魔法科らは逃げれない。   作:天道無心ビームサーべ流
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過去と未来と現在へのメッセージ

九校戦が遂に開幕をした。

スピード・シューティングの会場にリーナはいた。

 

「…これがトップクラスなんですね…」

 

第一高校の面々と一緒に真由美の試合を観戦していた。

もし負けてしまったらかまいた血を飲ませなければならず、心配をしていた美月は心配が一瞬で消し飛んだ。

なにかと不祥事が多かったりする七草真由美だが、実力は間違いなくトップクラスで敗けを想像するのが難しかった。

 

「…!…」

 

何度もタイムリープを繰り返した事により、試合結果を覚えているリーナは試合に興味を示さない。

視線の先には観客席があり、一番会いたい人物がそこにいるのが分かると席を立ち上がった。

 

「リーナ?」

 

「はぁ、開幕からあんなのを見せられたら新人戦出場者にプレッシャーしか無いじゃない…」

 

立ち上がった事に疑問を持った深雪。

 

「相手は、ミユキなんだから…出来る限りの事をしないと。

…これもう、どう考えても元会長さんの優勝だから、先に帰らせて貰うわ…私も負けたら野菜汁飲まないといけないから…」

 

七草真由美の試合を見て、本気でやらないといけないとやる気を出したと言う設定で席を離れるリーナ。

タツヤにはバレるのは当然だけど、ミユキ達にはバレないでと言う願いは通じたのか誰もなにも言ってこない。

 

「…コネクト、GO…って、ところかしら…っつぅ…痛いわね…」

 

何時も使っているCADとは違うCADを取り出したリーナは移植された光國の魔法ことコネクトを使い、こことは違う別の場所に入れている暗視やサーチ機能が充実な双眼鏡を取り出した。

 

「…あの一本、本当にスゴいわね」

 

双眼鏡の先には光國の父親こと手塚神晃がいた。

教師をしていて仕事で来ていると言うことは九校戦を見ていると、探し続けてそれらしいハゲがいたので覗くとハゲがいた。

神晃の唯一生き残っている髪の毛は凄かった。

 

「……光國も将来ああなるのかしら…」

 

ハゲは遺伝する事を思い出し、ハゲた光國を想像するリーナ。

それだけは絶対に起きないでと首を横に振った。

 

「大丈夫ですよ。

医学的には、母型の方にハゲがいればハゲる可能性がありますが、父親の方の場合はハゲません」

 

「よかった…ん?」

 

「甘いわよ、一人だけなにかしようだなんて」

 

心配が無くなるとホッと小さく息を吐いたリーナ。

ハゲの遺伝に関して教えれくれた声が聞いたことのある声だと後ろを振り向くと市原と紗耶香がいた。

 

「それを貸してください」

 

「…分かったわよ」

 

市原に双眼鏡を貸すリーナ。

リーナが見ていた方向を見ると、神晃がいた。

 

「…まさか、挨拶に行こうとしていたのですか?」

 

「そんなわけ無いじゃない…そう言うのは母親も居る時にしないと」

 

「居たら挨拶にいくのね…」

 

「光國が一緒じゃないから行かないわよ…お願いだから、ついてこないで…」

 

弱々しい声を出しながらも、神晃を見るリーナ。

神晃の周りは光國を誘いに来た光國の友人達が居て、なにか話し合っている。

 

「そんな声しか出せない子を、私は見過ごせないわ」

 

「…違うのよ、貴女達まで大変な目に逢うから言ってるのよ…何処なの?」

 

「先程から何をお探しで?」

 

「…監視をしている人よ。

光國の事を知っているのは…一部の人と光國の家族だから…」

 

光國の事は九島では最上級機密事項となっており、九島の一部の人間しか知らない。

紗耶香と市原は偶然に知ってしまったが、それを知られれば市原は消されて紗耶香は中にいるファントムをどうにか利用できないか実験材料にされる可能性がある。

光國の家族ならば、光國の事情を大体知っており口が滑る可能性がある。頭はツルツルで滑っているが。

 

