「疾きこと風の如く」
最初の処刑で派手にヒャッハーしたものの、それ以降は冷静な光國。
二回戦以降はちゃんと真面目に戦うようにしており、移動と加速魔法で物凄く早くしたボールの前に縮地法で近付き、居合いの要領でラケットをスイングし、魔法よりも素早く打ち返す。
「徐かなること、林の如く」
大きくカーブするボールをドロップショットで打ち返す。
ボールは弾むことなく転がった…後ろへと。移動魔法の技巧に対して、光國は零式ドロップの技巧で破り
「侵略すること火の如く」
加重系の魔法でボールの重さや衝撃を上げた球をNEO・ブラックジャックナイフで難なく打ち返す。
打ち返されたボールは相手コートの樹脂の壁にぶつかるとヒビが入り、少しだけめり込んだ。
「やれやれ、最初はどうなるかと思ったが…変わりはしないな」
速さで来れば速さで対抗し、技巧で来れば技巧で対抗し、攻めで来れば攻めで対抗する。
相手の戦法に合わせて真っ向から叩きのめす。自身の得意な戦法を破られた事により、心は打ち砕かれてしまい心で敗けを認めさせる。
テニスと同じ事をしていると神晃は光國を見て、微笑むのだが直ぐに笑みは消える。
「あんたはどうするつもりなんだ?」
「なにがだね?」
そろそろ決着をつけなければならないと神晃は九島烈に話しかける。
「おれぁ、今回此処に仕事で来ている。
三年前の沖縄や前回の魔法師同士の差別、他にも色々とあって悩み多いガキどもが増えている。魔法師になって大丈夫なのか、魔法師がいて大丈夫なのかってな。
先生ってのは、その問いかけに対する答えを持ってないといけねえんだよ。だから、自ら志願してこの九校戦にまでやって来たんだが…改めて理解するぜ、全く…そう言う問題じゃねえって」
「なにが言いたい?」
「テメエみたいな年寄りは古臭いってことだよ。
魔法師ってのは兵器だなんだと言われて不満に思いつつもそれで良いと、それで自身が特別だと別の種族だと思ってやがる。そして国や大人が助長させている。
最近のガキなんてのは気付けば勝手に成長しやがる…それがダメだって、気付いている奴等もいる。うちの馬鹿なんて気付いている癖になにもしていない。
オレ達大人は、ガキの善悪の物差しになりながらも、くだらねえ伝統や固い考えを押し付けるんじゃなく、柔軟な考えや新しく進化させた伝統を生み出したり受け入れたりしねえといけねえ…だから言っておく」
くわっ!と目を血走らせる神晃。
殺気が若干漏れており、深雪や達也の様に本当に強い奴等はその殺気を感じ取っており身構えて何時でも動けるようにする。
「テメエにはうちのガキを苦しめた報いを受けてもらう…テメエのカビくせえ全てを否定してやる」
「彼を苦しめたか…それは大きな思い違いをしているのではないのか?
彼は十師族レベルの魔法師が側に居なければあっという間に死んでしまう程に脆い」
「アイツならば、そんなのはどうにでもなる。
覚えておけ、そろそろ時代や世代が大きく変わる時が来たんだ。テメエが作った十師族だなんだ、全てを否定してやるよ…光國がな」
「お前ではないのか」
「おじさんは所詮、おじさんさ…さっさとクタバレ、クソジジイ」
「最後の毛を失え、クソハゲ」
親と子は似ると言うべきなのか、態度が同じな神晃。
何れは光國は九島の全てを否定すると言っているが、そんな事は出来ない。
そう言った力を彼は持っていない。知恵も知識も足りない、一人ではどうにもならない…そう、一人ではだ。
神晃はあの白い魔法使いは信頼も信用もしていない。が、リーナ達を、光國を信じていた。だから、九島烈に喧嘩を売れた。十師族を無駄にすると言う喧嘩を。
本人が全く知らないところでしていた!
