魔法科らは逃げれない。   作:天道無心ビームサーべ流
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誰が真にダメなのか?

「あ、達也くんだ!」

 

体育館に逃げることに成功した光國達は体育館の入口前に立っている達也を見つけた。

お~いと手を振って近付くエリカ。達也は光國達に気づく。

 

「風紀委員の仕事でここに飛ばされたの?」

 

「いや、巡回で何処かに配置されたわけじゃない」

 

「なら、良かったわ。

タツヤに失敗させて二科生は駄目な奴って印象付けにしてくる風紀委員が居るかもしれないってミユキが色々とぼやいてたから」

 

「流石にそこまで露骨じゃないし、渡辺委員長が許さないさ」

 

「…」

 

何気ない会話をするリーナとエリカと達也。

光國はこの後起きる展開を知っているのでどうしたもんかと考える。森崎以上にヤバいことが起きる。

 

「ところで、テニス部には向かわなくて良いのか?」

 

エリカもテニス部志望、リーナもテニス部志望、光國は入らないと言っている割にはラケットを手にしている。

ここではなく、テニス部がある所に行った方が良いのではと勧める。

 

「あぁ、別に今日じゃなくても良いわよ。

部活動勧誘期間は今日からだし…あの人混みの中をどうにかするのは…既に二名の犠牲者が出てしまったわ…ほのか、シズク、貴女達の事は忘れないわ…どうか天の国で安らかに眠りなさい」

 

「日本人だから、まずは閻魔の裁判だと思うわよ」

 

 

 

※ 死んでいません

 

 

 

 

「よくあの人混みを通り抜けることが出来たな」

 

「手塚くんがラケットでこう、ドーンと…よく折れないわね、そのウッドラケット。て言うかこのご時世にウッドラケットって」

 

起きた出来事を達也に雑に説明をするエリカは光國のラケットを見る。

スポーツ用品店で買えるテニスラケットではなく、今時珍しい木製のラケットで何処かのメーカーのロゴが入っていなかった。

 

「ウッドラケットだが、職人の腕がよくて下手なラケットよりも丈夫なんだ」

 

「確かに、かなりの業物だな。」

 

ラケットの事は詳しく知らない達也だが、それでも一目で分かる。

このラケットは物凄いまでに腕がたつ、それこそ腕一本で食っている彫刻家が作ったかの様に綺麗に仕上がっており、使いこなせれば下手な大量生産品よりも使えるラケットだ。

 

「この爺さんが作っている」

 

鞄から写真を取り出す光國。

ウッドラケットを作っているとは珍しいが、この腕だから有名な方か名は無いが腕は確かな職人かと写真を受け取る達也。

 

「!?」

 

「白黒って…何時の時代よ」

 

「待って、エリカ!これ、隣にいるのペリーじゃない!?」

 

「え、嘘…あ、でもペリーっぽい!!」

 

受け取った写真の紙質はかなり悪く、この時代と言うか光國が光國になる前でも中々に無い白黒写真で、顎髭が特徴的なお爺さんがペリーと握手をしていた写真だった。

 

「…これは、合成写真なのか?」

 

「合成写真と言うか、そう言うところで…多分、日光●戸村で撮ったのよ、そう言うところがあった筈だし、時代に合わせて白黒にしてるのよ」

 

どうみても本物にしか見えないのだが、ペリーと握手をしているお爺さんなんて教科書では見たことない。魔法関係の知識は勿論のこと一般教養も満点な達也は日本の歴史もちゃんと学んでいるのだが、こんなお爺さんは見たことない。

日光●戸村で撮ったものかと納得し、光國に写真を返す。

 

「とりあえず、中に入ろう」

 

「ああ、そうだな」

 

体育館の中へと入る光國達。

風紀委員の達也がいることにより、自然と勧誘する部が無くなり体育館の闘技場が覗けるスペースを確保する。

 

「やっぱり、日本と言えば剣道ね」

 

最前線のスペースで見物を剣道のデモンストレーションを見物するリーナ。

剣道は日本独特のものであり、色々と学ぶべき事は多く、単純な剣術で強い日本の魔法師は多い。

 

