魔法科らは逃げれない。   作:天道無心ビームサーべ流
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下・克・上・等

「すみません、ここに第一高校の生徒が来ていますか?」

 

市原は九重寺に遅れてやってきた。

真由美にどうして止めなかったことや裏切ったことの説明に手間取った。

市原は単純に真由美のやり方ではどうにもならないと、達也だけではきっかけにはならないと言い、九重寺にやって来た。

 

「えっと…」

 

「あ、すみません。一高の生徒です」

 

箒ではなく雑巾で階段の掃除をしているお坊さんの一人に声をかける市原。

制服はなにかと目立つので私服を着ており、パパラッチと思われたのでお坊さんに一高生徒だと証明する。

 

「試合前に余計な書き込みや、薬を盛ったり盛られたりしないように来た監視役です」

 

「ああ…その…」

 

「こんの、ハゲぇええええええええええ!!」

 

来た理由を説明するのだが、他の事が顔面蒼白なお坊さん。

なにかを言いたいが、言うとまずいことだと見ていると心に響くほど大きな光國の叫び声が聞こえた。

 

「っ、まさか!」

 

光國の叫び声を聞いて、事件が未遂ではなくなった事に気付いた市原は走る。

石の階段を走ってのぼるのは、中々になくてそれなりの数だが走る。

 

「君だけまだ本気じゃなかったし」

 

「違うだろぉおおおお!!なんでそうなるんだ!!なんでそう自分から馬鹿な事をするんや!」

 

「手塚くん、落ち着いて!」

 

「傷口から血が出てるわよ!」

 

階段を上りきって、境内に入った市原は目にする。

壬生とエリカが全力で光國の動きを抑えているのを

 

「落ち着いて、落ち着いてください、手塚さん!」

 

「先ずは話し合いを、な、な?」

 

「示談交渉か?あぁあああん!!」

 

美月とレオが全力で光國を宥めているのを。

 

「なんで、来て早々に怪我せなアカンねん!

頭の毛やのうて下の毛も剃ったろか、この糞坊主が!!…あ、市原先輩、おはようございます」

 

「あ、おはようございます」

 

近寄りがたい雰囲気だったが、自分が居ることが気付くと素直に挨拶をしてくれた。

しかし直ぐに殺気を正座をしている九重八雲に向けたのでオンオフを切り替えただけだった。

 

「あの、なにがあったのですか?」

 

会話が通じると分かった市原はなにがあったかの説明を光國に求める。

すると、エリカ達の制止を振り切った光國はゆっくりと深呼吸をする。

 

「あのハゲが、なんの予告もなくオレ達をしばいてきた…結果がこの様だ」

 

「っ、早く治療を!」

 

頭からピュっと血を飛び出させる光國を見て、包帯かなにかないか鞄の中を探す市原。

ハンカチがあったので、光國の側に近寄り頭を抑える。

 

「…これはどういうおつもりですか?」

 

冷たい眼差しを九重八雲に向けて問いかける市原。

生徒同士が争って怪我をするのは一応の想定をしていたが、まさか第三者に襲われるとは思ってもみなかった。

 

「いや…ちょっと彼の実力を試したくて。

達也くんを除いた中じゃ、一番だけどまだ手を抜いてるみたいだったから…つい」

 

九重八雲が襲ったのは、ただ単に光國の実力が知りたかった。ただそれだけの為に襲った。

有名な奴に不意討ちをしたら防がれて「名に恥じない実力者だね」的な感じのよくある展開を起こそうとした。その結果、殴り飛ばしてしまった。

 

「は?」

 

その事を知ると、眼孔が開く勢いで目を開ける市原。

ただでさえ、色々と大変な時に面倒な事を増やしたと九重八雲を睨む。

 

「気になったから、つい…そうですか…手塚くん、示談交渉額の引き上げが上手い弁護士を探しておきます、マージンはいりません」

 

「ありがとうございます…マージン、とったのか…」

 

このハゲ、叩けば絶対に色々と出てくる。

市原は直ぐにそれを確信したので、睨むだけで特になにもせずむしりとれる物をむしりとる方向に切り替えた。

 

「べ、弁護士って…」

 

弁護士を口に出すと、顔を青くするヨシヒコ

 

「軽い…いえ、頭から血を出しているのでかなりの傷害事件ですよ…」

 

新入生の中で騒動の中心に居るのは紛れもない光國、しかしそれと同時に一番の被害者ではと市原は考えはじめる。

 

「市原先輩、もういいですよ」

 

「ですが」

 

「元々、出血は治まってます…ちょっと興奮してただけです」

 

