第2話です。
よろしくお願いします。
魔女がいるという話を聞きつけた二人の子供がおりました。
一人は考えることに長けた女の子
一人は動くことに長けた男の子
なんて事はない、ただの怖いもの見たさだったのかもしれません。
彼と彼女は魔女を探しに行くことにしました。
二人はいつも一緒でしたから、共に行動することも珍しくはありません。
このお話が動き出したのは、きっとこの時点になるのでしょうね。
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『降ろせ、私を降ろしてくれ。運んでくれてありがとう、でも私の心の安寧から最寄りの降車駅はここなんだ。』
『そうは問屋が』
『降ろせ。卸さないのではなく、降ろせ。』
『降ろすのに降ろさないとは、美姫は難しいことを言うな。』
『こういう時に話が伝わらないのは心から腹立たしいよ。考えることをやめた人間は獣だぞ。お前のことだ、陽太。』
『獣か…かっこいいな。』
『待ってろ、すぐに駆逐してやる。』
校内の皆様、ご機嫌よう。白雪美姫でございます。今私はゴリラに担がれて移動しておりますの。レディの間では当然のことですわ。
あらあら、そんなにじろじろと見つめられては恥ずかしくってよ?おい何見とんねんお前ら、見せ物ちゃうぞこらぁ。
取り乱しました、白雪美姫です。
只今の時間は放課後、帰路に着こうとする学生で溢れかえる廊下を大柄な男に担がれながら進んでいます。
私とこの男が一緒にいる事は決して珍しくはないが、流石にこの状態を見たのは初めてだろうから目を丸くしている。明日から休日だし暫しのお別れをしておこうと小さく手を振る。バイバイみんな、また会える日まで。
『楽しみだな、美姫。魔女だぞ魔女。』
『あぁ、愉しみで仕方がないよ。君が現実を目の当たりにすることがね。』
『今のうちに挨拶を考えておかなくちゃいかんな。』
そう言って私の皮肉を無視し、本当に楽しそうに笑う彼の姿にまた溜息をつく。彼の突発的思いつきでの行動は私にとっては慣れたものだ。そしてこの長い付き合いの中で、私がどんなに抵抗をしても全く意味を成さないという事も私は理解していた。
だからといってこの状況はよろしくない。先程担任の先生とすれ違ったが、『…白雪が酔わないように配慮するんだぞ。』という一言を残し去っていった。お前の配慮が間違っていると指摘したかった。
『とりあえず降ろしてくれ、もう諦めた。君についていくから、頼む。…流石に恥ずかしいんだ。』
『おぉ、ついに美姫もその気になったか!やはり自分の力で成し遂げるのが一番だからな!』
『少し黙ってくれ、君の声はこの距離だと私の鼓膜を破りかねない。』
『照れるな照れるな。』
『本心だよ。本当に、心から思ってる。』
私もこの担がれている状況に慣れてしまいたくはなかったが、順応してきたのかいつも通りのやりとりを始めてしまう。
彼がゆっくり優しく肩から私を降ろす。なぜここで紳士的なのか。いや、違う。紳士的な人間は人を肩に担いだりはしなかった。私もずいぶん毒されている。
あぁ地面に足が着くことがこれほど喜ばしいことだったとは。一息ついて彼に問う。
『そもそもお前は魔女がどこにいるかわかっているのか?』
『問題ない。』
『何故そう言い切れる?』
自信ありげに不敵な、いや不適切な笑みを浮かべた筋肉に疑問を投げかける。
『簡単だ。腹横筋の話に耳を傾けて進めば望みの場所へと繋がっている。』
『そいつぁすげえ。凄すぎて涙が出るぜ。』
視界が滲んで来た気がした。大きく息を吸ってー、吐いてー。この世に絶望した人間はきっとこんな溜息を日常的に吐いているに違いない。私もこの馬鹿とのやりとりに大きな絶望を見ているから仲間だな、よろしく頼む。
すたすたと早足で歩く馬鹿に追いつこうともせず、私はのろのろと彼の背を追いかけた。
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『全ては筋肉の導きのままに、だろう?』
学校から歩くこと凡そ20分程度だろうか。こいつは筋肉馬鹿なのに加え体力も化け物級であるから私の息が切れているのは当然のことだった。
『…それで、ここが魔女の家だと?』
『間違いない…俺の前鋸筋がそう告げている。』
『腹横筋の話に耳を傾けていたお前はどこへ行ったんだ?迷子か?』
私たちはちょうど、ある家の前までたどり着いたところだった。
高校の在する市街地を抜け、途中にある人通りの少ない長い田舎道をひたすら歩くと小川が流れているところに出る。
今度はその小川に沿って道を下って行くと広い草原が見えてくる。
色とりどりの花が無秩序に咲き乱れるその草原の奥、少し小高くなったところにぽつんと家が一軒建っていた。
この辺りでは珍しい素焼きのレンガの壁に天然スレートの屋根で、凝った装飾のある白い小さめの両開き窓が映えている。
家の前の庭には、これまた家の周りを取り囲む草原のように様々な植物が見えた。
どこからどう見ても隠れ家的カフェ或いは雑貨屋の相貌をしている。今時の女子高生なら押さえておいて、放課後に集うのにうってつけのお店となること間違いなしだろう。
『絶対こんなところに魔女はいないぞ。きっといるのは若くてゆるふわなお姉さん店長か、時たま愛嬌のある笑みやユーモアを見せる渋めのマスターのオジサマだ。私の灰色の脳細胞がそう告げている。』
『本当にお前は筋肉への信仰が足りんな。それでどうやって今まで生きてこられたんだ?』
『お前は筋肉への信仰でどうやって生きて来たんだ。ブーメランって知ってるか?本来狩猟用の武器だったそれはお前を簡単にやってしまうぞ?』
『鍛えている俺には効かんよ。さて行こう。』
『違う、そうじゃない。物理じゃないんだ。そして待て、犬でも待てぐらいできるぞ。』
『頼もう!』
『待てと言うのに!いや本当に知らんぞ私は!』
威勢の良い声とは反対にちゃんとノッカーを鳴らす彼の姿は非常に滑稽だ。
しかし思い切りが良すぎるこいつに非難の声を上げているとすぐにガチャリと音がしてゆっくりとドアが開いた。
読んでいただきありがとうございます。
どれだけ書けるかはわかりませんがのんびり進めていきたいと思います。