「あの人、強いわね…」

 

一際美人の女子剣道部員を見て、他の部員とは桁違いだと気付くリーナ。

 

「あの人は確か…そう、壬生沙耶香、一昨年の女子中等部剣道の全国二位の実力者で、容姿も相まって剣道小町と言われてたわ」

 

「…全国二位か」

 

成る程、動きには無駄は無い筈だと納得する達也。

あれに魔法が加われば、かなり苦戦する相手になる、一学生でも一点を磨けば物凄い生徒が居るものだなと見物するのだが

 

「たかが全国二位ねぇ…」

 

リーナがバカをする。バカにはしていない、バカをする。

 

「たかがって、日本で女子剣道をしている中で二位なのよ?

そりゃ魔法を使った剣術部と比べると、少し劣るけれど、むしろ魔法が無い分、トップを目指すのは難しいわ」

 

リーナの発言にムッとしたエリカ。

壬生が如何にしてスゴいのかを説明をするのだが

 

「それでも日本で二位なのでしょ…やるからには一番じゃないと」

 

「確かにそうだけど…」

 

「それに、隣には世界一の男がいるのよ?」

 

「…あ~はいはい、ごちそうさまよ」

 

惚け話になったので、直ぐに話を切ったエリカ。

自身の男が一番だって誰でも言うわよと聞く耳を持たないが、本当に世界一な光國。

リーナの言い方だとただの自慢話にしか聞こえず、話を聞いていた見物人達が 「て、手塚ぁああああ!!」と殺意を放っていた。

 

「ところで、あの人が二位となると一位は…勝ったり負けたりの関係か?」

 

「その…一位の方はちょっとね…」

 

「…あぁ…そう言うことね」

 

「つまり、ブスだと言うことか」

 

「「やめなさい!」」

 

一位の人を知っているエリカと察したリーナはあえて言わなかった。

しかし、光國は堂々と言い達也は呆れていた。

 

「千葉、リーナ、そう言った考えは余りよくないことだ。

全国一位の方はまごうことなきブスかもしれない、だがしかし、評価すべきは顔ではない剣の腕だ。一位の方は手遅れなほどのブスかもしれないだが、だが全国一位の称号を手に入れた凄まじい人だ、たかがブスだからと言って評価をされないのは駄目だ。過去に高学歴なのにブスだからと言って会社を落とされ、学歴が低いが美人だから会社を合格となった奴はかなりいる…このままだと、可愛いは正義の言葉は本当にまんまになり、ブサイクは悪と言う対義語が生まれてしまうんだ…油断せずにいかなければ」

 

「あんた一回、一位の人にボコボコにされた方が良いわよ」

 

「千葉は美人だからブスの気持ちが分からないんだ!」

 

「だ、誰が美人よ…その、まぁ、ありがとう」

 

思いがけない不意討ちをされて顔を赤らめるエリカ。

なにをやっているんだと達也は思い、剣道部のデモンストレーションを見ていると別の部活動が、魔法を使った剣道こと剣術部が乱入をしてきた。

 

「ちょっと、剣術部はまだ先でしょ!」

 

「剣道部のデモを手伝ってやってるんだよ。安心しろ、魔法は使わないでやる」

 

「千葉、あっちは?」

 

壬生と言い争う杉田ボイスの男性。

一応は知っているが、知らないていでエリカに聞く。

 

「あっちは確か…桐原武明、関東剣術大会中等部の優勝者よ」

 

「へぇ、剣術部と剣道部の実力者の勝負…面白そうね。」

 

「いや、言うとる場合か。

達也、あれは完全にアクシデントや、早い内に止めんと揉めんで」

 

剣道部と剣術部の単純な剣技による試合が始まろうとしていた。

周りにいる見物者は壬生と桐原の事を知っているのか、それとも剣術部と剣道部の試合は面白いと感じているのか、誰一人として止めようとしない。教師はいないので止めない。

現にどちらかと言えば常識人のリーナやエリカですら面白いとワクワクしながら見ている。

この後、起きる展開を知っている。森崎以上にヤバいことが起きるので止めることのできる達也に頼む

 

