対策を練らねばならなかった。
問題はこれからのことだった。
「破壊の繭はカロスに伝わる伝説のポケモンだった……。しかし、それを使って何をしようとしているのか、はっきり言って解らないことではあるけれど」
カルネは頷きながら、イクスたちのほうを見た。
「……それにしても、あなたたち、よくフレア団相手に怖気づくことなく戦ってくれた。それについて私は、感謝をしなければならない。ありがとう」
「カルネさん……、あなたは」
イクスの問いを最後まで聞くことは無く、カルネは頷いた。
イクスが何を思っているのか、カルネにはもう解っていた――ということだろう。
「そう。確かにあなたが思っている通り、私はカロス地方のチャンピオン。ほんとうならば、率先してフレア団の悪事に気付かなければならなかったのだろうけれど……。残念だった、もう少し早く気付いていれば……このようなことにはならなかったというのに」
「カルネさん……」
「それはきっと、間違いだと思うぞ」
「誰――?」
それを聞いた彼女の声は、どこか儚げなものだった。
「まさか『アイツ』からああいう言葉を聞いたときは驚いたものだが、ほんとうにこのようなことになるとは思いもしなかった。知っているか? かつて、イッシュ地方では、ポケモンと話すことの出来る人間が居たことを。その純粋すぎる思いを、たくさんの人が踏み躙ったことを。そして彼は世界を知るために、旅をした。……まさか、数年後にまた出会うことになるとは思いもしなかったけれどね」
そこに立っていたのは、一人の青年だった。
黒を基調としたファッションをしていた青年は、一匹のポケモンを連れ歩きしていた。
そのポケモンは炎タイプのポケモンなのか――鼻から息を抜くと、火が噴き出てきた。
「……まさか、あなたは……」
カルネの言葉に、彼は頷いた。
「俺の名前はブラック。遠いイッシュ地方のチャンピオンで……今はしがない旅人だよ。君たちを、世界の危機を救うために、ここにやってきた」
◇◇◇
イクスたちは輝きの洞窟を抜け、一度コウジンタウンへと戻ってきた。
「なんというか、とても疲れたね……」
サナはテーブルにへたり込んで、そう言った。
当然だろう。あれほどのバトルを経験し、地面に落下。さらにいろいろとついていけない様々な事実を聞いてしまったからだ。疲れていないほうが、間違っているかもしれない。
「それにしても、まさかあなたが来てくれるとは思いもしなかったわ、ブラックさん」
カルネの言葉を聞いて、頷く。
「チャンピオンたる者、ほかの地方の危機を聞いたら駆けつけないわけにもいかないだろう?」
「けれど、どうしてそれを? ……ほかの地方にもこの地方の危機が知れ渡っているというの」
「いいや、違うよ。ただ、さっきも言ったかもしれないが、古い知り合いにポケモンの声を聴くことが出来るヤツが居てね……そいつから教えてもらった」
「ポケモンの声を聴く? いいなあ、私も仲間のポケモンの声を聴きたいなあ……」
イグレックの言葉を聞いて、ブラックは俯く。
「……それが、ほんとうにいいことばかりであるかは、言わないほうがいいだろう」
「?」
ブラックが言った言葉を、彼らは聞き取ることは出来なかった。
唯一、事情を知っていると思われるカルネだけがブラックと同じように俯いた表情を見せた。
「……問題は山積みだ。いかにして、フレア団の野望を食い止めるか。アジトに向かうしか、無いだろう」
「アジト……! まさか、ブラックさん、あなた、その場所を……!」
ブラックは頷く。
それを聞いてカルネは笑みを浮かべて、何度もうなずいた。
「そうよ、それよ。まだ時間はあるはず。まだ時間は残っているはず! それならば、何とかまだ間に合うはず……!」
「だが、一つ問題が残っている。それは――」
ブラックはイクスたちを指さして、こう言った。
「君たちと、フレア団での戦力差だ。現状の戦力差でフレア団に勝てるとは到底思えない。すなわち、レベルアップが必要だ……そして俺は、そのためにカロスにやってきた」