「監視している人達を見つけてどうするつもりですか?」

 

「それは…」

 

「倒すだけだと、ダメなのよ」

 

リーナは強い。

目の前にいる市原と紗耶香を殺そうと思えば、あっという間に殺せるほどの強さを持っているが、戦闘力的な意味の強さでは最強(さいつよ)だが、他は劣っている部分が多く頭の回転と言う意味では光國には勝てない。オセロ(レオ)囲碁(ヨシヒコ)将棋(市原)チェス(タツヤ)の四面同時対決をしても余裕で勝つぐらいに賢い。

 

「…とにかく、行ってみましょう…でないと、なにも始まりませんよ?」

 

「待って、貴女は一番」

 

「関係ありますよ…私は彼と一緒にいると、落ち着いて…楽しくて、す、好きなんです!!だから、その…助けたいんです、手塚くんを」

 

「あ、うん。それは分かっていたわ」

 

「え?」

 

「まぁ、もう戻るに戻れないところだし、行くわよ」

 

市原のはじめてのカミングアウトを皆まで言うな、分かっていると流したリーナ。

特になにもないのに、一緒にいたりする機会が多かったりするのを見ればポンコツでも察する。

 

「いや~今まで夏は死ぬ気で頑張とったから九校戦は見んのはじめてやけど…スゴいな~」

 

「いやいや、それもスゴいけど、あの格好…良いねぇ。

魔法科高校もなんか普通の制服と違うし、美人も合間って色気がスゴいよ」

 

「戦極、煩悩に身を委ねすぎや。

しかし…光國はんもこないなもんに出るとは…四天王寺テニス部初の一年生部長から一気に出世したもんや」

 

ドレスアップで服を着替えたリーナ達は気付かれぬ様に神晃達の後ろに座り、耳を立てる。

 

「にしてもよ…アイツ、魔法師だったんだな」

 

「手塚光國が魔法師だが…さしあたって、興味は無い…が、しかし…よく入国出来たものだ」

 

「優秀な魔法師を取られたくないのとテロされたくないから、魔法師海外に行かれへんっちゅー話やな…そう言えば、ホンマになんでやろ?」

 

「光國はん、魔法師の検査とか受けても0やったのにな…」

 

「案外、人工的に作られた魔法師かもしれないぞ…四天王寺テニス部部長・手塚光國は改造人間である!彼は魔法を使えないただの人だったが、世界征服を企む悪の組織・ショッカーに改造されてしまい、魔法の力をその身に宿した…的な?」

 

「おお、ありえそうやな!

普通の人には魔法を使うのに必要なもんがあらへんらしいけど、妖精的な物を自分に封印したりして代わりにやってもらうとかやったら出来そうやん!」

 

「謙夜、ゲームのしすぎや。

魔法師の魔法は物に宿ってる情報を改善するもんで、無から有を生み出すもんちゃうで。

それに改造人間やったら目の前におるやろう」

 

「そうそう、おじさんのこの頭は改造されているんだ…って、オレのハゲは失敗だ!!て言うか、ハゲじゃねーし、一本だけ残ってるし!不老不死の薬を作る過程で出来た毛生え薬で出来たんだぞ!不老不死なんだぞ、この最後の一本は!」

 

「いや、それもう改造やのうて改悪やん…つーか、改造されてんのかい!!自前ちゃうのか、そのハゲは!」

 

「…やばい…」

 

コイツら、察しが良すぎる。

と言うよりは、一瞬にして答えに辿り着いている。

魔法の知識が0だからこそ、変な先入観を持っておらず答えを簡単に見つけ出す事が出来ている。

光國が難しい理論とか業界用語とかそう言うのを使わずにシンプルに考えた方が時として理解しやすいと言っていたが、これは正にそれである。

 

「…?」

 

ヤバいなと焦っているとなにかに気付いた紗耶香。

 

「っと、ジュースが切れた。

後、尿の途切れも悪くなってきたからトイレに行ってくる…お前達、余所様に迷惑をかけるんじゃないぞ!」

 