果たしてそれはちょっとのレベルだろうかは別として、出血は止まっていた光國。

傷口を抑えてくれた市原の手を離して

 

「…最低でも7桁は覚悟しろよ…」

 

小さく呟いた。

最低でも7桁は九重八雲からぶんどるつもりだ。

どう考えても襲った九重八雲が悪く、言い逃れが出来ない。

 

「…それで、市原先輩は何故ここに?」

 

「私が居るとご迷惑ですか?」

 

「近いですよ、市原先輩」

 

「…すみません」

 

市原は何時の間にか、と言うか徐々に徐々に光國に近付いていっていた。

物理的にも心理的にもだ。

 

「ハゲは後日告訴するとして…お前達、ルールの確認はしたな?」

 

一息つくと、真剣な顔をする光國。

今から修行だと全員が気を引き締め直した。

 

「…前にも言ったが、達也は補欠だ。

オレ達が勝たないといけない…だから、出来ることは全てやる。先ずは誰がどの競技に出るか相談してくれ」

 

「相談してくれって言うけどよ、四試合目のS1(シングルスワン)はなにすんだ?」

 

一科生と二科生の対抗戦を堂々とするのを事前に聞いていたレオ達。

具体的にどんな勝負をするのか知っているのだが、第4試合のS1(シングルスワン)のみ光國から伝えられていない。

 

「第4試合ですが」

 

S1(シングルス)はオレが出る。

だから、お前達は残りのS2(シングルス)D1(ダブルス)D2(ダブルス)で決めてくれ」

 

内容を知っている市原が説明をしようとしたのだが、光國に止められる。

あくまでも第4試合は自分が出る、その為にわざわざ試合まで作って来た。

 

「決まったら自分が出る競技にだけ集中だ。

相手には今年主席の深雪と次席のリーナがいる、特にこれと言った見せ場が無く三連敗のストレート負け…それだけは避けなければならない」

 

「何処に行くんですか?」

 

美月達に背を向けた光國。

修行として貸してくれる場には行かず、寺の出入り口に足を運ぶ。

 

「達也、万が一と言うこともある。

悪いがレオ達を問答無用で叩きのめして経験を叩き込んでくれ」

 

「別にそれは構わないが手塚、何処に」

 

「診断書を貰いに病院だ。

あれがないと訴えられない、ついでに軽く千葉県まで走ってくる…」

 

光國はそれだけ言うと寺を出ていった。

 

「ごめん、保険証忘れた」

 

そして戻ってきた。

鞄に財布を入れていた事を普通に忘れており、それを取りに戻ってきた。

なんとも締まらない終わり方だった。

 

「レオ、少し席を外す。

誰がどの競技に出場するか決めたら呼んでくれ」

 

光國が完全に居なくなったのを確認すると達也がこの場から離れようとする。

 

「出来れば達也くんにも協力して欲しいのだけれど…」

 

「悪いな…師匠と少し話を、弁護士の話を…」

 

「あ、うん。それだったら存分にして良いわよ」

 

出来れば達也にも協力してほしかったが、弁護士を出されるとなにも言えないエリカ。

達也と九重八雲は声が聞こえない場所に移動し、その間レオ達は誰がどの試合に出るかを話し合う。

 

「…弁護士についてはどうにかしますが、紹介をするだけで示談金はどうにかしてください」

 

「今までの授業料って事でどうにかならないかい?」

 

「自業自得です…それで、どうでしたか?」

 

達也が九重八雲と弁護士の話をするのは建前だ。

本当はレオ達の実力、そして少し前に頼んでいた手塚の調査結果を聞くことだった。

 

「彼等はさっき言った通りさ。

彼等の長所は国が求めるものとは違うけれど評価されない、評価しないのは指導者として失格だ。もし長所を伸ばし、生かす場を見つけて活躍すれば大きく変わるよ」

 

「…手塚の方はどうでしたか?」

 

レオ達が認められた事はよかったが、それは置いといて手塚である。

魔法科高校の授業を受け、何度か観察してみたのだが普通としか言えない実力と知識だった。色々と工夫でカバーしているが、本当に魔法の技術と知識はその程度のものだった。

体育の体力測定では、満点の点数に到達するとピタリと走るのを止めたので明らかに手を抜いているのは分かっていた。

 

「…明らかにあの中じゃ彼が一番だったから、本気はどれぐらいかなって試したんだけどなぁ…避けれる筈なんだけどなぁ…示談金どうしよう…」

 

「…そう言うのはいいので、続けてください」

 

