初めて感想評価をいただけました!
つけてくださった方には最大級の感謝を、そして今これを読んでくれているあなたにも同じぐらいの感謝の気持ちを伝えたいです
「それじゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい、ちゃんと間に合うように帰ってきてね」
「わかってるよ」
朝、楓に見送られて家を出る。今日は一日大学にいる日なのだが同時に楓と行く約束をした
『雨神祭り』が催される日でもある
今日の天気は快晴、この前までの雨が嘘のように空は晴れわたっている
天気予報でも今日一日晴れが続くと言っていたから中止の心配はしなくてもいいだろう
───────────楓が楽しみにしていたのだから雨が降ったら天を恨んでいたが
「────────────つまり、これは全ての事象の説明として成り立っていると書かれているわけです。・・・・・・少し早いですが本日はここまでとします」
その声と同時に室内に喧騒が戻ってくる
早々に席を立ってどこかへ行くものや隣の席の人と話をするものなど様々だ
俺は時計を確認すると席を立ち食堂に向かうことにした
「やっぱり混んでるな・・・・・」
先に席を確保しておくべきだったかと後悔しながら歩き回り、入り口からは柱で見えにくい場所に空いている席を見つけそこに座る
今日はキツネうどんだ、タヌキも好きだが個人的には汁を吸った油揚げが好きだからキツネを頼む時の方が多い気がする
「あ、先輩こんにちは。今日はキツネうどんなんですね」
「──────────お前ひょっとして俺のこと見張ってたりするのか?」
ここは入り口からは見えにくいからたまたま見かけたなんてことはないはずだが・・・・・
そんな俺の疑いの言葉を聞いた麻衣は
「見張る? 先輩何かしたんですか?」
「・・・・・いや、なんでもない。お前も席探してたんだろ、そこ空いてるぞ」
「本当ですか? ──────でも先輩が私を誘ってくれるなんてどういう風の吹き回しで?」
「・・・・・・前のお前だったら誘わなかったよ」
「なら戻して大正解でしたね」
何が正解なのかと聞こうと思ったが本人は嬉しそうに笑っているのでやめておくことにした
麻衣の前にはミートスパゲッティとサラダが置かれている
なにかとソースが跳ねて服を汚しがちだが麻衣はフォークとスプーンを使ってうまく食べていく
じっと見ているとまた何か言われそうなので、視線を自分のうどんに戻し少し冷めたうどんを口に運んでから油揚げを一口かじる
───────────うん、うまい
そのまましばらく無言でお互い食べ進めていく
その沈黙を破ったのは麻衣の方だった
「そういえば先輩、今楓ちゃんと一緒に暮らしてるんですよね」
「・・・・・今も何も一週間前からそうだが」
「そうですけど、でも先輩のお家ってそんなに大きいんですか?」
「?どうしてそう思った」
「だって楓ちゃん女の子なんですから、1人の部屋ぐらいあるんですよね? それを用意できるぐらい大きいのかなって」
「・・・・・・・」
俺は思わず固まってしまう、今麻衣に言われて始めて問題点に気づいた
今はまだ意識するほどではないが楓はこれから第二次性徴期にはいるだろう
知らないかもしれない奴のためにわかりやすくいうと、主に体において変化が生じ、男子は男子らしく、女子は女子らしくなっていく時期だ
それに思春期だってもうすぐのはず、つまり────────────
「まさか先輩、一緒の部屋なんてこと。ないですよね?」
「・・・・・・そのまさかだよ」
「・・・・・・・・先輩」
「わかってる、何も言うな」
引っ越し、しないとダメだな───────────
俺の中で引っ越しは重要事項として保存された瞬間だった
「先輩、私、気づいちゃったんです」
「おう、なんだ急に」
あの後麻衣から小言を長々と言われながらうどんを食べきった俺は食後の休憩がてらお茶を飲んでいた、ちなみに小言を言っていた彼女はまだ食べきっていない
「先輩、今まで私が挨拶してもちゃんと返してくれたことありませんよね」
「いやいや、そんなわけ──────────」
そう言いながら俺は過去に麻衣と会ったときのことを思い出していく
