雨が止むまで   作:シャール

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今回はあんまり話としては進まないです、でも楓ちゃんは可愛いく書けた・・・・・と思います。

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四日目

トン トン トン

 

 

少し前までよく聞いていた懐かしい音がする

この音・・・・・どこで聞いたんだっけ

眠気から覚めきってない頭で記憶を掘り返す

確か・・・・・ああ、お手伝いさんや母さんが料理をしてるときだ

そこまで思い出してようやく少しだが頭が回り始める、と同時に当然の疑問が湧き上がる

いったい誰が料理をしてるんだ?

それを確かめるために俺は眠気を振り切って布団から這い出る

欠伸を噛み殺しつつ寝室を出てキッチンを見ると

 

──────────────母がいた

 

「・・・・・母・・・・・さん?」

 

そう呼びかけると母は料理の手を止めてこちらに振り返る

 

「・・・・・どうしたの?」

 

俺の記憶に残る母の声が耳に響く、思わず駆け寄ろうとしたところで気づく

俺は夢から覚めていないんじゃないか

そう思った俺はゴシゴシと目をこすり頬を思いっきり両手でつねってからもう一度キッチンの母を見る

 

 

「・・・・・雅紀、大丈夫?」

 

そこには貸した寝間着のままで料理をしている楓がいた

こちらを少し心配したような目で見ている

 

「───────────あ、ああ。悪い、寝ぼけてたみたいだ」

 

まさか楓と母さんを見間違えるとは、久しぶりに昔を思い出したからかもしれない

 

「─────────あれ? 楓いま俺のこと雅紀って」

「・・・・・雅紀は私のこと楓って呼ぶのに、私がいつまでも『あなた』じゃ変だと思ったから」

「あー、確かに? いやでも急に呼ばれるとなんだか照れくさいな」

 

そう返すと「・・・・・雅紀は最初から私のこと名前で呼んだのに」と言われた

妙に視線が恨めしさを含んでいる気がするのは俺の気のせいだろうか

 

「あー、えーっと、そういえば! 楓は台所で何してたんだ? こんな朝っぱらから」

 

話題をそらしたのがバレバレだったが幸いここで終わりにしてもらえるようだ

楓は少し呆れたような顔をして

 

「・・・・・朝に台所ですることなんて一つしかないと思うんだけど」

 

そう言って少し横にずれる

後ろには火にかけられてる鍋や均等に切られた食材たち、すでに焼き終えて皿に乗った鮭なんかがあった

 

「まさか、朝飯作ってくれたのか?」

「・・・・・泊めてもらってるんだから、これくらいはする」

 

少し照れくさそうに言う楓

その姿が微笑ましくて思わず口元が緩む

 

「そっか、ありがとな。あったかい朝食なんて久しぶりだよ」

 

そう感謝の気持ちを伝えると楓は嬉し恥ずかしといった感じで「・・・・そう」とだけ言うと目をそらす

本人は隠してるつもりかもしれないが頬が少し赤いし髪の毛をいじっている手が先程から落ち着きを欠いている

 

出会った頃は無表情で感情の機微がわからないと思ったが一緒にいると次第にわかるようになってきた、

所々ではあるが喜怒哀楽の表情だって顔に出てる

出会った頃はほとんど表に出てこなかったが最近は少しずつ感情が表情に出始めていることに嬉しさを抱いていると

 

「・・・・・何ニヤニヤしてるの、まだご飯できるまで少しかかるから椅子にでも座って待ってて」

 

冷えた目でそういうとまた包丁を手に持ち料理を再開する、俺、ニヤニヤしてたか?

・・・・・いや、していた気がするな

特に反論することなく椅子に座って待つ

 

キッチンに目を向ければ朝食を作っている楓

料理の音と人のいる暖かさを感じていると眠気が再び戻ってくる

そういえば今日はいつもより少し起きたのが早かったな、楓もまだ時間がかかると言っていたし

────────少しぐらいなら、寝てしまってもいいだろう

 

 

 

 

 

 

「んぁ・・・・・・寝すぎたか?」

 

大して長い時間は寝てなかったと思うが、待たせてしまっただろうか

そう思って机から顔を上げると

────────────目の前に楓の顔があった

 

「へ?」

 

思わず変な声が出てしまったが楓の方はそれどころでは無いらしい

 