「手塚光國、15歳。

出身は大阪で、時折出る関西弁が彼の素の性格。

家族構成は父、母、兄、妹の五人家族で母親は紙の本屋のパートで、父親は教師をやっており、それなりに人気の教師だけど若い頃に騙されて、借金を背負っていて一年前に借金を返済。兄の方は将棋のプロで、妹は小学六年生だけど…どうみてもそうには見えないね、うん」

 

「…それで、手塚は?」

 

「出身中学は昔は女子校だったけど、今は共学の四天王寺中学。

推薦で入ってる生徒で高額な学費を免除されているんだけど、一年の二学期に何故か東京の中学に転校をしている。アンジェリーナ=クドウ=シールズと共にだ」

 

「…」

 

「後は週一度に九島の別荘とかに行き、その中学を卒業。卒業後は第一高校に進学をした…」

 

「手塚とリーナの…いや、九島の接点は?」

 

一通りの今に至るまでの流れを聞き、九島との接点を気にする達也。

聞く限りは光國は何処かの名家でもなんでもない、むしろ下の階級の人間だ。そんな奴がどうしたら九島との繋がりを作れるのか、そこが一番気になっていた。

 

「それだけど…三年前に大阪で古墳が見つかってね、その調査に九島が呼ばれている。

その古墳を調査していた日に彼は近くの防波堤で足を滑らせ海に溺れ、それ以降九島のところで魔法師として必要な知識や技術を学びに行っている…海に溺れは恐らく偽造だけど、達也くんはどう見る?」

 

「…」

 

光國と九島の接点が出来た日は、間違いなくその日だ。

次に考えるのは九島がどうして光國と交流を持とうとしたのかで、魔法師としては優れている部分はない。

 

聖遺物(レリック)…その古墳からはなにか出てきましたか?」

 

「なにも出なかったよ、表向きにはね…だけど、なにかが出た痕跡はあった」

 

「…そう言うことか」

 

達也は理解した。

光國がどうして九島と深い接点があるのか、リーナが側に居るのかを。

 

「手塚は聖遺物(レリック)を、先史遺産(オーパーツ)を十二分に使いこなせる魔法師…」

 

何故選ばれているかは不明だがリーナは光國の監視役。

そうなれば光國との同居もわかる。

 

「…リーナのあの様子からして…いや、これはいいか」

 

リーナは時折悲しげな表情を見せる。

そしてその際には必ず光國関係で、光國はあの九島烈の事をクソジジイ呼ばわりしている。

望んで九島と居るわけでもない、嫌々従っている、そんな関係なのに気付くがこれ以上深くは見てはいけないと考慮して達也は考えるのを止めた。

 

「恐らく、これ以上は出てこない」

 

残りは手探りで自分で探せ。

九重八雲は遠回し言い、達也は納得をした。

 

「…この寺で一高生を預かって頂き、ありがとうございます」

 

「なに、それはお坊さんとしての御仕事だよ…ホントは深雪くんに軽くおど…結構、話し合って説得されたんだ!」

 

「深雪…」

 

なにをやっているんだと達也は困った顔をした。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

それから少しだけ時が進み、対抗戦当日。

 

「一年間、通ったけれど私服で来るのは、はじめての体験だけど…心が軽いわ」

 

制服が差別の対象と言うか差別を助長するものだとして制服での登校を禁止にし、動きやすい服で登校してきた壬生。

制服があるかないかだけで心の重さが大分変わり、一年間通っていた学校に何時もより清々しい気分で登校できた。

 

「あ、おはようございます!」

 

「おはよう、みん…手塚くんが居ないわね」

 

講堂に向かって歩いていると、手塚を除く二科生組が壬生に気付き挨拶をする。

壬生は挨拶を返すのだが、手塚が居ないことに気付き何処かと探す。

 

「手塚は先に講堂にいますよ」

 

講堂への扉を開けながら説明をするヨシヒコ。

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…閉じていいかな」

 

「なに言ってんだよ、ここまで来たら…良いんじゃないか?」

 

講堂には一科生と二科生が私服姿で集まっており、一番奥には対抗戦に出る気まずい顔の一科生と何時もの様に眼鏡とマスクで顔を隠している手塚と側に居る市原、そしてその手塚を睨む十文字と七草がいたが、手塚と十文字&七草の睨みあいで重い空気が出来ており、試合どころの雰囲気ではなかった。

 

「お久し振りです、十文字会頭、七草会長」

 

「ええ、久しぶりね…騒動を起こして以来かしら?」

 

「起こしてではなく、起きたですよ。

少なくとも、オレは被害者で加害者じゃないですよ」

 

「その騒動じゃないわ…」

 

「では、なんの騒動ですか?」

 

白々しく真由美を相手に惚ける光國。

最初から相手にする気などはなく、おちょくることにだけ集中しており真由美は笑顔を消さないが怒っていた。

 

「手塚、お前は何時から読んでいた?」

 

「なにがですか?」

 

「…惚けるのはよせ。

少なくとも、ある程度の家はお前達が騒動を起こしたのを知っている…何時からだ、何時からここまで読んでいた」

 

十文字は分かっていた。

今回の一件は光國が前々から練っていた計画だと、直ぐに思い付いて実行できる作戦ではないと。

何時からここまで想定し、動いていたかを聞いたが光國は答えない。

 

「逆に聞こう。

何時までだ…何時まで放置して貴方は、いや貴方達は妥協し続ける?