『先輩とは講義の時間が被ってるせいであんまり会えなくて寂しかったんですよ〜? もちろん先輩も私に会いたかったですよね?』
『・・・・・・お前、誰にでもそんなことしてんのか?」
『あれ〜? 先輩じゃないですか、一昨日ぶりですね〜』
『・・・・・』
『ちょっと〜無視しないでくださいよ〜』
『あ、センパ〜イ! 早いですね〜』
『あいにく人を待たせるのは嫌いな性格でな』
『あれー? 先輩何してるんですか、しかも手ぶらで』
『────────やっぱりお前はいつもタイミングがいいな』
『あ、先輩こんにちは。今日はキツネうどんなんですね』
『──────────お前ひょっとして俺のこと見張ってたりするのか?』
いや、うん。確かに言ってないかもしれない
「─────────────そんなわけないだろ。気のせいだ」
何故だか急に後ろめたい気分にかられて思わず目をそらしてしまう
「・・・・・先輩、それ私の目を見てもう一回言ってくれませんか?」
「・・・・・・」
「どうしたんですか? 先輩」
何故だろう、見えていないのに今の彼女は末恐ろしい顔をしているのがわかる
「・・・・・・・・・わかった、悪かったよ」
俺は両手を上にあげ降参のポーズをとると麻衣の方に向き直る
一瞬だけ見た顔は驚くほど無表情だった、怒ってるより遥かに怖いからやめてもらいたい
そんな顔も一瞬で笑顔に変えた麻衣の表情筋の柔らかさに驚きつつ話に耳を傾ける
「いえいえ、別に挨拶を返して欲しかったわけではないんですよ。それなりにあの挨拶も楽しかったですし。でも先輩が謝ってくれるなんて意外でしたねー、それに『悪かった』まで言ってくれるなんて。これはもう謝罪のために私のお願いを聞いてくれるって事で問題ないんですよね?」
麻衣はそう早口でまくしたてると期待の目でこちらを覗き込んでくる
「いや待て、その理屈はおかし─────────」
「そうですか聞いてくれるんですね!? やっぱり先輩は優しいですね〜」
「──────────────ハァ、わかったよ。で? そのお願いってのは?」
結局は彼女の圧に負けて了承した俺を見て小さくガッツポーズをする麻衣を横目にお願いの内容を訪ねておく
「言っとくけど無理なもんだったら断るからな」
「そんな大した事じゃないですよ。・・・・えっと・・・・その」
「・・・・・」
「こ、今度の日曜日。私と出かけませんか!」
「・・・・・出かけるだけでいいのか?」
「はい! ・・・・・・ダメ、ですか?」
「いや、そんな事でいいなら付き合うさ。どこに行きたいとかあるのか?」
「あ、えっと。最近近くにできた新しい遊園地があるんですけど」
「なるほどな、じゃあそこにするか」
「はい!」
麻衣はなにがそんなに嬉しかったのかと思うほど顔を綻ばせている
しかし遊園地か、もう長いこと行ってないな。最後は確か中学の卒業旅行だったか
あの時のことはもうほとんど記憶の彼方に行ってしまって思い出せる方が少ないかもしれない
誰かが言っていたな、『大人になるというのは様々なものを忘れ、捨てていくことだ』と
俺だっていろんなものを手放してきたが未だに大人になれたかはわからない
つい昨日に力のなさを思い知った身としてはまだまだなのだろう
───────────この歳になって、大人になりたいと思うとはな
「────────っていうのがこの遊園地の特徴なんですけど。・・・・・先輩ちゃんと聞いてくれてますか?」
「え?ああ、すまん聞いてなかった」
「もー、せっかく説明してあげてるんですからちゃんと聞いてくださいよー」
「悪い悪い、今度はちゃんと聞くから」
物思いにふけっている間に麻衣から遊園地についてのレクチャーが始まっていたらしい
俺は今までの思考を頭の隅に追いやり、麻衣の話を聞くことに集中することにした
「──────────────────少し時間を超えてしまいましたが、本日はこれで終わろうと思います。お疲れ様でした」
教授の終了の言葉を聞くと同時に俺は席から立ち上がり講義室を早足であとにする
時計の針はすでに七時半を指そうとしている、このままでは約束の時間に遅れかねない
発車寸前のバスに駆け込み運転手から注意されるもなんとか間に合うかもしれない時間のバスには乗れた