「よし、どっちも決勝戦だ!!」
神晃達が話をしている間にもクラウド・ボールは続き、決勝戦までやって来た。
エリカと光國は決勝戦まで駒を着実と進めており、エリカはヨシヒコ達に向けてピースをする。
「決勝は三回戦の勝者三名の総当たり戦だが…
先に女子のクラウド・ボールの決勝戦が行われ、なんと言っても一色愛梨が恐ろしいと語るお兄様。
三人目の決勝進出者こと里美スバルは愛梨とエリカと比べると劣るところが多く、どっちと戦っても負けると感じており、普通に負けた。
「互いに一勝…達也、なにか秘策はあるのかい?」
「幹比古…このクラウド・ボールの新人戦は全くといって調整をしていないし作戦も考えていない…エリカは身体能力を上げているが、殆どはテニスの技術で勝っている。」
「手塚さんに至っては素のスペックだよね…」
ハハハと苦笑いをする美月。
仮に光國が愛梨と戦ったのならば、なんやかんやで勝てそうだと思うのは言えない。
「反応速度が半端じゃないわね…」
知覚した情報を脳なんかで認識せずに、精神で認識し、動きを精神で命じる魔法を使って里美スバルに愛梨は勝利した為に勝てるかどうか心配になるエリカ。
「一つだけ面白いことを教えておく」
そんなエリカを見て光國は簡単なアドバイスをした。
今のエリカならばもしかすれば勝てる可能性があると簡単なアドバイスをする。
「そっちが本気で行くなら、此方も本気で行かせて貰うわよ」
ラケットを逆手に持つエリカ。
「随分と変わった持ち方…いえ、違うわ…逆手一文字!?」
ラケットを持っているエリカを見て、変わっていると感じたのだが少しだけ違和感を感じる愛梨。
エリカの逆手の持ち方が独特で、別のものを、刀を持っているイメージをすれば凄くしっくりと来た。
「気付いたかしら?
手塚くん…いえ、手塚部長が私に逆手一文字を覚えろって言ってきて、覚えたのよ」
逆手持ちと言う変わった持ち方に驚くが直ぐに冷静になり、試合に挑む愛梨。
「手塚部長程じゃないけど、前後の縮地法は出来るのよ!」
愛梨と激しいラリーを繰り広げるエリカ。
「見せてあげるわ…
「っ!」
逆手持ちから放たれる不規則な攻撃。
通常のラケットの撃ち方とは違うために何処にボールが行くのかが分からない愛梨は抜かれてしまう。
「残念ね、私と一番最初に当たっていればそれは通用していたわ」
愛梨はエリカの動きから予想をするのを止めた。
考えるのではなく感じる、知覚した情報を脳や神経ネットワークを通さない魔法、
「まだまだぁ!!手塚部長の方が早いわ!!」
エリカもくらいつく。
ボールが複数に増えてもくらいつく。
「エリカ…ダメだ」
ラリーを繰り広げているのだがポイントを多く取っているのは愛梨で焦るレオ。
逆手持ちと言う取っておきは通用せず、自己加速や加重と技術でなんとか追い付こうとしているが差は縮まない。幸いと言うべきか開かないが、それでも届かない。
「やはり、ダメか…」
ギリギリになって教えた事だから出来ないかと諦める光國。
エリカには悪いが、達也がオレ用にと作ったドリンクを飲んで貰おうと考えていると
「っ!?」
「あ、出来た…流石だな」
愛梨のラケットがすっぽ抜けた。
「ラケット、貰い!!」
エリカ目掛けて飛んでいくラケット。
エリカはすかさずキャッチすると片方は普通に持ち、もう片方は逆手に持って八個目のボールを愛梨のコートに目掛けて打つのだがブー!とブザー音が鳴った。
「え、なに?」
何事かとボールを打ち返してから辺りを見るエリカ。
運営の人達がコートの内部に入ってきて、愛梨の方に向かっていった。
