魔法科らは逃げれない。   作:天道無心ビームサーべ流
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こーれーぐーすの方がからいーさー

国立魔法大学付属第一高校の九校戦発足式。

誰がなんの競技に出るかの説明やエンジニア等の紹介を終えて、終盤を迎える。

 

「直接攻撃ありな競技があったら、オレも出れたんだけどな」

 

「レオはまだ良いじゃないか…僕なんて、モノリス・コードの誘いが誰からも来なかったんだよ」

 

レオ、ヨシヒコ、美月は講堂のステージではなく観覧席にいた。

 

「だ、大丈夫です!

吉田くんが強いのは私はちゃんと知っています。

吉田くんはただCADの方がおかしかっただけで、実力は最初から問題なくて…私なんて、この眼だけで」

 

「柴田さん…そんな事はないよ。

その目は凄いけど、本当に凄いのはどんな時にも変わらない君の優しさだよ。それは僕がこれから先、どんなに修行をしても絶対に手に入れれるかどうか…」

 

「吉田くん…」

 

「ヨシヒコ、美月…二人だけの空間を作るなよ」

 

レオや達也から見ても出来てるんじゃないかと思えるヨシヒコと美月。

九重寺での修行中、ヨシヒコが誤っておっぱいを揉んでしまったのを見ていたのでこれで出来ていないのはおかしいとレオは感じる。

 

「ぼ、僕は幹比古だ!!」

 

「そこの一年生の二科生三人、応援してくださいよ~」

 

大事な発足式で騒ぐので、若干怒るエリカ。

レオ達は笑い者になるのだが、あっちゃ~となるだけで直ぐに気持ちを切り替える。

 

「にしても、エリカがクラウド・ボールの新人戦に出るとは…」

 

「二科生ただ一人の代表だから、絶対に勝ってほしいね」

 

ニヤニヤと笑い、此方を見つめるエリカ。

偶然と言えば良いのか、光國から習ったラケットを逆手で持つと言う意表をついた技が思いの外、クラウド・ボールで通用して代表になった。

レオと美月は二科生の女子の希望だと考える。

 

「本当なら、選手として手塚があそこに居たんだろうな…」

 

代表決定戦に来なかった光國。

どうしてこなかったかとヨシヒコが問い質すと目立ちたくないからと答えた。

既に学校内で目立っただろうと言えば親や友達の前で目立ちたくないんだと教えた。

 

「幹比古、やめろ……手塚の事をなにか言うのは、いくらお前でも許さねえぞ…」

 

「吉田くん…手塚さんの事は言ってはダメですよ」

 

光國の事を呟くと怒りを見せるレオ。

レオの家族は、死んでしまった祖父とレオ以外は魔法師としての力を持っていない。

レオの姉は魔法師としての力を持っていない。母も父も持っていない、レオと祖父だけが持っていて、祖父は死んでいる…ただ一人魔法師な自分とそうじゃない家族と溝があるとレオは感じている。

光國の家も光國以外は普通の人。

クラウド・ボールで使うのは主に身体能力を上げたり打ち返したりする系の魔法で、誰かに直接攻撃する系の魔法は使わないが普通の人は化物と感じてしまう可能性がある。

同じ感じのレオと普通の家の娘の美月は光國の化物と思われるのが嫌なのがよく分かり、古式魔法の名家で魔法が当たり前の環境のヨシヒコにはイマイチ分からない事だった。

 

「代表メンバーの方へ、司波深雪から徽章の授与をつけてもらい」

 

「ちょーーっと、待ったぁああああ!!」

 

最後の徽章の授与が行われようとしたその時だった。

全校生徒だけでなく、教師陣も居る講堂のドアが開いて綺麗な声が響いた。

 

「すまない…その徽章を1つくれないか?」

 

青学のロゴが入っていないレギュラージャージ(特注品)を着た光國とリーナが現れた。

 

「て、手塚ぁああああ!!」

 

「…その台詞を言わないといけないのか?」

 

毎度毎度、自分が何かすると手塚ぁああああとなる誰か。

今回はクラウド・ボール本戦に出場するスポーツ刈りの桐原が叫んだ。

 

