ハクダンシティ。
街の中心には大きな噴水があり、それが街のシンボルにもなっている。自然と人間が調和されている街としても有名で、ミアレ新聞社が主催する『カロスタウン・シティカップ』では二年連続一位を獲得しているほどだ。
そんな街に、イクスたちはやってきた。
「ここがハクダンシティかー……。俺たちだけで来るのは、初めてだよな?」
「そうだねー。いつもはママやパパが一緒だったし。すっごい新鮮な気分!」
イクスの言葉に、サナが頷く。
この街、ハクダンシティ迄でも、彼らはここまで一人で(子供たちだけで、と言ったほうが正しい)来たことはない。
だから彼らは、こんな近いところですら、冒険をしたと実感しているのだ。
「……やっぱり、この街に来たんだからポケモンジムだよな!」
「そうだね。ポケモンジムならば、一番自分の力がどれくらいかを試すことができるし……いいかもしれない」
ティエルノがうんうん頷くと、トロバがあるものを見つける。
赤いカラーリングの二階建ての建物。
ポケモンセンター、だ。
「まあ、先ずはポケモンセンターに入ろうよ。そこでポケモンを回復したりしないと。まださっきのバトルでダメージが残っているんじゃないかな?」
「そうだね」
トロバの言葉を聞いて、彼らは一路ポケモンセンターへと向かうこととした。
ポケモンセンターへ向かうと、一人の女性がカフェカウンターにある席に腰掛けていた。どうやらこの街のポケモンセンターはカフェとくっついているらしい。コーヒー豆の焙煎されたいい香りがポケモンセンター内に漂っている。
「……あの人、何か見たことあるよーな……」
「そう?」
イクスの言葉に、イグレックもそちらを見てみるが――思い当たるフシもない。
そんなことをしていると、どうやらあちら側も見られていることに気がついたらしい、こちらを見てきた。
茶髪の女性だった。肩にはエリキテルを載せている。
「……あら? どうかした?」
女性は訊ねるも、
「いやー、どっかで見たことがある気がしたんですが……どうやら人違いのようで」
対してイクスは飄々とした感じで答える。
「……そうだ。これも何かの縁よ。ちょっと、私の取材に協力してくれない?」
「……え?」
女性の言った言葉に、イクスたちは同時にそう言った。あまりにも予想外のことだったからだ。
「ああ。その前に、私の自己紹介をしておかなくちゃね。私の名前は、パンジー。ミアレ新聞社でジャーナリストをしているわ。実は今……この街にある問題が起きているのよ」
パンジーが言う取材とは、つまりこういうことだった。
この街には今、悪戯者のポケモンがいるらしい。しかも、皆がそのポケモンの姿を見ていないというのだから、タチが悪い。
手法は様々で、例えばちょっと目を離した隙に無くなってしまっていたりとか、監視していてもその目を塞がれてしまうなどがあるらしい。
「しっかし……そんなので見失うとか有り得るのか?」
イクスが訊ねると、パンジーもため息をつく。
「そこが解らないのよねえ……。被害は甚大らしいのだけれど、まだ目星もついていない。警察だって必死に捜索しているのに、よ。これっておかしな話だとは思わない?」
「よっぽど早いスピードで奪っているんだろうなあ」
「やはり、そう考えるのが一般的よねえ……」
そう言うと、またパンジーはため息をついた。
「実はね、私の妹からの依頼なのよ。ちょっと突き止めてくれないか、って」
「その妹さんがやる、という手はなかったんですか?」
イグレックが訊ねる。
「確かに私もそう言ったのだけれど、彼女忙しいのよ。だから、しょうがないかな、って感じ」
「しょうがない……なら、しょうがないですけれど。どうして、それを私たちに話したんです?」
「捕まえるのを手伝って欲しいのよ。目星が全くついていないんだけど、この街はとても広いから、一人で探すのは大変なのよ?」
「ジャーナリストの仲間とか」
「私はフリーなの」
それを聞いて、ああこの人ぼっちなんだな、と誤解するイクス。
「……今変な誤解したわね?」
「いいえ、別に」
「まあ、いいわ。それで……お願いできないかしら? 勿論、見返りはするつもり」
「どれほど?」
「ジムリーダーに優先的に戦える権利を差し上げるわ。私、ジムリーダーと知り合いなの」
その言葉に、イクスは大きく頷いて、双方の意見が合致した。
次回
第四話 VSヤンチャムⅡ
2013年10月12日投稿予定!