魔法科らは逃げれない。   作:天道無心ビームサーべ流
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それぞれの夜

「さて、ちゃーさびたがものか…」

 

九校戦四日目の夜、ホテルの一室にいる仁王は考えていた。

 

「なんしゅればよかと?」

 

電気スタンドを乗せるのにちょうど良い机にチェスのボードを起き、その上にチェスの駒、将棋の駒、オセロに囲碁の碁石とメジャーな対戦型ボードゲームのピース様々置いている。

 

「未来を明るく迎えるには、三年先の稽古をしなアキャン…未来は掴み取っとかないと」

 

仁王治雅と言う男は知っている。

この世界が魔法科高校の劣等生に似た感じの世界だと、司波達也が主人公と言う事を知っている。だから、仁王には安心感があった。

司波達也が魔法科高校の劣等生になってからの三年間は激動の三年間だが、死人が出たりするが何だかんだで終わる。

原作はまだ終わってはいないが、何だかんだで良い方向で終わるだろうと分かる…のだが、その三年間を乗り越える事が出来るだけであって、三年より後の平和な未来は見えない。

何だかんだで取りこぼしていたり、一般人との関わりがなかったりと色々と語られて無い部分が多かったりと三年後より先の未来に不安しかなかった。

 

「重力制御でエネルギー開発は無駄けん…」

 

本当の意味での幸せを掴み取るには今のままではどうにもならない。

暴力以外で十師族を打ち破るナニかが必要で、それは自分だけでは出来ないと…もう一人しかいない転生者である手塚光國の力が必要だ。

 

「自力で動いてもらわんと、困る…なにが必要かのぉ」

 

戦車の黒い駒を仁王は握り潰す。

手塚光國も本当はその辺について気付いている。

このままいってもリーナと幸せにはなれない、結婚しても真に幸せにはなれない。

戦って平穏と生活費と職と一等地の良い家を手に入れなければならない。

 

「長期間、九島に飼われているせいで野獣の牙は抜かれている…野獣は進化せねばならない」

 

まだ渡していないビーストの武器、鏡面獣銃ミラージュマグナム…と思われる石を持つ仁王。

手塚光國が本気を出す切っ掛けを作らないといけない、立ち上がらないとならない。勇気を出し、前に進まないといけない。

 

「…鍵は誰になるのやら…」

 

仁王は自分の言葉では手塚光國を動かせないし、切っ掛けにもならない。

リーナや九校戦を見に来たGenius10が鍵となるそう思っているが仁王は、いや、誰も気付かない…鍵は他にもあると。

そしてその鍵は光國を縛っている鎖を解く錠前にゆっくりとゆっくりと近づいていっている。

 

 

 

 

 

 

 

「調査の結果ですが、コレは聖遺物(レリック)です」

 

特になにもせずに過ごしたもう一つの四日目の夜

リーナは紗耶香と共に市原の部屋で白い魔法使い(ワイズマン)から貰ったウォーターウィザードリングとスプラッシュウィザードリングの解析をして貰っていた。

 

「そんなの言われなくても分かってるわよ」

 

不充分な設備でそれなりの解析が出来ているだけでも充分にスゴいのだが焦るリーナ。

彼女は白い魔法使いに出会い、紗耶香が指輪を貰った際に何となくだが感じ始めた。残された時間が後僅かしかない事に。

 

「他は、他はないの?

大量生産できそうとか、魔法科高校に入学できるレベルなら誰でも使いこなせるとか」

 

聖遺物(レリック)と呼ばれる物は現代の技術に置き換え出来ない、遥か昔の魔法に使う遺物で世に言う先史遺産(オーパーツ)と呼ばれているものですよ…少なくとも、私の技術ではコレをCADに移す技術も、コレと同じ物を作り出すこともできません…九島の方ではどうなのですか?」

 

「それは…一部だけ、CADに移植したけど私でも5秒ぐらい掛かって、少しだけ頭痛がするレベルよ…」

 

「…そうですか…」

 

