魔法科らは逃げれない。   作:天道無心ビームサーべ流
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常勝無敗

引き返す事の出来ない、崖っぷちの所に進み追い詰めた光國達。

彼処まで堂々と公表して無しとは言えず、紙に書かれていた指示通りのルールで一科生と二科生の対抗戦が決まった。

 

「学校側の最後の嫌がらせか…」

 

他の八校は、会見の数日後に何時も通りに戻った。

しかし、第一高校だけはそうはいかず、未だに休校で来年に向けての準備と今すぐに変えれる部分を変えたりと大忙し。

それに加えて、対抗戦の準備もしなければならないのだが、そこで最後の嫌がらせを受けた光國達。

 

「あ、手塚!」

 

「一番の最後よ!」

 

「オレが一番の遅刻か…」

 

「遅刻じゃないです、まだ十分前ですよ」

 

「僕もだけど、皆、早くに来すぎたんだ…眠れなくて」

 

「そんなに緊張をしなくてもいい…少なくとも、寺で厄介になるだけで修行僧の仲間入りをする訳じゃない」

 

休校中の間、対抗戦の準備をする一科生と二科生。

そこで問題が発生と言うか、どっちが学校側の施設を使うかとなった。

別に時間制にすれば良いんじゃないのかとなるのだが、なにかと理由をつける学校側。

学校側の施設を使い色々と知られ、これ以上余計な書き込みをされれば物理的に首を括らないといけないかもしれないのと一科生に勝ってほしいので一科生が使うことになり、最終的に光國達は忍術使いとして名高く、達也の体術の師匠でもある九重八雲がいる寺、九重寺を借りて修行をすることに。

なにか欲しいと言えば、学校側は用意してくれるがやはり学校の設備を使えないのは痛いと光國と達也以外は感じている。

 

「今後魔法関係の問題を起こした生徒に対する罰として叩き込む寺としていけるかどうかの視察で来ているけれど…桐原くん達はこの対抗戦が終わり次第、一週間ほど入れられる予定らしいわ」

 

それと同時にこの寺に来た建前を語る壬生。

どう考えても自分達ではなく森崎や桐原達を今すぐにでも叩き込まないといけないのに、調べて来いとはどう言うことか、むしろ一科生が行くべきなんじゃと達也以外がイラッとする。

 

「…先に幾つか言っておきたいことがある」

 

「…どうしたの?」

 

寺の中に入る為の無駄に長い階段を上るべく最初の一歩を踏み出そうとするのだが、光國は全員を止めた。

 

「失敗したら、全てが終わりだ。

オレ達は正真正銘の負け犬で、学生生活をまともに送れない…覚悟は出来ているか?」

 

「なんだよ、今更改まって…出来てるに決まってるだろう」

 

達也と光國以外は最初の一歩を踏み出した。

 

「私達は風紀委員に選ばれなかったし…このままだと三年間見せ場は無い。

それに森崎みたいなのが今後、力と名のある魔法師になったら…もうそれこそ、魔法師はおしまいよ」

 

実際のところ、これから繁盛にテロが起きるので見せ場があるエリカ達。

まぁ、それは別としてこのままだと三年間、学校では見せ場は全くといって無いのが現実だ。

エリカ達は事件が起きて巻き込まれたりしたら活躍するがそこまでで、事件以外での活躍はこれと言って無い。

 

「…それと、達也は二科生が負けたら躊躇いなくオレを殴っていいぞ」

 

「待って、手塚くんは悪くはない、一科生と二科生の溝をどうにかしようと誘ったのは私…だから、私を殴って!」

 

「俺に人を痛ぶる趣味はないです。

まだ修行もなにもしていないのに、ここで弱気になってどうするんですか?」

 

ほぼ強制参加の達也は呆れる。

 

「…罪悪感が無い方がおかしい。

と言うか、よく引き受けてくれたな…」

 

「完全に俺の退路を防いでから誘ってどの口が言う…手塚、俺はお前が言った先行投資を支援するだけだ」

 

達也にとって、深雪の存在は絶対であり全てだ。

ハッキリと言って今回の一件は深雪と自分にこの上無く迷惑な事でリーナに電話をする前は何処かで叩きのめして余計な事をさせないようにしようかと考えていたほどだ。

しかし、光國の先行投資をリーナから聞いて少しだけ考え方を変えた。魔法師と一般人との今後の交流、深雪と達也には一生関わりの無い、考えもしない事を考えさせられた。

今後選民意識が強すぎ、名前で傲慢になったりする魔法師が増える可能性がある。

レオやエリカの様に良い人材なのに、評価をされず活躍できる場を与えられない者が増える可能性がある。

 

