pokemon XY   作:natsuki

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第五話 VSフシギダネ

 ポケモンセンター内にある小洒落たカフェにイクスたちはやってきた。理由は単純明快だ。

 

「君たちがまさかこんなにも早くハクダンシティに来るなんて、思ってもみなかったよ! いやぁ、まったく、日々驚かされる!」

 

 そう言ってプラターヌはニヒルな笑みを浮かべる。その姿を見ると、やはり未だに彼がポケモン博士とは信じがたい。

 しかし彼は列記としたポケモン博士なのだ。カロス地方のポケモンを、何年にも渡り研究している。

 

「しかし……どうしてここまで来たんですか?」

 

 サナが訊ねると、プラターヌは持っていた鞄を机上に置いた。

 

「実は君たちに一つ、渡し損ねたものがあってね。それを渡しておかなくては……と、僕が自らここに来たまでだ」

 

 そう言って、プラターヌは鞄を開ける。そこにあったのは――モンスターボールだった。

 

「これは……?」

「君たちにとって、大いに重要なものだよ」

 

 勿体ぶらすプラターヌだった。

 そして、彼がそんなことを言ったので、イクスは、モンスターボールを凡て開放する。プラターヌはそれを見て慌ててしまった。

 

「な、なんてことを……」

「すげー!」

「かわいいー!」

 

 男性陣、女性陣それぞれのファーストインプレッションがそれだった。そこに居たのは、彼らが見たことのないポケモンだった。

 

「遠いカントー地方に居るポケモンだ。それぞれ、ヒトカゲ、フシギダネ、ゼニガメ。皆、強いポケモンだ。……あぁ、そうだった。選ぶならば、初めに君たちが決めたポケモンと相性のいいポケモンにしたほうがいい。例えば、フォッコの苦手なタイプは水だから、草タイプのフシギダネならばその相性もどうにかなるだろ?」

 

 その言葉に、イクスたちは頷く。そして、彼らは選び始めた。

 彼らの心の中では、既に決まっていたらしかった。

 

「ほう……なるほどね」

 

 それを見たプラターヌは思わずうんうんと頷いていた。

 イクスとトロバはゼニガメ。

 イグレックとサナがフシギダネ。

 そしてティエルノがヒトカゲ――そういう結果になった。結局はプラターヌの指示をそのまましたがった形となる。

 

「いやぁ……しかし、渡し損ねて済まなかったね。私にもいろいろと事情があって……」

 

 そう言ってプラターヌは照れ隠しに笑った。

 

「事情?」

「ま、まあ。その辺は特に今語るべきことでもないだろう。……君たちはポケモントレーナーとなったのだから。それくらいは自覚してほしい……そんなポイントがある」

 

 そう言うと、プラターヌはイクスを指差し、言った。

 

「――君にとって、『ポケモン』とは何か?」

 

 間髪を入れず、イクスは答える。

 

「『仲間』だ。一緒に強くなって、笑い合って、仲良くなる……そんな存在だと、思う」

「なるほど」

 

 それを聞いて、うんうんと頷く。

 

「では、君は?」

 

 次は、サナを指差す。

 

「私は、『友達』。だって、ポケモンといると楽しいんだもん」

「ふむ。では」

 

 次はイグレック。イグレックは帽子の位置を整えて、少し恥ずかしそうに言う。

 

「私も……『友達』、かな……。ポケモンといると、やっぱり面白いもの」

「ふむ。では、」

 

 トロバは小さく頷いて、

 

「僕もイクスの意見と同じです。『仲間』。ともに強くなり、思い出を作り、生きていく……そういう存在だと思うのです」

「では、最後に」

 

 最後に残ったティエルノは、小さく微笑んで、

 

「メンバー、かな。将来、ポケモンのダンスチームを作りたいから。一緒に踊ってると、すごく楽しいんだ!」

「なるほどなるほど……。ああ、今回の図鑑所有者も、楽しい人間ばかりだ!」

 

 そう言うと、プラターヌは高らかに笑った。

 

「……さて、本題はこれからだ。君たちはこれからどうするつもりだい? トレーナーだから、やっぱりバトルを極める……そういうのもアリなんじゃないかな?」

「戦ってくれるんですか!?」

 

 イクスは思わず椅子から立ち上がり、言った。

 

「うーん、そうしてもいいけど僕も忙しいからね。これからとんぼ返りだ。……だから、君たちには色々と教えなくてはならない。この世界にある、『ポケモンジム』ということに」

「ポケモンジムって……八つバッジを集めるとチャンピオンに挑戦できるという、あの?」

「それはポケモンリーグだ。少々惜しいな。……その、バッジを持っているのがポケモンジムのジムリーダーだよ。彼らは、強さを認めた者にバッジを授ける。そして、そのバッジを八つ集めれば……そのとおり、四天王とチャンピオンへと挑む権利が与えられるというわけだ。だから、先ずはポケモンジムへ行ってみるのもどうだろうか? この街にもポケモンジムがあるからね。行くも行かないも君たち自身ではあるが」

 

 プラターヌはイクスに向けて小さく微笑む。

 対して、イクスは今からでもポケモンジムへ行きたかった。戦ってみたかった。

 プラターヌはその気持ちを汲み取っていたからこそ――そう言ったのだ。それを考えると、イグレックはイクス以外の人間の気持ちを代表するかのように、小さくため息をついた。


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