「プラターヌ博士、私はこれからホウエンへと向かってみようと考えています」
ところ変わって、プラターヌ博士の研究所にて二人の男が会話をしていた。
ひとりはホロキャスターを開発したフラダリ。
そしてもうひとりはポケモン研究の権威、プラターヌだ。
「……どうして唐突にそんなことを言いだしたのです、フラダリ氏」
「ホウエン地方というのは遠い場所であることは私も知っております。ですが、ホウエン地方で新たなメガシンカが発見されたと聞くではないですか。私とて学究の徒。すぐにその場に向かい、確認したいのです」
「なるほど。……それは高尚な理由です。私もカロスのことが忙しくなければすぐにそちらへ出向きたいものですが……」
「ならばこうしましょう。私が映像を録画してきます。それを、逐一ホロキャスターを通してお見せするというのは」
「さすがフラダリ氏!」
プラターヌは二人分のコーヒーを持ってきてテーブルへ置いた。
「おや、いつもの二人はいらっしゃらないのですか?」
フラダリの言葉にプラターヌは肩を竦める。
「ジーナとデクシオですか。彼らは今、イクスくんたちにパーツを渡しに行きましたよ。漸く新しいカロス図鑑のバージョンアップが出来ましたからね。本当ならば私が直接会いに行って説明したいところですが、そうも言っていられません。まだまだ世界は知らないものに満ち溢れています。だからこそ、調べなくてはならないのです」
「成る程。流石はプラターヌ博士。関心いたします」
フラダリは首肯。
プラターヌは腰掛け、再びフラダリに訊ねる。
「それで、出発はいつごろを?」
「なるべく早く出向きたいと考えております。予定では明後日でしょうか」
「明後日……ですか。大変なことになるとは思いますが、お気を付けて」
「ええ。ありがとうございます」
そしてフラダリとプラターヌの会話は終了し、彼らは別れた。
◇◇◇
ところ変わって、ここはコウジンタウン……ではなく、地繋ぎの洞穴を抜けた道路である。そこは高台になっていて、そこから景色を望むことができる。
「あそこに見えるのがショウヨウシティか。そしてそこに居るのはジムリーダー……」
「ああ、くそっ。あそこまで見えているのに行けることが出来ないなんて。ここから崖を降りようなんて……まあ出来ないよな」
「そりゃそうだよ、イクス。危険だ」
そうイクスに注意したのはティエルノだった。
「そんなことよりあの洞窟ズバットだらけだったわよね? それを避けていたらスカートが汚れちゃったわ……!」
「ま、まあ……洞窟にズバットが住んでいるのは半ば常識みたいなことだし……」
そう話をするのは女性陣だ。
さて、ひとり会話から残されたトロバは小さく溜息を吐いて、前を見る。そこに立っていたのは、彼らもよく知る人間だった。
「あ……あなたたちは」
「お待ちしておりました、図鑑所有者たち」
そこに立っていたのはジーナとデクシオだった。
デクシオはあるものを持っていた。それは小さなケースだった。
「いったい、どうしたのですか?」
訊ねたのはイグレックだった。
その言葉にジーナは答える。
「プラターヌ博士が新しいアップデートをしたい、と言っていたの。だけれど、あなたたちは旅を続けているでしょう? とはいえわざわざ研究所まで戻ってもらうのも忍びない。だから、私たちに頼まれたの。アップデートパッチを、持っていくように」
「ここにやってくるのを待っていた、ということですか?」
ジーナはそれに首肯する。
「そしてあなたたちにこのパッチ……が入ったチップを渡します。そしてそれを図鑑に入れることで自動的にパッチが適用され、バージョンアップが終了する……プラターヌ博士はそう言っていました」
「つまり、」
トロバは訊ねる。
「それをすれば今まで見たことのなかったポケモンが、きちんと記録されるようになるということですか?」
「ええ。そうだと思います」
そしてイクスたちの図鑑にアップデートパッチが入ったチップが入れられる。入れた瞬間図鑑は起動し、『パッチを適用しています』という無機質な文字が画面上に浮かび上がるのを見た。それを見て図鑑が正常に反応していることを知った。
パッチの適用はものの五分で終わってしまった。
「それでは、私たちはこれで。良い旅を」
それだけを済ませて、ジーナとデクシオはイクスたちが出てきた地繋ぎの洞穴へと入っていった。
イクスたちは図鑑を見る。そこにはこう書かれていた。
――コーストカロス図鑑、と。