魔法科らは逃げれない。   作:天道無心ビームサーべ流
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その頃の雑草達

「ぐふぉおぁああああ!?」

 

「哀れね、桐原くん」

 

九校戦二日目、男子のクラウド・ボール本戦で無様に負けた桐原。

ベスト3にすら入っていない醜態に豚を見るような目で紗耶香は見ていた。

 

「やれやれ、赤酢程度で根をあげるとは情けない」

 

「いや、誰だってぶっ倒れるわよ!!」

 

沸騰している訳でもないのにコポコポと気泡を出しているジョッキに入っている赤酢。

こんなものを飲めるやつなんてGぐらいだとエリカは叫ぶのだが

 

「エリカ…西城は普通に飲めている」

 

「力がギンギンだぜ!」「ぼく、は…みきひ…」

 

何故か上半身裸のレオはフロントダブルバイセップスのポーズを取っており、適合しなかったヨシヒコは倒れていた。

心なしか筋肉がテカって見えており、色々と酷い絵面だった。

 

「そうだよ、エリカちゃん。

手塚さんのジュースは不味いけど、決して飲めない物じゃないよ…粉悪胃悪、飲む?」

 

「美月…貴女もなのね」

 

自分がなんとか飲める特性ジュースを見つけ出した美月はもうダメだと思う。

エリカはクラウド・ボールで負ければ飲まなければならない恐怖で胸がいっぱいだった…言うほど胸は無いけど。

 

「その気になれば前世の記憶すら甦らせる汁だ…にしても、事前のオッズ通りの結果とはどいつもこいつも情けない…」

 

「オッズ?」

 

「闇サイトで九校戦の試合結果が賭けられている。

倍率が低いものほど優勝候補と言われており、名のある家の者は特に倍率が低い…なんだ、その目は」

 

「手塚くん、そう言うのするんだ…こう、趣味が登山とかレジャー施設に行くとかそういう感じの見た目っぽいのに」

 

「先入観でオレを語るな…オレは普通にゲームが好きだし、博打は大好きだ…特にポーカーと競艇はな」

 

こいつ、本当はパチンカスじゃ無いかと疑うエリカ

 

「安心しろ…母さんはオレのお年玉貯金と自身の500円玉貯金の封印を解放し、第一高校に全賭けをしている」

 

「あんたの親っていったい…」

 

「知らん」

 

そんな事は光國本人が聞きたいぐらいだ。

とりあえず、無様に負けた本戦男子と優勝できなかった七草真由美以外の女子を全員ドリンクで意識を奪う光國達。

 

「……」

 

そんな中、リーナは上の空だった。

ハイパーリングを貰ったのは良いが、リーナはまだ渡していない。

このリングとミラージュマグナムと言う武器があるらしく、それを使えばキマイラの力を真に解放する事が出来るらしい…のだが、コレを渡せば最後、どうなるかリーナは分からない。

 

「…幸せってなんだろう…」

 

リーナは真面目に将来について考えてみた。

このハイパーリングを仮にUSNAに渡した場合、大きな手柄になるだろう。

そうすれば光國を拉致して渡米して色々と偽装してもらえて一緒に暮らせる可能性がある。

しかしそれだとあの人の良い神晃や兄や妹と二度と会えなくなる。母親に関しては向こうが自分の足で来いと堂々と言っている。

じゃあ、九島烈に渡して最終的に光國の手元に置くことにする?

それは正解じゃない。まだキマイラの、ファントムの作り方を知らないが、何れは知られる可能性があり更にはこのハイパーリングの魔法を兵器に利用するかもしれない。

どちらに渡しても地獄しか待ち受けておらず、直接光國に渡すことすら出来なかった。

 

「…光國?」

 

「どうした?」

 

「…光國は私のこと、好き?」

 

「…好きだし、もっと好きになろうと頑張ってる。

リーナの良いところを見て、悪いところも見て全部好きになって受け入れて一緒に乗り越えたい」

 

「っ!!」

 

素でこう言う事を言うんだから、本当に困る。

だがしかし、こんな綺麗な人と一緒になれるだけで幸せ者なのだから頑張らないといけない。

それがアンジェリーナと言う絶世の美女と一緒になるためにしないといけない努力だ。

 

「じゃあ、サヤカは?イチハラは?キョウコは?」

 

「……藤林さんはマジで苦手。いや、嫌いじゃないんだ。普通にイイ人なんだよ、数少ない味方なんだよ?…なんか怖い。

残りの二人は…まぁ、ライクでは好きだ…love的な意味では分からん…互いの事をよく知らないし、そう言う場とか時とか無いし…やっぱ、互いに知るとか大事だと思う」

 

