魔法科らは逃げれない。   作:天道無心ビームサーべ流
<< 前の話 次の話 >>

4 / 62
今日の希望、明日への絶望

「ゲームセット!ウォンバイ手塚!6-0、6-0、6-0!」

 

「はぁ…はぁ…」 

 

「スゴいわね、あいつ…」

 

光國にナンパをされたリーナは、ナンパをされた際に貰った試合のチケットを使って光國の試合を見に来ていた。

決勝戦まで駒を進めた彼は対戦相手であるUSNA代表の選手を圧倒、ここまで差があるのかと思わせるかのストレート勝ちをするのだが

 

 

 

「どうして、笑わないの…」

 

 

 

世界一の称号を手にしたと言うのに一切笑わない。

ナンパをされた時から彼女は違和感を感じていた、光國が無表情のままで目が死んでいたのを

 

 

 

テニスにかけた、青春!でも彼は目が死んでる!

 

 

 

状態である。

どうしてか彼を気にしてしまうリーナは彼をジッと見つめていた。

本当に分からない、けれども彼女は心配でしかたなかった。テニスをやっていて楽しそうで無いのを感じた。

 

 

 

「よし、聞いてみましょう」

 

 

 

気になったから行動をする、この時は特に難しい事を考えずにリーナは動き出す。

勝手に選手の控え室に入ったりするのは悪いけれども、犯罪行為とかじゃないしOKよと気楽に考えながら、気配を消して選手以外通行禁止の道を歩く。

彼女はこう見えて軍人だ、魔法を使う軍人で今はまだひよっこだが才能は確かで経験と実績は放っておいても勝手に積む事が出来るほど、九島の血は伊達じゃなかった。

日本の魔法師達にとって絶対の存在足る十師族の血を彼女はひいている。バレなきゃ良いわよと、魔法を補助する杖的なポジの道具こと端末型のCADもコッソリと使い自己加速させ、身体能力を上げたりする。

 

「えっと、控え室はこっちだったわ…誰!?」

 

後一歩で控え室に辿り着くその時だった、リーナは気付く。

自分以外の誰かが控え室付近に居ることに。

 

「出てきなさい、選手でもないのに控え室に居るだなんて…」

 

端末型のCADを握り、何時でも動けるように構える。

少しだけ待って、出てこないならば此方が動こうと考えていたのだが

 

「ふざけんな!!」 

 

「っつうう…お~痛たた…はぁ…なにしとるんや、リーナ?」

 

 

控え室から光國が殴られて出てきた。 

 

「優勝おめでとうって、言いたくて…まさかストレート勝ちをするだなんて、将来はプロかしら?」

 

「……」

 

一先ずは話題を変えて意識を剃らそうとする。

しかし、光國は無言でジッとリーナを見つめている。 

 

「…リーナ、沖縄が今どうなっとるか知っとるか?」

 

「え、どうしたのよ急に…もしかして、沖縄出身なの貴方?」

 

「アホな事を、何処をどうみたら沖縄県民に見えんねん…」

 

尚、数日前にお兄様がマテバっている。 

 

「………リーナ」

 

「ど、どうしたの?」

 

ガッシリと肩を掴んでくる光國。

自分の事をジッと見て来て顔が近いと真っ赤にするが、光國は気にせずに何かを考えている

 

「言うべきか…実はなリーナ」

 

「ちょ、近いからって…どうしたのその腕!?」 

 

「!?」

 

もしかして愛の告白かとテンパるリーナ。

出会って間もないが、魔法師だと分かっても特になにかを言ってくるわけでもないし、優しいしとカッコいいしとピュアな部分が露になっていくのだが、彼に起きた異変に気づき意識が戻る。

 

「…せやか…」 

 

腕に亀裂の様な紫色の線が現れる。

光國はそれを見て、とうとうこの日が来てしまったとリーナから手を放す。

 

「…夜中にビーチに来て…おもろいことを教えたるわ…何時かリーナにとってエエことになることを」 

 

光國はそう言うと立ち去った。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ふぅ、海外のジュースはおかしな味や」

 

表彰やインタビューなどを受け終え、時刻は既に夜を過ぎていた。

満月がくっきりと見える晴れた夜、彼は自販機で売っていたコーラを買って飲むが口に合わず、優勝トロフィーとメダルにかけた。

 

 

 

「…どうなるんやろ」

 

 

 

リーナの肩を掴んで以降、彼の体に入った紫色の亀裂は増え続けている。

これがなんなのか分かっている…自分がもうすぐ死ぬと言うことが。

ソッと彼は目を閉じ、開くと夜の様に真っ暗だが自分の姿がハッキリと見える。

 

 

 

「光國よ、間もなくだな」

 

 

 

そして自分の中に入っているキマイラが目の前にいた。

ここは世に言う精神世界と言うやつで、キマイラと光國は最後の対話をする。 

 

「ああ、もうすぐオレは死んでしまうな…」 

 

「周りに最上級の魔力があると言うのに、断食とは…プロのテニスプレイヤーとやらを目指すのでは無かったのか?」

 