空いている席に座って乱れた息を整えておく
息も落ち着き、あたりを確認すると降りるバス停のすぐ近くなことに気づいて慌てて降車ボタンに手を伸ばす
ポーン 聞き慣れた電子音の後停車アナウンスが流れる
バスがゆっくりと止まりドアが開く、降りるのは俺だけだったようですぐにドアは閉まると
またゆっくりと発進していく
「今の時間は・・・・・あー、これはちょっと遅れるな」
時計の長針はすでに11と12の間、どんなに急いでも間に合いそうにない
それでも小走りで家に向かう、道中神社の前の道ではすでに屋台が開いておりそれなりに人が集まり始めている
「これは楓に文句言われそうだな」
人混みを抜けながら1人呟く、思わず怒っている楓を想像して苦笑いが漏れた
家の前は祭りの喧騒など関係なくいつもの静けさを保っていた
階段を登り廊下を進んで部屋の前に着くと鍵を取り出して扉を開ける
「おーそーいー!!」
扉を開けるや否や聞こえてくる楓の声に苦笑いしつつ軽く謝っておく
「ハハ、悪かったよ。少し講義が長引いてたんだ」
「もー、お祭り始まっちゃってるじゃん」
「始まったばっかりだから今から行っても十分だと思うんだが」
「わかってないなー、こういうのは始まった時にはそこにいるのが普通なんだよ」
そんなもんだっただろうか?少なくとも俺は違ったが・・・・・
「ほらほら、そこで立ってないで早く行こ?」
「ああ悪いけどちょっと待っててくれ、荷物置いてくるから」
俺は部屋に教材のつまったバックを下ろすと中からスマホと財布を取り出す
財布の中を確認して現金が十分なのを確認してからポッケに入れ戸締りを確認してから
外で待っていた楓のところに行く
「もういいの?」
「ああ、多分大丈夫だろ」
「じゃあ早く行こ!」
俺の手を握って走り出す楓に引っ張られながら神社へと向かう
楓はこの前麻衣に選んでもらった服を着ている、意外と気に入っているのだろう
「あんまり走ってると転ぶぞ」
「大丈夫ー」
「わぁ、結構大きいんだね」
「そうだな、俺もこんなに大きいとは思ってなかったよ。もしかしたらここら辺で一番かもしれないな」
神社へと続く道路の端には数多くの屋台が軒を連ねている、始まりの部分には警察官が立っていて車両通行禁止を知らせている、俗にいう歩行者天国だ
道には多くの人が集まっていて気を抜くとはぐれてしまいそうになるぐらいだ
「────────じゃあ行くか。楓、手出してくれるか」
「?いいけど」
不思議そうにしつつも差し出された小さな手を優しく、しっかりと握る
「この人混みだと、はぐれたりしたら探すの大変だろ?」
「う、うん。そうだね」
そう頷く楓の頰はほんのりと赤い
人混みとはいえ多少は手を繋ぐことが恥ずかしいのだろう、俺も少しはそう思うがはぐれないようにする方が大切だ
今度は俺が楓を引っ張る形で祭りへと加わっていった
「あ! あれ食べたい!」
「ん? どれだ」
「あれあれ、あのりんご飴って名前の」
「おお、ここにはりんご飴あるのか。最近見かけなくなってたのにな」
そう言いつつ店主にお金を渡してりんご飴を二つ頼む
「はいおまちどうさん。兄妹仲が良くていいねぇ」
りんご飴を渡しながらそう話しかけてくる店主の言葉に曖昧な笑いを返しつつ楓に手渡す
「ほら、これ楓の分」
「ん、ありがとう。・・・・・・兄妹かぁ」
「・・・・・どうかしたか?」
「ううん、なんでもないよ。────────あっ! あれも見たい」
楓の歩き出した先にあったのは射的の屋台だった
的にはエアガンやぬいぐるみ、お菓子に小物など雑多な印象を感じさせる品揃えだ
「何か欲しいものあったのか?」
「・・・・・あのヘアピン、可愛い」
楓の先には水色のピンに白の花飾りが付いている髪留めがあった
確かに可愛いデザインだし今きている服にも似合いそうだ
「欲しいのか?」
「うん、でも私こういうのやったことないからきっと取れないし。いいよ」
「────────────おじさん、一回分な」
「え?」
「おう! 一回分なら弾は五発だぞ、しっかり狙えよな!」
元気のいいおじさんから弾と銃を受け取り、しっかりと弾を込めてから狙いをつける
最初はまっすぐ飛ぶことを想定して狙って撃つ、弾は当然勢いが足りずやや左下のとことに落ちる