「ああ…」

 

「お前もか…事件は起きて解決するもんじゃない、起きる前に解決してこい」

 

達也も少しだけ気になっていた剣術部と剣道部の試合。

危険な魔法の行使もされてないからと考えてしまっていたようで光國の言葉に反省しながらも前に出る。

 

「剣術部の皆さん、待ってください」

 

「なんだ?」

 

「なに?今から、桐原くんと勝負なのよ?」

 

「…勝負するのは構いません。

ですが、その一本だけでお願いします。今は剣道部のデモンストレーションの時間で剣術部が目立つような行為をすれば剣道部のデモンストレーションを邪魔したことになりますので、その場合は風紀委員として拘束します。」

 

いざ勝負と言うところで達也が割って入ったのでイラッと来た壬生と桐原。

ここで仲裁しても仕方ないと一度だけ勝負させると言う判断を取り、風紀委員が直ぐ側に居ることをアピールした。

 

「なんですって…」

 

「?」

 

剣術部が邪魔をしてこれ以上目立つのは迷惑行為だと達也は言った。

しかし、どうせ勝つのは剣術部だから剣術部が目立ってしまうと壬生は受け取ってしまう。

 

「…」

 

もう既に手遅れだと察した光國。

テニスボールはもう切れているし、お兄様の前で堂々とビーストの魔法を使うわけにもいかない。

回り始めた水車は水が無くなるまでは止まることは出来ない

壬生と桐原の戦いがはじまり、周りが盛り上がってしまう。

 

「ミブの剣技、鬼気迫るものを感じるわ…」

 

「一昨年見た時よりも遥かに進化してる…」

 

どうする、どうすると焦る。

壬生が桐原を圧倒して、逆ギレした桐原は魔法を使うがその魔法は余裕で人を殺せる魔法だ。

しかも使った理由が壬生の剣がおかしかったとか言うかなりひどい理由だ。

 

「これが真剣勝負なら、貴方は死んでいるわよ?」

 

桐原の首筋に竹刀を当てている壬生、対して竹刀は近いが壬生に触れていない桐原。

真剣ならばこのまま壬生が桐原を倒しており、勝負は決したと見守る見物人達だが桐原の目が変わった。

 

「真剣ならだと…そうか、壬生は真剣がお望みか…それならよ…真剣で勝負してやるよ!」

 

「っ!」

 

手首につけているCADを起動させる桐原。

高周波ブレードと言う、ざっくりと言えば高速で振動させて固体を液状化させて斬ると言うよりは溶かす感じの適当に振り回せる物ならば大抵の物にかけられる魔法を使おうとしており、殺傷性はBランク、一番最初にやらかした森崎が使おうとした魔法は不明だが、近距離戦闘に用いられる魔法を関東一位の桐原が使うとなれば鬼に金棒だろう。実際それを使って腕を斬り落としてるシーンがある。

果たしてそれは真剣での勝負なのだろうかと言う疑問はさておき、そんなものを堂々と使おうとする桐原。

達也は魔法を使い、壬生に襲いかかるであろう桐原を拘束する為に動くが

 

「許せ、達也、ぁああああああ!?嘘やん…」

 

その前に光國がラケットを飛ばし、桐原の手に当てて竹刀を弾いた…まではよかった。

光國のラケットと竹刀ば空中で交差し、光國のラケットが綺麗な断面が見えるほどに真っ二つになってしまった。

 

「た、たつや…仕事しといて」

 

「ああ…」

 

時折出る関西弁を隠す気は何処にもなく、真っ二つになってしまったラケットを手に取る光國に仕事をしろと言われたので通報をした達也。

 

「桐原先輩、魔法の不適正使用により同行をお願いします。

それと剣術部のデモでもないのに剣道部のデモに乱入したことについて、後で部活動会頭に説明を」

 

通報を終えると桐原を睨む達也。

やっべ、風紀委員だと空気が変わったのだが二科生だと分かれば別だ。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!

