魔法科らは逃げれない。   作:天道無心ビームサーべ流
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お兄様とイチャつく為の百の方法

「申し訳ありません、今日からお弁当にしておりまして」

 

午前のカリキュラムを終えて、昼時。

例によって深雪目当ての一科生は深雪を食事に誘うのだが、深雪はお弁当を取り出す。

それにより あ、お弁当かぁ… と言う空気になって誘いを断っても特におかしくない雰囲気になり深雪はそれを感じてお弁当にして良かったと感じる。

 

「あら、ミユキもお弁当なの?一緒にどうかしら?」

 

「…ええ、天気が良いので外で一緒に食べましょう」

 

その深雪を利用して、極自然に教室の外に出る理由を作ったリーナ。

互いに食べる相手はちゃんといるので、誘ってくる一科生達をはね除けるのに互いを利用しあう。損はなく、得しかないのでどちらも不満は無い。

 

「アンジェリーナさんと司波さんもお弁当ですか、奇遇ですね!」

 

「アンジェリーナさん、学食は余り口に合わなかったから私もお弁当にしたの!」

 

食堂組を断ると今度はお弁当を持っている生徒が攻めてきた。

昨日、食堂へと向かおうとした生徒とは違う生徒達が深雪とリーナを誘い、昨日と違いリーナの方が多かった。

原因は昨日、リーナがお弁当だからと言ったことでリーナ狙いの生徒はお弁当を作ってきていた。尚、国立なだけあって金はちゃんとあるので学食はかなり旨い。

これだと昨日と大して変わらないと感じる深雪だが、リーナにはまだ次の手があった。

 

「ごめんなさい、私は弁当を持たせてる人がいるから…取りにいかないと」

 

リーナの鞄には弁当なんて入っていない、代わりに光國のラケットとボールが入っている。

お弁当は光國に持たせており、それを取りに行く名目で光國と合流する。弁当派の人間を撒くのにはちょうどいいし、持っているのが渦中の渦の中心とも言うべき光國なので下手な事を言えず、そのまま一緒に食べてもおかしくないベストな理由だ。

 

「…明日からタツヤにお弁当を持たせなさい」

 

「…はい…」

 

深雪は強く拳を握り締めて震わせる。

お弁当派が少数派で撒くのにも良いし愛しのお兄様に手作りのお弁当を食べてくれると浮かれていた。

少数派だが確かにお弁当を持っている生徒はいた、それならば誘ってくる可能性があり、自分を誘ってくる者がいたのは予想できたことだ。現に今、誘われている。

それについての対抗策を考える時間は沢山あったのに、疎かにしてしまいお兄様との至福の時を逃してしまう自分の未熟さを悔しんだ。

入試では自分の方が上だったが、テストは所詮テストで大事には大事なのだが、いざと言う時に現場でどう動けるかの方が重要でリーナは自分よりも現場で遥かに勝っていた。

精進しなければと悔しさをバネにする深雪

 

『「1-A、アンジェリーナ=クドウ=シールズさん、1-A、司波深雪さん、1-E、司波達也くん、1-E、手塚光國くん、至急生徒会室に来てください!」』

 

そんな時、天から蜘蛛の糸が舞い降りた。

掴み上がろうとすれば壊れる可能性のある一筋の希望たる校内放送がご丁寧に自分達を名指しで指名される。

 

「…はぁ、いくしか無いのね…」

 

生徒会などに余り関わりたくないリーナは大きなため息を堂々と吐いた。

深雪も正直なところ、行きたくはないのだが、この状況を打破するには行くしかなく、面倒な事にピンポイントで呼び出しているので逃げるに逃げれなかった。

生徒会室に向かう途中、光國とタツヤと出会うとどちらも呆れた顔をしていた。

 

「待っていたわ、ようこそ生徒会室へ」

 

「…あ、補導されてないんですね」

 

「手塚、いい加減にしておけ」

 

関わりたくないので、あの手この手を使う光國だがそろそろ抵抗は無駄だと達也に止められた。真由美はにっこりと微笑んだものの、明らかに怒っていた。

 

「あの後、大変だったのよ…お手洗いにいくと皆が譲ってくれて」

 

「レディファーストですよ」

 

「全員、女子よ!」

 