指の上で軽くウォーターウィザードリングを転がす市原。

彼女はこの指輪に秘められている魔法の価値を最も理解している。しかしそれと同時に最も使いこなせない。

 

「コレって、そんなにスゴいのね…」

 

「使っていないの?」

 

「どんな魔法か説明を受けていないんだもの、使えるわけないわ」

 

「……ねぇ、この指輪を破壊したらダメ?」

 

「!」

 

「なにを言っているの!?」

 

紗耶香はスプラッシュウィザードリングを強く握り、二人に指輪の破壊を提案した。

自分でもなにを言っているのかイマイチ分かっていないが、破壊をしなければならないと心が訴えかけていた。

 

「…コレ、兵器として使われるしか道が無いわ。

私、思うのよ…こう言うのを今の内に破壊しておかないといけないって…じゃないと、光國くんが…リーナ、答えて。今のままで、大丈夫なの?…」

 

紗耶香は不安を持っていた。

魔法師達は今のままで大丈夫なのか?と、素朴な疑問かもしれないがそれは大事だ。

人工的に魔法師を作り出すことが出来れば大きく進歩するが、その方法がかなりエグい。第二の人格を作るレベルの行為をしなければならず、失敗するリスクが大きい。

壬生は本当に運良く助かったものだ。

 

「人工的に魔法師を作り出すことに成功しても、十師族より強かったら確実に手綱を、それこそ今の光國くんみたいに様々な方法で押さえつけられるわ…」

 

「「…」」

 

薄々感じていたが、見なかった現実を見始める三人。

ゆっくりとゆっくりと覚悟が決まっていく。

 

「……閣下を、いえ、九島烈の手のひらの上から抜け出さないといけません。

人工的に魔法師を作り出す事に成功して、次になにをするかは分かりません…ですが、確実に兵器として利用するのは確かだと思われます」

 

「…どうにかして、一泡吹かせないといけないのよね…あるわよ」

 

「え?」

 

「だから、あるのよ。

あのクソジジイをどうにかして一泡吹かせる、予想外の事が…アイス・ピラーズ・ブレイクで深雪と当たった時を楽しみにして」

 

白い魔法使いに出会ったことを互いに話すに話せないリーナと光國。

運命は交差しあう…かの様に思いきやゆっくりと一つになっていき5日目の朝を迎え

 

「光國…ビーストドライバーを貸して!」

 

朝になると真っ先に光國の部屋に忍び込んだリーナ。

寝ている光國に馬乗りをして、無理矢理叩き起こすと言うギャルゲーとか甘酸っぱい青春ラブコメでよく見る光景を繰り広げる。

 

「…お前はなにをゆうとるんや」

 

「だから、ビーストドライバーを貸してって言ってるのよ」

 

寝起きの光國は不機嫌そうな顔でゆっくりと体を起こしてリーナの顔をジッと見る。

そしてゆっくりと要求をして来た物について考える。起きたばかりで意識がハッキリしていないが、ビーストドライバーを要求をして来た事はちゃんと理解をしている。

 

「……アレはお前が使ってもそんなに意味無いやろ」

 

意識をゆっくりと起こしつつ、ビーストドライバーを貸さないと意志を見せる。

ビーストドライバーは別に光國専用の物ではない。魔法師ならば仮面ライダーイクサの様に誰でも使えるものだが、ビーストドライバーでの魔法は発動が遅い。

1秒を切る現代魔法に対し、早くても数秒かかるのが昔の魔法であり、最高難易度の現代魔法を操る深雪を相手にアイス・ピラーズ・ブレイクでの対決は無理がある。

 

「コレは完全にキマイラを宿した人間用に出来ているから、例え紗耶香先輩でも80~60%の出力しか出せない…リーナなら半分以下のスペックだ」

 

「半分以下でも閣下を倒したりすることは出来るんでしょ?」

 

「あのクソジジイはいけるんやけど、相手は深雪やぞ。

ただただ老いていって弱くなるクソジジイに対して、コレからまだ伸びる深雪やで…てか、待てよ。お前、とっておきがあるって言うてたけど…」

 