「…手塚さん…」

 

「…今さらなにをしに来たかと思っているだろう。

オレ自身、出ようとは思っていない…だが出なければならなくなった」

 

「上から圧をかけられたのですか?」

 

ステージに向かうと、すんなりと通して貰った光國とリーナ。

深雪と言うか、それなりの家の生徒達は九島が出ろと脅してきたと考える。

 

「出ないといけない状況になった…勝つための選択をお願いします、生徒会長」

 

ペコリと頭を下げた光國。

白い魔法使いの狙いは光國だ。

白い魔法使いは住んでいる所を知っているのに直接来訪せずに何度も何度もタイムベントを繰り返した。

それはただ九校戦の会場に向かうだけでなく、選手もしくはエンジニアとして出ろと、実力を自分に見せてくれという考えだと光國は思い、選手になるべく発足式に乗り込んだ。

でなければ、何度も何度もタイムベントを繰り返さない。痺れを切らして会いに来たが、白い魔法使いは最初から会いに来るつもりは無かった。

もしかしたら、第三高校辺りの生徒かもしれない。

 

「手塚さん…どういうおつもりで?」

 

「…出なければならなくなった…そうとしか言えないな…」

 

深くは語らず、相手に考えさせるスタイルの光國。

この場に居る奴等は九校戦で十師族相手にワガママを言っても勝てないと分かるので細かな事は言わないし詮索しない。

 

「手塚、代表選手は決まっている。

激しい代表決定戦をした…結果、テストの成績が低かったエリカがクラウド・ボールの新人戦に出ることになった」

 

「ああ…知っている」

 

殆どの生徒が光國が出てくれるならば出てほしいと思っている。

クラウド・ボールの女子の本戦は七草元会長がいるので絶対に負けない。女子の新人戦も里美スバルや千葉エリカが出るのでエクレール・アイリに勝つのは難しいが準優勝は狙える。

しかし、男子はかなり怪しい。本戦と新人戦で絶対に勝てそうな選手が浮かばない…今目の前にいる手塚光國を除いてだ。

選手に登録するのは簡単だろうし、九校戦では絶対に成果を出してくれる。

しかしその場合、出れなくなる選手は不満に思うだろう。

 

「お前の言いたいことは分かっている。メンツだろう。

男子のクラウド・ボールに出る選手を全員倒す…今度は百錬自得の極みをちゃんと使って、更には才気煥発の極みも使って絶対予告で完膚無きまでに」

 

オジイのラケットを取り出す光國。

 

「部長、自分の代表でよろしければ譲ります!!」

 

「そうか…感謝する。

それとそんな敬語じゃなくても良いんだぞ、オレはお前と同年代なんだから」

 

「い、いやぁ…老けて見えるからどうしても敬語使っちゃうんだよな

 

テニヌ擬きで手塚部長と戦っても絶対に勝てない。

偶然にも代表選手だった男子のクラウド・ボール新人戦に出る選手は、出場権を光國に渡した…が

 

「悪いが、それだけだと足りないな」

 

「…もう1つ競技に出ろと?

お前、今回のオレのテストの成績を知っているか?筆記13位、実技44位、総合53位のなんともまぁ、なんともまぁ…なんとも言えない成績だぞ」

 

「だが、お前はあの時、誰よりも早くブランシュを倒した…実技=絶対じゃないと証明をしたのはお前だ…」

 

対抗戦の際に第四競技をはぐらかした光國。

達也はレオ達に、特にCADと肉体が合っていなかったヨシヒコとの時間が多く光國の普段から使っている端末型のCADをちょこっと調整するぐらいだった。

本当にそれぐらいで、本来のCADをまともに見せてもらえずにいてブランシュに襲撃された時に見たぐらいだ。

襲撃されていて、ブランシュを撃退するのに忙しく調べれず、アレがなんなのかは結局わからず、リーナに探りをいれても光國の特殊なCADと言うだけで聞き出すことは出来ず、他のルートで調べても分からなかった。

