おかしい。
おかしい。
何がって、自分が今置かれている状況がおかしい。
さっきまで、小学校からの親友と会話を楽しんでいたのに。
ちょっとウトウトしていたら。
私---紅蓮は。
昔の姿で、森林の木の根もとに寝転んでいた。
☆☆☆
「何で……」
何があったのよ。私何も悪い事してないよ。
声も高くなってるしさ。どうするべきなのよ?
ん……頭の所になんかあるっぽい。……紐?
お、バッグ。見覚えはないけど……近くにあったし、漁っても大丈夫でしょ。
体を起こして、と。
ああ、先に今の私の服装を見てもらおうか。
二つに分けて結んだ髪の毛。肩までの長さ。
で、これはアホ毛って言うのかな?まぁ、そんなんがある。以前にはなかった。
赤い襟の黄色っぽい白のブレザー。半袖。
で、膝までの赤いスカート。うん、女の子って感じだ。
で、少し長めの白い靴下。靴は白と赤のスニーカー。
風が吹いてきて私のスカートが捲れそうになった。正直、そんな事を気にしていられる精神状態じゃない。
うーん、身形は昔みたいになってしまったわけだけど。
このバッグの中には何が入ってるんだろう?
ファスナーを開けて、最初に目に飛び込んできた物。これは……大きなタマゴ?
……え?
何これ?
これ、前に見てたアニメに出てきた物にすっごい似てるんだけど。
そう、あれは---
----ザッ!!
瞬間、私の隣を何かが走り抜けていった。
紫を基準とした、小さな鼠……を、モチーフにした、キャラクター。
「コ、コラッタ……!?」
そう、あの有名なゲームの最初に出てくるキャラ。
ポケットモンスターの、コラッタである。
☆☆☆
どうやら、ここはポケモンの世界のようだ。
少なくとも、コラッタがいる世界ではあるようだ。
あ、でも、空を見てみれば何か飛んでいる。
鳩をモチーフにしたポケモン。あれは……ポッポだ。
あ、何か別なのが飛んできた。雀の目つきを悪くして、大きくしたようなポケモン。
あれは……オニスズメかな?
まあ、つまりだ。
もう一度言おう。
私は、ポケットモンスター、略してポケモンの世界へ来てしまったようだ。
☆☆☆
そうとなれば、この手元にあるタマゴはポケモンのタマゴで間違いないようだ。
触れてみると、ほのかに暖かい。
「……この中に、ポケモンが……」
そう考えると、ついつい顔が綻んでしまう。
なんというか、こう、母性をくすぐられるというか……。
と、こんな事をしている場合はない。
コラッタ、ポッポ、オニスズメとなればここはカントー地方かジョウト地方になるわけだけど……。
近くに町ってあるかな……?無いと困る。なんか風強いし。
鞄の中にコンパスかなんか無いかな?
……あったのは、タオルと着替えのみ。
着替えは、今の格好と全く同じ。
お、帽子がある。……ベレー帽だ。
ん?帽子の内側に何か入っている。
……上下で色の違う、赤と白の球体。
ボタンのような物があり、押してみるとボールが大きくなった。
ポケモンの世界に来て、これは……やっぱり、モンスターボール?
えっと、このタマゴが孵ったらこのボールの中に入れればいいのかな?
うん、そのために……タマゴを安全に孵せる建物を探そう。きっとあるはず。
☆☆☆
とりあえず、歩いてみてますよっと。
鞄は肩にかけられる物だったのでそうして、タマゴはタオルに包んでバッグに入れてる。
うー、樹しか見えない。
風も強いし……。大丈夫なのかな、これ。
を、体内時計三十分間。多分もっと長かった。
で、今いるのはちょっとだけ拓けた場所。
いい加減疲れたので、座っているわけ。
うーん……やっぱり体力が無くなってるなぁ。これぐらいでバテるなんて。
さっきから強い風が体を撫でている。妙に心地よい。
……さあ、休んだし、ホントはもうちょっと休みたいけど行こうか。
立ち上がって、通れそうな所をなんとか探すと……。
『おや、人間ですかね?』
後ろから声がして。
振り返ってみると……そこには。
一匹のポニータがいた。
「……ぇ……?」
言葉が出てこない。
周りに人がいない。いるのは、このポニータのみ。
つ ま り こ れ は 。
『ここら辺にはよくハンターが来るので立ち去った方がいいですよ。
……まあもっとも、人間という種族には私達の言葉は理解出来ないでしょうが……』
いやいや、理解出来てるんだけど。
どうすれば良いの?どうしろって言うの?
「え、ぁ……ふ、普通の人には分からないんですよね?」
あぅ、そんな答え方するんじゃなかった。
普通の人アピールが出来なくなってしまった。
私の中で後悔が渦巻く。
『そうなんです。……もしかしてあなた、私の言っている言葉が分かるの?』
そうとはつゆ知らず。ポニータ……さんは続ける。
ええい、こうなった以上、このまま話を続けるしかない!
「えっと、そうみたいです。
……私が凄いんですか?あなたが凄いんですか?」
『どう見てもあなたでしょうに……』
ですよねー。
最後の望みも絶たれた。
私が打ち拉がれていると、ポニータさんは続けた。
『とにかく、さっきも言ったようにこの森は危険です。
道が分からないというなら私が案内しますが……いかがですか?』
「うぅ……お願いします」
まあ、このままよりはよっぽど良い。
さあ、歩き出そうというその時!
「こっちにも一匹いるぞ!
ガキも一緒に居やがる!」
そんな声が聞こえて、ついつい歩を止めてしまったのが運の尽き。
おや、おやと言う間に私達は怖そうなおじさん達に取り囲まれてしまった。
私のトリップ生活は、のんびりではいかないようです。