己の身を犠牲にする覚悟もなにもなく、ただ単に恵まれた才能と高い位置から見下ろしてオレ達を哀れんで楽しいか?」

 

「…」

 

学校レベルの事をどうにかしないといけないと動いている、考えている三巨頭。

しかしそれは自らを犠牲にする覚悟もないもので、今の光國や壬生の様に自らを犠牲にしない方法で効力が薄く、達也任せなところもある。

 

「貴方達は一科生の差別も悪いが、二科生の諦めるのも悪いと言う考えをお持ちでしょうが二科生が見せる場なんてものは全く無いのを知っていますか?あっても評価されない項目なのは理解していますか?才能が無いなら無いで、諦めることは悪いことではないが一度下の環境を知ってみてください…上の人間がなにを言っても嫌味なのをご理解ください」

 

光國は二人に一礼をすると背を向けて距離をとって、市原と共に壬生達を待つ。

 

「リンちゃん…」

 

「少なくとも、これは二科生にとってのチャンスです。

バ会長のお考えは悪いわけではありませんが、あのままだと達也くんだけが目立つだけです…ここで希望を持って前に進むのも、諦めて別の道に行くのも正しい選択だと私は思います」

 

「え、今バ会長って」

 

「早くこっちに来い!

殆どの一科生と二科生が集まっているぞ!!」

 

光國のせいで奥に進みづらくなっているのだが、そんな事は全く言えない空気で奥に向かって走る壬生達。

 

「全員、揃いましたね」

 

人数確認をして頷く市原。

すぐ近くにいるあずさの顔を見るともう一度頷き、マイクを握るのだが光國が奪った。

 

「今更綺麗事なんて必要ない。

オレ達は勝ちに来たんだ…例えリーナであろうとも容赦なく倒す」

 

「大きく出たわね、光國!

私が試合で勝ったのならば、ちゃんと言うことを聞いてもらうわよ!」

 

「…高いものは勘弁してくれ…」

 

本当に試合前かと言う空気を醸し出す光國とリーナ。

 

「そう言えば、リーナは手塚さんになにをお願いするの?」

 

「マジで高級なバッグとか勘弁して…いや、余裕で買えんけども」

 

ふとリーナのお願いが気になった深雪は直接リーナに聞く。

もし高級な服を買ってくれとか言う願いの場合は、光國の財布に少しダメージがある。

 

「そんなの、いらないわよ…お金で買えないもの、光國と一緒に沢山作ったし…これからも欲しいし…」

 

何故かいとおしそうにお腹を撫でるリーナ。言うまでもないが、避妊はしている。

 

「じゃあ、なにを…丸一日デート?それとも二泊三日の軽い旅行?」

 

尚、その場合でも光國の財布はダメージを受けます。

モジモジと頬を赤くしながら言うか言わないか迷うリーナ。その姿は試合を見に来た一科生と二科生は美しいと魅了していく。

 

「別にそんな長時間のお願いじゃ無いわよ。

その…ちょっとこの複数の婚姻届にサインをしてもらうだけだから、十数分もあれば片がつくわ」

 

それは十数分で終わるけれども、結果的には一生続くものなのでは?

リーナが鞄から取り出したこの時代でも使われている紙の婚姻届にはリーナが書かなければならない項目全てが埋められており、光國が書かなければならないところは空白だった。

 

「っ…これは…」

 

お兄様とは兄妹、兄だからお兄様。

リーナと光國がパン作りをしたりして、イチャラブをしているのを真似ているが婚姻届だけは出来ない。

元から分かっていたことだが、ここに来てリーナとの間に越えられない壁があるのを実感させられてしまう。

 

「それで、ミユキはなにをお願いするの?」

 

「それは…」

 

お兄様とのデート、それを深雪はお願いするつもりだった。

しかし、それだとお兄様の貴重な時間と財布の中身を消費してしまうだけだ。

いや、自分を拒まないお兄様にとっては良いことだけど、果たしてそれで良いのだろうか?