クラウド・ボールの参加を餌に、達也は光國の隠している事を調べようとする。

 

「ミラージ・バットが女子専用じゃなければ…出れたんやけどな…」

 

棒を持った女性が魔法少女の格好(笑)をして空中に浮かぶホログラムの球を魔法で色々と出力を上げて高くジャンプして叩く競技、クラウド・ボールに続き、何気に光國に向いている競技だ。

三人一組のモノリス・コードは出れない。殴る蹴るがライダーの基本だから。

魔法使い系の仮面ライダーは大人の事情と言うなのよゐこは真似しちゃダメだよの為に殴るの基本NGで武器で攻撃するから。

 

 

魔法少女☆ビースト…それは無い。

 

 

一瞬だけそんな邪念が入り交じるが、直ぐに頭から消す。

 

「光國が他に出れそうな競技はないわ…足りない分の代価は、今回のテストの総合一位の私が補うでどうかしら?ミラージ・バットだろうがアイス・ピラーズ・ブレイクだろうが…新入生総代のミユキだろうが、勝つわよ」

 

万が一、億が一と、このお兄様相手に予想外な事は出来ても油断は出来ないと考えた。

そして予想通りなにか別の、肉体労働でも情報でも要求される可能性があるのを考量し、リーナが用意した。自分と言う代価を。

主席と殆ど点数が変わらず、今回は勝ったテストの総合一位の自分がなんでも出ると、深雪相手でも勝つと挑発をする。

お兄様唯一無二の弱点である深雪を使う。

 

「お前が深雪に勝てると言うのか?」

 

予想通りと言うべきか、食いついた達也。

 

うちの妹は最強で最高なんだ!と言っても違和感は無い。

と言うか、何時か言いそうだ。

 

「確かにミユキは学生のレベルを遥かに越えているわ。

タツヤも同じで学生のレベルじゃない…けれど、光國と私も同じことよ」

 

「ねぇ、やめてくんないオレのハードルもついでに上げんの。

実際問題、オレは魔法師としては有名な奴等より下、レベルで言うと新卒の社会人の【あ、こいつ有名な大学出てへんくてコレと言った成績は持ってないけど当たりやん】レベルやからな」

 

キマイラがなく、普通に魔法演算領域とかを持っていたら光國はその程度である。

よいしょするのはお前だけにしろよと冷たい視線を送った光國だが、リーナは気にせずにいる。

 

「と言うか…勝てるんか?」

 

ループ中に何度も何度も見た深雪の試合

相手は同じく一高の雫で、雫はアイス・ピラーズ・ブレイクと言う魔法競技においてはどちらも規格外の強さを発揮

しかし、深雪はそれをも上回る強さで魔法で勝利したのでどうやって勝つつもりか気にする。

戦略級魔法でないとはいえこの国どころか世界基準でトップレベルの魔法を難なく使いこなすのだから深雪以外ならば勝てるだろうが、深雪だけは別でありお兄様のサポートは受けられない。

正式に九島の名前は持っていないが、それでも負けるのはまずい。光國は別に負けても構わないのだが、クソジジイが喧しい。十師族、滅べマジで。

 

「…一個だけ、あるわ」

 

リーナはうっかり余計な事を言ってしまう。

戦闘力においては規格外で公になっているのはたった十三人の戦略級魔法師の一人だ。

しかし、今は光國を監視役兼魔力タンクで工作員となっており、戦略級魔法師として活躍は出来ない。

そんな状況でも、リーナはただ1つだけ勝てる希望があった。

光國を怪しむ達也の目を自分にも向けさせる事が出来る、そんな方法でもあった。

 

「達也さん、私、リーナと戦いたい」

 

「雫…どうした、急に」

 

今まで黙っていた雫が口を開いた。

 

「達也さん…ううん、達也生徒会長。

私はアンジェリーナさんと戦いたいです。後で構わないので、アイス・ピラーズ・ブレイクで戦わせてください」

 

「…理由を聞いてもいいか?」

 

