魔法科らは逃げれない。   作:天道無心ビームサーべ流
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クラウド・ボールの処刑人

「ムカつくわね」

 

5日目の朝を迎え、クラウド・ボール新人戦を迎える光國達。

午後にはアイス・ピラーズ・ブレイクの新人戦予選があり、準備に忙しく場所取りをしていたりと観客がこの九校戦で最も少ない。エリカはその事に苛立つ。

その事に関してエリカは苛立つが、光國は観客席に座っている仁王を見て苛立つ。

自身に直接ハイパーウィザードリングを渡さずに、リーナにどうして渡したかと今すぐに問い詰めたかったが、そんな暇はなかった。

 

「そう怒るな、エリカ。

このクラウド・ボールは九校戦で一番地味で午後の競技は九校戦で一番目立つアイス・ピラーズ・ブレイク…やっぱ、絵になるのって大事だと思う。ほら、テレビ的な意味で」

 

「テレビじゃなくて生で見に来てる人たちに不満なのよ!!

満員とか普通にあったのに、全然人が来てないじゃないのよ!!」

 

「よく見てみろ…クソジジイは来ている。ほんま、餅を喉に詰まらせて死なねえかな…」

 

九島烈を中指で指差す光國。

エリカはマジでと驚き光國の行動に慌てるが、九島烈には日常茶飯事な事で今更な事と怒らず憎たらしい顔をする。

 

「ホンマに、さっさと寿命で老衰しろ」

 

「なんでそんなに嫌っているのよ…」

 

「あのクソジジイがオレに目をつけて、なんやかんやで魔法師になれと言ってきた…お陰で転落人生だよ、全く…」

 

「…」

 

エリカは観客席にいるGenius10を見る。

一人だけ知らない奴が居るが、クラウド・ボールとは言え戦ったエリカには分かる。

Genius(天才)の名に相応しい奴等だと。才能を生かして努力している…そしてそんな奴等の頂点が光國なんだが、魔法師だから制限がと考えてしまう。

 

「くだらない事は考えるな…今は勝つことだけを考えろ…見てみろ、ヨシヒコ達はちゃんと来ている…達也やリーナは流石に来ていないが」

 

アイス・ピラーズ・ブレイク組は最後の調整とかに忙しいので来ていない。

しかし、ヨシヒコ達二科生は来ていた…主にエリカの応援のために。市原や紗耶香も主にエリカの応援のために来ており、光國の名前を呼んでいない。

 

「良かったな、一部とは言え、第一高校の面々がお前の優勝を信じているのを…一応、女子はもう一人いるんだがな…」

 

準備体操をしている里美スバルは友人には応援されているが、エリカの応援の方が多い。

 

「代表決定戦で優勝してよかったって、今感じるわ」

 

「油断をするな、千葉…本命が出てきたぞ」

 

ニッヒッヒと笑みを浮かべるエリカだが、試合ははじまってすらいない。

女子大本命の愛梨が出てきたので渇を入れ直すと真面目な顔をするエリカ。

愛梨は此方に気付くと歩み寄ってきた。

 

「…貴方は、クラウド・ボールに出場ですか…アイス・ピラーズ・ブレイクかモノリス・コードと思っていたのですが」

 

「こう見えて殴ったり破壊したりするのは不得意でな。

因みにラケットで行くつもりだ…一つぐらい文字通り男女混合の競技は必要だとオレは思うが、お前はどう考えている?」

 

「…それは宣戦布告と捉えてよろしいのですか?」

 

もし当たったのならば絶対に勝てると愛梨は捉えるが

 

「…いや、オレは普通にそう言うのが必要だと思ってるだけだぞ?

結局のところは、男女別だったり男子限定だったりとか女子限定だったりとかそう言ったのは男女差別のアレが…当校はと言うか、この九校戦で成績叩き出せたの今のところモブ崎と十文字会頭と服部元副会長…後は女性陣のみと言う割とアレな成績…ミラージ・バットに出れたらオレは優勝できた」

 

そう言った意味で光國は言っていない。

男女混合の競技は普通に面白そうで、普通に楽しそうとしか考えていない。

 

「…」

 

「手塚くんは、そう言うのを余り考えていないわよ…それよりも、相手は私なんだから…足元を掬うわよ」

 

エリカは今までに無いタイプの人でどうしたものかと考えている愛梨を見て、イラッとした。

自身を全く見ていないので絶対に勝つと強く誓う…のだが

 

「勝てるのか?」

 

光國は未来を知っている。

クラウド・ボールではエリカは準優勝だったことを、エリカでは勝てないことを。

去っていった面白くない愛梨の背を見て、勝つ算段があるのかが気になる。

 

「う~ん…なんて言えば良いのかしら?

