達也の活躍により、一騒動が一先ずは納まった。
あくまでも一先ずであり、本日第2体育館でデモンストレーションを行う部活は強制的に中止、一部の武術系の部活はとばっちりを受けたが、その事について誰も文句を言わなかった。
理由は言うまでもなく、ボコられた光國。他の魔法科高校よりも真っ白いのが特徴な魔法科高校の制服を真っ赤に染め上げてしまったのを見てしまったからだ。
「…以上です」
そしてその騒動の報告が今、終わった。
部活動会頭の十文字克人に、風紀委員長の渡辺摩利に、生徒会長の七草真由美に達也は起きた出来事を全て報告した。全員が全員、渋い顔をしている。
「これで終わりです」
「ありがとうございます」
事件が起きたのもそうだが、事件の被害者Bこと光國が直ぐ目の前に居るのだから。
制服が血塗れで深紅に染まっていたのだが、奇跡的と言うか打撲の傷しかなかった光國。念のためにと色々とスキャンしたのだが、骨には全く傷はなかった。
と言うよりは程よく血が制服に飛び散っているだけで、そんなに怪我をしておらず、壬生のカウンセリングを優先してくれと部活連本部に来てたまたま手が空いていた市原に傷を治して貰っていた。
「…で?」
救急箱を閉まって、七草の側によった市原を見て、口を開いて良いと判断し光國は一言だけ発した。
この言葉には色々な含まれており、答え方を間違えればこの魔法科第一高校はおしまいだ。
「…お前に暴行した剣術部の生徒は皆、退学だ…」
光國の問い掛けに答えたのは十文字だった。
光國に暴行をした生徒達は血が出る威力で無抵抗な相手を殴ったのだから、当然と言えば当然だ…が…
「…なに退学ですかって、ああ、すんませんね。
如何に魔法科高校でも、学生にその辺の詳細は教えてくれませんよね」
「自主退学だ…」
「言葉が足りないんじゃないですか?」
「…なにが望みだ?」
自主退学と言っているものの、今すぐにやめろと強く勧めており、退学に出来るのならば今すぐに退学にしないといけない剣術部員。
学校側が暴力問題を起こした生徒を退学させたとなれば、魔法科高校でなくても大問題だ。
自主退学ならば、ある程度は言い訳が出来るし関係無いとの言い逃れが出来る。
よくある手だと光國はなに退学か聞くと摩利が誤魔化すが、通用せず十文字が光國の望みを聞いた。それはつまり、自主退学を勧めているという事で、学校は関係無いと逃げようとしている事を認めたことだ。
「その前に桐原先輩はどうなるんですか?」
「っ、それは…」
「ああ、すみません。
たかが一学生にその辺の説明をすることは学校側はしませんよね」
本来の道筋ではなんとこれと言った罰を受けていない桐原。
大事になったことにより、それ相応の罰を受けたのか気になって聞いた光國だが、真由美が少しだけ言いづらい表情を取ったので、退学ではないと理解して聞くのをやめた。
「なにが望みですか…」
光國は襲ってきた剣術部員を殴り倒そうと思えば、殴り倒せた。
しかし、それはしなかった。
「とりあえず、告訴しますね…示談は受け付けますし、有能な弁護士をつけても良いですけど…証拠の提示は頼むぞ、達也」
「…」
達也の胸ポケットにはレコーダーが入っている。
風紀委員が取り締まる際に、相手の魔法使用の現場を録画する為につけられている。
それを提出すれば、どんな敏腕弁護士でもお手上げで、有罪判定をくだすことが出来る。
「告訴の事を伝えてくださいね…でないと、暴れますので。
あぁ、示談金の額はちゃんと相談しますよ…魔法師という事だけで儲けてるんで根刮ぎ搾り取ります…大丈夫です、金がないなら将来払って貰いますから」
「最初からそれが目的か…」
光國の目的の一つ、と言っても成功しようが失敗しようがどうだっていい目的、示談金。
蛙の子は蛙の様に、魔法師の子は魔法師で、この学校にいる大抵の生徒の保護者は魔法師か、魔法師関係のものが多い。一家で魔法師の才能持ってるの自分だけと言うのは一握りぐらい。
最初に親から老後の貯金を全額頂き、剣術部員がちゃんと職についてから実家暮らしの借金スタート、貧乏に苦しめと言う最低最悪の生き地獄を光國は企んでいた。
しかし、光國にとっては本当にその辺はどうでもよかった。出来たら良いなと言うレベルで本当の目的は、被害者になり学校側の逃げ道を封じることが目的だった。
「…餅は餅屋に任せるのが一番だし、弁護士挟むのでその辺はどうでも良い。
だから、話題を変えましょう…十文字会頭はあの時、場に居ませんでしたがオレは会長達に2000年以降の学校になんの価値や意味があるかと言う質問をしました…答えが出ましたか?」
自分で作った空気を自分で壊しにいく光國。
嘗て聞かれた質問の答えを答えることが出来ない七草達。はじめて聞いた十文字は考えるが、光國は時間を与えない。
「これは答えが複数以上ある問題ですが、正しい答えならば納得させる事の出来る答えです」
「ならば、お前には納得のいく答えがあるのか?」
「ええ…ですが、あくまでも自分で納得のいく答えですのでご注意を。
2000年以降の学校にはなんの価値や意味なんですが…オレは人間力を鍛える為にあると思う」
空気を変えるべく、一先ずは耳を傾ける達也達。
上手く乗ってくれたと安堵しつつも、光國は話をする。
「渡辺風紀委員長、七草会長…達也は二科生ですが実際に見てどうでしたか?」
「どう、と言われても…」
「あ、答えにくいならば深雪を呼んで良いですよ?