「おっちゃんも泌尿器科に迷惑掛けたアカンで」

 

「……」

 

ジュースを買いにいくついでにトイレに行くと席を立った神晃。

一番近いトイレや売店には向かおうとせず、少し距離が離れた所に向かった。

 

「…来いってことね…」

 

席を立った際に偶然にも目線があったリーナ達。

その時だけ目が血走っており、わざわざ別のところに向かったのはそう言うことだろう。

リーナ達は席を立ち上がり、神晃を追いかけていった。

 

「にしても仁王、暑いの苦手だからホテルで見てるって…」

 

「心頭滅却すれば火もまた涼しいと言うのに…なんや、仁王は北欧の神様を祈っとったな」

 

テニヌプレイヤー達は気付かぬまま、試合を楽しんでいた。

後ろにリーナ達が居ることには気付いていたが、声をかけてくるまでは知らん振りを決め込むつもりだった。

 

「ふぅ、やれやれ…おじさんは追われるより、追う側の人間なんだけどね」

 

神晃を追いかけていったリーナ達。

堂々と前に出ようとするのだが、神晃が喋り出したので出るのを止めた。

 

「折角息子の晴れ舞台だと言うのに、何処もかしこも怪しい奴や魔法師を見下したりだ…おじさんはね、御仕事でここに来ているんだ。

この前の一件で、国立魔法大学付属第二高校に入学するかどうか悩んでいる、魔法師としての才能がある子供達が悩んだんだ…魔法師になって良いのかって…魔法師と言うものはおじさんには分からないが…お前達みたいなのに、大事な宝はやれん!!出てこい!!」

 

「…あの、なにか勘違いしていませんか?」

 

戦うぞと構えて振り向いた神晃だが、後ろに居るのはリーナ達だけだった。

 

「…ごめん、無し、今の無し!」

 

最初に出た市原を見て、顔を真っ赤にして忘れてと恥ずかしがる神晃。

ああ、この人は光國の父親なんだなと強く感じた。

 

「なんだ、魔法科高校の御嬢様方じゃないのか…おじさんの事を狙いに来たシティーハンターだと思った。おじさん、髪の毛は少ないけど秘密は多いからね…」

 

「は、ははは…」

 

「そこは秘密と髪の毛を守れるんですかだよ」

 

自虐ネタに笑うに笑えないリーナ。

こんなものかと神晃は見たあと、三人を観察する。

 

「…ところで他には居ないのかい?」

 

「私たち三人ですよ」

 

「そうか…女だけか…あの馬鹿は、男の友達を作れよ……」

 

「あの、光國の事をちゃんと知っています…一番最初に知りました!二人も、光國が語ってくれて…その」

 

意を決して語るリーナ。

何時もの難しい報告を語るよりも簡単な事の筈なのに上手く言葉が出ない。

 

「落ち着きなさい…そうか…自分で語ってしまったのか、あの馬鹿は…」

 

「待ってください!

光國くんはなにも悪くありません。私が…私が語らないといけない様に」

 

「だが、君達は知ってしまったんだろう…余計な同情は、光國を傷つけてしまう…恋心と勘違いしてしまう…」

 

「待ってください、私は…いえ、アンジェリーナさんも紗耶香さんも、そんな思いは一切ありません!!手塚くんの事を…好き、です」

 

「そうか…あの子は何だかんだで、優しいからね…でも、結婚できるのは一人だよ」

 

話が徐々に徐々に脱線をしていくが、三人とも光國が大好きだと知ると喜ぶ下世話な神晃。

結婚の事を話題に出すとリーナはドヤ顔をして一歩前に出る。

 

「私は光國と一緒に暮らしているわ…愛してるって叫べと言うなら叫べるし、叫んでもらえるわ…」

 

「ほうほう…」

 

「私は手塚くんに頼りになる大人な方と思われています。

それだけでなく、もしかしたら辛いかもしれないと言う優しさを見せてくれて」

 

リーナが自慢をすると謎のPRタイムが始まり、先手必勝と出た市原。

紗耶香もなにかを言わないとと考えるが無駄である。

 

