「オレの右腕と足は残っている…第五試合も出場する」
「出場するって、そんな」
「ダメです」
「っちょ、痛い!!市原先輩、痛い!!」
準備に手間取っているのか、第五試合は始まることなく未だにテニスコートにいる光國達。
最後まで戦うつもりで準備をし終えた光國だが、市原が光國の左腕の肘を握った。
「私の握力は同年代の平均以下です。
鍛えている人からは笑われるレベルで…今の手塚くんは、この程度で悲鳴をあげてしまいます…本当に、本当に腕が使い物にならなくなりますよ!」
「まだ、オレは」
「手塚…お前はもう出なくていい」
市原の手を離し、立ち上がろうとする光國。
すると、レオが目の前に現れて、立てないように押さえてくる。
「お前はここまで繋いでくれた、もうそれだけで充分だ…まだ、達也が残っている。交代しろ」
「アホぬかせ、最後は団体戦や。
達也の技能とかの問題は全くといって無いけど、相手には深雪がいる…手を抜かれる可能性がある」
達也VS深雪の兄妹対決
将棋やトランプといった簡単な勝負で今後に影響しないことならばまだしも、こう言った試合はこれから先ずっと起きない。
深雪は達也が相手だと手加減をしてしまう可能性がある。達也も深雪が相手だと手加減をしてしまう可能性がある。間接的ならばまだしも、直接対決となれば絶対に余計な感情が入り乱れる。
達也も深雪もそれを理解しており、そんなことはないと一切の否定をしてこず無言のままだ。
「これは皆で話し合ったことだ。
…正直、オレ達だけだったらここまで来るなんて出来なかった。
一科生と戦う場を作ることが出来なくて、ずっと偏見的な目で見られていた」
「だろうな」
「少しは否定しろよ…」
本来の道筋だとこの入学編ではレオもエリカも美月もヨシヒコもなにも出来ずにいた。
テロリストが襲ってきたことで活躍したが、事件を起こさずに活躍は一切していない。お兄様と妹様が活躍した程度だ。
光國が余計な事をして、本当ならば討論するのを魔法競技で戦う方向に変えたことによりレオ達に出番がやって来た。
「事実だ」
否定をする要素なんて何処にもない。
イベントが起きとお兄様の物語が始まるが、イベントを起こして物語が始まることはない。
「それにしても、遅いね…」
「まぁ第五試合の用意は、試合内容的に準備に手間取りそうだから仕方ないわよ」
美月とエリカは第五試合を待ちくたびれていた。
すると、この場を移動する指示すら出さず、なにやら大事な話をしていた三巨頭達が話し合いを終えた。
「…これより第五試合の団体戦を」
「待ってください…第五試合は屋内テニスコートでは出来ません!」
真由美がマイク片手に試合開始の宣言をしようとするのだが、第五試合はここでは出来ない。
広くて魔法を使っても問題無い場所でしなければならず、テニスコートでは出来ない。ルールをちゃんと覚えている壬生はその事について言った。
「ええ、そうよ…だから、しないのよ」
「おい、待て!!ここで喧嘩両成敗を出してくんなや!!
この試合の結果のみをインターネットに出すって言うてもうてるんやぞ!!
この最初の対抗戦はここまでよくやったとか、出れただけでも名誉ですとか言う戦いちゃう、勝つか負けるかや!そっちがその気なら、また炎上させんぞ!!」
一科生が負けた事実は日本の魔法師に大きな影響を与える。
成果主義の学校で、成績優秀者が成績の悪い者達に魔法競技で負けたとなれば大問題だと逃げに走ったと光國は疲労困憊の身体に鞭をうち抗議する。
レオ達、二科生もここでそんな事はしないでくれと真由美達の元に駆け寄った。
「落ち着け、お前達。確かにそれも出来ないわけじゃないが、そうじゃない」
真由美の前に庇うように立った十文字。
十文字も真由美は説明や言葉が足りなく、レオ達をイラつかせる。
「それなら、早く第五試合をする場所に移動させてください…手塚が何時までもつか」
「落ち着け、レオ」
「達也、でも」
「…手塚の事は気にしなくて良い…二科生の勝ちだ」
「気づいたか…この対抗戦は、お前達の勝利だ」
お兄様は気付いた。
真由美達がなにを話していたのを、そして光國が森崎を倒した時点で勝っていたのを。
「これも狙った…ことではなさそうだな、手塚」
全員が勝つと本気で信じていたからこそ、自らを第四試合に置いた。
だからこれは光國にとっても想定外の事だった。
「お兄様、まだ第五試合は始まってすらおりません…どうしてエリカ達の勝利で手塚さんの心配が無用なのですか?」
