僕はアルミン・アルレルト、今は調査兵団に配属されて、リヴァイ兵長の下でエレンや他の104期生のみんなと一緒に働いている。
「アルミン、こっちの掃除は終わったから2階をお願いしたい」
ミカサにそう言われて、僕は肯定の返事を返して階段を上がり2階の手すりを掃除する。
そこで、ふと疑問に思った。
「(もしも僕がここから唐突に身投げをしたら、ミカサは助けてくれるのだろうか?)」
長年の友人であり心を許しあった友、そしてなによりも戦友であるミカサのことだ、きっと助けてくれるだろう。いや、助けてくれるに違いない!
僕は木製の手すりを濡れていない雑巾で乾拭きして頃合を見計らっていた。
ミカサは現在、僕がこのまま落下したとして地面に接触すると思われるポイントから5m先のところにいる。
右手にははたきを持っていて、このまま僕が落下すればそれを放り出してでも全速力と全力をもってして助けてくれるだろう。
チラとしたを見てみる。高さはそれほど無いが、ここから落ちると考えると怖い、クリスタの前で会話中にゲップをしてしまうくらい怖い!
「(どうする…やめるか?いや、それでいいのか?)」
「(僕は、僕はもっと多くを知りたいんだ!知識を蓄えて!それを活かして!みんなの役に立ちたいんだ!そうだ…なら、ここで僕が落下することによって得られた知識も誰かの役に立つかもしれない!そう考えれば何も怖くない!)」
僕は足を手すりにかけた
何も怖くない
あとは力を入れれば木造建築のワンルームでスカイダイビングをしようとしている金髪の青年が出来上がる
そう、あとは「何をしてやがる」
「(…今の声は、リヴァイ兵長か?いや、でも兵長はもっと身長の低そうな声だったはずだ!)」
「ついでに何を考えてやがる」
チラと声のした方を向いてみる。
「何を見てやがる」
「(リヴァイ兵長じゃん…)」
いや、待てよ
「(もしかしたら偽物かもしれない…そう、例えばクリスタが僕を驚かせるためにリヴァイ兵長の格好をして注意を僕に促す。そして僕が反省の色を見せたところでネタばらしをして傷ついた心を癒す。そんなドッキリラブ&コメディーなストーリーなのかもしれない!)」
「俺は風呂上りで気分よく自室に戻ろうとしていたんだが…なんでお前は手すりに足を乗っけているんだ?」
上半身裸じゃん…もうこれでクリスタだったら…それはそれでありかもしれない
いや、ここはクリスタという体で話をすすめてみよう
「やぁクリスゲフゥ!!?!?」
唐突に体の中心を駆け抜けた痛みに僕は身体をくの字に曲げる
これは、拳だ
拳による胸部への打撃だ!
さらに、僕は前髪を掴まれてぐいっとクリスタ(リヴァイ)兵長の眼前へと顔を晒すことになった
顔が近くて少し照れるなぁ、クリスタもこんな大胆なことをするのか
「おい…それは俺の身長がクリスタ・レンズと変わらないと言いたいのか?」
わーぉ、こりゃもうクリスタじゃなくてリヴァイ兵長ですわ
現実逃避気味に色々と思考を逸らしてたけどこの痛みと恐怖からは逃れられませんわ
「いい度胸だ…アルミン・アルレルロ…、あ、アルミン・アレルレト」
あ、今リヴァイ兵長噛んだ!しかも名前間違えてる!
「ぷふーっ」
「………………っ」
僕が思わず口から空気を漏らすと、リヴァイ兵長は目尻に浮かべた涙を隠すかのように振り返ってその場を去っていった
あとに残された僕は、なんで殴られたのかという理由を聞きそびれたことと、なんで風呂上がりに服着ないであるいてたんですか変質者という二つの言葉を言いそびれることになった
僕は知識の探求者アルミン、次回も何か知らないことを知りたいと願う
つづく!