魔法科らは逃げれない。   作:天道無心ビームサーべ流
<< 前の話 次の話 >>

55 / 62
解き放たれし野獣戦杯

「達也、大丈夫かな?」

 

「…」

 

光國の参戦を許した一条。

急遽、メンバー変更をすることになったので少しだけ準備をしなければならず、元から準備をしていた達也とヨシヒコは暇になったのだが、心配していた。

どういう風の吹き回しか、出ないと言っていた光國が出てくれる。この後の本戦の競技で深雪や十文字が勝てば普通に優勝なのだが、優勝を狙っている第一高校としてはありがたいのだが、ありがたくない。

 

「幹比古、それはなにに対してだ?」

 

心配をする幹比古。

他のところが大ブーイングを起こして試合が出来なくなるのか、それとも運営がダメだと拒むのか、試合に勝てないかもしれないと悩んではいない

 

「…手塚が戦えるかが心配だ」

 

手塚光國が戦えるかどうかが心配だった。

光國自身を見下してはいないのだが、レオと光國は余りにも異なる。

 

「何だかんだで、僕達は手塚を全く見ていない…」

 

「確かに、まともに戦っているのを見たことはない。

攻める時は常に自身が優位な時、優位な立場、自身が絶対的な時にしか攻めず、そう言った場所を作るのを得意とする…ある意味、一番戦いたくないタイプだ」

 

敵対していると分かり、気付いた頃にはもう相手の土俵の上。

しかも質が悪いことに、大体が自分達が撒いた種を使って反逆しており、自身が切っ掛けとなる火種を撒いて、周りが炎上させると言う自身の手を汚さないスタイル。

 

「だが、それと同時に真っ向からの戦闘も可能の筈だ」

 

「どうして言い切れるんだ?」

 

「…対抗戦最後の時、手塚は意識を失ったまま魔法を使ったのを覚えているか?

あの時は、ゴタゴタを解決するのに忙しくて手塚は保健室で眠らせてなにもしていなかったが…あの時の手塚の魔法を覚えているか?」

 

「いや…意識を失っている事に集中しすぎて覚えてないよ。その後のゴタゴタもあったしね」

 

ブランシュの事を堂々と言わずに、ゴタゴタと隠語として誤魔化す二人。

魔法を発動した際に光國はリーナが深雪を打ち倒した際に使っていたベルトとサーベルを持っていた事を伝えるべきかと考える。

 

「幹比古、古式魔法の中には特定の人間しか使えない物はあるか?」

 

「特定の人間しか使えない物…その特定の人間は、手塚なのかい?」

 

「ああ…少なくとも、俺はそう思っている。

手塚の身体能力は凄い、レオ以上で頭の回転もかなりのものだが、それだけじゃない…常に自身が優位な立ち位置にいる男が、万が一を持っていないとは思えない…九島は古式魔法を取り入れて、現代魔法に利用できないかとしており…手塚の家族はあの通りだった」

 

上手くそれらしい理由を出して、誤魔化す。

深雪と戦った際にリーナの魔法は余りにも異質だったので古式魔法だった。

あの手この手で古式魔法を集めているとは言え、あんなものを聞いたことはない。

 

「特定の人間しか使えない古式魔法はあるにはある…ただ、どれもこれも条件が不明だ。

単純にCADの代わりとなる調整が出来ない媒体との波長が合うか、その血筋の者だから使えるとか、とにもかくにも曖昧なんだ…」

 

少なくとも、光國がなんの条件を満たしているか分からないヨシヒコ。

あのベルトを使いこなせるただ一人の存在が光國…と考えるが、少なくともリーナは使えていた。誰でも使えるのだが、誰もが完璧に使いこなせるものじゃないと言うのを分かっているのに、頭の隅に置いて別の方向を浮かべる達也。

天才ならではの盲点が出来ている。

 

「聞きたいことがあるならば、本人に聞けや…」

 

そんな中、現れる光國。

話を聞いていたのか、少しだけ呆れている。

 

「随分と遅かったな」

 

「予想以上に審査に手間取った、仕方無いとはと言えば仕方無いんやけど…うん」

 

「…何をするつもりなんだ?いや、違う。何を使うつもりなんだ?」

 

レオが使っていた電王のソードフォームの必殺技よろしく飛んでいく刃がある武器型CAD小通連。

レオからオレの代理を頼んだぜと託されたのだが、使わないからと普通にレオに返却していた。

今の今まで、光國が居なかったのは戦うための準備であり、まともに魔法を使っていないので何をするのか気になる達也

 

「…これ?」

 

「…なんだこれは?」

 

光國は達也の質問に答えるべく、矢尻の様な形状をした石を取り出した。

 

「最初で最後のメインディッシュをいただくか」

 

 

アッーーーー!!!