ブラコンと言っても特に問題ないぐらい達也を愛していますし、褒め称える所を教えてと言えば喜んで教えてくれますから」
「待て、お前はなにが言いたい?」
深雪を出された事により、口を挟んだ達也。
光國の言いたいことは分からないが、深雪を出されたのならば黙ってはいられない。
「分かった、そう怒るな。
お前が一番分かりやすいから選んだだけだ…」
一歩前に出ると素直におとなしくなる光國。
たまたま良い一例がいるので達也を選んだだけだが、深雪を話題に出して喧嘩や面倒なことになるのならば引くのを選ぶ。
「違う人で言い換えるから許せ…渡辺風紀委員長、十文字会頭、七草会長…貴方達の持つ力や知恵は学生レベルでしょうか?リーナも深雪も学生レベルか?あの森崎も多分、一芸では学生レベルじゃないだろう、いや、違う。他にもオレが知らないだけで学生レベルじゃない魔法科高校に通っている生徒がいるはずだ」
「手塚くん、なにが言いたいの?」
「義務教育を受けている生徒の中には、普通科の大学生顔負けの知識を持つ子もいる。
世に言う英才教育を受けていて、塾にいっている。普通の学習塾だけじゃなくインターネットを介した塾みたいなのがある。
昔は学校は勉強をするところだったかもしれないが、2000年以降は色々な環境が整備されて学校にいかなくても勉強は出来ることが証明された。
じゃあ、なんで今でも学校に通わないといけないのか、過去にインターネットを介して超有能な講師が教えた授業を録画したものを流せば良いんじゃないかとオレも昔は考えた。だって、学校に行くのが面倒だし、担任がハズレだったし、大体の勉強は分かってたから!朝はキツいんだ!」
徐々に徐々に興奮をしていく光國。
私情が混ざっているが、一理あった。
「今でも学校に通う意味は学習するよりも人間力を鍛える為にあるとオレは思っている。
学生の範疇を越えている生徒もそればかりはどんな英才教育を受けても鍛えることは出来ない、と思う…素で人間力が高い奴は多いけども…正直、達也や深雪、それにリーナも、こんなん言われんでも分かっとるわと思とる授業は多いやろ?てか、二科生は基本的に教師無しやから、学習させるというのを放棄してる。もっと言えば、全校生徒の人間力を高めることもだ。オレは魔法師が人間だ人間じゃないかと言う議論はどうでもいい、人間力が問題だ。」
深雪も達也も、かなりと言うか物凄く良い教育を受けている。
七草真由美も十文字克人も物凄く良い教育を受けている、市原鈴音と渡辺摩利もそれなりの教育を受けて尚且つ自力で勉強をしている。
光國の言っていることを成る程と頷くしかない。否定することは出来ない、彼女達の持つ能力の殆どが学校外で得たものばかりなのだから。
「っと、オレは帰らせて貰うわ…なんかスッキリした…」
言いたいことが言えて、心が少しだけ晴れた光國。
これ以上はここにいてもなにもないと席を立ち上がった。
「とりあえず言えることは、達也を風紀委員に選んで活躍させてもただのブームで終わるだけなのと…人間力を鍛える授業かなにかを取り組むことが先決…真の敵はいったい誰なんだろうな…」
最後に達也のイメージ対策の無意味さと真の敵について語り、部活連本部を出ようとドアを開ける光國。
「あ…」
そこには満面の笑みのリーナと、何故か自分に顔を向けない深雪がいた。
「光國?」
「…」
リーナは信じていた、光國ならどうにかすると。
今までも大体そんな感じでやって来たから絶対の信頼を得ていた。信じてしまった結果がこの様だ。
自らを犠牲にすることにより、魔法科高校を相手にすると言う馬鹿でしかない事をした…故に史上稀に見る、深雪でも中々に無いレベルの怒りを見せていた。
「…ちょ、はなしあ」
話し合いを求めるが既に手遅れだった。
深雪が前に出て、部活連本部に入りドアを無言でしめた。
「手塚さんのいう人間力を鍛えるなにかを取り組むことは私も賛成です。
特に今回の様な違反者を取り締まり、なんらかの罰を与える際にただの停学では反省もなにもしません。ここは大胆に寺に叩き込み、心を鍛える事を勧めます!」
「寺…深雪、まさか師匠のところに…」