「おじさん、そう言うのを聞くのは好きなんだけど…最終的なものは母さんが握ってるから」

 

かかあ天下の家故にPRし続けても無駄だ。

神晃は精々、誰が押しなのかを教えたりサポートしたり出来るぐらいだった。

 

「こんな美女達にモテるだけでもありがたく思わないといけないなうちの馬鹿は…けど、踏ん切りは大事だ。彼女を選んだならば、君達は身を引いた方が…なんて堅物じゃないよおじさんは。愛には色々と形があるからね…本人達が了承したなら、金さえあれば大丈夫さ…馬鹿息子が子供を育てる膨大なお金がないと、認めんぞおじさんは」

 

「…ありがとうございます」

 

なんでかは分からないけど、市原は頭を下げた。

なにかを認められた気がして嬉しくて少しだけクスリと微笑んでしまった。

 

「でもまぁ、三人か…億単位を稼ぐ男じゃないと…億単位…億単位…テニスプレイヤー、スポンサー契約……あの子は、勉強はそこそこ出来るが一番に成れないと分かっていたからな…」

 

「…っ…」

 

「謙夜くん達、何時でも許すつもりだが…許したところで世間は認めてくれない…いったい、どうしてこんな社会になったんだろう、十師族も国も腹を割って話し合わないといけないのに」

 

光國の事を思い出し、落ち込む神晃。

 

「…君達の誰かと光國が結ばれたとして、幸せになれるのだろうか…あの老いぼれさえいなければっ…!危ない!」

 

九島烈への憎悪を増やしているとなにかに気付いた神晃。

何事かとリーナ達は臨戦態勢に入ると黒いグラサンに黒いスーツに黒いネクタイを着た集団が現れた。

 

「あんたは!!」

 

リーナは量産型黒服の中にいる一人の黒服に見覚えがあった。

数年前、光國と出会った際に光國を監視していた黒服だ。

 

「…今回は、おじさまの監視って事ね…」

 

何処から何処まで聞かれていたかは分からない。

しかし、ここで堂々と出てくると言うことは紗耶香と市原が知っている事を知ってしまい何かをしに来たと言うことだ。

 

「そちらの二人、来てもらおうか」

 

「そう言った事を言う人に素直についていく人はいませんよ」

 

何時でも魔法が使えるようにCADに触れる市原。

一触即発で何時戦いになるか分からないこの空気の中

 

「?」

 

紗耶香はまたまた変なのを感じた。

神晃達の会話を聞いている時にも感じた謎の感覚で、既に仕掛けて来ているのかと隙を見せてしまった。

 

「!」

 

「ちょっと、余所見は禁物よ!」

 

その隙を逃すことなく攻める黒服だが、リーナが間合いを詰めて魔法を使う前に殴る。

発動させれば効果を発揮するまで一秒掛からない魔法だが、発動までの動作は数秒がかかりその隙があるならば、縮地法で間合いを詰めて殴ることが出来る。

 

「私が前衛で戦闘、イチハラは真ん中で相手の邪魔と援護、サヤカはおじさまの護衛をしつつ撤退…おじさま…」

 

「ぐぉるぁああああ!!やんのか、このくそがき!」

 

咄嗟に思い付いた陣形で戦おうとするリーナ達なのだが、神晃が黒服を殴り倒していた。

 

「え…えっと…」

 

「いやぁ、ナイスな縮地法だったよリーナちゃん。

あの馬鹿は一年生部長とかやってて人に何かを教えるのが上手かったりするから、そのお陰かな?お父さんの教師としての血が確かに流れているみたいだ!」

 

黒服の後頭部を掴んで頭に叩き付ける神晃。

普通の人の筈なのに、九島御抱えの魔法師の護衛を余裕でボコボコにしている事にリーナ達は言葉が出ない。

 

「ふっ、アイツにテニスを教えたのはおすぎ婆さんとオジイだが…テニスコートに連れていったのは他でもないオレだぁああああ!!」

 