「では、十師族に早い内に媚を売っているんじゃありませんか?」

 

「むしろ失礼よ!」

 

「会長、一先ずは選んでいただくのが…」

 

煽られる真由美を見て、このままだと拉致が開かない事を察して割り込んだクールな女性。

生徒会の一人で、名前は市原鈴音。真由美と同じ三年の一科生だ。

光國達に軽く自己紹介をすると用意された席に座った。

 

「肉と魚と精進料理があるけれど」

 

「あ、大丈夫です。

今日からお弁当にすることにしていましたので」

 

生徒会室に備え付けられている自動配膳機に登録されている三つのメニューを聞いたが、弁当を出した深雪、達也。

 

「光國、お弁当は?」

 

「ちょっと待て」

 

リーナも弁当、光國も弁当だった。

 

「なんだ、四人とも弁当なのか」

 

摩利も弁当だった。

 

「ええ、昨日食堂でも一科生と少々揉めてしまいまして…」

 

「そ、そうか…」

 

思いがけない人物、深雪から小言が飛んで来るとは思っていなかった摩利は驚く。

深雪にとっても昨日の事はやはり色々と悪い印象を残しており、森崎のグループを好意的には思っていない。美月が許さなければ、今日は休校で校長と森崎家の記者会見がはじまっていたので許した美月さん、マジ天使である。あの濃いメンツの中で一番の天使である。

 

「あ、先に食べてて良いですよ」

 

大きな二段弁当と小さな二段弁当を取り出し、先に食べることを勧めた光國は席を立つ。

お手洗いに行くのかと思いきや、大きな二段弁当の蓋を開けた。

 

「他の準備をしておいてくれ、わさびはいれんなよ…フリじゃないからな!」

 

「蕎麦、だと…」

 

司波が蕎麦見て驚いた。

大きな二段弁当箱には蕎麦と薬味と木製のざるが入っており、光國は蕎麦をざるに入れて水筒を片手に手洗い場に向かった。

 

「お弁当に蕎麦って、中々ね…」

 

「そうかしら?普通にそう言う弁当箱が売ってあったわよ?」

 

そばつゆを水筒から入れて、小さな二段弁当を開けるリーナ。

二段弁当の中にはだし巻き玉子やつくねの照り焼き、野菜の和え物などが入っていた。

 

「先に食べてて良いと言ったのに…」

 

軽く水洗いをした後に水筒に入れていた水をかけて戻ってきたのだが、誰も食べておらず呆れている光國。

眼鏡とマスクを外したのだが、蕎麦を食う光景はどうみてもサラリーマンが食ってるようにしか見えなかった。

 

「お弁当でお蕎麦なんて、中々に無くて…つい」

 

小学生にも見える二年のマスコット的な存在であろう中条あずさがそう言うと箸を動かす。

しかし全員の視線は深雪の作ったどうみても美味そうな弁当でなく、光國達の、特に光國の食べている無駄に太い大きさも長さもバラバラの蕎麦を見てしまう。

 

「ちょっと、あんま見ないで…」

 

「蕎麦も、手作りなんですか?」

 

「オレが食べているのがリーナの蕎麦で、リーナが食べているのがオレの蕎麦だ」

 

「い、言わないでよ…そりゃあ光國みたいに上手じゃないけどそんなにジロジロとみるのは」

 

市販されている蕎麦でない事に気付いた深雪は手作りか聞くと面白い答えが帰って来て衝撃が走った。そしてなにかが閃こうとしていた。

 

「一緒に作った…成る程…」

 

「豊かな人生経験は人を大きく成長させてくれる。

特にHALのせいで家庭で料理をする所が激減したから、料理の苦労と言うものをしれるしこう言った凝った物を作れる…達也も、美味しい料理はダメでもパンやクッキーの様に簡単なものを作ったりするのは良いし…色々と喜ぶだろう」

 

なにがとは言わない光國。

達也は深雪が俺が作った料理を食べて喜ぶ姿を浮かべる、深雪は達也と手を重ねて、こうするんですよお兄様と一緒に料理する姿を妄想する。

摩利もそれは良いなと頷く。

 

「光國と私じゃ年季が違うわよ…」

 

「…」

 

