「ふざけている、そんなこと。絶対に許せない……! カロスの人の思いを踏みにじるつもり!?」
「カロスの思い? はて、何のことかな。考えてみろ。すでに我々は科学力を手に入れている。カロスの力も掌握しているといっても過言ではない」
破壊の繭を見つめながら、赤スーツの男は微笑んだ。
「素晴らしい……。これが、カロスの伝説ポケモンだというのか。今は休眠中だと聞くが、それも都合がいい。我々のアジトにもっていくには」
「それをみすみす見逃すと思っているの?」
そういったのはカルネだった。
カルネの問いにうなずく赤スーツの男。
「それくらい解っている。解っているとも。だからこそ、我々は……これをするだけで良かった」
ずらり、と気づけばカルネたちの周りには赤スーツの男の集団が居た。
「……まさか! この場所を、」
「教えていました。最初から、ね? それくらいしておくのは当然のことでしょう? 別に、私たちは『目的』さえ達成できればいいのですから――」
そう言って、赤スーツの男は、破壊の繭を指さした。
「さあ! クセロシキ様に献上するために、あの破壊の繭を持ち帰るぞ!!」
「そんなこと――」
「させない、と? さすがはカロスチャンピオンのあなた、それにしても報告を聞いたときは驚いたわ。まさかほんとうにこんなところに居るなんて……」
その声を聴いて一番驚いたのは今まで上に立っていた赤スーツの男だった。
「ま、まさか……コレア様!? なぜ、コレア様が!」
紫色の髪をした、赤い服装の女性が立っていた。
コレア、と呼ばれた女性は言った。
「だから言ったじゃない。これから大急ぎで計画を進めないといけない。もう時間は限られているのだから。……行くわよ」
「待ちなさい、あなた……フレア団は、いったい、何を目的としているの!?」
「だから、その男が言ったじゃない」
面倒くさそうな表情をして、コレアは言った。
「この世界の人間を減らし、争いの種となるポケモンを消し去ること。これが私たちの目的。さ、行きましょう」
「待ちなさい、まだ話は――!」
「ハハハ、じゃあねー」
そして、コレア以下フレア団は光に包まれた。
「『フラッシュ』か!」
目を瞑る。フラッシュをされてしまえば、そう簡単に動くことは出来ない。
そして、光のおさまった段階で目を開けると――そこには誰も居なかった。
「誰も……いない? 逃げられた?」
「ねえ、イクス、見て!」
そう言ったのはサナだった。サナが指さした方向、そこには破壊の繭があった――はずだった。
しかし、
「は、破壊の繭が……!」
もう、そこには破壊の繭などなかった。
正確に言えば、破壊の繭があったと思われる形跡、それだけが残されている状態になっていた。
◇◇◇
「ボスはまだ戻らないんだゾ」
「まだホウエンに?」
「ホウエンでメガシンカが誕生した。その歴史を紐解くために向かった……そう言っていたんだゾ」
「まったく……仕方ないことね。とにかく、私たちは私たちで計画を進めていきましょう。ところで、XとYについては?」
「Yについては確保。現在このアジトに向けて運送中なんだゾ。Xも現在エスプリが捜索中。……まあ、時間の問題なんだゾ」
「そうならいいけれど。とにかく、早急に進めましょう。それが我々フレア団の望みであり、ボスの望みなのですから」
「解っているんだゾ」
そして、二人の会話は終了した。