「…ん…あ、終わった…あ~終わったか」
第3セットがはじまったのだが、全く覚えていない光國。
電工掲示板を確認すると31-8で光國が圧勝しており、周りは余りにも静かだった。
「…アカンな…ダブルス専用の技やな」
なにをしたのか覚えていない光國。
身体は疲れなどの異常は特にはないのだが、余りにも覚えていないのでコレは一人で使えないとコートを出て、リーナがいる方を向いてリーナを見つめる。
「…戦って、勝った…オレは戦った、戦うことを決めた…」
「そう……光國は、そっちの方がカッコいいわ…」
リーナは自身に向けて、光國が言ったと理解して言葉の意味も理解した。
光國は手を伸ばせば届くのに伸ばさず、いや、伸ばせずに死ぬほど苦しんでいたが解放された。いや、自らで解放した。
やっぱり、光國の居場所はここじゃないとそれ以上はなにも言わずに歩いていく。
「…」
「終わりですよ、元会長」
女座りをして、こんな筈では無かったと言いたげな顔をしている真由美。
最後の最後で見せた技は数分前に思い付いた技で、今まで名に恥じぬ努力をしてきたのを一瞬で無駄にされた感じがした。
「リンちゃん…」
「鈴音です、七草さん。
終わりですよ、会長…もうとっくの前から終わりです…それでは、失礼します」
市原は真由美に特に深い言葉をかけない。
真由美には特に興味なく、一礼をした後、真由美の元を完全に離れていく。
「随分と、犬猿な様ですが…」
「犬猿ではありませんよ。
私はただ単に、私自身の目利きが間違ってた事に気付いてしまっただけですよ…今思えば、司波くんを生徒会に引き入れて改善しようとしていましたが、どちらかと言うと司波くん個人を評価しているというのが正確であり、他の二科生を助けようとしていませんでしたね…諦めさせたり、力を見せる場を作るのはある意味、有効な手です」
「?」
愛梨は市原と真由美に出来た溝が分からないが、それは埋めなくても良い溝だと深くは聞かない。
エキシビションマッチは急遽行われたものなので、トロフィーやメダルの様な物は無いので二人は会場を後にして、愛梨は着替える為に選手控え室に向かうのだが
「あれは…」
手塚光國が九島烈と居るところを目撃してしまう。
光國の父親は色々と凄い頭で、光國に対しては躊躇いなくドロップキックをするのだが、それでも普通の人々に部類される人である。
やっぱり、
「下馬評を覆したぞ…まだまだだな」
「分かっているのか、十師族でもなんでもない者が競技とは言え十師族に勝ってしまうのがどんな事なのかを…あの様な勝ち方、余りにも十師族を馬鹿にしている、自らで敵を作るつもりか?」
「ああ、そうや…敵が多いのは自分やろう。
一部の古式魔法師から技パクって私物化した上に、懇親会のアレはなんやねん。
この魔法を見抜け無かったお前等は自分がテロリストなら死んでるとか言うて、どんな魔法も工夫次第とか言うつもりかは知らんが、アレは先天的な視覚系のスキルか動物並みの勘でしか見抜けねーよ、あれ、元会長を含む視覚系のスキルとか魔法を持ってる奴しか見抜いてなかったぞ」
「…」
今まで通り、口が悪い光國。
相変わらず言うことは真面目だったり、批判だったりするのだがなにかが違う。
自身に対して向けてくる憎悪や諦めの雰囲気が無くなっており、少しだけ嫌な予感がする。
「オレはオレなりに頑張ってみることにしたんだよ。
あんたはオレの様に後天的に魔法師になる方法を見つけて、それをベースに安心安全の誰でも魔法を使える様になれる方法を考えているが、それじゃなにも変わらんよ」
「!?」
二人しか居ないと思っているからこそ、話せる事実に驚く愛梨。
魔法師の才能は先天性の物であり、努力でどうのこうの出来る筈がない。しかし、後天的に宿したと光國は言っている。
「…どうやら、大分天狗になっているようだ」
「天狗はあんただぞ、クソジジイ。
自分達魔法師は無知な大衆に嫉妬されているとか考えているなら、テメエも馬鹿になれ。
つーか、この際だから言ってやるが十師族の誇りとか最強でなくてはならないってなんやねん。もう歪みだよ。
非人道的な実験で生まれて、数字は研究所の認識番号がなんかで最早、一種の恥だぞ。モルモットだったことが誇りって、イミワカンナイ。しかも四年に一度のローテーションの交代制で最早、誇りとかそんなんじゃない次元やん。
裏で統制とかしている割には全員が全員、腹の中が汚いし馬鹿な事しかしてないし百年の歴史すらない。しかも大半の古式魔法師に嫌われてて、選挙制度でもなんでもない身内人事って、アホか!!」
「言いたいことはそれだけか、クソガキ!!