「! っ〜〜〜〜〜! ここ、これは、その、違くてっ!」

「違うって、何がだ?」

「〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

こちらが見ていて心配になるほど楓の顔が赤くなっていく、色的にはトマトやリンゴレベルに真っ赤だ

───────────ってそうじゃなくて

 

「お、おい。なんだか知らんがとりあえず落ち着けって顔真っ赤だぞ」

「・・・・・・・・・・分かってるから・・・・・・とりあえず離れて」

「お、おう」

 

恐ろしく冷めた声に若干ビビりつつ距離を取る、顔を手で覆っていて表情が見えないため余計怖い

少しするといつもの無表情な楓で立ち上がって

 

「・・・・・ご飯もう出来てるから、運ぶの手伝って」

 

それだけ言うとスタスタとキッチンの方へと歩いて行ってしまう

 

「あ、ああ。分かったよ」

 

なんだか今日は朝から楓の感情が荒ぶっている気がするが、何にせよ元に戻ってくれてよかった

 

 

───────────────頰がまだ少し赤かったのは、指摘しないほうが身のためだろうな

 

 

 

 

 

 

「しかし、楓が料理上手だったとはな」

「・・・・別に、そんなに上手くないよ。・・・・お母さんがいなくなって必要だったから覚えただけ」

「それにしてはずいぶん上手だよ。そういえば、楓って何歳なんだ?」

「・・・・・・・14」

「ってことは中学二年生か、懐かしいなぁ俺もあの頃は─────────」

「・・・・雅紀?」

 

急に話すのをやめた俺を不審に思った楓が声をかけてくる

 

「なあ楓。お前、学校って大丈夫なのか?」

「・・・・・・・・・・」

「黙って目をそらすな、まあ気づかなかった俺も大概だが。これからどうしたもんか」

「・・・・・でも私、何も持ってきてない」

「そうなんだよなぁ、まさか取りに行くわけにもいかねぇしな」

 

もう4日も学校を休んでいることになる、流石に誰かが怪しいと思ってきてもおかしくはない

 

「・・・・・今考えたってしょうがないな、この問題はまた今度にしよう」

「・・・・・うん」

 

問題の先延ばしは好きではないが現状どうすることもできないことを悩んでるのも意味がない

なら今は考えないのが一番だろう

 

「おっ、これ美味いな。どうやって作ったんだ?」

「それは─────────」

 

それに久しぶりの誰かと食べる朝食だ、考え事をするのは野暮だろう

 

 

 

 

 

 

時刻は昼前、今日は午後から講義があるためそろそろ家を出なければ

準備をしていると楓が声をかけてくる

 

「・・・・いつ頃帰ってくる?」

「ん? ああ、そうだな。だいたい19時半ぐらいだと思うが、どうかしたか?」

「・・・・・そう、わかった。帰りに食べたい夕飯に必要な食材を買って帰ってきてね」

 

それだけ言うと寝室に戻ってしまう

なんだか不思議な気分だがとりあえず忘れずに買って帰ることにしよう

 

「それじゃ、行ってきます」

「─────────行ってらっしゃい」

 

慌てて扉をあけて返してくれた楓がなんだか面白くて少し笑ってしまったが幸い気づかれなかったようだ

バレるとまた拗ねてしまうので急いで行くことにしよう

 

 

 

外は相変わらず雨が降っている、昨日に比べればいくらか弱くなっているものの止む気配はなく相変わらず人の多いバスは少し蒸し暑い

最寄りのバス停で降りると後ろから声をかけられる

 

「あれ〜? 先輩じゃないですか、一昨日ぶりですね〜」

 

・・・・・・最初に会ったのがこいつとは、今日は厄日か

 

「ちょっと〜無視しないでくださいよ〜」

 

いつのまにか俺の前にいた麻衣がピンクの傘を手に下から俺を覗き込んでいる

 

「────────ああ、悪いな。今日はどうにも良くないことが起こりそうな気がしてな、だからお前も俺に近づかないほうがいいぞ」

「へ〜そうなんですか。先輩に超能力があったなんて驚きですね〜」

「せっかくの俺の忠告を無下にするんじゃねえよ」

「だって先輩の勘って外れそうじゃないですか〜」

 

サラッとひどいことを言ってくる後輩を連れたまま大学へと向かう

 