この二人ならば自分の予想を遥かに上回るものを知っており、既に実戦済みではないだろうかと考え、言葉に出来ない。

 

「…ねぇ、光國」

 

「なんでオレに回すねん!」

 

答えるに答えれない深雪に送る良い言葉が浮かばないリーナ。

光國に頼ってしまうが、これは深雪が越えなければならない試練だ。因みにだが禁断の愛に目覚めても、光國とリーナは普通に応援をしてくれる。むしろ爆発物には爆発物だと安心する。

愛さえあれば大丈夫、この国の神様も似たような事をしているよ。

 

「…っと、失礼。

既にオーダーは出来ているので、市原先輩お願いします」

 

「此方もです、中条先輩、お願いします」

 

気を取り直して、口調を戻す光國は市原にオーダー表を渡す。

深雪も中条に渡して、冷静さを取り戻していく。

 

「一科生と二科生の対抗戦は二人一組の(ダブルス)を二試合、一対一の(シングルス)を二回、最後に六人全員参加の団体戦の合計五回の勝負となります」

 

光國からマイクを奪い返すと、試合を見に来た一科生と二科生に説明をする真由美。

それと同時にざわめき出す二科生。果たしてそれで勝てるのか、そのメンバーで勝てるのかとなる。

 

「文句があるのならば、出てこい。

まだオーダーの発表はしていないし、完全に決まっていない。まだ変える事は出来る」

 

光國の一声でざわめきが消える。

自分達では一科生に、しかも今年度の主席や森崎家の人間、剣術大会の優勝者には勝てないと諦めている。

実際のところ、勝てないのだがやってやろうと言うチャレンジ精神を二科生の生徒は失っている。

そんな様子を感じたのか、鼻で笑う傲慢な一科生達。

 

「一科生にも同じだ…名ばかりの」

 

「お、オーダーの発表をします!」

 

最後に余計な一言を言い、一科生を怒らせた光國。

このままだと魔法を向けてきそうだと、あずさが割って入ってオーダーの発表をする。

 

「第一試合、D2!司波深雪・アンジェリーナ=クドウ=シールズ!」

 

「第一試合、D2!西城レオンハルト・千葉エリカ!」

 

あずさが大声で発表すると、横でマイク片手に発表する市原。

 

「よしお前達、負けてこい!」

 

「任せて、負けて勢いをつけるわ!」「主席と次席…負けてやるぜ!」

 

「「っておい!!」」

 

これは敗けだなと確信した光國はエリカ達に負けと背中を押すとナイスなノリツッコミをした。

 

「第二試合、D1!光井ほのか・北山雫!」

 

「第二試合、D1!吉田幹比古・柴田美月!」

 

「…ど、どうしよう勝てるかな」「深雪達の次だから、安心してほのか」

 

第二試合が自分の番だと焦るほのか。

第一試合が絶対に勝てるであろう深雪とリーナで、自分達も勝たないといけないとプレッシャーが掛かるが、雫が落ち着かせる。

 

「第三試合、S2!桐原武明!」

 

「第三試合、S2!壬生沙耶香!!」

 

「壬生…」

 

「なにかしら?」

 

「…いや、なんでもねえよ」

 

なにかを言いたそうな桐原だったが、壬生は集中しており桐原を敵と見ていた。

倒さないといけない、越えなければならない敵と見ており桐原はなにも言えない。

まぁ、仮になにを言っても今の桐原の評価はカッとなって高周波ブレードを振り回して殺そうとしたキチガイと壬生には見られているので好感度はクソ低い。

日頃なにかとちょっかいをかけてくるのでクソ低い。

 

「第四試合、S1!森崎駿!」

 

「第四試合、S1!手塚光國!」

 

「…お前さえ倒せば…」

 

「オレを倒しても、無駄だ…」

 

ただひたすら光國を睨む森崎。

すべての原因は二科生、そしてその中心が光國で、光國さえ居なければこうなることは無かったと、ここで光國を倒せば問答無用で二科生達を黙らせることが出来ると怒りの眼差しを向ける。

 

「一科生補欠、アメリア=英美=明智=ゴールディ!」

 

「二科生補欠、司波達也」

 

「よろしくね」

 

「ああ…」

 

ペコリと普通に挨拶をする達也とエイミィ

 

「第一試合に出場の選手は、準備をお願いします!」

 

「…油断せずにいくぞ!

見ているお前達も、強く勇気を持て!勇気はこの世で最も強い魔法でどんなこんな…あ、ごめん、今の聞かんかった事にして。言うてて恥ずかしくなった」

 

最後まで光國は締まらなかった。




先に言っておく、キンクリするぞ!!







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