「九重先生も、たまにはお坊さんらしい事をしないといけません…」
「ほぅ、忍術使いと名高いあの九重八雲か…確か達也くんの体術の師匠だったな」
「ええ…」
最早、手塚とリーナの存在は頭から抹消された。
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リーナの体力が50減った。
光國の体力が50減った。
リーナと光國の体力最大値が3上昇した。
光國のパワーが上がった。
光國のスタミナが上がった。
光國のテクニックが上がった。
光國のスピードが上がった。
光國のメンタルが上がった。
リーナが糸色輪を手に入れた。
リーナが回復○を手に入れた。
リーナは
リーナは光國に攻撃。
光國はリーナの攻撃をくらった、光國の体力は30回復した。
リーナは光國に男か女かを聞いた。
光國はリーナが元気で良いなら一番だと答えた。
リーナの理性が崩壊した。
光國は黄泉比良坂の列に並んだ。
光國は黄泉比良坂から帰って来た。
光國の弾道は上がったけど、野球の弾道なので無駄だった!
光國は寝ているリーナの大きさを測った。
リーナは実は寝たふりをしていた。
リーナの病みが3000000000上がった。
リーナは寝た光國に髪の毛を食べさせた。
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「なぁ、アレって」
「手塚くんがわざと殴られたのを分かった途端に買いにいったわ…専用のがどうあがいてもZ指定だからペットショップの物で妥協してたけど、電撃が走るのが欲しいって、どうにかして改造できないかって」
「そんな事をしたら手塚さんが死んじゃいます」
リーナを裏切ってしまったと言うか逆鱗に触れてしまった光國。
何時かやるんじゃないかと思っていたのだが、遂に首輪をつけられた。比喩とかじゃなく、正真正銘の首輪であり、エリカ達はこそこそと話をしていた。
本当は頭に巻いている包帯や打撲の痕に注目すべきだが、首輪の方がインパクトがデカかった。
登校中もリーナに首輪の紐を持たれており、全校生徒に見られていたが、昨日の事があるのでなにも言わなかった。
「どうしよう…このまま一年間あの状態だったら」
「つってもな…手塚、なんか近寄りにくいんだよな。
レオで良いって言ってるのに西城って呼ぶし…こう、なんと言うか距離感がある」
「あると言うよりは、手塚さんが自分で作っているんだと思います…」
こういう時に達也がいれば良いのだが残念ながらいない。
どうしたものかと真剣に話し合っていると、教室のドアが開いた。
「手塚くん、居るかしら?」
ドアを開いたのは昨日、騒動を起こした一人である壬生沙耶香だった。
彼女自身は魔法の使用はしておらず、危うく斬られそうになっただけで剣術部員と部活動のデモンストレーションそっちのけで勝負したことを怒られて終わっており、罰らしい罰は特にはなかった。
「なにか用でしょうか?」
席を立ち上がった光國。
教室にいた生徒達が見守っている最中、壬生と一緒に何処かにいった。
「お、おい…」
「これって、バレたらまずいんじゃ…」
「と、とにかく追いかけてみようよ!」
美人の誘いをホイホイと乗った光國。
これはリーナに通報しなければならないのだが、通報すれば最後世界が崩壊しそうな気がする三人は一先ずは後をつけると体育館裏と言うなんとも良い感じの場所にやって来た。
「あ、壬生先輩が頭を下げてる…」
「手塚は…相変わらずの無表情、てかマスクのせいで分からねえな」
「お礼、じゃないかな?」
本当に野暮な事をしている三人。
ある程度の会話が進むと光國はポケットから指輪を取りだして右手の人差し指につける。
「っ、
「お、おいまずいぞ!手塚、魔法を」
微弱ながら想子を感じ取った三人は慌てる。
魔法を人に向けた事を散々言っていたあの手塚がまさかの人に向けようとしている。
体が考えるよりも先に動く三人は直ぐに壬生を助けようとするのだが遅かった…
「壬生先輩、頭を冷やしてください…戦う相手を見誤るのは冤罪よりもダメですよ」
体育館裏にあった蛇口の水を壬生にぶつけた。
