になるように座らせる

 

「────────なんで俺がお前に優しくするのか、だったよな」

「・・・・・うん」

 

 

「────────────俺の両親は世界でも有数の学者でな、俺が小さい頃からあんまり家にいなっかたんだ。それでも送り迎えとか、休日にはできるだけいるようにしてくれてたし、お手伝いのおばあさんも雇って俺が一人になる時間を無くしてくれた。だからそこまで寂しいって感じたことはなったかな

 

俺が小学校に上がるときだったな、二人に言われたんだ

『入学式の日に大事な仕事があって行けない』って

そりゃもうぐずったさ、せっかくの入学式なのに親がいないなんてありえなかったからな

二人もなんとか納得させようとしたけど結局は諦めてその日の夜の便で行っちまった

 

結局入学式にはお手伝いさんが来てくれて、なんだかんだ俺も新しい友達作って二人が来てくれなかったことなんてもうほとんど忘れてた

 

 

 

学校が終わって帰るとお手伝いさんが泣いてた、

 

向かいには知らない男がいてこっちを見ると『息子さんかい?』って聞いてきたんだ。

そうだって答えると男は辛そうな顔をしながら『落ち着いて聞いてくれ』って言ってきた。

その言葉の続きは今でも鮮明に思い出せるよ

 

 

『ご両親の乗られてる飛行機が海に墜落した、まだご遺体は見つかっていない、だけどもう恐らく───────────亡くなってる』

 

 

この男は何を言ってるんだ、そう思ったさ。この男が嘘をついているんじゃないか、きっとそうに違いない。お父さんもお母さんもしばらくしたら帰ってきてくれる、いつもみたいにお土産片手に帰ってきて頭を撫でてくれるんだ。そうじゃなきゃいけないんだって思った

 

今思えばそうだって信じないと俺の心が壊れるって頭が判断したが故の結果だったんだろうな。俺はその男を嘘つきだと言って家から追い出した

その人も俺のことを思ってか抵抗せずに帰っていった

 

戻るとお手伝いさんが俺のことを抱きしめてきた

俺は、あの人が嘘をついてるだけで二人は帰ってくるんだよね?

そう聞いた、そうだって言って欲しかったんだ、でもお手伝いさんは辛そうな、本当に辛そうな顔をしながらも俺の目を見て言いきった

 

『いいえ、お二人はもう帰ってこないんです。もう────────亡くなられたんです。死んでしまった人はもう、帰ってこないんです』

 

その言葉を聞いた瞬間俺の心にひびが入る音が聞こえた気がしたよ

そのままお手伝いさんの胸の中で泣いた、泣きまくった。最後には泣き疲れてそのまま眠ってしまうぐらいには大泣きしてたと思う

 

次の日起きたときにも両親はいなかった、

リビングに行くと書き置きがあった

『役所に行ってきます、お留守番しててくださいね』

お手伝いさんの字で短く、役所に何をしに行くのかもわからないものだったが薄々は感づいていた。少し前に父さんが亡くなった身寄りのない友人の死亡届を出しに行ってるのを見ていたから

帰ってきたお手伝いさんに何をしに行ってたのか聞いてもやっぱり答えてはくれなかった

それでも俺は心のどこかでまだ二人は生きているんじゃないかって思ってた、いや、思っていたかったんだな

 

 

しばらくして二人の葬式が行われた、たくさんの人が来て空っぽの棺に頭を下げていったよ。俺はそんな光景を見て何故だか無性に腹が立ったんだ、それで勢いよく走って行って棺桶の蓋を開けて叫んだ

 

『お父さんもお母さんもこの中にはいない!まだどこかで生きてるんだ!

勝手に殺すな!』

 

ってな、そのあと葬儀場から走って逃げ出して近くの公園の木の下で座ってたらお手伝いさんが見つけてくれた。そのまま無言で俺を抱きしめて頭を撫でてから

 

『もう、帰りましょうか。今夜は坊ちゃんの好きなものを作ってあげます。だから────────ね?』

 

そう言って手を差し出してくれた、俺は何も言わずに手をつないで帰ったよ

 

そのあとはいろんなことがあった、お手伝いさんが俺の後見人になってくれたり、そのお手伝いさんが高校入学と同時に倒れて余命一年もないって言われてたのに、俺が卒業して一人で生きていける歳になるまでは死ねないって言って本当に卒業するまで見守ってくれた。

 

そんな彼女の葬式をしたりね・・・・・

 

ああ、悪い。話が逸れたな、で、なんで優しくするのかだけど。

単に助けたいって心のどっかで思ってたんだろうな、二人が死んで親の愛なんて少しの間しか受けれなかった俺を助けてくれたあの人みたいに

俺も、同じように親の愛を受けれなかったお前の力になってやりたかったんだと思う」

 

そこまで一気に話し終えた俺は一息つき飲み物を手に取り喉を湿らす

話してる間ずっと黙っていた楓の方を見ると

──────────────泣いていた

声を出さず、いつもの無表情のままだったがたしかに目から涙が溢れていた

 

「楓、泣いてるけど・・・・どうしたんだ?」

「え?・・・・・あれ、私・・・・・どうしてだろう」

 

そう言って手の甲で涙を拭う、しかし涙は後から溢れてきて頬を伝う

 

「・・・・・あ、あれ?・・・・・どうして・・・・・止まんないの」

 