第五試合はそれこそ運要素も絡んでおり、下手をすれば負ける可能性がある。ただ強ければ良いだけじゃない。
深雪はそれを分かっていたが、試合終盤でも勝負の分かれ目を決める時でもなんでもないこの状況で敗北宣言意味がわからなった。
「第五試合は団体戦で、一科生代表の選手は準備が…!」
エイミィ、ほのか、雫、リーナは頼りになって実力がある新入生の一科生女子達。
疲労は完全に回復をしており、肉体的にも精神的にも問題なく戦う準備は万端だ。
そんな四人を見て、深雪は気付いた。二科生達の勝ちだと。
「…そう、でした…」
深雪はもう一度、団体戦のメンバーを確認する。
「団体戦をするには、6人必要だ。
代表選手は7名で、緊急時の補欠が一人入っているが桐原先輩が意識を失って出れなくなって空いた枠を埋めるために入った…そして元に戻った森崎は意識を落とした」
5人しかいない。
試合に出る条件を満たせなかったり、試合会場に居ない場合は一度審判達が話し合って、その試合を飛ばして他の試合を先にするか、来なかった奴の失格で敗北にする。
最後にする試合を最後にするために、別の試合に回せず、一科生は失格になった。
「負傷した手塚を抜いて5人同士の対決をと考えたが…二科生にはまだ司波が残っており、肝心の手塚も司波と交代をするつもりがなく、ルールの変更は絶対に出来ないことになっていた…」
「ミユキ…どうやら、私達が物凄く強くてもダメみたいよ」
リーナはお手上げだと今起きていることを認めた。
「魔法師は魔法を使えない人よりも遥かに強い…けれど、一人じゃなにも出来ないわ。
魔法を使えない人は使える人とか関係無く、助け合って生きていくの…人と言う字が人と人が支えあって出来ているように…私達だけが強すぎるのは、ダメみたい」
敗けを認めたリーナ。
最後に良いことが言えたと、スッキリとしてドヤ顔をする。
「リーナ…それはフィクションで、人と言う字は人間が両足でしっかりと立っているからあの形よ」
「えぇっ、そうなの!?」
そして、三枚目的要素を見せた。
金●先生の言っていたことを真に受けていたリーナのポンコツぶりを発揮した。
そして
「ふざけるなぁ!!」「5人で良いだろう!!」
一科生達からクレームがついた。
まぁ、ここまで来て試合が出来ないとなると当然と言えば当然だ。
「……黙れ!!」
しかし、光國はそれを一喝して黙らせた。
「出場者全員が騒動を起こした馬鹿や友人なんかの関係者で、それ以外の奴等は誰一人として、自らを出してくれと出てきた奴はいない。
どいつもこいつも参加するだけで家の名前が傷つくだ、二科生なんかと相手をしても結果が見えていると出ようとしなかった…これがこの国の将来を担う魔法師のエリートと言うのなら、大笑いだ!!
なにが十師族だ!なにが師補十八家だ!なにが百家だ!なにが魔法師だ!そう言った名前のある強い存在はどの業界にも必要なのは馬鹿で二科生なオレでも分かる。なんなら、魔法師でもないオレの妹でもだ!!」
「落ち着け手塚。その発言は」
全国の魔法師を敵にまわす事をサラッと言う光國を制止しようとする達也
「油断すれば死ぬ命だ、最後まで言い切ってやる!」
だが、今の光國には言葉は届かない。
色々と溜まっていたものを、ここで発散してやると叫ぶ。
「本当に上を目指すなら、前を進むならば血や家なんか関係ない、Adel sitzt im Gemüt,nicht im Geblütの精神を持たないとアカンねんぞ…勝てると思ってるなら凄いと思っているなら、血や家なんか気にすんなや…デカくしすぎやぞ…はい、会長パス!」
「え、ちょっと!!」
言いたいことを言い終えた光國はマイクを返した。
色々とハードルとかが上がっている最中で、マイクを返されて困る真由美。
「…Adel sitzt im Gemüt,nicht im Geblütって、どういう意味?」
「高貴さは血じゃなくて、心にあるって意味よ…血や家なんてものは関係ない、心が大事か…」
ほのかの疑問に答えたエイミィ。
確かにそうかもしれないと、今の状況を見て納得してした。
努力こそしているものの名前や血筋に甘んじていたり、それを持っていないものを無意識に見下していたりする魔法師は余りにも多かったのだから。
「これで来年までは、どうにかなるか…」
そしてこれ以上はなにも言ってこない一科生達にホッとする光國。