やはり響子は苦手な光國。

やっぱりそうよねと何処か納得している自分がいるとリーナは感じる。

 

「…あんまりスゴくなかったな、クラウド・ボール」

 

「せやな…たかが9球を打って走りまくるだけの競技であない汗だくになるとか魔法師どんだけ貧弱やっちゅー話や」

 

「放ち当てる魔法が多い…無駄が多すぎて、全く興味は無い」

 

「…ふっ、あの程度ならばわしらの方が上や」

 

感じるが、直ぐに壊れてしまう。

クラウド・ボールを観戦していた光國の友人達が出て来て、鉢合わせしてしまった。

 

「戦極はどうした?」

 

「あいつはバトルボードに向かったよ…女子のな」

 

「ホンマに、光國はんを誘いに来たことを忘れおって…」

 

仁王はともかく戦極が居ないことを気にするが直ぐに呆れた。

奴らしいと言えば奴らしい。自身を誘うと言うことに全く集中していない。

 

「それよりも、光國!

お前、クラウド・ボールに出るんちゃうんか!?何時出るか、何時出るか待っとったんやぞ!」

 

「アホぬかせ、今日やったんは本戦やぞ。

オレが出るんは、一年生限定の新人戦、明々後日や」

 

「謙夜、アナウンス聞いてへんのか?」

 

「お前は早さだけが取り柄だが…聞き耳も早さだけしか無いのか?」

 

「っ!!」

 

自分だけ光國が出てくると思っていた事に気付くと顔を真っ赤にする謙夜。

ちょっと距離を置いているエリカ達も口を押さえて笑っており、どうにかしようと頭を回転させる。

 

「せ、せや!光國、クラウド・ボールに出るんやろ?優勝を目指すんやったら、手伝ったるわ!」

 

「断る…これはテニスじゃない、魔法競技だ」

 

「似たようなもんやろ、そこの奴等もどうや?

なんやったら、他にも新人戦に出る奴を連れてきてもエエで!!」

 

「お前な…いや、お前達…」

 

それは面白そうだとラケットを取り出す謙夜達。

これ以上は付き合ってられるかと帰ろうとするのだが

 

「はいはいはーい!私、やりたい!!」

 

エリカが挙手をした。

 

「おい、エリカ!」

 

「魔法師と一般人の交流は必要って手塚くんが何時も言っているじゃない!」

 

急に手を上げたので空気を読めと言うレオだが、エリカはこう言うのは大事と主張する。

 

「それに…他の人達がやっているのを見て、動きたくなったのよ。

クラウド・ボールは動く競技だから、下手なことをして足を挫いたりしたらダメだって色々と我慢させられてたけど、もう限界よ!」

 

どちらかと言うとそっちの方が本音のエリカ。

こうなったら止められないと感じたレオ達はなにも言わなくなり、ジャージに着替えてくると走っていった。

 

「お前等、テニスボールちゃうねんぞ…」

 

クラウド・ボールのボールはテニスボールではない。

低反発ボールで打ち合ったり、移動魔法で移動させたりする競技なのだが全く気にしていない謙夜達。

 

「手塚、アイツ等って強いのか?」

 

クラウド・ボール新人戦の練習とか場の空気になれると色々と言い機材一式とコートを借りた光國達。

 

「誰になにを言っているんだ西城…アイツ等はGenius10だぞ…」

 

「天才の10人…」

 

「先に言っておくが、百錬自得の極みとかは使えんぞ」

 

「あんなの全員が使えたらダメだろう…」

 

「何時でも良いわよ!!」

 

第一高校のジャージに着替えたエリカは機械関連を操作するヨシヒコに手を振る。

 

「エリカ、本当に良いのかい?」

 

「構わないわよ…こう言うのをやってみたかったし!」

 

オジイのウッドラケットを片手に意気込むエリカ。

女子のクラウド・ボールは3セットで、男子のクラウド・ボールは5セットでエリカは勝とうが負けようが問答無用で5セットフルに試合をする。

これだけならまだ男子と変わらないのだが、更にエリカは1セット毎に違う選手を相手にしなければならない。

 

「オレは基本的にダブルスが専門だが…さしあたって、シングルスでも問題はない…」

 

「…あの人、見るからに強そうですね…」

 

最初にコートに入ってきたのは越智月光。

そこそこの距離で見ている美月は越智の大きさに驚く。

 

「大きいのはどんなスポーツでも便利だけど…デケえ…二メートル越えてるぞ」

 

レオは今までの記憶を辿るが越智以上の背を持った人はいない。

どんな試合になるのか楽しみのレオ。試合開始のブザーが鳴ると低反発ボールが越智の元へと飛んでいき、越智は打ち返さずにボールを掴んだ。

 

「ふむ…」

 

ボールを持って感触を確かめる越智。

背中を向けて限界ギリギリまで下がっていく。

 

「え、ちょっと」

 

「千葉、試合に集中しろ!!