「今、千葉選手に向かってラケットを飛ばしたのは故意ですか?」
「いえ、違います…手に力が入らなくなって…」
ラケットが相手のコートに飛んでいった事が問題だと急遽中断になった。
愛梨は本当に手に力が入らなくなって、すっぽ抜けたのだが怪しむ運営。もしかしたらと、今度はエリカを怪しむ。
「私はなにもやってないわよ!?」
心当たりは全くといって無いエリカ。
本当に偶然手が抜けたのか?と運営の人達は審議をはじめようとすると
「一色愛梨がラケットを飛ばした原因はエリカです」
光國がコート内部に入ってきた。
「…どういう意味ですか?私は、魔法を向けられた感覚は」
「困ったらおかしな事があったら魔法と考えるな…魔法ではなく身体技術だ。
上と下の似た感じの回転を打ち返し続けていると、少しだけ筋肉がおかしくなる…
「おいこらぁ!!光國、喧嘩売っとるんか!!」
「じゃかっしいわ!!お前、オレの氷の世界で負けたやろう!!…ったく、素早いだけが稲妻ちゃうんやぞ…動くこと雷霆の如しだ…技術であり、魔法じゃない…時計戻したりは、出来ひんで…」
運営委員にニヤニヤ顔で言うと、コートから出ていった光國。
すると、運営委員も出ていき電工掲示板が第1セットから第2セットに変わる。
「文字通り命のやり取りをする死合ならばエリカの方が有利だ。
だが、クラウド・ボールの様な魔法競技では圧倒的に一色愛梨の方が有利でエリカは百回やって数回勝てるレベル…なら、その数回を掴む努力はした」
第1セット
千葉エリカ ○ 一色愛梨 ●
「ここからは実力で勝てよ…」
スポットの原理を教えてしまった以上はもう攻略をされる。
テニスと違い、相手のコートに叩き込みさえすればポイントになる。
「あれ、テニスコートの意味あるんやろうか…」
クラウドボールは1バウンド=1ポイント。
ぶつける地面は何処でもいいのに、何故かテニスコートっぽくしているクラウド・ボールのコート。やっぱそう言うのじゃないとテンションが上がらないのだろうかと考えていると第2セットが開幕をする。
「…」
第2セットが始まったのだが顔色が優れないエリカ。
第1セットの白星は気に食わないかと聞かれれば気に食わないが、貰える物は貰おうと受け入れている。
「どうすれば、いいの…」
なんとか戦えているだけで、次が無い。
スポット対策か、ラケットを持っている手を変えれる機会があれば直ぐに変えている。
エリカには決めてとなる物がなく、どうすればいいのかと必死になって頭を回転させる。
「魔法…いえ、それはダメね…」
ラケットではなくCADでボールを動かせばいい。
そう考えたが、魔法が不得意なエリカはそれは出来ない。
いや、簡単なのは出来るが、愛梨を相手に付け焼き刃の魔法では勝てない。
自分は魔法がダメだったから、二科生になった。
エリカにレオに美月のこの事実だけは変わりはしない。
だが、変わりに色々とやって来た。エリートにも勝てるんだと下剋上を挑んだ。
「…」
エリカの中にあった様々なものがゆっくりと一つになっていく。
気付けばエリカは大きな扉の前に立っており、エリカはその扉に触れると数ヶ月前の事が走馬灯の様に頭に流れてエリカは無意識の内にラケットを両手で握っており、居合いの構えを取り
「!」
愛梨が気付くことが出来ない速度でボールを打った。
「疾きこと、風の如くと言ったところか…」
魔法の才能にこそ恵まれていないエリカ。高度な魔法を使うことは彼女には出来ない。
しかしその代わりに彼女には剣などの才能があり胸は残念だが元気な体は持っていた…そして越智や吟と言った天才と戦い、覚醒をした。