今度はそれを考慮して少し右上を狙って撃ってみる、今度は上すぎたのか的の上を通ってしまう
少しだけ狙いを下にずらしてもう一度、すると────────
パスン
と軽い音とともに的に弾が当たり倒れる、俺が心の中で小さくガッツポーズをしていると
「おぉ! 兄ちゃんやるなぁ! ・・・・・ほら、もう一個はオマケだ!受け取ってくれや」
店主が商品ともう一つ、同じデザインの黒に赤の花飾りが付いているものもくれる
「いいんですか?」
「おう、久しぶりにいいもん見れたしな。あと二発残ってるけどどうするよ?」
「そうですね、せっかくだから大きいのでも狙ってみることにします」
「兄ちゃんにでかいの持ってかれたらこっちは困っちまいそうだな」
そう言って笑う店主の気前の良さに感謝しつつ俺は大物、クマのぬいぐるみに狙いを定めた
「また来てくれよな!」
「ええ、また来年にでも」
結局クマは取れなかったがお目当てのものは取れた、楓に渡そうとすると
「雅紀、射的上手だったんだね」
驚いた表情でそう言われた、そんな楓に髪留めを渡しつつ話に乗る
「別にそこまででもないがな、今回はたまたまだよ」
「────────これ」
「ん? ああ、それ、欲しかったんだろ」
「・・・・・うん、大事にするね」
嬉しそうに笑った楓は水色のピンを使って前髪をとめてみせる
「どう・・・・かな?」
「・・・・・うん、よく似合ってるな」
「えへへ、ありがと」
褒められたことが嬉しかったのか照れくさそうに笑う楓、俺はその手を掴んで
「まだ回るんだろ?」
「もちろん、まだまだ楽しまないと」
そういって張り切る楓を見ていると、自然と俺の口元には笑みが浮かんでいた
「あー楽しかった」
「それなら俺も良かったよ」
あのあと2人で多くの屋台を回った。食べ物の屋台はもちろん輪投げ、クジ引きなんかの遊びメインの屋台なんかも多く行った
「でも楓がクジで三等を引き当てたときは驚いたよ、あれって当たるもんなんだな」
「ふふん、結構私って運がいいのかもしれないね」
そう、あのあと楓はクジで三等の『花火セット』を引いていた
俺たちはそれをするために、コンビニでライターと小さいバケツを買って近くの公園を目指しているところというわけだ
「─────────あっ、ここが雅紀の言ってた公園?」
「そうだな、俺は水汲んでくるから楓は花火の準備しといてくれるか」
「うん、わかった」
俺はバケツに水を多めに入れてから蛇口をひねって止める
ズッシリとくる重さを感じながら楓のところに戻ると、袋を開けて準備万端と言った表情だ
「───────────それじゃ、始めるか」
俺は楓の持っている花火に火をつける
紙の中の火薬に火がつき赤い光と火花を散らしながら周囲をぼんやりと明るくする
俺もすぐに袋から別の花火を取り出して楓のから火を分けてもらう
俺のは緑の光を放ちながら輝いている
「・・・・・きれい」
そう呟いた楓の顔は花火の光に照らされてどこか幻想的な雰囲気を醸し出していた
それからは片方の花火が力つきると新しいのを出して、まだ火がついている花火に分けてもらう
それを繰り返して順調に本数を消化していった
打ち上げ花火もあったがこれは近所迷惑になったりするからまた今度ということになっている
そしてやはり最後に残る花火といえば線香花火だろう
俺たちはゆっくりとそれを眺めていた
「・・・・・やっぱり線香花火はきれいだね」
「・・・・・そうだな、他にはない味がある気がする」
お互いこれが最後の一本ということもあって線香花火の火を落とさないように手元をじっと見つめている
「あっ、・・・・・落ちちゃった」
「俺のはまだもちそうだな」
手元が震えないように慎重に持っているせいか少し手が痛くなってきたがここで落としたくはない
そんな意地で保っていると
「・・・・・ねえ、雅紀。私がプレゼントした花の名前、覚えてる?」
「えーっと確か『リナリア』だっけか。それがどうかしたのか?」
「・・・・・そのリナリアの花言葉は、知ってる?」
「あーいや、花言葉はほとんど知らないからな。どんな意味なんだ?」
「・・・・・リナリアの花言葉は 『私の恋に気づいて』」
「・・・・・え」