お前は一本だけならって許可しただろう!それに勝負を受けた壬生も連行しろよ!」

 

「俺はあくまで、剣での勝負を一度だけ許可しただけに過ぎません。

今、俺は桐原先輩が魔法を使用した事により、身柄を拘束しているだけで壬生先輩にも後で説明をする義務が、勿論俺にもあります」

 

「達也、話しても無駄や…」

 

色々と文句を言う剣術部員だが、達也はあくまでも取り締まっただけに過ぎない。

光國はゆっくり真っ二つのラケットを手に立ち上がって、壬生を見る。

 

「怪我、無いですか?」

 

「え、ええ…むしろ君の方が大丈夫?」

 

「気にしないでください、死んだ婆さんのラケットなだけです」

 

壬生の怪我が無いことを確認するが、今にでも泣きそうな光國。

結果的には壬生の剣胴着が切られて素肌を晒す瞬間が無くなったし、大事にはならなかったと我慢をする。しかし、光國の方が大事になっていた。

 

「リーナ、千葉、避難を誘導するんや。

壬生先輩も部員連れて出ていった方がエエで、来ないなゴミ集団を相手にしてたら身が持たんよ…達也も、さっさとしょっぴく奴だけしょっぴいとけ。」

 

「だ、誰がゴミ集団だ!!」

 

「何処をどーみてもお前らやろ!!

そこの魔法使ったDQNの取り巻きは何事もなくついてきとって、誰一人止めろって止めようとせんかったやろ!それともなにか、剣術部のデモの時間すら覚えられない程に自分等アホなんか?」

 

桐原と壬生の戦いは二次創作でも色々と書かれているだろうが、何気に一番最悪なのは桐原についてきた剣術部員である。全く、誰一人として桐原を止めようともしない中々のクソっぷりである。

 

「て、てめえ言わせておけば!」

 

事実を言われ、キレた剣術部員。

 

「リーナ、千葉、とっとと壬生先輩連れて出てけ!」

 

「え、っちょ、手塚くん!」

 

「光國ならどうにかするわ!」

 

押し出すかのように壬生をエリカとリーナに押し付け、他の生徒達と一緒に体育館から出る。

光國の素の運動能力を知っている、陸上選手並みの足は勿論のことベンチプレス140キロの力に、リンゴを余裕で握り潰す事の出来る握力を持っている。

 

「一般生徒への暴力行為は見逃すことは出来ません」

 

更には達也もいる。

主席の深雪が褒めるだけでなく、九重八雲と言う有名な忍者から体術の手解きを受けていると聞いているのでリーナは安心していた。

達也は光國に襲いかかってきた剣術部員の前に立ち、合気道や柔道の様に相手の力を利用して投げた。

 

「手塚、後で俺が…手塚!?」

 

一番最初に行った体育の授業は体力測定で、自分よりも上だった光國。

剣術部員の数がそれなりなので後で取り抑えるのを協力して貰おうと達也が振り向くと光國は殴られていた。

 

「所詮、口だけかよ!」「ウィードの分際で調子に乗るんじゃねえ!」

 

「…っ…」

 

「どういう、ことだ…」

 

リーナが押すだけあって、光國の運動能力はとても高かった。

単純な魔法だけは普通だが、近距離戦闘を磨けば物凄く光ると達也は見ていた。

しかしどうだろうか、今目の前では光國はなすすべもなく殴られている。

エリカが森崎のCADを弾いた時の動きと似たような動きを出来ると光國は言っていた、あれだけの運動能力があれば発揮出来るのに一向にその様な素振りを見せない。

余りにもわからない事をしてばかりで予測不能の光國に、困惑をしてしまう達也。直ぐに困惑する感情こそ消えて、手塚を助けて全員を叩き伏せたものの分からないことだらけだった。




勝負に挑んだ壬生か、勝負が始まる前に止めなかった達也か、邪魔をした桐原か、邪魔でしかなかった剣術部員だろうか







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