これで自分の役目は終わったと思うと、体から力が抜けていくが倒れるのはダメだと、立ち続ける。
「え、え~っと…オホン…第五試合は、一科生達が試合をする為の条件を満たさなかった為に失格とし、よって勝者は二科生になり試合が全ての終了しました…試合結果は、一科生の二勝三敗、二科生の三勝二敗により勝者は」
この空気どうしようと慌てる真由美だが、直ぐに冷静さを取り戻した。
先程までの危険な発言については言及せずに勝利宣言をしようとするのだが
「手をあげろ!!我々は反魔法団体の者だ」
武装した集団が入ってきた。
「反魔法団体…ブランシュか」
秘密裏にされてる癖に、情報が筒抜けで見分け方すらもある本当に勝ちに行く気があるのかと思える反魔法国際政治団体ブランシュ。
達也はと言うか、そこそこの情報通や魔法師の家系ならば知っていることレベルで武装して襲ってきた奴等のリーダーらしき男がヒントをくれた。
公安に目をつけられるレベルの怪しい事をこそこそとして作戦を練っていたのだが
この対抗戦の為に色々と警備などを厳重にしていたりするのだが…普通に襲ってきた。
本来の道筋でも、別のことで騒ぎになっており厳重な警備をされているのにあっさりと入ることが出来た。
それは何故かと言えば内通者が普通に学校内に居て、中から入れてもらった。
本来の道筋ならば、真由美と二科生が討論をしている時に襲撃してきてお兄様達がボコボコにして支部に乗り込んで、日本の支部長相手にボコりお兄様御一行の魔法科高校での最初の活躍となる。
光國が一科生と二科生の待遇や溝を見て原作なんか知るかと好き勝手をしていたが偶然にも今日がブランシュ襲撃の日で七草真由美との討論の代わりに一科生との対抗戦に差し代わっただけだった。
まぁ、それはともかくとして武装をしている奴等がブランシュだと分かれば各々が動き出す。
なにかロクでもない事をしに来たと動ける奴等全員が動き出し
『シックス!ファルコ!セイバー・ストライク!』
真っ先に光國が仕掛けた。
ダイスサーベルをコネクトで取り出し、変身せずにファルコウィザードリングを使って必殺技を出した。
「これが、手塚の魔法…」
風で出来ている6体の黄金の隼が、縦横無尽に飛び回りブランシュ達の武器や肉体を傷をつける。
武器は使い物にならないようにかまいたちの如く風で切り裂き、肉体は切り裂かずに血が出る程度の傷をつける。
決められた魔法しか使わない授業は当然として、制限はあっても制限内なら好き勝手に使って良いこの対抗戦でも、そう言った制限がなにもない修行中にも魔法を使わなかった光國。
鮮やかで尚且つ強烈な風の隼に、一瞬だけとはいえ達也は見とれるが、直ぐに意識が残っているブランシュ達の意識を奪っていく。
「手塚、何名かは意識が残っている…」
爪が甘いと言おうと振り向いた達也だったが、言うのを直ぐにやめた。
「光國…無茶しすぎ…いえ、違うわね…コイツらが居なければこんな事にはならなかったわ…ゆっくりと私の膝の上で眠れていたわ…」
リーナは、死体の山みたいな感じで積み上げられている武装集団の一人を無理矢理叩き起こす。
「我が生涯に一片の悔い無し!!」
右腕を大きく掲げる光國。
この言葉を最後に、なにも言わなくなった
「手塚…くん…嘘、でしょ…そんな…君が私をここまで連れてきてくれたのに、それなのに…」
「光國は限界だったわよ…でもそれでも、コイツらを倒すために最後の力を振り絞って、使いたくない魔法を!!」
光國は立ったまま気絶をしていた。
最後の台詞で完全に死んだと壬生達は思っているが、ただ単に立ったまま意識を失っているだけで、最後の魔法は意識を失っている状態で放った。
「気を失ってもまだ、戦い続けるのか手塚…後は俺に任せておけ」
そんな手塚を賞賛し、達也は外にも居るであろう武装集団と戦いにいった。
その後はもう言うまでもない。相手はテロリストだと制限なんか気にせずに魔法を使いまくる一科生や二科生達。
キャスト・ジャミングと言う魔法師に魔法を使いこなせなくする魔法を使ってきたりするのだが、物理で倒したりする。
人間ドラマらしい人間ドラマが起きず、魔法師無双が起きて日本支部の本拠地をリーナが倒した集団から自白させて、選りすぐりのメンバーで本拠地に乗り込んで、ブランシュの日本支部を倒した。
そして最後に壬生も内通者で洗脳していた筈なのに、何故か元に戻っていると言う事が判明をした。