一緒に作って出来たものを食べさせあうと言う行為を深雪は気付いた。

お兄様に自分の持てる力全てを使った最高のOMOTENASIをしているが、その先があった事を知る。

料理上手な彼女と素人でも特に問題なくできるお菓子作り的なイベントが残っていることに。

 

「レベルが、違いすぎます…」

 

「…早く来なさい、このレベルまで」

 

「お前達はいったい、なにと戦っとんねん…」

 

追い掛ける以前の問題じゃないことに気付く深雪だが、リーナは深雪ならばいけると応援する。

 

「蕎麦も、と言うことは他の料理も?」

 

「ああ、そうだ…実家にHALは無い環境だったからな」

 

「実家にHALが無い、と言うことは飲食店かなにかを?」

 

「いや、そうじゃない…砂糖水を沸騰させて飴を作って、それを週に一度しか食べれないおやつの環境だ」

 

市原はボトリと持っていた筍を机に落とした。

深雪達も動いていた手が止まった。リーナも物凄く気まずい顔をしていた。

 

 

 

あ、これ踏んじゃいけない地雷だった

 

 

 

飴なんてその辺で買えるのに、そんな事をしないといけない環境はかなりヤバいのがブルジョア連中にはわかった。

 

「そろそろオレ達を呼び出した理由を聞いて良いでしょうか?

昨日の行動について言及し、やり過ぎなどと言うのならばそれなりの事をしますが…あの時、誰が誰にCADを向けたか分かりませんので」

 

「それについてはこれ以上は言及は致しません」

 

意識を元に戻し、光國は蕎麦湯を片手に蕎麦饅頭を頂きつつ話を本題に入る。

昨日の一件がやりすぎだと攻める気ならば戦うぞと言うがもうこれ以上は掘り下げないとする真由美。取り締まる立場の摩利がなにも言わないので、本気だと分かる。

 

「後任の育成と言ったら分かりやすいのだけれど、深雪さん、それにアンジェリーナさん、生徒会に入ってほしいの。主席の入学者は毎年誘っていて、入っているの」

 

「…主席で顔が知られている深雪は分かるがどうしてリーナを?」

 

この辺の原作は覚えており、目をつけられたなと少しだけ焦る光國。

 

「まさかとは思いますが…リーナが九島だからと言う理由ですか…」

 

「それは…」

 

リーナが深雪と大して変わらない、どんぐりの背比べと言っても良い僅差の成績だ。次のテストではリーナが勝つかもしれない。

生徒会の業務がなにかと大変だったりするのもあるが、昨日の事もあり一科生、二科生の問題をどうにかしないと真由美は真剣に考えておりそう言った感覚の無いリーナを深雪の補佐的な立ち位置に立たせたかった。

手塚光國と言う二科生と深く関わっているのもあるが、やはりなんと言っても九島の名前が強力である。魔法師関係者で十師族を知らない者が居ないほどで、その名前を持つだけで力を発揮するほどだ。

 

「十師族の名前を持っている以上は、そう見られる事は仕方ない事だが…速答してくれませんでしたね」

 

リーナ自体がポンコツな部分があり、リーナにとってクドウ(九島)の名前は重い枷になっている時が多い。

自分といなければもっと気楽かもしれないと感じる光國は少しでも気楽になる様になってほしいと光國は思っている。

そんな目で見るなと言っても無駄なのはわかっているが一瞬で答えなかった真由美に呆れる。

少なくともそう言った目で見る人じゃないと思っていたが、勘違いをしていたと考える。

 

「あの、リーナではなく兄を補佐にしていただけませんか?」

 

少しだけ気まずい空気が流れる中、深雪は空気を壊すようにお兄様を推薦するのだが

 

「達也くんを?」

 

「はい、お兄様は私の事を熟知しています。

実技ではお兄様は残念な事に正当な評価はされませんでしたが」

 

「アカンで、生徒会は一科生限定で入ることは出来ひん…風紀委員は別やけどな」

 

光國がルートを修整した。

市原が二科生は入ることは出来ない事を言う前に言い、風紀委員を代わりに勧めると真由美はその手があったと手を叩く。

 

「話戻すけど、リーナはどないなん?」

 

「光國、喋りが…悪いですが、遠慮させていただきます。

私は部活動を一度見て回ってから…テニス部か軽音楽部を光國と一緒にやってみたいと思っています」

 

「オレを巻き込むなや…そんじゃ帰るか」

 

リーナは理由を、それも面倒臭いと言うのではない仕方ないと受け入れないといけない理由で断った。ならばもう、ここにはもう居る必要はないと、後は頑張れよお兄様と出ていこうとする。

 

「まぁ、待ちたまえ…」

 

しかし、摩利に止められる。

 

「なんす…なんですか?