月さんを相手に一瞬の油断も慢心もすることは許されない!!」

 

「落ち着けって、手塚…」

 

「落ち着いていられるか…本気だぞ、月さんは」

 

全くと言ってボールを打たない越智。

ゆっくりと時間が過ぎていき、ポイントがエリカに増えていき二個目のボールが射出されると今度はエリカの方にボールが向かい

 

「よっと!」

 

エリカは打ち返した。

 

「遅い!」

 

しかし、越智が何時の間にか前に出ており地面につくことなく打ち返された。

 

「まだまだぁ!」

 

打ち返すことは出来なかったエリカは直ぐにボールを拾い、打ち返す。

テニスと違いクラウド・ボールはバウンドをしなくても打ち返して良いルールだが、ネット際に立って打ち返さない越智。律儀にワンバウンドしてから打ち返してラリーを始めるのだが

 

「な、なんでポイントが入っているんだ!?」

 

越智の方に何時の間にか多くのポイントが入っていた。

 

「エリカちゃん、端にボールが!」

 

「嘘、何時の間に!?」

 

「だから油断をするなといっただろう…」

 

何時の間にかエリカ側のコートの隅にあった低反発ボール。

直ぐにボールを取りに行き、越智側のコートに打つのだが越智は打ち返さずにそのボールを掴み取った。

 

「また、ボールを掴んで…」

 

「西城、よく見ておけ…アレが日本最強のサーブだ」

 

ラリーを続けながらもボールの射出口を見守る越智。

三個目のボールが射出されるその瞬間、越智はボールを高くに上げると

 

「え?」

 

気付けばエリカの真後ろに三個目のボールと掴み取ったボールがあった。

 

「え、え?」

 

なにが起きたか理解できない美月。

 

「魔法…は使えないんだよな…」

 

魔法で何かしたかとレオは考えるが、それは違う。

今エリカと戦っているのは紛れもないただの人であり、魔法師としての力なんて一切持っていない。

 

「アレはただのサーブだ…オレの零式サーブと違いテニスをしたことがないお前達でも出来る普通のサーブだ」

 

「普通のサーブって、何処がだ」

 

「まぁ、見ていろ…多分、そろそろすると思う」

 

ボールがまだ増え続け、ラリーは激しさをます。

 

「あの人、ウィングスパンが滅茶苦茶…こうなったら」

 

「あ~あ~ダメだ、それは」

 

ウィングスパンがとんでもない越智に左右に走らせても無駄だと気付くとボールを打ち上げるエリカ。

魔法を使えば筋肉では不可能な遥か上空に打ち上げれるので、クラウド・ボールのコートは四角い樹脂の箱で囲まれており、天井にぶつかっても自分のポイントになると喜ぶが

 

「残念だが、オレのマッハはスマッシュでもいける」

 

「!」

 

気付くとまたボールが自分のコートに転がっていた。

 

「まーた、早くなっとるわあの人」

 

「手塚、なにがあったんだ…オレにはなにがなんだか」

 

「No.4 越智月光、右利きのカウンターパンチャーでダブルスの名手

スピード 6 パワー 4 スタミナ 5 メンタル 7  テクニック4,5

何事にも動じないメンタルは凄まじく、月さんとダブルスを組む者は全員月さんが居るだけで心強いと安心感を抱く。

しかし、真に凄まじいのはあの体格。背丈が大きいか小さいかは大半のスポーツでは重要で月さんは日本人では有り得ないほどの身長で2メートルを余裕で越える。最早、一種の才能だ。

ウィングスパンがとてつもなく広く、ダブルスでも常人ならば届かない距離でボールを打ち返す事が出来て鉄壁の防御力を誇る…そして大抵の人は横で抜くのを諦め、上下の立体的な方法で攻めにいくが、一度ボールを打ち上げれば、常人が持っていない体格と鍛え上げられた筋肉をフルに活用するスマッシュで叩き込まれる…気付けばボールがあるのは全てスマッシュで打ち込まれたからだ。