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

時は少し遡る。具体的に言えば、光國がホテルで仁王を探していた頃。

急遽、レオから光國にメンバー変更をした事により、それって大丈夫なの?となるのだが、クリプリスが自ら望んだと、第一高校と戦いたいと言った。

完全に堂々と処刑する発言なのだが、その辺の事情を知らぬ馬鹿は流石はクリプリスと言っていたりしていたのだが

 

「手塚は強いのか?」

 

リーナはそこそこのピンチだった。

いや、別に殴られるとかそんな感じのピンチでなく圧迫面接を受けている感じでピンチだった。

右には十文字克人(ゴリラ)、左には七草真由美(妖精(笑))と言う状態で前にいるほのか達は、リーナが挟まれている事に気付いているが目線を合わせない。

新型インフルエンザが流行った際の病棟の待合室みたくなっている。

 

「強さ…それは光國の成績を見ればわかるんじゃないでしょうか?」

 

「テストの結果では分からない生徒が、さっきまで出ていたんだ」

 

「ああ、そうでした…光國は強いですよ…ですが、会頭が求めている強さは」

 

「モノリス・コードでの強さはどうだ?」

 

リーナは心で舌打ちをしてファックと叫ぶ。

強さとはなにかと言う哲学的なものに話題を変えようとするが、ゴリラには通じない。

ただ強いか弱いかのシンプルな答えを求めており、出来ればポロっとどんな戦法なのかバラせと思っている。

 

「正直なところ…分からないわ、光國の強さなんて」

 

上手く誤魔化す方法を考えるが、冷静に考えれば分からない。

手塚光國の強さはなにかと聞かれれば、性格の悪さと見ている方向が通常の魔法師や頭の良い奴とは違い、偏ってるところだが、価値観なんて人それぞれなのでそれも違う。

ゴリラが求めているのは、戦闘面での強さでありその戦闘面はハッキリと言えば不明だ。

 

「それはどういう意味だ?」

 

「そもそもの話で、光國は戦うなんてことしないのよ。

て言うか、それが普通でしょ?英才教育とかそう言う場はあるけれど、まだ学生なのよ?」

 

本職が軍人の自分が言うのもなんだが、酒を飲める年齢ですらない、そう言う立場でない自分達が戦いをする時点でおかしい。国から使い捨てされないためとは言えだ。

魔法師だからとか、そんなのは関係ない。まだ自分達は子供だと言うのを十文字は忘れている。いや、これは十文字が悪いのではない。大人になる前にそうやるのが当たり前だと押しつけた奴等が悪い。

 

「じゃあ、もし戦ったらどうなるの?」

 

「知らないわよ、そんな事は…て言うか、さっきから心配してないわよね?

今から、タツヤ達が頑張るんだから、戦えるのかどうか強いかどうか心配をするかよりも、勝つことを神様にでも祈らないと、ね、ミユキ」

 

「……ええ、そうね」

 

いい加減にしろと爆弾を深雪に投げるリーナ。

達也を出せば割とどうにでもなる。

 

「て言うか、失礼だと思わない?

さっきから光國、光國って、光國は私の物じゃなて…タツヤやヨシヒコが立役者になるかもしれないじゃない。ミユキも、タツヤがイチジョウを倒して金星を上げたら、喜ぶでしょ?」

 

「それはリーナも同じじゃない」

 

しかし残念、爆弾は返された。

リーナと似ているから自身が喜ぶことを光國とリーナに置き換えて、返された。

 

「でも、お兄様ならきっと勝利へと導きますわ」

 

導火線を消してだ。

レオがいれば、そのお兄様が金星を上げてくれる。しかし、肝心のレオは現在、病室でテレビ越しで応援をしている。光國がビーストを絶版にすると言っていたが、その意味が、そのために何をするのかイマイチ分からない。