 

「無理や…魔法師は外国行くのにも一苦労なんや。

オレは今は魔法師になれるよ~と言うだけの人間やけども、このままいけば魔法師や。

しかもただの魔法師やのうて人工魔法師、もし堂々と人工魔法師が発表されれば世界は変わって、その原型のオレは軟禁に近い形で国外にはいけんくなる…まぁ、堂々と発表はせえへんけど九島の爺や国が絶対に出れんようにするやろ」 

 

彼は死ぬ、後少しで死んでしまう。このキマイラに食い殺される。

仮面ライダービーストに変身を出来る様になった者は常にあるものを食らい続けなければならない。それは魔力、魔法を使うのに必要な魔力を食べ続けなければならない。

仮面ライダービーストが登場する仮面ライダーウィザードではビーストは敵の怪人を倒して、魔力をくらっている。

仮面ライダービーストはこの世界仕様に改造されており、この世界で魔法を使うのに必要な魔力的なポジである想子サイオンと呼ばれるものを摂取し続けなければならない。

 

もし長い間、摂取しなければキマイラに食い殺される。彼はベルトを手にして以降一度も想子を喰らうことをせず、今日まで生きていた。

 

「つまらんな、我の力を使えば貴様は成り上がることなど可能だと言うのに。

貴様が憎いあの九島の老いぼれを、いや、貴様にとって障害になりうるであろう魔法使い達を魔法使いとして完全に殺すことが出来る、そう教えたと言うのに」

 

「アホぬかせ」

 

 

確実に勝てない勝負は勝負とは言わない。

彼はもう一度目を閉じ、開くと元いたビーチに戻っていた。

 

 

 

「光國?」

 

「やっと来たか」

 

 

待ち焦がれていたリーナがやっと現れた。

タイミングが良いなと思いながらも、リーナを隣に座らせて被っていたフードを外す。

 

「貴方、どうしたのその顔!?」

 

「ちょ、喧しい。

…もう時間が無いから、説明はせえへん」 

 

「時間が無いって、今すぐ病院に行くわよ!」 

 

『ドライバーオーン!』

 

「!?」

 

病気かなにかと思ったリーナは光國の腕を掴み、病院に連れていこうとするが光國はもう片方の手に指輪をはめて、ベルトを出現させる。 

 

「…貴方、魔法師だったの!?」

 

ベルトを出現させるのも魔法の一つだったようで、想子を感じたリーナは驚き光國を見る。

光國は優しく微笑み、掴んでいたリーナの腕を放す。

 

「魔法師だったじゃない、魔法師になってしまった…やな」 

 

「魔法師になって、しまった?」

 

 

「そう…難しい話をしても、意味無い。

オレに残された時間はどれだけあるかわからない、要点だけかい摘まんで言うわ。

ええか、耳の穴をかっぽじってよー聞いてくれや。きっとリーナにとって良いことになるから、幸せになりたいなら」

 

 

「待って、なに最後みたいに言ってるのよ…ちゃんと説明しなさい!!」 

 

何時まで話せるか分からないので、キーワードだけでも教えようとするのだが興奮しており話が耳に入っていないリーナ。

今なにを話したところで彼女は意味を理解するどころか、直ぐに忘れてしまう。

 

「後少しで光國の命は終わり我が喰らうことになる」

 

「え、こんな機能あったっけ?」 

 

リーナを一度落ち着かせようとすると、勝手にベルトが開きキマイラの声が流れる。

光國の知る限りはこの様な機能は持っていないが、この世界仕様に改造されている部分の一部だと納得する。

 

「先程から隠れて様子を見ている者よ、早く出てこい」

 

「おい、さっきからなにしてるんや」 

 

はじめてベルト経由で此方に語りかけてきたキマイラ。

隠れていた男性に声をかけ、姿を現すように言うと現れた。

 

「…九島の人間か?」

 

男性はコクりと頷くと携帯を取り出し、何処かに連絡をしようとするのだが

 

「無駄や、もう手遅れ。

ここにあるんどっかの九島の別荘だかなんだか連れていき調べるのにどう考えても一時間以上はかかる。オレの残された時間は一時間あるかないかで、それまでに原因がなにか分かるんか?」

 

連絡先が何処か大体わかるので忠告をした。 

 

「ねぇ、なにが起きてるか説明をしてくれない?