「アイス・ピラーズ・ブレイクは、人じゃなくて氷の柱に魔法を向ける競技で殺傷性の高い魔法を使う事が許される競技。

リーナは、深雪と同じで学生の範囲内を越えていて、きっと学校でも使う事が出来ない危険で強力な魔法を使える。

…リーナは最初は出ようとしなかった。出ないって、堂々と公言をしていた。

殆どの人はラッキーと思ったけれども、私は違う。私は悔しかった。悔しくて悔しくて仕方なかったよ…」

 

ポロポロと涙を流していく雫。

それは悲みと怒りを6:4の割合で出来た涙だった。

 

「CADは達也さんに調整して貰った。

私だけじゃなく、深雪も…達也さんは深雪の代表を決定した時、喜んだと同時に深雪なら出れて当然だって思っていた…違う?」

 

「…正しいか間違いかで言えば、正しい」

 

「私の代表権が勝ち取った時はよくやったって、激しい代表戦を勝ち抜いたって思った?」

 

「…」

 

「代表になれたのは嬉しい。

けど、既に比較されている感覚はあった。

周りが深雪が出るなら女子の新人戦は優勝だって、リーナが出ればリーナが優勝かもって話を何度も聞いた…悔しくて悔しくて、それと同時に一位じゃないって心の何処かで認めてる自分が憎かった…手塚さんは、一科生と二科生の対抗戦は出れただけでも光栄なんて試合じゃないって、勝たないと意味が無い試合だって言った。

それならこの九校戦も出れるだけでも、二位でも喜べるものじゃないと私は思う…私は深雪にも勝ちたいし、リーナにも勝ちたいし、エイミィにも勝って、本当の一位になりたい…」

 

雫が嫌だと言い続ければ、リーナは雫からアイス・ピラーズ・ブレイクの代表権を奪い取れない可能性が出てくる。

しかし、雫は本当の意味で一番になりたいと言う気持ちを押し出した。

 

「…後で俺の立ち会いの元で、雫とリーナのアイス・ピラーズ・ブレイクをする。深雪、すまないが氷の柱を作ってくれないか?」

 

「かしこまりました、お兄様」

 

達也の承認を得た事によりホッと一息つく光國。

これで自分とリーナが出れるが、コレだけではダメだと講堂のステージに居ない生徒達に頭を下げる。

 

「出ないと言い続けて、急に出ると言ってしまい騒ぎを起こしてすまない。

出る限りはオレはクラウド・ボールで優勝をする……優勝を出来なければ、ペナル(ティー)を飲む気持ちでいる」

 

「ペナルティーって、別にそんな事をしなくても」

 

「待て、手塚!!」

 

そこまでの事をしなくても良いと言おうとした真由美だが、森崎が間に入った。

 

「…お前、こんな時にですら…」

 

「なにが言いたい?」

 

「あ、いえ、なんでもないです…はい、続けてください」

 

丸々一年間坊主頭の森崎に髪の毛があって、なんかふんわりしていて気になる。

しかし、そこは気にしてはいけない。全校生徒の誰もが触れていないのだから。

 

「後から入ってきた、お前だけが優勝出来なければペナルティーだと…お前だけが優勝が絶対で代表選手になった生徒達が負けてもなにもないのはお情けか?絶対に勝てると思っているからか?」

 

「…」

 

「僕はこの九校戦で二種目に出て、どちらも優勝を狙うつもりだ!

一高生徒だからとか森崎家だからとかじゃない、一人の魔法師として本気で優勝を目指す!

出れただけでも光栄なんて言葉は絶対に言わない…僕も負ければ、ペナルティを受けよう!!」

 

「…えぇ…」

 

何でそうなるんだと言う目を向けるが、ノリノリの森崎。

 

「私も、両方で優勝を目指すから…ペナルティを受けるよ」

 

それに感化された雫もペナルティを受けると言い出す。

 

「ふっ、それならば俺も負ければペナルティを受けよう!!」

 

「真由美…目指すは優勝だけだ!