魔法師が生まれだして、世間を騒がせて差別が始まったあの時の苦しみも一切知らない世代は呑気で良いものだ!!」
「その時の苦しみに囚われて、固執的な考えしかとれんクソジジイが!
EDと対して変わらんその金玉を取り外してやろうか!遺伝子改造受け入れたモルモットが!!」
遂に切れた、九島烈の堪忍袋の緒。
自身の全てを否定した光國の顔面を掴むのだが、光國は金玉を掴み、小学生の喧嘩をする。
魔法を使えばその時点で終わる。それ故にこんな喧嘩になっているのだがどちらも殺気を放っている。
「オレの進路はテニスプレイヤーだ、自力でスポンサーなりなんなり掴みとってやる!!覚えとけ!」
「おぐぅお!?」
魔法師として優れているとは言え、既にお爺ちゃんの九島烈。
魔法を使った時点で負けなこの喧嘩で、若く鍛え上げている光國には勝てず光國の鼻フックを受ける。
「はぁはぁ…これ以上は、好きにはさせん」
「やれるもんやったら、やってみろ…人工魔法師なんてもんをばらせば、何処もかしこも動くぞ」
小学生レベルの喧嘩は終わると、その場を去った九島烈。
光國は最後までファッキューと中指を突き立てて、全力で喧嘩を売った。
「…行ったか…もう、行った…出てこい」
完全に九島烈が居なくなり、監視カメラが無いか探して確認を終えた光國
「何時からきづ…」「やれやれ、全力じゃ…」
姿を現す様に言ったのだが愛梨と仁王、どちらも同時に出てしまう。
愛梨は仁王の存在に気付いておらず、誰と固まり、仁王は気付いていたけども同時に出ちゃったよと気まずくなってしまう。
「オレが呼んだのは仁王だが…聞いちゃった?」
「…はい…」
「まぁ、聞かれても問題無い事だ…さっき、色々と酷い事を言ったが忘れろとは言わない。
胸の内にしまってそのまま過ごすのも良いし、普通に人工魔法師だって言い触らして構わん…」
愛梨の存在に気付いていなかったが、彼女ならば大丈夫。
そう言った安心感が心の何処かにあり、特に気にしない。仁王がタイムベントのカードをチラつかせているが、それに頼るつもりは無い。
「…アレだけ喧嘩を売って、十師族の恐ろしさを御存知無いのですか?」
「知ってる」
「…まさか、十師族を否定する力をお持ちで!?」
何時までも余裕を崩さない光國。
あの九島烈を相手に、引かぬ媚びぬとするスタイルには裏があると考える。
魔法を使って戦うには戦うのだが、それは暴力と言う意味で戦うのではない。暴力以外で十師族を倒し、尚且つ魔法師と魔法が深く関わる技術を既に持っていると結論付けるのだが
「…あ、うん……」
光國はなんにも考えていなかった。
「まぁ、その辺はオフレコで頼んますわい…ちょっち、行くぜよ」
此処にいてはダメだなと仁王は場所を変える。
「…」
「え?」
去り際に愛梨に仕込みをして、光國と一緒に男子トイレに入る。
ここならば監視カメラは無い。更に今から行う競技はミラージ・バット、女子のみの競技で男子が入ることは絶対に無い。
「ほらよ」
No.1のバッジを光國に見せる。
覚悟を決めた今ならばと、No.1のバッジを出すと受け取り首元につける。
「…いや、ホンマどうしよう…先ずは九島の手から逃げないと」
そして本題に入る。
コレから先、光國が動くにはとにもかくにも九島の手から逃げないとならない。
しかし、思い付かない。いや、あるにはあるのだがそれは九島が別の物に興味を持たせるだけであり、解決にならない。
「やーっぱ、考えとらんかったか。まぁ、そんな事やろうと思った」
「…なにか良い案があるのか?」
なにも考えていないのが分かっていた仁王。
コレぐらいならば想定の範囲内で、九島から一度完全に縁を切る方法はある。
その為にはまずはとコネクトでワイズマンの武器であるハーメルケインを取り出す。
「商品価値を無くせば良い。
無くすことが出来なければ、商品その物が無ければ意味は無い…仮面ライダービーストは絶版だ」
「…お前、オーディンだろ?」
「そうだけど…まぁ、運命は既に動き出しちょるから、チャンスは来る…とりあえず、キマイラと対話をしておけ」
「ああ…コレでよかったのかな…」
「良いじゃなかぁ?
わし達は物語じゃなく、現実を生きとるんや…好き勝手、しにゃいと」