余りの速さに反応することはほぼ不可能で、なにがたち悪いかって、アレは本来サーブの技や。

スマッシュで打てるようになったのは後々で、シングルスで使えば交互にサーブを打つルール故に自分の番でゲームを奪われた時点で負け確定と言われるほどに恐ろしいんや」

 

「スゴい…で、でもその人がNo.1じゃないって事は手塚くんが勝ったって事ですよね?」

 

マッハだけでも充分にスゴいが、それでもNo.1じゃない越智。

隣にいる光國の方が上で、まだエリカが勝てる希望はあると美月は信じているのだは光國は渋い顔をする。

 

「あの人の立っている位置や構え方で予測して、打ち返す。

テニスはサーブを入れる所が決まっていて入れる為にパワーが少し落ちる打ち方をしているが…クラウド・ボールにはそれはない…」

 

「っ…じゃあ、エリカちゃんは」

 

「…最後まで見るんだ」

 

どうなるかを答えず、試合に集中する光國。

何時の間にか点数差は大きく開いており、越智が大きく差を広げていた。

 

「おい、エリカ!

まだチャンスはあるんだから、ちゃんと相手のコートにボールを入れろ!」

 

「分かってる…分かってるわよ!…けど…」

 

「…どうした?」

 

なんとか巻き返そうとボールを打つのだが、ネットを越えるボールを打てないエリカ。

コート内を走り回ったには走り回ったのだが、かいている汗が尋常ではなく真夏だからと言う理由でも納得できない量だった。

 

「はぁはぁ、はぁはぁ」

 

「エリカ…違う!?」

 

「どうしたんだよ、リーナ?」

 

「エリカがかいている汗が、運動したから出る汗じゃない!!

緊張してプレッシャーに飲み込まれた時とかに出る冷や汗よ!!」

 

エリカの異変に真っ先に気付いたのはリーナだった。

頑張っているので気付きにくいが顔色は悪くなっており、もしかしてと思った美月は眼鏡を外すとエリカから発するオーラが不安定になり大きく縮んでいた。

 

「魔法…じゃないよね…」

 

エリカに対して魔法をかけたかと考えるがそれだけは違う。

今エリカと戦っているのは紛れもないただの人だ。

 

「心を閉ざせなければ、あの人に睨まれた時点でおしまいだ。

本人はどちらかと言えばコンプレックスで、前髪で隠しているがあの人の目は鋭く厳つい。

睨まれたら威圧感は尋常ではなく、プレッシャーなんかを増大させる…精神の暗殺者(メンタルのアサシン)と呼ばれており、目を合わせてはいけない…終わりだ」

 

「ふむ、ボールが9個になった時、選手は物凄く動かなければならないと聞くが…10球を同時に打つことが出来るオレ達には問題はない」

 

残り二十秒となり、9個目のボールが出てきたので一気に勝負にかける越智。

全てのボールを拾い集め、9つ同時に打ち、全てエリカの真横を通った。

 

「…大会前だが、久々に良い汗をかかせてもらった…感謝する」

 

73-34

 

試合は予想通りと言えば予想通りで予想外と言えば予想外の結果で、エリカの敗北で終わった。

 

 

 

第一セット

 

 

千葉エリカ ● 越智月光 ○

 

 

 

「スゲえ…」

 

レオはエリカとは犬猿の仲と言うか喧嘩仲間みたいな感じだが、認めていた。

クラウド・ボールの激しい代表決定戦を勝ち抜き唯一の二科生で九校戦に出ており、優勝も狙える…そう思っており、周りもそう言っていた。

そんなエリカを圧倒した越智にはスゴいの一言しかなかった。

 

「エリカ、どうすんの?まだやんの?」

 

完膚なきまでに叩きのめされてはいないものの、精神的なショックはあるエリカ。

他の三人と戦えば、大事ななにかが壊れてしまう可能性があるので止める事を勧めるが

 

「まだよ…まだまだよ!!」

 

エリカは立ち上がった。

とても良い笑顔で、嬉しそうな顔で立ち上がった。

 

「…手塚くんは一般人との交流が必要とか言ってたけど、本当ね!!