どうせならば、史上初の新人戦と本戦全て第一高校の優勝をしようじゃないか!!」

 

十文字も摩利もノリノリになり、それに釣られて殆どが優勝出来ないとペナルティを受けると叫ぶ。

 

「し、雫…」

 

「ほのか、やるからには一番を目指さないと。

ほのかなら大丈夫だよ、なんだかんだ出来ないとか言いつつも、ここまでやって来たんだから」

 

数少ないペナルティを受けると口語しないほのかは場の空気に怯えるが、誰も助けてくれない。これはもう優勝しないといけない空気だ。

 

「…手塚くんとリーナさんが加わっただけで、ここまで変わるのね」

 

例年とは全く違う発足式。

全員がやる気を出しまくっており、清楚とか静謐とかとはかけ離れている。

しかしコレはこれでありだと真由美は特に文句は言わない。

 

「ところで、手塚。

ペナルティの内容はどんなことにするんだ?

九校戦を終えると暇じゃない生徒が出て来て学校へ来て奉仕作業なんて出来ない。

臨時の生徒会長の俺でも来れないと先に学校側に報告を」

 

「…お前らなんか勘違いしてへん?」

 

草むしりとかエアコンのフィルターの掃除とかそんなのをペナルティにしようとは光國は思っていない。

 

「オレはペナルティやのうて、ペナル(ティー)を飲むゆうたけど、受けるとは言ってへんで?」

 

「…一緒じゃないのか?」

 

「ちゃうで」

 

光國はラケットを入れている鞄から、水筒と紙コップを取り出す。

 

「ペナルティー…ペナル、ティー…ペナル(ティー)や」

 

紙コップに赤い液体を注ぐ光國。

 

「さむっ…」

 

まさかのダジャレなオチ、皆が皆、ハードルを上げていた中でのダジャレ。

完全に空気がぶち壊れてしまい、誰かが呟くと冷たい視線が光國に向けられる。

 

「み、光國…それって…」

 

リーナを除いてだ。

 

「はぁ、手塚さん…流石にここでそう言ったのは宜しくないですよ」

 

「そうか?」

 

空気が壊れたが、マイペースな光國。

深雪は呆れるしかなく、溜め息を大きく吐くと喉が焼けるように熱かった。

講堂の熱気や先程までのハイテンションのせいで体感温度も暑くて、喉が渇いてしまった。

 

「すみませんが、そのペナル(ティー)を頂けないでしょうか?」

 

なので、ペナル茶を分けて貰うことにした。

 

「え~…」

 

「ちょっと喉が渇いてしまいましたので…」

 

「手塚、別に減っても良いだろう」

 

光國に嫌そうな顔をしていると、やれと圧をかける達也。

一切口をつけていないペナル(ティー)を深雪に渡した。

 

「…真面目な時の手塚でも冗談を言う時があるとはな」

 

「時として冗談や嘘は人場を和ませる為に必要なものだ」

 

「それは分かるが、出来れば場所を選んで欲しかった」

 

「…いや、だから場所を選んだぞ…」

 

「ミユキ、安らかに眠りなさい」

 

光國の言っている意味が分からない達也

リーナの言葉を聞くと直ぐに深雪の方へと振り向いた

 

「お、兄…様…」

 

深雪は口から赤い液体を出しており、ゆっくりとゆっくりと倒れた。

 

「深雪!!」

 

「お兄様…なにも、なにもしなくてもよろしいのです」

 

自分のCADを取り出し、深雪に向けようとする達也だが深雪は手でCADを退ける。

 

「待っていろ、俺が直ぐに」

 

「良いのです…形あるものは何時かは崩れる。

それが万物の絶対であり、私はその絶対の法則から抜け出してお兄様の元にいます。

何時かは、何時かはこう言った日が来るのは覚悟しておりました…貴方の事をお慕いしたのはたったの三年ですが、私はとても幸せで」

 

「もういい、喋るんじゃ」

 

「1つだけ不満があるなら…貴方が兄だったこと。

兄として素晴らしく、不満はないのですが…兄妹ではなく…一人の女性として、お慕いしたかった…」

 

ガクっとなり、目を閉じる深雪。

達也はそんな深雪をゆっくりと床で寝させるとCADを光國に向ける。

 