どうも一昨日から調子が…良いには良いんだけど、それ以上に行けそうで行けない的な感じの…」

 

「…成る程…」

 

自身が九校戦に関わったことにより起きた影響でエリカに起きた変化に少し気付く光國。

それがなんなのかを敢えて教えず、互いに試合に向けての準備運動等をしていき、クラウド・ボールの新人戦が開幕し、先に男子の一回戦が行われる。

 

「申し訳ありません、思いの外、準備に手間取りました…」

 

それとほぼ同時に準備を終えてやって来た深雪と達也。

 

「お、間に合ったみたいだな。今からちょうど手塚の試合だぜ!」

 

「そうか、それは良かった…対手塚光國用のドリンクを作ってきた意味が無い」

 

「…た、達也さん?」

 

「アイツには散々辛酸を舐めさせられたからな…仮にアイツが負けても、クソマズドリンクを普通に飲める手塚には罰ゲームにならない…」

 

此処ぞとばかりに復讐の機会は来たと中身が虹色でコポコポと言っている飲み物を見せる達也。さしもの光國もこれならば倒れると、日頃の恨みだと作っていた。

因みに遅れた原因がアイス・ピラーズ・ブレイクの準備と対手塚光國用のドリンク製造だが、割合で言うと2:8だったりする。

 

「お兄様、確かに手塚さんは性格も悪く、口も悪く、魔法師としての成績も悪く、態度も悪い人です。ですが、手塚さんはお兄様の事を正しく評価し、お兄様を一番、私を二番にしてくれた素晴らしい人です」

 

「深雪、騙されるな…アイツは漁夫の利を得ていて、自分が汚れない位置に常に立っている」

 

「ですが、その分私達にプラスになりました…まぁ、何処かで一度敗北を知った方が良いとは考えていますが…ペナル茶とナンパ対決は行きすぎです」

 

罰は必要だけど、敵じゃないと一応の弁護をしてくれる深雪だがあっさりと達也の味方になり、七色の煙が出る特性ドリンクを持って笑顔になる。

 

「…エリカ、どんまい」

 

「いや、手塚くんが飲まないといけないのよ!?」

 

「…やれやれ」

 

オレが負けるなんて有り得ない。

と言うかこれといってスゴい奴が居ないのにどうやって負けろと言うんだと思う光國。

 

「……」

 

クラウド・ボールの予選は同時に行われる。

他の競技は違うのに、これだけは同時だと言うのは仕方ないがやはり不満に思ってしまう。

 

「「ドンドンドドドン、手塚光國!ドドン!!」」

 

応援に来てくれている謙夜達が居なければ。

自身にとってはとても懐かしいエールを受けると心地良く、不安や緊張なんて一瞬になくなる…筈だったが

 

「…嫌な予感しかしないな」

 

九島烈の隣に神晃が座っているので安心なんて出来なかった。

 

「はぁ…仁王のせいだ…」

 

楽しいことしか数日前の夏休みがかなり昔の事に思えてしまう光國。

それもこれも仁王が何度もタイムベントをしたからだと、つい責任転嫁をしてしまい苛立ちは増していき

 

「処刑法其ノ一 切腹」

 

クラウド・ボールで発散をする事にした。

 

「っが、ぁ…」

 

対戦相手の第四高校の生徒はラケット型でクラウド・ボールに挑んだ。

拳銃型CADの移動系魔法で無理矢理ボールを動かすのと違いラケット(それ)を使って光國と戦うのは余りにも、いや、最も最悪な事だった。

ラケットの加速と加重の複合魔法で身体能力を上げて、球に重みと威力を増した球を簡単に打ち返し、グロメットの真上部分にぶつけて、グリップの先端部分がお腹を強く突いてしまい膝をつく。

 

「どうした…早くしろ…いや、他にもボールがあるか」

 

中々に立ち上がらない第四高校の選手。

ポイントは段々と増えていき、20秒がたった後、二個目のボールが射出口から光國のコート目掛けて発射され

 

「処刑法其ノ二 銃殺」

 

対戦相手に脳天目掛けて撃ち、ぶつけられた際の衝撃で一回転させる。

 

「…おいおい、この程度で終わりとか笑わせるなよ」

 

「ま、だ、だ…」

 

クラクラと痛む頭と激痛が走るお腹の痛みに耐えながら立ち上がった対戦相手。

第四高校は本戦では良いところなしで、優勝は第一高校と第三高校の争いとなっていることに不満を持っており、自分が優勝して巻き返すと気力で立ち上がり、ボールを打ち返したが

 

「処刑法其ノ八 ウィッカーマン!」

 

光國は心臓にボールをぶつけた。

 

「…おぉ、マジかいの…」

 

その技も使えるのかと称賛する仁王。

三年もの間、テニスをしていない光國は全くといって実力が劣っていないと、自分より上のNo.1のバッジを渡されるだけの事があると笑みを浮かべるが

 

「アカン…アカンで光國!!