楓の言葉に手が震えポトリと線香花火の火は落ちてしまう
だがそんなことは俺の意識にはなく、ただこちらを見つめる楓の目にのみ意識は向いていた
楓はゆっくりと口を開くと、決定的な言葉を口にする
「・・・・・私は、雅紀のことが好き。・・・・・家族や友達に抱くような好きじゃなくて、私は恋人として、雅紀のことが好き」
楓の目には強い気持ちが宿っている、しっかりと俺の目を見て俺の答えを望んでいる
「────────────雅紀は、私のこと、好き?」
「・・・・・・・」
──────────正直なことを言えば、素直に嬉しい
女の子から好意を向けられて嫌な男はいないだろう
・・・・・・でも、今回はそんな気持ちで決めていいものじゃない。────────それに俺の答えはもう決まっている
「────────────楓、お前はまだ中学2年だ。これから中学、高校、大学、全部でまだ9年も人と出会う機会がある。その中できっと俺よりも好きなやつはできる、でもその時に俺と付き合ってたら楓はどうするんだ? ・・・・・だから今のいっときの感情に流されるな、もっと長い、これから先のことを考えて────────────────」
「私のっ、好きな人は雅紀だけ。これからだってそれが変わることなんてない」
食い気味にそう返す楓、引く気はないと目が訴えている
「・・・・・・・わかった、そこまで言うなら一つ約束をしよう」
「・・・・・約束?」
「お前が大学を卒業するまでに、俺以外に好きなやつや気になるやつが1人もできなかったなら。─────────────その時は俺がお前をもらってやる」
「そんなことしなくても─────────」
「悪いが、こればっかりは譲れない。俺はお前を幸せにしたいんだ、その俺がお前の枷になりたくはないんだよ。わかってくれ」
「・・・・・・・・・・」
楓は俯いて黙ってしまう、だがこちらも引くわけにはいかない大げさかもしれないがこれは楓の人生を左右することなのだから
「・・・・・・・雅紀と付き合うことが、私の幸せだって言っても?」
「ああ、お前がそう言っても俺は意見を変えるつもりはない」
「・・・・・約束、忘れないでね」
「ああ」
「・・・・・約束、ちゃんと守ってね」
「勿論だ」
「・・・・・なら、今はまだ我慢する」
「・・・・・ありがとう」
「でも、今我慢する代わりに。このくらいはいいよね」
「え────────」
俺の唇に柔らかい感触が触れすぐ目の前には瞳を閉じた楓の顔がある
互いの息がかかるほど近く、それでいて不思議と嫌な気分じゃなかった
「・・・・・・ふぅ」
一体どれくらいそうしていたのかわからなかったが気がつけば楓は俺から離れていた
「ふふ、これ私のファーストキスだったんだよ」
いたずらな笑みを浮かべる楓に思わずため息が出てくる
「ハァ。お前なぁ。まったく、これからお前がどうなるのか楽しみだけど不安だよ」
「楽しみに待ってていいよ、絶対に可愛くなって私のことふったの後悔させるんだから」
「別にふったわけじゃないだろ、先延ばしにしたんだよ」
「女からしたらそんなの一緒だよ、───────────女は執念深いんだから」
「女の執念深さなんてもう知ってるよ、・・・・・・頑張って俺を後悔させてみろよ」
「もちろん、雅紀も私以外に浮気しないでね」
「浮気も何も、そもそも付き合ってないだろ」
花火をバケツに入れ持ち上げる、さっきよりも重い気がするのは気苦労が増えたからだろう
「花火も終わったし、早く帰るぞ」
「うん・・・・・ね、手繋いでもいい?」
上目遣いで楓がそう尋ねてくる
「・・・・・・毎回こんなに甘えられるとは、思わないでくれよ」
そう言って左手を伸ばすと小さな楓の手が握りしめてくる
いつもより繋いだ手が熱い気がしたのは、きっと気のせいだろう
──────────────俺の心臓がこんなにうるさいのも、きっと気のせいに違いない
終
というわけでこの作品はここで完結になります。ここまでお付き合いくださった方には本当に心からの感謝を差し上げます。活動報告にあとがきのようなものをの載せるのでよかったら見てください。
それでは、最後になりますが。うぷ主的には評価、感想をつけてくれると嬉しいです!