「そう言えば〜先輩昨日はどうして大学に来なかったんですか〜? 講義入ってましたよね」

「だからなんでお前が俺の予定を知ってんだよ。・・・・・親戚の子が来てるって言っただろ、その子が風邪引いたから看病してたんだよ」

「へ〜、じゃあ今先輩が来てるってことはその子はもう良くなったんですか?」

「ああ、もう大丈夫だろ」

「それは良かったですね〜。

・・・・・・・・・先輩の看病、いいなぁ」

「ん? なんか言ったか?」

「なんでも無いですよ〜。そういえば先輩、行く気になってくれました〜?」

「・・・・・なんの話だ?」

「も〜覚えててくださいよ〜、明日の休みに一緒に出かけましょうって誘ったじゃないですか〜」

「・・・・・ああ、そんな話もあったな」

「それで、行く気になってくれましたか〜?」

 

・・・・・正直な話、めんどくさい。それにこいつと出かけるのは中々疲れそうだ。そう思い断ろうと口を開きかけた時、家にいる楓のこと思い出す

 

「───────そうだな、悪くない」

「え?」

 

俺が了承するとなぜか誘ってきた麻衣の方が驚いた表情をしている

 

「なんでお前が誘ってきたくせに驚いてんだよ」

「え、いやだって先輩いつもこういうのは断ってましたし。今回もてっきっり断られるものだって思ってて・・・・・・」

「・・・・・・口調がブレてるぞ」

「え? ・・・・・あ、も〜先輩気づいてたなら教えてくださいよ〜」

 

慌てて口調を戻す麻衣を置いといて俺は話を続ける

 

「それで、出かけるって話だが俺の他にもう一人連れてくからな」

「もう一人ですか〜?」

「ああ、さっきも話に出た親戚の子だ。服を買いたいらしいんだが女物は俺にはサッパリでな、だからこの際お前に選んでもらおうと思ったんだよ」

「・・・・・しょうがないですね〜、まあいいですよ」

 

なぜか少し不満げな麻衣

 

「なんか都合悪かったか?」

「いえいえ、都合は悪くないんですけどね〜」

 

なら何が問題なのだろうか、もしかして他に行きたいところでもあったのか?

 

「そうですね〜それじゃあ明日の朝9時に××駅前に集合にしましょうか」

「ん、わかった。よろしくな」

「は〜い、先輩も遅れないでくださいね〜♡」

 

お得意のウインクを残すと彼女は走って行ってしまう、どうしてこう俺に向けてウインクしたがるんだあいつは

 

 

彼女のピンクの傘が見えなくなった頃、つい思っていたことが口から出ていた

 

「・・・・・・あいつ、さっきの口調のがいいと思うんだがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、俺は言われたとうり好きな食べ物

───────オムライスに必要なものを買ってから家に帰った

オムライスと言ったら楓に「・・・・・子供っぽい」と笑われたのは地味にショックだったが・・・・・そんなに子供っぽいだろうか?

 

「それで、どうして急に俺の好きなものを作る気になったんだ?」

「・・・・・別に、あんまり考えてなかった。・・・・強いて言うなら夕飯を考えるのが面倒だったから、かな?」

「そこは嘘でも俺が喜ぶようなことを言って欲しかったな」

「・・・・・例えば?」

「む、例えば───────」

 

自分で言っておきながらいい例えが思いつかない

・・・・・ここはネタで誤魔化しておくか

 

「そうだな『べ、べつにあんたの喜ぶ顔が見たかったわけじゃないんだからね!!』とか」

「・・・・・・・・・・・そう」

「いや待て今のはネタだぞ?だからそんな目で見るな、その目は流石にメンタルにくる」

 

まさかちょっとした冗談でこんなに引かれるとは思わなかった、まるで変質者を見るかのような目で見られて正直泣きそうだ。次からはこういうネタは控えよう・・・・・

 

「・・・・・そんなこと言ってないで、もう出来たから持ってって」

 

俺と話してる間もテキパキと作っていたらしい、皿の上にできたてのオムライスがのっている

 

「はいよ、しかし相変わらず料理が上手いな楓は。俺が作るとこんなに上手く卵で包めないからな」

「・・・・・コツさえつかめば誰だってできるよ」

「そんなもんかねぇ」

 

食卓に二人分のオムライスを置いて向かい合うように座る

 

「「いただきます」」

 