「…あれは大方、リーナにメモでも渡して言わせたんだろう?」

 

「…」

 

「そう露骨に嫌な顔をするな。

ニコラ・テスラと神様の話は色々と良い一例で、俺もそれは考えていなかった…優れた科学は魔法と変わらない、か…」

 

「…なんの事だ…」

 

適当で意味深な事を言えば賢い達也は考えると思っているので、リーナに渡したメモに適当な事を書いてたなと思い出して、知らんぷりを決め込む光國。

壬生達は、二人がなんの話をしているか気になり聞こうとしたその時だった。

 

「!」

 

順番で言えば、光國が若干先で、次に達也。遅れてエリカと壬生、更に遅れてヨシヒコとコンマ差でレオが後ろに誰かが居るのに気付く。

そして後ろに居る誰かが美月に向かって、手を伸ばした。

 

「おっと…いやぁ、早いね!」

 

が、しかし光國に手を弾かれた。

しかし、後ろに居た誰かこと怪しい雰囲気のお坊さんは諦める事なく今度はエリカと壬生に手を伸ばすのだが全て光國に弾かれる。

 

「え、え、え?」

 

なにが起きたか分かっていない美月。

決して能力は低くないのだが、やはりこの中では一番低く彼女を中心に囲むように陣形を取って身構える。

 

「…なにをやっているんですか…」

 

達也以外はだ。

達也は呆れた顔で怪しい坊主の男に声をかける。

 

「いやなに、今回の事を聞いてちょっと腕試しをと」

 

「ならば何故、一番に美月を狙ったのです?

確かにこの中では一番運動能力が低く、狙うのがセオリーなのは分かりますが…その後はエリカと壬生先輩を狙いましたね?レオと幹比古を無視して」

 

「嫌だな…そこを聞くのは野暮だよ」

 

「達也、このお坊さんは?」

 

「…あの有名な九重八雲だ…」

 

「どうも~九重八雲です。達也くんの師匠さ!」

 

幹比古の質問に答える達也だが、少し嫌な顔をする。

自身の師匠が登場すると早々に女子にセクハラをかまそうとしたのだから、仕方あるまい。

 

「この人が、あの九重八雲…」

 

「胡散臭さが半端ねえよ…」

 

エリカとレオはイメージしていた九重八雲と違うと感じる。

本物かと言いたくなるが、達也が否定しないので本物としか言いようがない。

 

「…九重八雲さん、これはいったいどういうおつもりで?」

 

「スゴくどうでも良いことだけど、手塚くんと声がそっくりだわ…」

 

光國と声質が似ていることに気にしている壬生。

「あー確かに」と光國以外は同じ気持ちになった。

 

「第三高校が求めるものは戦闘力寄りだったりするけど、第一高校の求めるものは国が求めるものと一緒だからね…流石に大恥をかくのはいけないから試させてもらったのさ」

 

「…僕達は視察を名目にやって来たのですが」

 

ここで修行するには修行するが、あくまでも場を借りるだけで名目上は視察だ。

あの九重八雲が一から指導してくれる訳じゃないのに、いきなり試して来たのでヨシヒコはその辺のことについて聞いてみた。

 

「一指導者として興味を持っただけだから、これ以上はしないよ。

けど、よかったよ…口だけじゃなくて。この実力を全く評価しないのは大問題だ」

 

「…ありがとうございます」

 

取り敢えず忍者に認められる基準の実力を持っている事に壬生は内心喜ぶ。

しかしそれと同時にお尻を触られかけたので、この坊主はお坊さんとして大丈夫なのかと気にする。

 

「さぁ、入りなさい…修行場としては問題ないよ、うちは」

 

寺の門まで来ると、改めて歓迎をしてくれる九重八雲。

門が開くと達也と光國以外は息を飲み込み一歩ずつ歩き出す。

 

「さぁ、油断せずに、へヴぁあ!?」

 

最後に入る光國が例の台詞を言おうとしたその時だった。

九重八雲が音を消し、殺気を消し、気配を消して光國を殴り飛ばした。

 

「て、手塚ぁあああああああ!?」

 