「全員、手塚と司波を捕らえろ!魔法を使っても構わない、俺が全ての責任を持つ!!」

 

「オレは悪くねえ!!」

 

「手塚くん…」

 

あっさりと捕まえられる光國。

しかし、達也は捕まえることは出来ずにいた。と言うかCAD向けてる。

 

「達也、お前は深雪の為ならなんでもする男だと思っていたのだがな…」

 

「俺は深雪の意思を尊重した…そして今から俺は俺の意思を尊重し、お前を殺す…俺は深雪の為ならばどんな事でもする、世界を滅ぼす事も厭わない」

 

「だってお、深雪」

 

「え、今なんでもすると言いましたか!!」

 

「…え?」

 

完全に殺す気満々の達也は呆気に取られる。

死んだと思った深雪が普通に起きたのだから、情動出来ないお兄様でも予想外のことだった

 

「ゴホッゴホッ、なんでもずるどおっじゃいまじだが!」

 

「…どうなっているんだ?」

 

「だから、ペナル(ティー)ゆうとんやん…十文字会頭、飲んでみんしゃい」

 

「むっ…毒は入っていなさそうだな」

 

状況がイマイチ理解できない達也。

説明するかと水筒に残っているペナル茶を十文字に飲ませる。

 

「十文字くん…どう?」

 

飲んだ瞬間ピタリと動きを止めた十文字。

真由美が心配していると

 

「うぉおおおおおっ!!ふんんんん!!!」

 

十文字の上半身に力が入り、上着全てが破れた。

 

「中々の刺激だな、このペナル茶と言うのは!!」

 

「…えっと…十文字くん?」

 

「今すぐに手塚を解放しろ。

このペナル茶に毒は入っていない…俺が保証する!」

 

「いや、明らかに毒以外の危険な物が入っているわ!!」

 

汗をかきながらも、爽やかに光國の無実を証明するが逆にヤバい薬が入っていると疑われる。

 

「手塚くん、君はこれになにを入れた!?」

 

「…ドラゴンズ・ブレス・チリ…」

 

摩利に聞かれたので、渋々答える光國。

 

「旧世紀のテレビのバラエティの罰ゲームとかでよくある辛いジュース…まさにペナル茶に相応しい飲み物だな…しかし、喉が更に乾くな…ペナル茶だと喉は潤せない、他になにか無いのか?」

 

「あ、平仮名でいわしみずって書いてある水筒が鞄にあるのでどうぞ…」

 

「岩清水か…風流だな」

 

喉を潤す為に光國の鞄から いわしみず を取り出す十文字。

紙コップに入れると一気に飲み干し

 

「ぐふぉおおおう!!」

 

吹き出して、意識を失った。

 

「…違います、会頭。

それは岩清水ではありません鰯水…sardineつまり鰯の汁を飲み物にしたものです…光國は冗談なんかで、飲み物を出していません…」

 

怯えまくりのリーナは説明をする。

 

「はい、と言うことで代表選手皆さん…優勝しなかったら飲めよ。

十文字会頭、ペナル茶が効かへんの判明したから、他にも色々と作るから…決勝戦に全員が進んだし、同率優勝なんてすんなや…その場合は三人とも飲めや」

 

 

 

 

や、やらかしたぁあああ!!て言うか、嵌められたぁあああ!!

 

 

 

先程までの発言は、取り消すに取り消せない代表選手達。

白目を向いている十文字会頭を見て、優勝を逃せば死ぬことになると悟る。

 

「さぁ、油断せずにいこう」

 

負傷者二名が出たものの、発足式はなんとか終わりを迎えた。

雫とリーナのアイス・ピラーズ・ブレイクは、タイムベントで何度も見ていた事により雫の手の内を知り尽くしていたリーナが雫と同じ事をして真っ向から叩きのめす荒業を見せつけリーナがアイス・ピラーズ・ブレイクの出場権をゲットした。

 

「どうせなら、スピード・シューティングも出ない?」

 

「絶対に嫌よ!!」

 

こうして、光國とリーナは代表入りした。








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