お互いを待って一緒に言うとさっそくスプーンですくって口に入れる

 

「───────うん、美味い」

 

素直な感想を言うと楓は少し照れながら「・・・・そう、ならよかった」とだけ言うと自分の分を食べ進める

 

「───────────あ、そうだ楓。明日は少し出かけるぞ」

「・・・・出かけるって、どこに?」

「お前の洋服を買いにな、今は楓も俺の服とか着てるけどほんとだったらちゃんと女子用の服を着た方がいいだろ?」

「・・・・・でも私、お金払えないし・・・・・それに外に行くとお父さんに会うかもしれないから」

 

そう言うと楓は少し悲しそうな目をして俯いてしまう

 

「あーっと、まず金のことだが。俺が払うから楓は気にすんな、二人の遺産が俺一人じゃ使いきれないくらいあってな。少し使ったぐらいじゃ減った気にもならないさ。

それとお前の親と会った時には───────」

 

そこまで言って言葉に詰まってしまう、自然と視線が下に落ちて考える姿勢になっていく

──────────俺は楓の親に会って何を言えばいいのだろうか

もちろん言いたいことは腐る程あるが、頭の片隅で

 

『他人のお前が口を出す資格があるのか?』

 

そう問いかけてくる自分も確かにいる

ここまで関わっているが俺は所詮他人だ、楓の家庭内のことにまで干渉する権利はない

そんな俺に何か言う資格があるわけ────────────

 

「・・・・・・雅紀」

 

名前を呼ばれ顔をあげると少し困ったような顔をした楓がいる

 

「・・・・・・・私のことを真剣に考えてくれるのはすごく嬉しい、でもそれが雅紀の重荷になってるなら、それは私にとってとても悲しいことなの。

・・・・・・・だから、私のことは気にしないで。服を選べないのは少し残念だったけど、私のワガママであなたが困るなら私は───────」

 

その時の楓の顔を見て俺の中で歯車が噛み合う感覚がする

───────ああ、なんだ。簡単なことじゃないか、どうして今まで気づかなかったんだろうか

 

「おら」

「キャ!」

 

俺は話を遮って楓の頭をグシャグシャと乱暴に撫でる

撫でている手の隙間から楓が驚いた表情で聞いてくる

 

「ど、どうしたの急に」

「お前はもっとワガママなくらいでちょうどいいんだよ、変に遠慮するくらいならワガママ言ってくれた方が俺だってやりやすい」

「で、でも」

「遠慮すんなって言ったろ? 子供はワガママでいいんだよ」

 

俺は楓に普通の幸せを知ってほしい、そう思ったから今までこうしてきたんだ

ならこれからもそうすればいい、楓が幸せになれる道を探してやればいいんだ。

 

「子供って、私はそんな歳じゃ・・・・・」

「──────────楓の親と会った時には俺がなんとかしてやる」

「・・・・・なんとかって、どうするの?」

「なんとかはなんとかだよ。大丈夫だ、俺がお前が幸せでいられる道を探してやる。だから心配すんな」

 

おお、我ながら恥ずかしいことを言っている気がする

人生でこんなこと言う機会はもう二度とないだろうな、そんな気の抜けたことを考えていると

 

「っ〜〜〜〜!! そ、そそそれってプっプロ、プロポ」

 

楓が真っ赤になってオーバーヒートしそうになっている

 

「うおっ!大丈夫か楓、一旦落ち着け」

「〜〜〜〜〜! 〜〜〜〜〜!! 〜〜〜〜〜!」

 

落ち着かせようとしても楓は完全にテンパっていてこちらの話がまるで聞こえていない

 

「一回落ち着け、な? 頼むから落ち着いてくれ、このままじゃ話もできないし何より夕飯だって────────────」

 

 

 

 

 

 

その日はテンパった楓を落ち着けようとしてビンタされるわ夕飯を食べるタイミングを逃してオムライスがお預けになるわ、案の定楓は口を利いてくれなくなるわと散々な目にあった

 

 

──────────────これからは楓のテンパりそうな言葉は控えた方が良さそうだ




この話も残り三話、投稿となると一瞬で終わってしまいますね。
主人公の最後の部分のセリフは書いてて初めてうぷ主も恥ずかしいと気づきました(私は鈍くないです)

うぷ主的には評価、感想をつけてくれると嬉しいです
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