pokemon XY   作:natsuki

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第十四話 VSトリミアン

 パルファム宮殿はコボクタウンの北西に位置する大きな宮殿である。

 三百年ほど前の王が、その権力を鼓舞し、自慢するために造らせた城であり、そのつくりは一言で言えば『豪華絢爛』という言葉が似合う作りになっていた。また、その豪華絢爛な建物と、あまりにも広すぎる庭を見に来るために訪れる観光客も少なくない。

 イクスとサナも、そのパルファム宮殿へとやってきていた。

 

「……にしても困るよね。入るのに千円も取られるなんて! しかも一人!」

 

 サナは怒っていた。

 それもそのはず。このパルファム宮殿に入るには保全費だか管理費だかで一人千円取られるのである。それを知らなかったイクスとサナはまんまとそのお金を徴収されてしまったのだ。

 

「まあ、入れたんだから良しとしようよ」

 

 この千円はあとでどうにかしなくちゃな。イクスはそう思うと、宮殿の中へ足を踏み入れた。

 

 ◇◇◇

 

 絢爛豪華な建物は、見るものを圧倒させる。

 それがパルファム宮殿の特徴でもあった。現にイクスとサナが入るとそこにはたくさんの人がその光景に見惚れていたし、写真を撮る人間も多く言いた。

 因みにパルファム宮殿では内部でのポケモンの連れ歩き及びポケモンバトルは禁止となっているため、安心して中を見ることが出来る……というわけだ。

 

「おろろーんおろろーん……わたしのかわいいトリミアンは、いったいどこへきえてしまったのか……」

「トリミアン?」

 

 そこにふと、ひとりの男性が通りかかった。

 そして、彼が言った言葉を、イクスは聞き逃さなかった。

 

「そうなんだ。わたしのトレビア~ンなトリミアンが、いなくなってしまったんだ……! それはたぶん散歩のときに矧ぐれてしまったのかも解らない。なにせあの庭は広大だからね! ちなみにもう庭は探索したかい?」

「いや、まだ」

 

 イクスが答えると、男は口を窄める。

 

「そうか。そいつは残念」

 

 男は頷く。

 

「……それより! 早く私のトリミアンちゃんを助けてはくれないかい!? 頼むよ!」

 

 強くそう言われてしまっては、イクスも否定の意志を示すことは出来なかった。

 

 

 

 

「どうして、あの場で断ることができなかったのよ? イクっち」

 

 サナの言葉を聞いてイクスはげんなりしてしまった。サナの言い分も最もだ。なんで彼は直ぐに了承してしまったのだろうか。ここで彼の言い分を聞いてみることにしよう。

 

「だってさ、考えてもみてくれ。俺たちは何をしに来た? ポケモンの笛を借りに来たんだろ。だったら恩は早めに、ね」

「恩? どういうこと?」

「サナは気づかなかった? あの人……きっとここのオーナーだよ」

 

 それを聞いてサナは声に出してしまうところだったが既のところで止める。

 そして、気持ちをある程度整えたところで改めてイクスに訊ねる。

 

「……なんで解ったの?」

「あまりにも小奇麗だったからね。それで」

「それだけ?」

「いいや、もっとあるよ。例えばサナはこんな豪勢な調度品がたくさんある部屋でポケモンを放って、目を離しておくかい?」

「……普通なら、しないよね」

「つまりそういうことだよ」

 

 イクスは首肯し、

 

「普通ならしない。けど、ある人間はそれを簡単にしてしまう。そんな抵抗なんて考えることもせずに、ね。それはいったい誰だと思う?」

「……この屋敷の主、しか考えつかないよね。イクっちの仮説通りだったら」

 

 その言葉にイクスは頷いた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 とはいえ。

 あの主と思われる人間の言うことを忠実に聞くとなると、広大な庭を捜索範囲に加えなくてはならないことになる。

 正直なところ、それは彼らにとって辛かった。しかしそれはやらなくてはいけないし、それをしなくては話が進まない。

 だから彼らは早くトリミアンが見つかることを祈って探すほかなかった。

 

「あっ! いたー!」

 

 だから、あっという間にサナがトリミアンの姿を見つけたときは、イクスはほっと溜息を吐いたのだ。それは安堵から来たものだ。

 サナはトリミアンを抱き締めていた。そしてトリミアンは逃げる様子も見せることなく、サナの身体で眠っていた。

 

「……なんだか、あっという間だったな」

 

 呟いて、イクスは腰をぽんぽんと叩いた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「私のトレビアンなトリミアンを見つけてくれて本当にありがとう! ……忘れていたけど、私はここの主だよ! 素晴らしかっただろう、あの庭は? いつも私のトレビアンなトリミアンちゃんはあそこを歩いているからこそ、このトレビアンなスタイルを維持しているのかもしれないね!」

 

 主の長い長い言葉に、イクスとサナは若干圧倒されながらも頷いていた。

 

「君たちののぞみをひとつだけ叶えてあげよう。トレビアンなトリミアンを見つけてくれた褒美だよ! なんでもいい、言ってみなさい!」

「それじゃ……『ポケモンの笛』を貸していただけないでしょうか」

 

 それを聞いて主は目を細める。

 イクスは言葉を続ける。

 

「実はこのパルファム宮殿の南でカビゴンが眠ってしまっていて、通ることができなくなってしまっているんです。そこが通れなくては困る人も多くて……そして僕たちはここにやってきて、ポケモンの笛を貸していただこうかと……」

「……そうだったのか、それは知らなかった。すまなかったな、迷惑をかけてしまっていたようだ。君たちにポケモンの笛を授けよう。少し待っていなさい」

 

 そう言って主は奥の部屋へ消えていった。

 少しして、主は何かを持って帰ってきた。

 それは笛だった。モンスターボールがあしらわれたデザインで、少し奇抜だった。

 

「……これがポケモンの笛だよ。それでやってくれ。それを吹けばどんなポケモンでも目を覚ますはずだ」

 

 そしてイクスはそれを受け取った。


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