戦極、第一高校生は何処や!あの、一番別嬪な子のグループを探せ!」

 

「ええ…あ、あそこだ!」

 

「よっしゃ、ちょっと行ってくるわ!」

 

風林火山で挑むのかと思った謙夜は光國の怒りに気付いたので走り出す。

 

「浪速のスピードスターのスピードは、7や!」

 

深雪達の元に。

 

「処刑法其ノ六 セメント靴!」

 

「あ、足が!!」

 

「て…手塚、どうしたんだよ!?」

 

何時もと違うプレイに困惑をするレオ。

いや、レオだけでなく応援をしている他の面々も困惑をしている。

 

「お前等、なんかしたんか!?光國、ごっつーキレとるやないか!!」

 

どう言うことかとレオ達の前に現れた謙夜。

光國をビシッと指差して、光國が怒っている原因を問いただす。

 

「手塚さん、怒っているんですか!?」

 

しかしそんな事には全く気づかなかった柴田。

 

「当たり前や、十三の処刑は主にキレとる時やないと使わへんねん!!」

 

「十三の処刑って、そんな大袈裟な…大袈裟な…大袈裟…だよね?」

 

ヨシヒコはコートを破壊するプレイを見たばかりなので強くは否定できない。

 

「…球技をやる以上はボールが当たったりするのは仕方ないことで、怯えたり避けれないのが悪いんじゃないの?勇気を出して前に出ないと試合以前の問題だし、あの球技の中でも比較的に安全な卓球ですら死人が出ているわよ?」

 

紗耶香は避けれないのが悪いと考えているが、だからと言って当てに行って良いわけではない。

 

「…あの技はそんなに危険なのか?」

 

一個、一個くらっているが立ち上がっている対戦相手の第四高校。

どちらかと言うとフィジカル面ではレオと遥かに劣っており、当てるのはアレだが、耐えようと思えば耐えれる攻撃だ。

 

「そら、一個一個は足の小指をタンスの角にぶつけた時の痛みの3,7倍ぐらいの痛みや」

 

「それは…ギリギリ、ギリギリ耐えれる痛みですね…」

 

分かりやすい例えなので理解しやすく真面目な顔で頷く深雪。

レオ達も理解したのか顔を青くして股間ではなく足の小指を曲げる。

 

「待て、深雪。足の小指の3,7倍はそこまでは痛く無いはずだ」

 

「お兄様…アレは本当に痛いんですよ。

九重八雲先生のお弟子さんの拳よりも痛いんですよ!でも、なんとか耐える、お兄様にみっともない姿を見せない為に声をあげないギリギリのラインなんですよ!」

 

「…深雪、痛いなら痛いって言ってくれ。何時でも俺が」

 

「話が脱線しとるわ!

あの処刑法はマッサージを応用しとるんや!」

 

「マッサージの応用…?」

 

「処刑法其ノ四 苦痛の梨」

 

「あぐぉ!?」

 

低反発ボールを器用に口に叩き込む光國。

全力で相手にボールをぶつけにいくフェアどころかアンフェアなプレイングの何処にマッサージとの繋がりがあるのかと市原は考えるも答えはでない。

 

「処刑法其ノ十三 ギロチン…これでお前に対する介錯は済んだ。そしてオレの鬱憤も晴らすことは出来た…」

 

首目掛けてボールをぶつけると満足をした光國。

苛立ちは無くなっており、スッキリとした表情を取っており

 

「あ、あああ、あ…」

 

第四高校の選手は一歩も動くことが出来なかった。

光國はラケットを腰に当てており、もう動こうとする素振りを全く見せておらず、5つの低反発ボールは全て第四高校の選手のコートにあった。

 

「お前はもう、動けない…この第一セットが終わる時点で終わりだ」

 

光國は飛んできた6つ目の低反発ボールを力を入れずに相手サイドのコートに入れた。

 

「十三の処刑法をくらえば、筋肉が暫く使いもんにならんくなる。

マッサージが筋肉を解したり刺激したりして血行を促進させたりするのに対してあの十三の処刑法は真逆っちゅー話や…もうアイツは今日はまともに歩けん…」

 

ただただ光國を見つめる謙夜。

スッキリとしているので、処刑は暫くしないと分かると一息つくが

 

「これ、歴代最高得点ちゃうんか…」

 

 

237-0と言うクラウド・ボール史上初の大差に呆気を取られた。

三桁の100や80ぐらいがやっとだと言うのに、光國は意図も容易く200オーバーをし、第四高校の選手が完全に動けなくなった事により棄権。

 

【WINNER 第一高校 手塚光國 】

 

「さて、次からは真面目にやるか…」

 

他がやっと第一セットを終えた中、光國だけは勝利をしていた。

 

「…後、数手で王手じゃのぅ」

 

仁王は、光國が今迷っていることに気付く。

後、何個か光國に変化をもたらす事があれば光國は共に戦ってくれる。

 

「鍵は…クラウド・ボール…いけるか?いや、いけるな」








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