エレン「なんだこの飲み物?」   作:スペイン

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忘れてはいけないことだ

右足を上げるときはブレずに

そして上げるのではなく流すのだと

上げようとは思うな

流れる水のように滑らかに

自分の足が描く曲線をイメージして

そのイメージのあとを追いかけるように滑らせろ

それだけだ

それができれば

お前はお前自身の武器を持てる

わかったな、アニ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


β-6 忘れられない2

「本日は休暇とする」

 

ある日、キース教官の言ったその一言はみんなが待ち望んでいたものだった

 

訓練が大好きなエレンでさえ『助かった』といった表情をしている

 

それもそうだ、今日の外の天候は台風

 

男子寮からここまで来る過程でアルミンは体が浮いてしまったという

 

コニーに至っては興奮のあまり一度ジャンプしたらそのまま風に煽られてしばらく空中散歩をしてしまったというから驚きだ

 

つまりは、風もそれほどまでに大変だということだ

 

「それでは各自解散せよ、週末には筆記のテストを控えているからな、この学習棟に残って数人でそちらに備えるというのも許可するぞ」

 

アニは頬杖を付きながら聞いていたその話に思うところがあった

 

「(そういえば今回のテストは医学概論だったわね、アルミン辺りに聞いてみようかしら)」

 

そう思ってアルミンの影を探してみるが見当たらない

 

どうしたのかと気になり、近くにいたエレンに声をかけてみる

 

「エレン」

 

「ん?アニか、どうした?」

 

声をかけたところ、エレンは机の上にいくつかの教材を出していて、その中には医学概論の教科書も見受けられた

 

アニはエレンの机の元まで移動してから話を続けた

 

「ちょっとアルミンに医学概論の詰まってるところを解説してもらおうと思ってね」

 

エレンは少し申し訳なさそうな顔をして答えた

 

「あー、アルミンなら読みかけの本があるからって教官の話が終わったらすぐさま男子寮に走っていっちまったぞ」

 

そう言いながらエレンは自分の手元の教科書に目を落としている

 

その目は明らかに医学概論へと向けられている

 

何かを言おうとしているのか、医学概論を見てはアニへと視線を移して、といった風に何度もこちらをチラチラとみてきている

 

アニとしても、もしもエレンが医学概論の勉強に手をつけるのであればそこに一緒したいと思っているのだがいかんせん言い出せないというのが現実だ

 

両者ともに何かを言おうとして顔を上げるのだがその度に目が合って顔が熱くなってしまう

 

そして口から出そうとした言葉が喉元まで引っ込んでしまうのだ

 

それを何度も繰り返していた

 

それを見てやきもきしているミーナは置いておくとして、ついにエレンが意を決したかのように大きな音と共に立ち上がった

 

「あ、アニ!もしよかったらなんだが」

 

その動作にビクゥッと反応してすぐさまに居を正すアニ

 

驚きのあまり手を胸のところまで持ってきてしまい目元にもうっすらと潤みが見える

 

「(び、びっくりした・・・)」

 

表には出さないものの心の内で焦るアニだったが、それには全く気付かずにエレンは話を進めた

 

「今、俺はアルミンに医学概論の教科書を借りてるんだ」

 

アニが視線を落としてみると、教科書の左隅に『アルミン・アルレルト』と綺麗な文字で書かれていた

 

厚さ200P程のその教科書には本来ないはずの付箋がいくつも貼っており、それぞれに[裂傷]や[擦り傷]など、分類分けがされており求める情報をすぐに見れるよう配慮が施されていた

 

「そ、それでさ・・・もしよかったら」

 

そこまで言ったところで、エレンの口から言葉が止まった

 

アニはなんと言おうとしたのか予想はついているもののエレンの口からその言葉を言って欲しいために分かっていながらも少し待ってみた

 

「もしよかったら・・・その・・・」

 

エレンはというと最後の踏ん切りがつかないのか頭を掻いたり足を踏み鳴らしたりと無駄な動作を繰り返している

 

そばで見ているミーナが「うじうじすんなぁっ!」と叫びだしそうになったとき、堪えきれなくなったアニがエレンに聞いた

 

「早く言わないと・・・」

 

言葉を紡ぐのに勇気を必要としているのか、アニは胸元に持ってきていた手をさらにきつく握る

 

また、その一方で勇気を出している証拠とでも言うのだろうか、足が一歩、エレンの方へと踏み出された

 

元々アニがエレンの机まで来て会話を始めたために近かった距離が、アニが詰め寄ったことでさらに近くなる

 

「私・・・やだよ」

 

153cmの身長のアニが詰め寄ってなおもエレンの目を見て話したためにその構図は自然と上目遣いになっていた

 

先ほど驚いてしまったこともあって涙目になっていたアニの上目遣いは、エレンが言葉を紡ぐのには充分な燃料となった

 

「も、もしよかったら、俺と一緒に勉強しにゃいか!」

 

「わお」

 

思わずミーナの口からアメリカ人もびっくりなナチュラルな反応が漏れたが今の二人には聞こえなかったようだ

 

アニは嬉しさで緩みがちな口元を必死に引き結んだ

 

そして、近くにあった椅子を持ってきてエレンの机に向かう形でその椅子に座った

 

「あっ・・・えっと・・・」

 

言葉としての答えが欲しいのか、エレンは口をぱくぱくとさせていた

 

しかし現在のアニに言葉によって答えるほどの度胸はなく、アニはとっさに

 

「・・・ん」

 

ぽんぽん と、エレンの元々座っていた椅子を優しく叩くことで自分の意図を示した

 

いつものアニからは考えられないそんな可愛らしい行動に自分の身を抱いて悶えるミーナを横目に、エレンはその椅子に座った

 

そして、二人は勉強を始めた

 

外はとてもうるさい風と、屋根に降り注ぎ段々と室内の温度を奪っていく雨が支配していた

 

しかし、二人は寒くなかった

 

むしろ心も体もどこか暖かかった

 

そして、二人はうるささを感じていなかった

 

なぜなら、それ以上に彼らの胸は高鳴っていたから

 

 

 

二人はそのひと時を楽しんだ

 

暖かい、ひと時だった

 

 

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 

だが、ミーナは寒かった




つづくのじゃ

つづくったらつづく!(ポケモン並感
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