「ええ…だから、ビーストドライバーを貸してくれないかしら?」

 

光國は深雪に勝つための秘策がなんなのかを理解した。

訓練は積んでいるが全くといって実戦経験が無い光國はそれでいけるのかと考えるが、直ぐにそう言った話じゃないとなる。

 

「お前、深雪と戦うときは満員やねんぞ…そないなところで、ビーストドライバーを使ってみろや」

 

「驚かす事が出来るわ…あのクソジジイを、九校戦を見ている十師族を!」

 

「お前、それは!!」

 

ハイパーリングを胸から取り出したリーナ。

長い間、探していたものをどうしてリーナが持っているかと考え、直ぐに白い魔法使いが渡したと答えを導きだし、奪い取ろうとするのだがリーナは胸にしまった。

 

「光國、ベルトを貸して」

 

「ダメだそんな事をしたら、あのクソジジイが確実になにかを」

 

「言ってくるし、目立つわ…けど、それで良いのよ…光國は私の事を好きよね?私も光國の事が好きよ…だからね、決めたの」

 

光國の上から降りて、ベッドに腰掛けるリーナ。

後ろに振り向き満面の笑みを浮かべる。

 

「私ね、色々と裏でやっていたの。

USNAに人工魔法師の情報を流していたんだけど、何時までたっても光國を拉致する許可が貰えないの…光國をUSNAに閉じ込めさえすればって、管理すれば良いんだって思っていたけれど、それはその場しのぎに過ぎないみたい…今まで見たくなかったのよね、辛い現実と未来が…私は戦うわ、十師族、いえ、兵器と思われる魔法師と兵器と思っている汚い大人達と」

 

「…」

 

『ドライバー、オーン!!』

 

光國は無言でベルトを起動させた。

机に置くとリーナが頬にキスをしてくれて、目指せW優勝と言うとビーストドライバーとウィザードリングを持って出ていった。

 

「…あいつ、ハイパーリングも持っていったな…」

 

光國はゆっくりと目を閉じた。

眠るのではなく、精神を安定させるべく目を閉じてゆっくりと意識の奥深くに潜りキマイラと会合する。

 

「小娘め、あの白い魔法使いから受け取ったな…この分だと、確実にミラージュマグナムも所持しているな」

 

「それ以外も持っている…多分、昔見つけた徳川に献上されたメダルも持ってる…はぁ」

 

最終的にはビーストドライバーを渡してしまった事に溜め息を吐いた光國。

ダメな事だと分かっているのに、渡さないといけないと、乗り越えないといけないと、戦わないといけないと感じている。

しかし動く切っ掛けが無く、立ち止まっている光國をキマイラは笑う。

 

「人は一度でも甘い汁を吸って妥協すれば、二度と立ち直れん…しかし貴様はその類ではない。

現に貴様は敵は己の内にありと、一度もラケットを手放すことはなかった。絶え間無く鍛練を積んでいた。他にも勝てる競技があると言うのに、勝てる競技を作れたのに対抗戦で貴様は自らでテニスを選んだ」

 

「…」

 

「時は満ちた、今こそあの老いぼれをくらう時だ。

散々、甘い汁を吸って楽しんでいたのだ…奴をくらって、我が血肉とする!貴様もそれを望んでいる!」

 

「…けどなぁ…」

 

「まだ逃げると言うのか…いや、違うな。

貴様は忘れている、無くしている…生きる意味を、自分にとっての希望を!!」

 

キマイラは光國から生まれたファントムではない。

だから知らない、光國にとっての希望を、生きる意味を、明日への力を。

それさえあれば手塚光國は、羽ばたくことができる。仁王の待ち望んでいるものが現れる。

三年後よりも先の未来を笑顔に過ごせる未来に出来るかもしれない。

 

「…生きる希望か…」

 

光國は意識の奥底から現実に戻り、頭をかいた。

笑い死にした自分にとっての希望ってなんだっけと記憶を探ろうとするが、時間は無く、5日目が始まった








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