「手塚くん!?」

 

「階段から滑り落ちたよ!」

 

「大変、頭から血が出てるわ!」

 

「救急車を…あ、立ち上がった!」

 

レオ、エリカ、美月、壬生、ヨシヒコの順番で階段から滑り落ちた光國に叫ぶ。

 

「なにをしているんです!!」

 

達也はハゲに叫ぶ

 

「その…や、やっちゃったみたい……」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

練習が始まる前に光國の人生が危うく終わりかけているその頃だった。

第一高校には対抗戦に出る一科生達が実習室に集まっていた。

 

「二人一組のペアでの戦いを二回、一人での戦いを二回、最後に六人での団体戦。

計五試合をおこない、勝利数を競い合うが三勝をして勝利が確定しても最後まで続けるルールで、団体戦を除き一人一試合で補欠に一人しか入れない」

 

「…で、一応聞くけれどどうしてこのメンバーなのかしら?」

 

十文字の説明を受けるリーナ。

彼女も今回の一科生と二科生の対抗戦に出るのだが他のメンバーに不満がある。

隣にいる深雪はまだわかる。一年生の顔だし主席だし、自分と勝負できる数少ない相手だと。

 

「私は、自分で志願したよ。」

 

しかし他はどうみても学校側が使い捨てても良い人材だった。

事件を起こした桐原、起こしかけた森崎、止めようとしたが法律に触れる行為をしたほのかとそれを手伝いたいと自ら志願した雫だった。

 

「上の学年には、名前と実力が確かなのはいたけど…大方、止められたのね」

 

十文字克人、渡辺摩利、七草真由美の三巨頭を封じたがまだまだ実力者は一科生に沢山いる。

桐原達も決して悪くはないのだが、精神面においても未熟でない上の生徒は普通にいる。がしかし、この面子である。

何故か?殆どが名家のボンボンであり、今回の一件の火消しに注いでいるから。負けたら今まで築き上げたものが崩壊する可能性があるから。

 

「…何故、何故この様な騒ぎを起こした?」

 

「ダメね…」

 

リーナが騒ぎを起こした一人であることを知っている十文字はリーナに騒ぎを起こした理由を聞くのだが、リーナは呆れる。

この十文字克人と言う男は巌のような男で、中を整えたりするのには向いている。

しかし外から新しく取り込んだり、下剋上をしたりするのには余りにも向いていない。

巌のような男故に滑らかではあるが柔軟性がなく、冒険したりしない。冒険が出来ない性格だ。

十文字は騒動を納めて、二度と起きないように厳重にすることは出来ても、次の一歩に踏み出そうと言う考えを持っていなかった。仮にあったとしても確実に自分が安全なラインにいるだろう。

 

「…失礼させてもらう」

 

リーナが質問に答えるつもりが無いので、出ていく十文字。

完全に出ていくとほのかがへなへなと座り込む。

 

「雫…怖かったよぉ…」

 

「ごめん、私も怖かった…」

 

生まれたての子馬の様に足を震わせる雫。

ゆっくりとほのかの隣に向かうと地面に腰を下ろす。

 

「なんでこんな事になったんだろう…」

 

夢と希望を持って入学した第一高校。

憧れの深雪と同じクラスになってほのかは良い感じだったが、その後は悲惨だった。

森崎達が起こした騒動を止めようとすれば加害者側になり、部活動勧誘の際には光國に見捨てられ、更には強制的に選手として登録されるなど踏んだり蹴ったりだった。

 

「どうしてこうなったか、と言われれば今までのツケが私達に来たのよ、ほのか」

 

「深雪…深雪はどう思っているの?」

 

泣きそうなほのかを励まそうとする深雪。

一科生の中では一番の被害者で、主席だから参加させられたと言う深雪は怒っても良い。

しかし、全くといってそう言う素振りを見せない。

 

「今回の件かしら?

