「フラダリ様、時間となりました」
やってきたのは、眼鏡の女性――パキラだった。
「おお、パキラ。もう準備が出来たか」
「パキラ……、あなたはどうして!」
「フラダリ様の思想に共感を得た。ただそれだけの話ですよ」
パキラはカルネから目線を落とす。
フラダリは笑みを浮かべたまま、最終兵器のスイッチを見つめた。
「長い、時間だった。この最終兵器を撃ち出せば、すべてが終わる。私の念願が……」
「お前たち、何を考えているのか分かっているのか。私が、いったいどうなったのか、知らないわけでもないだろう!」
AZの言葉を聞いて、ゆっくりと頷いた。
「あれは失敗ではないだろう。寧ろ成功といってもいい。副作用、だったか? それによって永遠の命を手に入れたと言われているが、まさかほんとうに不老不死の力を手に入れているとは。……だが、だからどうした?」
「何だと……?」
「力の充填は完了している。鍵も差し込んでいる。あとはこの装置のスイッチを押すだけ。非常にシンプルで、簡単な結論ではないかね? ……素晴らしい世界を作るために、私は世界を滅ぼす。至極シンプルな話だ」
「それもまた、エゴじゃないのか!」
「エゴ? いいや、違う。これは世界の意思だよ」
フラダリはスイッチを弄びながら、話を始めた。
「しかしながら、結局のところ……それはエゴと言われても仕方ないのかもしれないがね。ただ、私は世界の意思だと考えている。それを受け入れるのは、この世界に住む存在としては当然の責務」
「何を言っているんだ! この世界は、この世界は……!」
この世界は汚れた世界。
だが、そうだろうか? イクスはずっと暮らしてきたこの世界を、この広い世界を見てきて――この世界が汚れているとは到底考えられなかった。
だから、この世界をリセットするといったフラダリの思想が理解できなかった。
だから、イクスはフラダリをじっと見つめることしか出来なかった。
「……ふん。所詮子供には分からない、ということだ。致し方あるまい」
「フラダリ様、もう時間が御座いません。いつでも兵器を発動出来ます」
パキラの言葉を聞いて、フラダリは深く頷いた。
「うむ。それでは時間だ。終焉の時だ。このカロスに破壊と再生を……」
そして、フラダリは最終兵器の起動スイッチを押した。
刹那、フレア団アジト全体が揺れ始めていく。
「最終兵器を……起動したな!」
AZの言葉に、フラダリはただ笑みを湛えるだけだった。
◇◇◇
セキタイタウンの中心部から、何かが地上にせり上がってくる。
それは何か生き物の頭のように見えたが、完全にせり上がった状態でゆっくりと頭が四つに開き、それはまるで花のようだった。
禍々しさすら放っている、巨大な花。
「まさか、あれが最終兵器ってわけじゃあ……」
「あれだよ。何というか、アジトに入っていったあいつらを信じる。そして俺たちは、フレア団を倒す。ただ、それだけだよ」
コルニ、ウルップの会話は花を見つめながら切り上げられた。
そして花の中心にエネルギーが充填され――最終兵器はそのエネルギーを撃ち放った。
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