どうして九島の、それも本家の人が貴方を監視しているの?そのベルトはなに?」

 

「…しゃーない、時間が無いから手短に…おっさん、言うてええやろ」

 

リーナに自身の事を話してもいいか確認をすると特になにも言わない男。

男はあくまでも監視が仕事であり、その辺については特に言われておらずダメだとは言わないので光國は説明をする。 

 

「人工魔法師って、そんなの」

 

「ありえないなんてことはありえない。

魔法師はどうやって魔法を使ってるかの疑問を1から10まで答えられず1から7ぐらいまでしか答えられん。けど、昔の人はその足りない3を埋める方法を見つけた、ただそれだけ…リーナが知らんだけや」

 

人工魔法師なんて聞いたことの無いと否定するリーナ。

しかし、目の前にいる光國が嘘を言っているようには見えず、自分が知らないだけだと納得させられる。

 

「私が知らないだけね…それなら、その体のヒビはなに?」

 

「…リーナ、聞いてくれ。

これだけ覚えてたらきっと良いことが」 

 

「ただの魔力切れだ」 

 

「て、おい!!」

 

とにかく、リーナにとって良いことになることを教えようとするのだが邪魔するキマイラ。

 

「お前、なに勝手に教えとるんや?」

 

「このままお前が死ぬのはそれはそれで良いのだが、我が真の意味で解放されん」

 

「解放…そうか…」

 

「聞け、我が力を使いし者は魔力を常に捧げなければならん

生きとし生きる者全てに水が必要な様に、我を宿し者は常に魔力が必要になり喰わなければならん。それを怠れば最後、我が契約者をくらいつくす。」

 

解放の意味を理解するまでの少しの間に語るキマイラ。

リーナは一瞬だけどういう事かと考えるが、直ぐに意味を理解する。

 

「想子を常にベルトに注がないとダメってこと?」 

 

「今風に言えばそうなる。

光國は目の前に最上級の魔力があると言うのに、我と契約して以降一度も魔力を食わずにいる。故に、後、十分も満たぬ内に死ぬ」 

 

「え、後、十分なん?それならリーナ、後、数年したら」 

 

「どうすれば、良いの?」 

 

「これを使うがいい」

 

ポンっとライオンの口から指輪が飛び出すとリーナは掴む。

その指輪はビーストドライバーでも使える魔法の指輪だが、光國が見たことの無い指輪だった。

 

「それを使えば魔力を装填する事ができ」 

 

「させるか!!」

 

魔力供給の指輪だと分かると、即座にリーナから取り上げて遠くに投げ捨てる。 

 

「なにしてるのよ!?

私が光國に想子を注げば、それで解決するだけなのになんで捨てた」 

 

「そりゃあ今だけはな。

今日を生き抜くことが出来ても…明日には絶望しかないんや」

 

 

光國がここでリーナに想子を貰えば、最低でも一週間は生きれる。

その時間があれば、日本に帰ることが出来て九島の魔法師が光國の魔力タンクになってくれ、問題なく生き抜くことが出来るが、問題は更にその先だ。 

 

「魔法師として生きてても、オレには未来が無い、明日は無い」 

 

魔法科高校の劣等生の物語を光國は全て知っている訳ではない。むしろ知らないことが多い

しかし、確実にこれだけは言える。物語終盤辺りにお兄様及びメインキャラを除く名もなきモブ魔法師、それこそその他大勢と言っても良い奴に被害が来ると。

ただでさえ世間の目は魔法師に厳しいのに、お兄様がさすおにするための事件が起き続ければそれはもうメインキャラじゃない関係の無いモブ魔法師にすら被害が被る事件が起きるだろう。ましては九島と言うメインキャラに目をつけられてる彼は飼い殺しの状態だ。地獄しか待ち受けてない。

故に彼は腹を括った、死ぬことを、九島烈の思い通りにはさせないと、魔法師として地獄を見るぐらいならば、一か八か死んでみると覚悟を決めた 

 

「年齢制限があるとはいえテニスの世界一になれたんや、もう充分に」 

 

「何処、何処なの指輪は、ちょっと、探すのを手伝って!!」 

 

「は、はい!」 

 

リーナは光國が投げた指輪を探そうとする。

暗くてよく見えないビーチの何処にあるか分からないのに、泥だらけになりながらも必死になって探す。 

 

「リーナ…ええから」 

 

「ふざけるんじゃないわよ!

そんな目をした人間を、ここで、ここで見捨てろって言うの!?」 

 

リーナと光國は出会って数日しかたっていない。

光國は本当になんとなくの気まぐれでお兄様の事を何時か将来役立つ時があるぞと教えようとした。

リーナはなんとなくだが光國の事を見捨てることは出来ない、根が良い子だから?助けて貰った恩?その意味を彼女はまだ分からないが、一つだけ言える、死なないでほしいと、絶望しないでほしいと。 

 

「ダメ…指輪が、指輪が見つからない…」 

 

「体液だ、光國の体液と貴様の体液を混ぜ合わせた物を飲ませろ!」

 

「魔力供給(意味深)!?」

 

「分かったわ!」 

 

指輪が見つからず、時間切れまで間もなくと言うところまで迫った。

リーナと監視をしていた男は指輪を探すも見つからず、慌てるもキマイラが別の方法で救う方法を教える。

興奮しているリーナは躊躇などなく、光國に近づきこの世界でのファーストキスを奪い体液を混ぜ合わせて飲ませ…自分がなにをしたか気付き顔を真っ赤にさせるが 

 

「あれ、ちょっと…」 

 

「ふむ…なにもしなければ三週間と言ったところか…」

 

 

 

リーナはふらつきだし、地面に倒れた。

 

 

 

「あった!」

 

 

 

そして監視をしていた男が指輪を見つけた。








感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。