涙が止まらないことに戸惑いつつも顔を手で覆って涙を止めようとする、かすかにだが楓の肩が震えていた

俺は黙って席を立つと楓の横に立ち頭に手を置く

 

「ありがとな、俺なんかのために泣いてくれて」

 

そのまま撫でてやると楓が座ったまま抱きついてくる、それに合わせるように軽く抱きしめ返す

 

しばらく俺達はそのまま動かなかった

 

 

 

 

 

 

 

「───────────落ち着いたか?」

「・・・・・うん・・・・・・ありがとう」

 

離れた楓は少し寂しそうな顔をしていた気がしたがすぐにいつもの無表情に戻ってしまう

 

「─────────お茶、もう一回入れてくるな」

 

そう言って台所に戻って冷蔵庫からペットボトルを取り出しコップに注ぐ

戻って椅子に座ると楓が口が開く

 

「・・・・・・・お父さんも、昔は優しかったの

 

お母さんがいる頃は、どこにでもいる普通の家族だったと思う。

毎日が楽しくて、幸せ・・・・・だったんだと思う

・・・・・でも、私が6年生に上がった時に二人が離婚して私はお父さんに引き取られた。

 

しだいにお父さんはお酒をよく飲むようになって、仕事には行ってたけど何か仕事で嫌なことがあった日にはお酒をたくさん飲んで、私にあたるようになった。

 

休日は昼間から飲んで機嫌が悪いと暴力を振るう、そんな日々だった

 

それでも・・・・・いつかお父さんも立ち直って前みたいな、優しかった頃のお父さんに戻ってくれる。そう信じてたの

 

でも、あなたと出会った日、

 

『子供なんて押し付けやがってあのクソアマ、自分の嫌なことは昔から俺に押し付けやがる。・・・・・あ? 何見てんだよ、テメェは俺に生かしてもらってんだ、黙ってサンドバックになってればいいんだよ!』

 

そう言って殴られた、その時に気づいたの

私はお母さんからもお父さんからもいらない存在だったんだって

お父さんはもう昔みたいには戻らないって

 

そのあとお父さんが酔って寝たのを確認して家から逃げ出した、あの家には居られないし、何より私がもう逃げ出したかった

 

 

そのあと貴方に拾ってもらって、一人で家にいた日。

・・・・・・不安で仕方なかった、もしかしたら追いかけてくるんじゃないか、もう居場所がバレてて今こっちに来てるかもしれない。そう思うと震えが止まらなかった

 

しばらくしたら熱が出て頭がぼーっとして、風邪だって思ってすぐに寝てたの、寂しさと不安で心がいっぱいだったけどなんとか眠れた

 

・・・・・起きると貴方がいた、心配してくれて、優しくしてくれて、私のわがままにも付き合ってくれた

・・・・・・・すごく、嬉しかった。

人に優しくされるのがこんなにも心を暖かくしてくれるものだって思い出せた

だから、私はもう十分貴方に救われてる。───────────────ありがとう」

 

そう言って笑う楓の笑顔は今までのどんな表情よりも輝いていて、眩しかった

 

「─────────ありがとな、そう言ってくれるなら俺も救われるってもんだよ」

 

俺のしたことは無駄じゃなかった、そう言われたことの嬉しさからか年甲斐もなく泣いてしまいそうになった俺は慌てて顔を背ける

 

「ど、どうしたの? 私何かよくないこと言っちゃった?」

「・・・・・いや、逆だよ。そう言ってもらえたことが嬉しくってな、つい」

 

いつまでも情けないところを見せたくはないのでゴシゴシと目を擦ってもう涙が出てきてないことを確認すると楓の方に向き直る

楓は俺と目が合うと安心したような穏やかな笑みを浮かべて

 

「・・・・・そう、ならよかった」

 

ドキッ

 

いやドキッってなんだよ、相手は楓だぞ?

というかこの感じはマズイ。何がとは言えないがとにかく良くない気がする

そう思った俺は話題をそらしにかかる

 

「い、いやそれにしても。楓が今日はよく笑ってくれて俺はよかったよ」

「え。・・・・・そうだったかな?」

 

そう言って自分のほっぺをムニムニと触って難しい顔をする楓

 

「どうかしたのか?」

「・・・・・私、変な顔してなかった?」

「いや、年頃の女の子らしい可愛さのあるやつだったけど」

「か、可愛い!?」

「ああ、そうだったと思うが・・・・・」

 

そう言うと楓は顔を真っ赤にして俯いてしまう

 

「・・・・・おーい、大丈夫か?」

 

呼びかけても応答はない、熱がぶり返したのかと思い額に手を当てても反応がないし俺の手もそれなりに温かいせいかイマイチわからない

 

コツン

 

「う〜ん、熱はそんなにないみたいだけど。やっぱり体調悪いか?」

 

楓の額に俺のを合わせるやり方で熱を測ってみてもそこまで高くないようだが───────

 

「!!!! なな、何して!」

「いや、熱でもあるのかと・・・・・」

「っ〜〜〜〜!! バカッッ!!」

 

それだけ言うと楓は寝室に駆け込み荒っぽく戸を閉める

1人残された俺は楓の唐突な行動に完全に固まってしまい、側から見れば随分間抜けに見えるだろう

少しして落ち着いた俺の最初の言葉に返してくれる人は、当然ながらいなかった

 

「────────俺、なんかしたか?」




はい、大体の方が気づいてたと思いますが主人公君は割と鈍いです

うぷ主的には評価、感想をつけてくれると嬉しいです
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