見事なまでのドロップキックを黒服に叩き込むが、全く自慢になっていない神晃。

ああ、やっぱり光國の父親だと納得しながらも全員を倒すのだが

 

「…倒しても、意味がない…っ…」

 

倒しただけで、殺しはしていなかった。

この黒服達は九島烈に忠誠を誓っており、ある程度の信頼を勝ち取っている。

黒服の一声で市原と壬生の事が知られてしまう…故にリーナは特化型のCADを抜いた。

死人に口無し。特定の記憶を消去する精神干渉系統の高度な魔法をリーナには使うことが出来ず、科学の技術で消すことも出来ない。仮に出来たとしても機材をリーナが使うことは出来ない。

 

『ルパッチマジック、タッチゴー!ルパッチマジック、タッチゴー!』

 

「!」

 

「また、まただわ!!」

 

死人に口無しと消そうとしたその時だった、聞いたことはない音楽が流れる。

聞いたことはないのだが、似た音楽は聞いたことがあり

 

『ギィー』

 

少しだけ起動に遅れ、その隙にプラ・モンスターブラックケルベロスに腕を弾かれ、特化型のCADを落とす。

 

「これって!!」

 

『テレポート、ナウ!』

 

ブラックケルベロスを見るのははじめてだがリーナは知っている。

これによく似たグリーングリフォンを光國が使役しているのを。

 

「その指輪は!」

 

「全く…困ったら殺そうとする考えは魔法使いとして如何なものか…いや、強い力を持つからこそ、周りにちゃんとした大人が必要でちゃんとした大人が…原型が導いてやらなければならんのか」

 

「嘘…光國くんと同じ…指輪の魔法使い…」

 

そして何処からともなく現れた白い魔法使いが光國と同じ指輪の魔法使いだと言うのを、知っている。

 

「さて…」

 

『テレポート、ナウ!』

 

右手の中指につけている指輪をベルトに翳すと魔法が発動する。

無数の巨大な魔方陣が出現し、黒服達を消した。

 

「これは…」

 

「転移魔法だ。

重力を操り時空間をねじ曲げて、異なる世界に干渉し異なる世界を経由して、此方の世界の此処とは別の場所に飛ばす…移動魔法だ」

 

「転移魔法…何処に飛ばしたのですか?」

 

「適当な海外へと飛ばした…これである程度の時間は稼げる…密入国の罪をどう対応するかが見物だ」

 

攻撃魔法でも何でもない魔法でエグいことをする白い魔法使い。

一歩、一歩と此方に近寄って来たので神晃を囲むようにリーナ達は守りに入る。

 

「そう身構えるな、私はお前達の恩人だぞ」

 

「いきなり現れてそんな事を言って来た奴を信じれると思う?

素顔を見せなさい…その姿は一種のパワードスーツで簡単に着脱可能の筈よ」

 

「やれやれ…君は私に敵意ではなく感謝の念を送らなければならないと言うのに…」

 

「…私と光國に魔法を掛けたのは貴方?」

 

「それについては申し訳ないことをした…と言うと思ったら大間違いだぞ!!

貴様、いや、貴様達は散々新婚旅行擬きを楽しんでいたことを私が知らないと思うなよ!」

 

タイムリープの犯人を認めるが、キレる白い魔法使い。

 

「おい、新婚旅行ってどう言うことだ。おじさんにちょっと教えなさい」

 

「星海坊主は黙っていろ」

 

「誰が坊主だ!!このキューティクルサラサラヘアーをよく見ろ!!」

 

「はぁ…」

 

「っ!」

 

腰部分にあるウィザードリングのホルダーにつけている指輪に触れる白い魔法使い。

此方に向かって魔法を使うと感じたリーナだが

 

「コレを原型(アーキタイプ)に渡せ」

 

「コレって!?」

 

白い魔法使いは指輪をつけずに、投げたのでキャッチをするリーナ。

その指輪はライオンの様な顔をしており、リーナはコレを知っている。

キマイラが探してこいと言ったが、見つかっていないハイパーリングだ。

 

原型(アーキタイプ)…手塚くんの事ですか?」

 