私もお兄様もリーナ、いえ、手塚さんに色々と釘を刺そうとしました。

ですが…ニコラ・テスラと神様の話等を聞いて色々と考えなければならない事がありました。

これから先、私達魔法師と一般人の付き合いをどうにかしなければならないのは明確ですし、その先も…だから、私は喜んで出るわ」

 

口ではそう言いつつも、周りをピキピキと凍らせる深雪。

一応の納得はしているのだが一応のもので、もっと良い方法があるだろうという怒りはあった。

 

「深雪…深雪がどの試合でも良いから勝利したら達也は何でもするって言っていたわよ」

 

「ん、今何でもするって言った?」

 

しかし、そんな深雪を上手く扱うリーナ。

正確には困ったらこうしろと光國に言われている事を言っているだけだが、それだけでも効果は絶大だった…が

 

「…完全に、負け覚悟ね…」

 

リーナは馬鹿ではなかった。

深雪が勝てば達也が深雪に何でもすると言う約束、別に約束しなくても達也はすんなりと受け入れるのがお兄様なのだが、こう言う約束をすれば深雪は躊躇なく全力を出すだろう。

そして全力の深雪には二科生では誰も勝てない。最初から深雪との試合は落とすつもりで来ている…

 

「いえ、違うわね…私も勝ったら、光國がなんでも言う事を聞いてくれるから…」

 

深雪との試合だけでなく自分との試合でも落とすつもりで来ている。

でなければ、そんなやる気が出てしまうことは言わない。と言うか光國ならなんでもするから負けてくれと土下座をするだろう。本気で戦ってもらわないと困ると言う考えなのだろう。

 

「あ、あのぉ…」

 

「あら、貴女は確か…」

 

残りの試合をどうするかと考えていると、何処かで見た顔のある生徒がやって来た。

誰だっけと必死になり思い出そうとするリーナ。しかし、思い出せない。

 

「生徒会役員の中条あずさ先輩よ、リーナ」

 

「…ああ、うん…覚えてるわよ、覚えてるわ…」

 

深雪に言われてやっと名前を思い出したが、そんなに深い関係でもないリーナとあずさ。

 

「なんのよう?」

 

選手でも無いのに、いる理由を取り敢えずは聞いた。

 

「い、一応の監視役です。

これ以上は騒動を大きくされれば、もうどうにもならないんです!手塚さん達の方には市原先輩が行くことになっています!」

 

「そう…大丈夫よ、これ以上はなにもしないわ」

 

ここまで来るためだけに騒ぎを大きくした。

故にこれ以上はなにも求めないし、これから先にある炎上等はどうでもいい。

その辺の火消しは、今まで無視してきた奴等にやらせる。

 

「それよりも、そこの二人?」

 

「「っ!?」」

 

あずさの監視は特に問題なく、リーナは来てから無言の一科生の選手二人を見つめる。

その二人と言うのは、諸悪の根元が学校とするならば事の始まりである森崎と桐原だった。

来てからずっと無言であり、ほのか達は一切声をかけようとしない。

 

「…貴方達、やる気あるの?」

 

幸いと言うべきか、光國達は壬生以外の名前を上げなかった。

学校側も事を大きくしたくないので、森崎達の名前をあげずに特にこれと言った罰をせずにいた。

しかし後日、寺に叩き込まれる事を知っている桐原と森崎は明るくない。

 

「俺達は石投げられるだけじゃねえか…」

 

ぼそりと小さく呟く桐原。

剣術部の事件を知らない一高生はいない。

森崎が危うく逮捕されかけたことを一年の一科生と二科生の大半が知っている。

一科生と二科生が集まる場で選手として出れば、それはもう批難の目を浴びる、浴びる。

一種の公開処刑と言っても良い。だが、騒動を起こした光國達の方がもっと目を向けられる。

 

「他にも、他にも…出れる選手はいた筈だろう…」

 

「はぁ…文句や言い訳の一つを考える暇があるなら勝ちなさいよ」

 

石をぶつけられる役の森崎と桐原の発言を聞いて呆れるリーナ。

 

「散々騒ぎを大きくした二科生を真っ向から叩き潰す。それ以外、道は無いわよ。」

 

森崎はここからどうにかするには勝ち続けなければならない。

勝ち続けることにより、森崎のあの発言は認められるし正当になる。CADを向けたことは別であるが、少なくとも勝てば-から抜け出せる。よくやったと一科生達に思われる。

常勝無敗を成し遂げなければならない。

 

「…光國じゃないけれど…油断せずにいくわよ」

 

なんとか一科生を纏まった。

六人が意気込み、ルールを確認して誰がなにに出るかやどうするかと話し合いをはじめる。

自然と盛り上がる。

 

「あの…私のことを忘れてない?」

 

尚、七人目の選手こと、アメリア=英美=明智=ゴールディことエイミィの存在を誰一人、気付いていなかった。








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