ただのクラウド・ボールでもこんなにも楽しくて、ドキドキして…次は誰!」

 

自身が負けているのに楽しそうなエリカ。

ラケットをもう一度構え、次の相手を待つ。

 

「ほんなら、次は俺や!!光國、はよコートから出ろ!」

 

「…はぁ」

 

準備万端の謙夜を見て、もういいやとコートを出た光國。

 

「加速魔法かなんか知らんけど、浪速のスピードスターの方が上やっちゅう話や!!」

 

「嘘、五人に分身をした!!」

 

持続力はないが、10メートル間ならば加速魔法で自身の速度を上げるよりも早く走れる謙夜。

特殊なステップで五人に分身をして、何処に打っても確実に打ち返され、敗北。

 

「エリカはん、これが女性のクラウド・ボールやったらもう敗けです…それは承知で?」

 

そして三人目の石田吟が出て来て、エリカの敗北を先ずは伝える。

 

「分かっているわよ…けど、今は試合形式であって試合でもなんでもない。

本気で勝ちに行くのも良いけど、楽しんだりするのはもっと大事なのよ…さぁ、勝負よ!」

 

「っふ、若いのに立派なもんや」

 

中々に肝が座っているだけでなく、本質を見抜いていたりするエリカを称賛する吟。

大人になれば大事なものを失う事が多いが、彼女は守れていた…のだが

 

「いや、若いって…ここにおんの、月さん以外は高校一年生やろうが!!」

 

「謙夜、細かい事を気にしていたらアカンで。

肉体などは関係ない、ホンマに大事なんは魂や…見よ、全員キラキラと輝いておる」

 

「嘘だろ…アレでオレ達と同年代って…」

 

吟を一番歳上だと勘違いをしていたレオは開いた口が塞がらない。

いや、吟だけでない。リーナと光國以外は開いた口が塞がらない。

 

「テニスプレイヤーには老け顔が多いのかしら?」

 

「やめろ、オレは老け顔じゃない…頼むから言わないでくれ」

 

どうも友人と呼べるやつらが老け顔の割合が多い光國。

リーナに聞かれたことがショックなのか顔を伏せる。

 

「はぁああああ!!」

 

第3セットがはじまり、ボールはエリカに向かって飛んでいく。

 

「アレって、手塚のダッシュ波動球!?」

 

エリカはクラウチングスタートと似たようなポーズを取り、ボールを迎える。

それは光國が森崎との試合で開始早々に森崎を吹き飛ばしたダッシュ波動球の構えで、荒削りながらも真似は出来ており

 

「ダッシュ波動球!!」

 

そこに魔法をかけて威力を上げ、光國のダッシュ波動球を遥かに上回る威力のボールを打った。

 

「よし、アレならって、あんなものを打って大丈夫なのか!?」

 

「大丈夫だ…超一流のテニスプレイヤーは、ラケットではなく自らが弾かれる経験は一度や二度している…ましては相手はあの吟だ」

 

魔法師相手でも倒せる威力を出していたダッシュ波動球、あんなものを打ち返したりするのは不可能で、避けれなかった時の事を想像するとレオは顔を青くするが光國は一切気にしていない。

 

「ほぉ…この威力、素早さ、回転…全てにおいて光國はんの波動球を越えている」

 

何故ならば

 

「あの石田吟こそ、波動球の開祖やねんぞ…」

 

石田吟には波動球は通じないのだから。

 

「しかし残念や、コレがエリカはんの本気と言うのは…陸式波動球と同等と言ったところ!」

 

エリカの渾身のダッシュ波動球を難なく打ち返すだけでなく、十数倍の威力にして打ち返した吟。

ダッシュ波動球(魔法)を打ったばかりのエリカは反応することは出来ず、低反発ボールはコートを被っている樹脂の箱を貫き、地面につくと破裂をした

 

「そんな…」

 

「光國はんが右腕でありとあらゆる回転や威力を打ち消せるように、ワシもありとあらゆる波動球を打ち消す事が可能や」

 

 

渾身の一撃が破れた事により力が抜けて膝をついたエリカ。

全力を持って答えるのが礼儀の吟は手を合わせて目を見開き語る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワシの波動球は216式まであるぞ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この一言でエリカを絶望の淵に叩きつけた。

と言っても立ち直れない絶望ではないので、ファントムは生み出さないがエリカは心で敗けを認めてしまった。

 

「コートが壊れたから中止だ」

 

そして二個目のボールが射出されることなくクラウド・ボールは終わった。

エリカの惨敗と言う結果で終わった。

 

「筋は良いが、まだまだだな…って、オレの出番は無しか…手塚」

 

「やらん」

 

「んだよ、つまんねえな…」

 

出番の無かった龍我(リョーガ)は暇なので光國に相手をしてほしいと頼んだが断られた。

コートを壊した事が大会運営委員に知られ、エリカ達は盛大なまでに怒られ、生徒会長が責任者として扱われているので達也まで怒られた。

 

「なんか、掴んだ気がする」

 

そしてエリカはテニ()プレイヤーとしてなにかを掴んだ気がした。








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