「さて、その指輪を真に使いこなせる古の魔法使いが原型(アーキタイプ)だ…」

 

「うちの子供の事を、原型と呼ぶな!!」

 

「そう怒るな…それよりも怒られるのは、アンジェリーナ=クドウ=シールズ、貴様だ。

困ったからと言って殺そうとするな…この業界にいる以上はその一線は越えなければならないが、越えた先に居続ける事は何人たりとも許されない」

 

「それは…仕方ない、じゃない…私は…それしか、出来ないのだから…」

 

リーナは戦う事にだけ特化している。戦いに関する事にのみ特化している。

シリウスなんて大層な名前を持っているが、それ以外はただの学生だ。コレしかないと諦めていた。

 

「…アンジェリーナ=クドウ…いや、アンジェリーナ!」

 

「な、なによ!」

 

「貴様は原型と…手塚光國と幸せになりたいか?」

 

「なりたいに決まっているじゃない!」

 

「そうか…それならば、さっさと動け…」

 

白い魔法使いは分かっていた。

このままだと光國に幸せなんてものはないと、魔法師との間に子供が出来たらその時点で終わりだと。ファントムは遺伝しない。

光國はただの人で、もしかしたら魔法演算領域が遺伝しないかもしれない。

無論、結婚して子供が出来るのが全てじゃないのを知っているが、それでもだ。

 

星海坊主(ハゲ)、貴様は息子が大事か?」

 

「当たり前だ…あの子はオレや母さんの誇りだ」

 

「ふっ…誇りか…ほぉ…」

 

聞くべき事は聞いたと帰ろうとする白い魔法使い。

ふと紗耶香が目に入り、紗耶香の中にファントムが居ることに気付く。

 

「お前も私と同じ絶望を乗り越えた者か…成る程、スキュラか…」

 

「絶望を乗り越えたって、じゃあ、貴方もファントムを?」

 

「ああ、そうだ…自らでファントムを生み出し、制御した。

コレはビーストドライバーを更に進化させた物とでも言っておこう…成る程、貴様は私の存在を察していたな」

 

「あなた、だったのね…」

 

何度か感じた不思議な感覚、それは白い魔法使いだと言うことに気付く。

 

「…もう使わなくなった物だ、持っておけ」

 

「これは…!?」

 

「では、いずれまた会おう…指輪の魔法使いになる資格を得た、剣道小町よ」

 

『テレポート、ナウ!』

 

白い魔法使いは姿を完全に消した。

ウォータースタイルに変身する青い指輪と水を放つスプラッシュの指輪を紗耶香に託して消えた。

 

「…彼も、うちの子と同じ魔法を…はは、参ったな…」

 

「おじさま……この事は」

 

「秘密にするよ…悔しいが、おじさんはなんにも出来ない。

精々、あのバカを殴って無理矢理表に引っ張り出すことが出来るぐらい…だから、だから、頼む!」

 

神晃はリーナの、紗耶香の、市原の手を取った。

自身には力はない。精々、瓦を20枚ぐらいしか割れない。魔法を使えない。

だからこそ託す。

 

 

「あの子の希望になってくれ!!」

 

 

手塚光國が流されるままではなく、自らで立ち上がって生きる希望になることを。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【昔々…いや、それは昔と言うか魔法を思い出した時代。

一人の少年は絶望をしてしまいました。大事なものを無くしてしまった彼は絶望して泣いてしまいましたが、彼の気持ちを理解し、彼を慰める味方は居ませんでした。

大事なものを無くして望して死にそうになった彼は、誰かの力も借りず、大事なものの為にと絶望を乗り越えました。

試練を、絶望を乗り越えた人は大きくなり強くなる…一人の少年は絶望を乗り越えたその時、一つの魔法を手に入れて魔法使いになりました。

魔法使いになった少年は魔法を使って人々を助け、最後の希望に…なるわけでもなく、取り敢えず運動しようと自分に合ってる筈だと思ったテニスクラブでテニスをはじめました。