 

「あ、出てきた…って、ええええええ!?」

 

選手入場し、出てきた第一高校と第三高校の選手。

今から試合が始まるのかと待たされていた観客達はワクワクするのだが、一瞬にしてワクワクが驚きに変わった。真由美は驚き叫んだ。

 

「て、手塚ぁああああああああ!!!!」

 

十文字は席を立ち上がり、叫ぶ。

あの十文字が叫んだと言うことはなにも知らない事だと、他もざわめく。

 

「じゃかましいわ!!」

 

何故ならば、光國は制服姿のままだったからだ。

このモノリス・コードは危険極まりない競技故に戦闘用の衣装を着なければならない。

しかし、光國はそれを着ていなかった。確かにルール上は絶対に着なければならないというルールは無いのだが、何時も通りの服装だと魔法を食らった時点で終わりだ。

 

「…」

 

叫ぶ十文字が目立っている隙に、観客席を見回すリーナ。

九島烈を発見するが、特になにも言わない。藤林響子発見、隣には見たことない人がいて物凄く慌てている。

 

「どういう、どういうつもりだ?」

 

光國がレオの代理を勤めるには申し分ないのは分かっているが、この展開は予想していなかったクリプリス。

 

「未知なる敵を相手にして、動揺はアカンな。

ここぞと言う時の火事場の馬鹿力よりも、安定した強さを求められとるやろ?」

 

ヘラヘラと光國は笑う。

これも作戦の一部なのかと、困惑をする。もしかすると、制服の中に仕込んでいるんじゃと考える。

 

「将輝!」

 

「…すまない」

 

「クリプリ、ビビってる!ヘイ!ヘイ!ヘイ!」

 

「手塚、煽るな」

 

ジョージに引っ張られて、冷静さを取り戻すクリプリス。

達也に引っ張られながらもポプ子の様に全力で喧嘩を売りに行く光國。

いったいどんな試合が始まるのかと全員が息を飲む。

 

「で、どうするんだ?」

 

「まぁ、見ていろ」

 

草原のフィールドで最後の作戦会議をする三人。

ヨシヒコと達也は光國の奇抜すぎる作戦を受け入れた。とそれしかしないと堂々と公言をした。

急遽、レオから光國に変わった為に作戦が変わるどころか無くなり、光國は好き勝手にしろとなったのだが、何をするのか教えない光國。

 

「達也…と、レオと、ヨシヒコと、美月と、深雪と…エリカは…う~ん、まぁ、ええか」

 

「なにが良いんだ?」

 

「…リーナへの質問をする権利と解答を聞く権利だ。

達也、レオ、ヨシヒコ、美月、深雪、エリカ…は質問をして良い…ただし、質問の内容も、答えも絶対に漏らさない…これで最後だから…」

 

最後の仕込みを済ませる光國。

 

『ドライバー・オーン』

 

「え!?」

 

試合開始の合図が鳴ると、ベルトを起動させるのだが驚くリーナ。

 

「いきなりベルトが出現した!?」

 

「アレって、リーナが使ったやつじゃない!!」

 

深雪もエリカも驚く。一度見たことがあるとは言え、もう一度見ても驚くしかない。

しかし、驚くところはそこじゃない。リーナはそんな事には驚かない。殴ることが出来ないモノリス・コードでクリプリスに勝つには指輪の魔法が必要だ。

 

「それは…やはり、お前の物だったのか」

 

「いんや、これはオレの物じゃない」

 

ベルトを起動させたので、確証を得た達也。

九島が数年前に手に入れた、聖遺物の正体はベルトと指輪だと。それを使いこなす何らかの条件を光國は満たしているのを。

しかし、一つだけ見落としていた。

 

『シャバドゥビタッチヘンシーン、シャバドゥビタッチヘンシーン、シャバドゥビタッチヘンシーン!』

 

「アレって…」

 

光國はビーストドライバーを持っているが、つけてはいなかった。

代わりに白い魔法使いドライバーをつけていた。

 

「変身」

 

『ビースト、ナウ!!』

 

そしてビーストウィザードリングを翳し、仮面ライダービーストに変身した。

 

「さぁ、最初で最後のメインディッシュの時間だ!」

 

リーナただ一人が、ベルトの音声の違いに気付いた。


感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。