pokemon XY   作:natsuki

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第十二話 VSヘイガニ

【ダンス! ダンス! ティエルノ!】

 

 五番道路。

 ミアレシティから伸びる五本の道路のうちの一つだ。ミアレシティが旅のゴールだと(勝手に)思っていたイクスたちはプラターヌの言葉に従って、一先ず『メガシンカ』について調べることとした。

 メガシンカ。

 カロス地方を発祥として伝わるポケモン進化のもう一つの可能性。

 その方法等は明らかになっておらず、カロス地方ではシャラシティのマスタータワーに住む数少ない人間のみがなることが出来るという。

 その手がかりを探すためにも、彼らはシャラシティを目指すことにした――。

 が、今はイクスしか居ない。

 イグレックたちとは暫くのお別れ。何故ならば、始まりはプラターヌの一言からだった。

 

「そういえば君たちはずっと五人でここまで来たんだよね……。どうだろう? ここは五人に別れてポケモン図鑑を最終的に完成させるというのは」

 

 その言葉に彼らは少なからず動揺した。今まで五人でここまで来たのだ。自分一人だけになっても何とかなるだろうか――と。

 しかし、彼らのそんな不安はある意志によって覆されてしまった。

 モンスターボールの中に入っていたポケモンがモンスターボールを叩いたのだ。慌ててイクスたちは見てみると――彼らの目には、光があった。強い意志があった。火が灯っていた。

 まるで、『もっと旅がしたい!』と言うように。

 それを見てイクスたちはそれぞれの顔を見比べ――最後にゆっくり頷いた。

 

 

 ◇◇◇

 

 そして、今。

 イクスはティエルノに呼び出され、五番道路に来ていた。

 五番道路の花畑。

 そこが彼らの待ち合わせ場所だった。

 

「ティエルノ、ここに呼び出していったいどうしたんだ?」

 

 イクスの言葉にティエルノは小さく頷く。

 

「……バトルがしたいんだ。このモヤモヤを……解き放ってほしいからね」

「モヤモヤ?」

「博士に別れてポケモン図鑑を完成させるように言われたでしょ?」

 

 イクスは頷く。

 

「それが、どうも僕には踏ん切りがつかなくてさ。だからいっそポケモンバトルでこてんぱんにやってもらおうかな、と」

「いや、その思考は間違っていないが」

 

 イクス――いや、世のトレーナーは皆知り合いに「こてんぱんにしてくれ」等と言われてはいそうですかと言える人はそういないだろう。

 勿論イクスもその例には漏れず、ティエルノにそう言われたとしても躊躇ってしまうばかりだった。

 だが、直ぐにそれは掻き消されることとなる。

 ティエルノの目がぶれることなく、ただ真っ直ぐとイクスの目を見ていたことだ。

 

「……解った」

 

 イクスはそう言うと、モンスターボールを投げた。

 ティエルノもそれを見て大きく頷くと――イクスと同じく、モンスターボールを投げた。

 そして同時に地面に着いて、モンスターボールからそれぞれポケモンが出てきた。

 イクスはハリボーグ。

 ティエルノはヘイガニだ。

 

「ヘイガニか……ティエルノの幼馴染なんだっけ?」

「そうだよ、僕の小さい頃からの友達さ! ヘイガニたちとダンスチームを組む! それが僕の夢!」

 

 そう言って、ティエルノはヘイガニに向かって、

 

「ヘイガニ、『バブルこうせん』!」

 

 叫んだ。

 対して、イクスは、

 

「ハリボーグ、『つるのムチ』!」

 

 命令すると、ハリボーグからムチが撓った。そしてそれはヘイガニへと容赦なく命中する。

 

「ヘイガニ!」

 

 ヘイガニはそれをまともにくらってしまい、倒れた。

 

「お疲れ様、ヘイガニ」

 

 そしてヘイガニをモンスターボールへと戻し、戦いはあっという間に決した。

 

「あ~あ……負けちゃった……」

 

 そう言ってティエルノはへなへなと崩れ落ちた。

 だが、その表情は笑っていた。

 

「やっぱりイクスは強いなあ……。ジムリーダーを倒しただけのことはあるよ」

「ジムリーダーとはいっても、カロス地方のうちの一人だけだぞ」

 

 そう言うとティエルノは失笑する。

 

「そうだね」

 

 さてと、とティエルノは起き上がると、空を見上げた。

 ちょうどその時だった。拍手が彼らに向けて捧げられていたのは。

 そちらを振り向くと、そこにいたのはひとりの少女だった。金髪のトリプルテールにヘルメット、ローラースケートにスパッツとかなりスポーティーな格好だった。

 

「君は……?」

「私はコルニ! ローラースケートが好きでついついこの辺まできちゃうんだよね~」

 

 彼女の隣には二匹のルカリオがいた。

 そして、そのうちの一匹がイクスにぴったりとくっついた。

 

「どうしたの、ルカリオ?」

 

 コルニが訊ねるも、ルカリオは何も反応しなかった。

 

「うーん……ルカリオは波導を読み取るというし、それで君の波導を読み取ったのかな?」

 

 そうコルニは自己解決すると、イクスが歩いてきた方向へと走っていった。彼女が手を振ったので、イクスとティエルノも手を振ることとした。

 

「僕は、僕なりに旅をすることにするよ」

 

 コルニが居なくなって、ティエルノはそう言った。

 それに、イクスはただ頷くだけだった。

 そして、コルニがローラースケートでやってきた方向へ歩いて行った。

 残されたのはイクスだけだった。

 帽子の位置を細かく決め、ティエルノを追うように歩き出した。

 次の目的地はコボクタウン。そこまで、あと少しだ。


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