才能が開花した少年は日本一になりますが、日本の柱に成ることは出来ませんでしたが、その程度の事では諦めずに日夜テニスの特訓に明け暮れた。

明け暮れて将来を見据えた彼にある日、神様が舞い降りました…それはテニスの神様…ではなく、遥か北にある地の戦争と死の神様でした。

嘗て人は神様を捨てた。神様の教えをしなくなった、祈りを捧げなくなった。

神様は怒り、人を見放しました。しかしそのお陰で人が人の足で歩けるようになったりしました…人の力で生まれた物が増えました…ですが、人と言うのは神をも越える強欲な存在だったのです。

今でも充分に豊かだと言うのに、更なる独占や支配欲に犯されてしまった賢者や王達は世界が忘れ去ろうとした魔法を取り戻し、新たに進化させました。

そして忘れ去られた、人々の心にはあれども祈られない神々の存在は露になっていったのですが神々は思いました…果たして、このままで良いのか?、人間は油断できません。

戦争と死の神は知識に関してはとてつもなく豊富で尚且つ貪欲、更に言えば魔法にも深く精通をしていて過去になにかと人間と関わっており、じゃあちょっと今の世の中を見てくると自身に適合した魔法使いを探し、偶然にもそれは彼だったのです。

彼に宿ろうとした戦争と死の神でしたが、絶望を乗り越えた彼の心は思いの外に強く、彼が絶望した際に心の中に生み出したドラゴンに襲われてしまい、神様は死にかけました。

死んでたまるかと思った神様は最後の最後で彼と融合する魔法を発動しましたが、上手くいかず、意識を融合する事なんてなく、彼に様々な知識と変な方言だけを与えて神様は消えてしまいました。

知識を得た彼ですが、特にコレといった変なことはありません。強いて言うならば、夏休みデビューに失敗したと思われるぐらいでした。

その後は平穏に過ごしていたのですが、時折テレビで琉球王国が他国に襲われて二年と言うニュースを見て、危機感を感じました。

科学が進歩して、万人に等しく光が与えられる御時世に魔法使いは戦うことしかできずにいて世間は厳しいこの世の中は何時戦争になるか分かりません。

なので、彼は何時か出来るかもしれない大事な人やものと自分の為だけに強くなろうと魔法使いとして世界中を渡り歩き、伝説の秘宝を探しました。

その際に、火、水、風、土の四大元素の力を手に入れた彼は己の内に宿るドラゴンの力を使いこなし、火を炎に、風を嵐に、土を大地にと進化させました…が、それだけです。

自ら争いを起こす必要なんて何処にもないので、のほほんと過ごしいる彼でしたがそれでも胸の内には色々と思うことはありました。

ちょっと未来を視てしまい、激動の時を知っている彼は今後を気にしていました…しかし、彼にはどうすることも出来ません。と言うか、どうすれば良いのかが分かりません。

魔法使いは肝心な時に役に立たず、いざと言う時には戦える、大事なものだけは絶対に守れるので良いかと妥協をしていたそんなある日のこと…彼が見た未来が消えてしまいました。

彼が未来を見た時点で、その未来に対策したりするので消えて当然ですが、余りにもありえないその未来に驚きを隠せない彼は知りました…テニスの王子様の存在に…テニスの王子様は彼が見た未来には居ませんでした…彼は思った、このテニスの王子様もまた自分と同じ変わった存在だと…そして偶然にも出会えるチャンスが生まれたのですが、彼はその場には現れませんでした…だから、魔法使いは時を戻し、彼と会える日を待ちました…が、何度戻しても来ませんでしたので痺れを切らしてテニスの王子様の家に乗り込みました…おしまい】」

 

「長い、そして何故、お伽噺風なんだ?」

 

本戦のスピードシューティングに優勝するのは元会長だと、見に行かず白い魔法使いこと仁王治雅が宿泊しているホテルの一室で改めて光國は話し合う。

互いに敵意や悪意は剥き出さずにおり、なにか悪いことをしようと言う考えを持っていない。

 

「別んかいゆたさんやんやー。

それじーりも、こんげやって真正面から向かい合う事が出来てじーかったばい」

 

