pokemon XY   作:natsuki

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第二話 VSデルビル

 イグレックがその声の源に辿り着いたとき、既にイクスたちもその場に居た。先ずは目の前の情景から、どうなっているのかを確認する。

 サナは少し小高い岩場に腰掛けている。しかし、身体は震えていた。

 そしてサナを取り囲むように――五匹のデルビルの姿があった。

 

「デルビルは縄張り意識がとても強いんですよ」

 

 トロバはイグレックに聞こえるように小さく呟く。つまりは、サナは解らぬままデルビルたちの縄張りに入ってしまった――そういうことになる。

 

「五匹に対してこっちは四匹……少し戦力不足かな?」

「いや、戦力はあるに越したことはないよ。……ケロマツ、『あわ』だ!」

 

 ティエルノはそう言うと、ケロマツは口からシャボン玉のような泡を吐き出した。それはデルビルたちに向かうと、ぶつかった瞬間にそれは破裂した。

 

「五匹全員に当たっている……!」

「これが群れバトルのいい特徴だよねぇ」

「群れバトル?」

 

 イグレックはその単語を聞いたことが無かった。

 

「群れバトルとは今の状況をさすんだよ。複数対一、または複数対複数……そのバリエーションしかないけど、戦法が無限大に広がるというのは、言わなくても見えてくるかなぁ?」

 

 ティエルノの言葉に、イグレックはこくこくと頷く。

 バトルに戻ると、技を食らったデルビルたちは、一斉に炎を吐き出した。それは、フィールド一面を焼きだした。

 それの意味は。

 

「……これが群れバトルの厄介でもあり、長所でもあるポイントさ。自分の攻撃が敵ポケモン全体に当たるけれど、それは敵にも同等の条件……というわけさ」

 

 イクスとトロバのハリマロンは、その炎によるダメージをもろに受けてしまった。

 

「くっ……だけど、まだ此方が勝っているのは確かだね」

「ハリマロン、『すなかけ』だ!」

 

 トロバは直ぐに反撃を開始した。しかし、とても草タイプの技で炎タイプに挑もうなど思ってはいない。

 先ずは、外堀を埋める必要がある――というわけだ。

 砂が目に入ってしまったデルビルたちは、暫く技の命中精度が下がる。そして、それは彼らにとってチャンスだった。

 

「ケロマツ、もう一度『あわ』だ!」

「ハリマロン、『ひっかく』!」

「フォッコ、『たいあたり』!」

 

 そして四匹の攻撃がデルビルたちに当たり――デルビルたちはその場に倒れた。

 

 ◇◇◇

 

「……しかし、大変だったね」

 

 あのあと、デルビルたちは森の奥に消えていった。

 しかし、デルビルはこの北の森にはあまり居ないポケモンなのだ。ここまで群れを成して出てくること自体が、珍しい。

 

「……まったく。どうなっているんだろうね」

 

 ティエルノはぶつくさいうが、ほかの人にとってはよく解らないことだった。

 

「カロス地方の生態系が……変わっている、ということ?」

 

 イクスが言うと、ティエルノはポケモン図鑑を手にとった。

 

「ポケモン図鑑を見てもらえれば解るんだけどさ、デルビルはこの地域にいるはずのないポケモンなんだよ。だから……ここに居るのがおかしいのさ。僕らがもつこのポケモン図鑑の説明がおかしい可能性も、確かに否めないけれどね」

「デルビル……きっと、私たちが間違って縄張りに入ってしまったから、あんなに怒ってしまったんだわ」

 

 イクスが言うと、ティエルノは首を横に振る。

 

「デルビルはこの辺には生息しないポケモンだよ。……彼らではなく、森に住む古来のポケモンの縄張りを、彼らが侵しているんだ。それは、僕らも例外ではないけどね」

 

 ティエルノがそう言って頭を掻くと、立ち上がった。

 

「よし、それじゃあ……先へ進もうか。急がないと、ハクダンシティに着く前に日が暮れてしまうよ」

「そうね」

「そうだな」

「そうだね!」

 

 ティエルノの言葉に、三人が頷いた。

 

 ◇◇◇

 

 その頃。

 とある研究施設。

 

「モミジー、まだ終わんないのー?」

 

 緑色の髪をした、女性が青い髪の女性に問いかける。彼女たちは皆、似たような格好をしていた。共通点は――服装が凡て赤いことだ。緑の髪をした方は、ハーフパンツに七分丈のシャツ、そして肘までかかる手袋、膝丈のブーツを着用していた。対して、青い髪をした方は、スカートで、中にスパッツを履いている。そして手袋はつけておらず、代わりに長袖の服を着ていた。彼女たちはともに、ゴーグルを着用している。

 モミジと呼ばれた女性が深い溜息をついて、椅子を回転し、訊ねた方へと向く。

 

「そんなこと言うけど、バラ、あんたはもう終わったの?」

「んー、五分五分」

「何がよ」

「終わる可能性と、終わらない可能性」

「で? 実際は?」

「まだ終わっていないのでした」

「バカ」

 

 そう言うとモミジはバラの頭をごつん、とグーで叩く。

 

「グーはないでしょ!」

「巫山戯てる罰」

「えー」

 

 バラはそう言って、空いている回転椅子に座る。

 

「そういえばさ、部下から来たんだけど」

「何?」

「――『あれ』が、無事に渡ったらしいよ」

 

 バラの言葉に、モミジはぴくりと身体を震わせる。

 

「へえ……」

「どう? ビッグニュースだと思わない?」

「一面記事レベルね」

「でしょー」

 

 バラは回転椅子をクルクルと回す。

 モミジは再び機械の開発へ勤しむ。

 そんな日常だったが、一部だけ非日常も紛れている。

 それが彼女たち――フレア団のとある研究者の日常だった。




【次回予告】

私の妹はカメラマン!



第三話 VSヤンチャムⅠ


2013年10月8日投稿予定。

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