「手塚、なにしてるんだよ!!」
魔法で水を操り、ぶっかけたことが分かると光國の胸ぐらを掴むレオ。
こんな事をするやつじゃないと信じていたが、今まで起きた事と違い未遂で終わらなかった。
壬生に魔法で攻撃をしてしまった。
「手塚さん、どうしてそんなことを…」
「壬生先輩、怪我はありませんか?」
「…ええ…ううん、違うわ。」
「っ、手塚くん!!」
「待って!」
壬生の変わった様子を見て警棒型のCADを取り出したエリカ。
なにかしたと思い光國に向けるのだが、壬生が警棒型のCADを握った。
「…反省した、ううん、違うわ。
なんて言えば良いのかしら…今まで心にあったモヤが無くなってスッキリしたわ…手塚くん、ありがとう」
「いや、礼を言うにはまだ早い…オレ達は上の存在こと十文字会頭、渡辺風紀委員長、七草会長とは違い、二つと戦わないといけないんだ…」
心なしか、スッキリした表情の壬生だが代わりにマスク越しでも険しい顔をしているのが分かる光國。とりあえず、レオに掴まれている胸ぐらをはずす。
「なにをやっていたんですか?」
「非魔法部活で結託して別組織を作るから協力してくれと言ってきた。
だが、そんな事をしても無駄だと言い争ってしまってな…少々手荒だが、頭を冷やして貰った…日頃、一科生の二科生差別や魔法絶対優先は認めているがそれが原因で魔法以外の行為を評価されないのがかなりのストレスになっていたようだ…これは下手したら来年の西城達かもしれないな」
「「「っ!!」」」
「手塚くん、そんな事を言っちゃだめよ…私の心が弱いから…思えば、一年前のことも勘違いで」
光國がなにをしていたかを説明をすると納得をした三人だが、最後の言葉にビクッとした。
達也と関わる以上は深雪がついてくる。深雪がついてくると言うことは一科生達に見られる事が多く、二科生の分際でと言う視線を結構向けられていた。
もしこのままそんな日々が続けば、もしかすると壬生の様になってしまうのではと焦りを感じた三人。
「…正直に答えてくれ…森崎と友達になれるか?」
「無理だ」「無理ね」「無理です」
「速答だな…」
最早、レオ達の森崎への好感度はマイナス方面にカンストしている。
ならばと光國は口を開く。
「七草バ会長は、一科生と二科生の溝をどうにかしようと頑張っている。
その結果の一つが達也だが…ハッキリと言ってそれは無駄だと思う。あ、達也はなにも悪くないぞ…そもそもの話で無駄なんだ」
最早、敬意を持つ必要はない。
「成果主義で、しかも貴族みたいな存在がいるのが魔法師だ。
更にはここは学校で一学年にはかなりの数の生徒がいる…十人十色と言う諺があるように、人には個性が色々とある。
源氏と平氏、S極とN極、伊賀と甲賀、カブトムシとクワガタ、巨乳と貧乳からの乳と尻、そしてきのことたけのこの様に合わないのもいれば、ツナとマヨネーズ、ボケとツッコミと言う異なる存在が仲良くなる一例もある…仲良くしましょうと言うのが無駄なんじゃないのか?あの人達は完全に立ってるステージが違うからああいう事が言えるのだと思う。」
「まぁ、うん…そうよね…」
そこは言わないのがお約束だが、このバカには通用はしなかった。
それを今さら言うのかと若干引いてしまっている壬生、さっきまで出来ていた緊迫した空気がぶち壊れた。
「一つだけ、一つだけだが、一科生と二科生の意識改革なんかを一気に解決できる禁断の手が存在する……」
「え、そんな便利な方法があるんですか?」
「あるにはある…だが、後一人、後一人、足りない。」
「達也じゃダメなのか?」
「達也を含めて、後一人足りない…二科生の生徒で、西城達の様にある部分では一科生にを負けない奴がいる…実質数合わせの達也に頑張って貰うか…」
「…それなら、それなら私に心当たりがあるわ!」
その禁断の手の内容を聞く前に、禁断の手を取ろうとするエリカ達一年。
「…失敗すれば、大損どころか三年間負け犬の烙印をはられる事になるぞ」
光國は最初で最後の忠告をする。
「いったい、いったいなにをするって言うの?」
「……をする、オレ達が……だ。」
恐る恐る聞いた壬生に答えると、四人は顔を青くした。