「標準語で喋れんのか、お前は…」

 

「喋れるぜよ…けどまぁ、疲れるね」

 

いったいどうなっているか謎の仁王の口調に困惑するが、気にしている暇は無かった。

こうして会うのが第一の目的で、まだ第二、第三の目的が残っている。会ってからが本番だった。

 

「お前はオレに会いたくてタイムリープをしてきた様だが、次はどうするつもりだ?」

 

ここでまたタイムベントをされてはかなわんと仁王と向き合う光國。

すると仁王はタイムベントのベントカードをポケットから取り出して、光國に差し出す。

 

「なんの真似だ?」

 

「あんたと敵対はしたくないと言う証だよ」

 

「よー言うわ、その気になればオレを消せるやろう。

自分が殺したくないとか敵対したくないとか言うのはわかるよ。けども、それなら互いに不干渉が一番ちゃうんか?」

 

「…ミョラウショシャウシャウ(魔法科高校)ファビリェジュジャウディエ(の劣等生)

 

「…デェジュジエブリョファショ?(知っているのか?)

 

「…さて、わしの見た未来とは既に大きく掛け離れているがな」

 

仁王治雅は自分がオタクだと言う事を自覚している。

仕事とか勉強とかはちゃんと真面目にやるけど、娯楽もちゃんとやる的な人生を送っていた。

結構なオタクで、二次創作系統も見ており、魔法科高校の劣等生の原作も当然知っている。

しかしこの世界はそんな世界とは少し掛け離れたりしており、目の前にいる男が本気を出した事により大きく道をズラす事に成功をした。

 

「わしは、あんたの事を尊敬しているんだよ、いや、割とマジで」

 

のほほんと日々を過ごしていた仁王はその事に衝撃を受けるしかなかった。

魔法科高校の劣等生の二次創作も過去に何度か見たことがあったが、こんな事をする奴は仁王の記憶には無かった。

例え自分がそこに居たとしても、絶対にそんな事をすることは無いだろう。

 

「で?」

 

自分に憧れを抱いたのとか尊敬の念を抱いたのとか、どうでもいい光國。

敵対する気が無いのならば、もうこれ以上は干渉しないでほしい。

 

「そんな顔をしなさんでおくれや。

わしはの…このままで良いのかと思っとるったい…三年間、地獄がはじまるんじゃ」

 

「…四葉のクローバーを持っていれば、不幸は訪れない」

 

もう語ることはないと席を立ち、タイムベントのカードを投げ返す光國。

三人集まれば文殊の知恵と言うが同業者が二人集まってなにになると言うのだ。

 

「お前はオレより強く、知識があるのだろう。

それならば充分に使えば富も名声も手に入る、四葉のクローバーは幸運の証だ」

 

「それじゃあダメぜよ。

…お前、いい加減に現実見んとアカンぞい…四葉のクローバーは幸運を呼ぶが、幸福は誰かの不幸により成り立つ…ワシは、確信したんじゃ。クローバーでは救えないと。

もっとこう…根本的に違うことをせな、アカン気がするんじゃ…結局のところ、クローバーが生い茂る大地は普通じゃなかぁ!せやから力を貸してくんしゃい!」

 

「…結局はそれか。

笑わせるなと言うか、馬鹿にしてんのか自分?」

 

力を貸して貰うのが協力するのが主従関係なのかは分からない。

しかし、仁王を大体理解した光國は自身と仁王のスペックの差を大きく感じた。

協力なんてしなくても、本気で暴れるだけでどうにかなる。

 

「…ワシは未来を見ただけで、未来は終わっとらんぞ…どうすんじゃい…」

 

部屋を出ていった光國を心配する仁王。

きっと彼も分かっていると信じている。そして光國は分かっていた。この世界は現実だと。

 

 

 

 

 

 

物語(みらい)が終わっても未来(人生)は続くと

 

 

 

 

 

「…立ち上がって貰わんと、困るのぅ…けどまぁ、希望は捨てたなかったの…三年先の稽古をしてもらいたいものだ」

 

 








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