深雪とリーナを誘ったがリーナは断り、深雪が生徒会役員になった。

達也が生徒会の推薦で風紀委員になった、ならばオレはもう必要は無いのでは?生徒会推薦の枠はもう無いはずですよ」

 

「ああ、だが他にも推薦枠があってな…一名の空きが出るだろうから、手塚を指名する」

 

「…?」

 

自身を指名するのは何となく予想できたので特に驚かない。

しかし、他の推薦枠が開いたことが気になり、他の推薦枠がなんだっけとなる。

 

「…森崎…」

 

達也と一緒に風紀委員に入った生徒はあの森崎だと思い出す。

教師推薦枠で入ったが昨日、あんな事になったら評価は一瞬にして底辺に落ちるだろう。

そこに品行方正で教師よりも色々と強いであろう摩利の一声があれば二科生の光國だろうと推薦される。

 

「オレは本当に二科生ですよ?」

 

取りあえずは成績を盾にしてみる。

 

「誰一人、追いつくことなく走りきったと聞いている。

男子トイレに入ると言う機転も聞く…なに、書類仕事も大事だが大抵は現場仕事が多いぞ!」

 

「そう言う問題じゃない。

二科生が一科生の集団に入ってみろ…浮くだろ…」

 

「それについては問題ない…達也くんも入るのだから」

 

もうお兄様が入るのは決定事項のようだ。

一言も良いですよと本人から了承を得ていないのだが、お兄様はNOとは言わない。

更になにかを言う前にと摩利は追撃をかける。

 

「昨日の一件で感じた様に一科生と二科生との間には大きな溝がある。

私も真由美も、ここにはいない会頭の十文字もそれをどうにかしないといけないと思っている。この大きな溝を埋めなければ、昨日の一件の様な事がまた起きてしまう…君と達也くんはその溝を埋めることが出来る可能性を持った」

 

「…なぁ」

 

摩利の追撃を普通の人が聞けば、仕方ないと受け入れるだろうが、このバカは普通ではない。

摩利の言葉を聞いても食い下がることはなかった

 

「2000年以降の学校にはどんな価値と意味があると思う?」

 

「…それはどういう意味だ?」

 

「その答えを自分で考えてください。

深雪達も一科生と二科生の溝に色々と思うことがあるなら、それを考えてください…悪いですが、オレは痛い思いはしたくありません。努力して頑張るときは頑張りますが、頑張らない時は頑張らないので…いくぞ」

 

「ええ…失礼しました」

 

光國とリーナは一緒に生徒会室を出ていった。

 

「で、2000年以降の学校にはどんな価値と意味があるの?」

 

出ていって少し歩くと最後の言葉の意味を聞くリーナ。

この学校に居るのは大抵は2080年代を生きてきたものばかりで、2000年以降の学校について聞かれても答えられない。

 

「…適当な事を言っただけやで。

あの場を切り抜けるにはそれっぽい事を言わんとアカンかったから…でも、色々と哲学的な事、考えさせられて、それなりに良い感じの答えを選るはずや…」

 

「なにそれ…」

 

「リーナも考えたらええで…2000年以降の学校にはなんの価値や意味があるのかを、義務教育とか言う理由を除いてだ。中々に答えを出すのが難しいから」

 

達也達が賢い人間なのを逆手に取って逃げた光國に呆れるが、リーナも色々と深い意味が詰まっている言葉だと感じていた。

 

「けどまぁ、魔法科高校の求める答えを正しく答えたのが一科生、上手く答えれなかったのが二科生で、一科生と二科生の問題をどうにかするには九校全ての校長の謝罪会見からはじまらないと話にもならん」

 

「いったい校長になんの責任があるのよ…」

 

「…当校にはいじめは無かった?」

 

「…聞かなかったことにしておくわ、九校全てを敵に回したくはないわ」








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