魔法科らは逃げれない。   作:天道無心ビームサーべ流
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さらば、手塚光國

「っ!」

 

「何処に行くつもりだ?」

 

「運営の方です」

 

響子は真っ先に、異変に光國の脇から紫色のヒビに気付く。

話には聞いていたが、生で見るのははじめてだったがそんな事は関係無い。

 

「少なくとも、まだルール違反はしていないが…」

 

分身とキマイラには驚かされるものの、全く攻撃をしていない光國。

魔法を使えなくしているだけであり、全くと言って攻撃はない。ルール違反と言うよりは、コレはルール的にはどうなるの?と言う規定には無いものの、ルール違反や反則じゃないかと思える行為をしているだけだった。

 

「…アレだけの魔法をなんのリスクも無しで出来ると思いますか?彼は立っているだけでも奇跡です」

 

全てを語ることは許されず、語れば余計にややこしくなる。

8割の真実に2割の嘘を混ぜ、光國のビーストには大きなリスクやデメリットがある事をほのめかす。

 

「わざわざソフト(魔法式)ハード(CAD)を別々に分ける必要があると思いますか?」

 

響子は風間に大会運営本部に向かう理由を語りつつも、祖父である九島烈を見る。

今の今まで手を抜いていた光國がこんな大衆の前で一条をも圧倒する力を見せつけている事に喜びを見せていた。

人工的に作られた古の魔法使い・ビースト、光國本人のスペックもあるとはいえ、一条を圧倒。100人の健康優良な孤児を人工的に魔法師にすることが出来れば、戦争の抑止力になる。

魔法演算領域の代わりとなるキマイラの様な存在を作り出し、安定して供給をすることが出来れば世界中の人間を魔法師に出来る。

魔法師がより身近になる世の中になり、反魔法団体の馬鹿どもは黙る。魔法を兵器以外での運用方法を考える時間が増えていく。分身する魔法で人材不足をどうにかするとか出来るなと考えていた。

 

「…」

 

世の中は食うか食われるかの弱肉強食、自身の幸せは他人の不幸で出来ている。

光國が黙っていることを洗いざらい全て吐いた場合、九島は十師属のアンタッチャブルと呼ばれる四葉を上回るどころか、戦略級魔法師よりも恐ろしい家になる。

九島烈は戦争をよく知っており、それが如何に愚かな事だと知っているので自ら戦争を仕掛けようとしないので、戦争にはならず、平和の維持の為の抑止力になる。

その為の平和のための犠牲第一号が手塚光國、それに続く死んでも大丈夫な稀少な血筋じゃない、人体実験をしてもいいどうでもいいやつらが犠牲第二、第三になる。

 

「行かないと…」

 

光國の犠牲を受け入れて、真実さえ知らず平和ボケ出来ればよかった。

そんな事を考えるつもりは一切無い響子は観客席を出て、大会運営本部に向かうべく走り出すのだが

 

「悪いが、今ここで止められるわけにはいかない」

 

「貴方は…白い魔法使い?」

 

仮面ライダーオーディンに変身をした仁王に阻まれる。

声は同じだが、姿は大きく異なるので質問をする響子。その通りだと頷くと、この時代では珍しい紙のメモ帳を取り出した。

 

「戦士、運命、黄金、闇、野獣、欲望、響く鬼、轟く鬼、威吹く鬼、時を喰らう牙、本屋の龍城、鬼ヶ島の戦艦、三太郎、空飛ぶパーカー、黄金の果実…奴め、ここまで分かっているのに、一つも集めに行かなかったのか…戦争と死を司る者も書いておくか」

 

メモ帳を開き、中身を見る仁王。

光國がわかっていたが、面倒だからと無視していたものが書かれており、ここまで分かっていたのなら動けよと呆れてしまう。

 

「出来れば、貴方との対話をしていたい。

けれど、今はそれよりも光國君を止めないと…早くしないと、彼が死んでしまうわ!」

 

仁王と戦うとことの話し合って通してもらうこともせず、無視して走り出す。

 

「あんアホ、どんだけ死亡フラグを建てるつもりね…」

 

恋心とはまた、異なるものの切っ掛けさえあれば恋心に変化する響子の胸の内。

いずれ光國は後ろを愛しきものに刺されるかなにかがあるなと響子の背を見る。

 

「汚い大人だらけかと思えば本当に大事にしてくれる味方は存在したか…若干どころかかなり狂っちゃってるけど…ラノベによくある若い連中を戦わせる弱いだけで威張るカスな大人ではなく頼れる大人を味方につけた、良いことだ、感動的だ」

 

「!」

 

「だが、無意味だ」

 

「なん…で…」

 

ありえないものを見るかの様にオーディンを見つめる響子。

自分はちゃんと横を走り抜けた筈なのに、会場の外へと向かった筈なのに同じところに戻ってきた。

 

「感覚が狂わされている…」

 

左右前後の感覚の何処かが狂わされていると考える響子。

チッチッチと仁王は人差し指横に振って、そうではないと言う。

 

「世界を読み取りA、B、C地点を決める。

A→B→Cと順番通りに走らせ、CからDに続く道にAの情報を挟み、世界の状態を書き換えてDへと続く道を外して再びA→B→Cを走らせているだけだ…分かりやすく言えば、輪を作り出した」

 

「…」

 

「聞いたことの無い魔法だと言いたげな目だ。

時間と空間関係の特殊な魔法…などとカッコつけるのはダメだな。アカシックレコードやこの世界そのものに干渉する魔法だ…まぁ、その辺は自力で考えろ。でなければ、今を生きる魔法師に明日は無い。因みにだが、ブラックホールレベルの次元や空間を歪ませる事をすれば強制的に解除されてしまう」

 

よっこらせと座るオーディン。

戦うつもりは最初から無く、立体映像を手のひらから出してモノリス・コードの決勝戦を観戦する。

 

「お願いします…ここから、ここから出してください!」

 

仁王に挑めば、確実に死ぬことが分かった響子は頭を下げる。

素早さや万能さとかそう言った次元ではない魔法を意図も容易く行った奴には勝てないと、向こうは此方の足止めだけで一切襲うつもりはないと土下座をした。

プライドなんて関係無い。

 

「今を生きる魔法師に明日はありませんが、少なくとも今戦っている彼には今日すらありません!」

 

「ああ、原型(アーキタイプ)に未来など何処にもない…故に、おしまいだ」

 

手のひらから出したテレビの立体映像を大きくする仁王。

そこにはハイパーウィザードリングをスライドさせて、口を開けているかの様にしている光國と、落とし穴に落とされているクリプリスが写し出されていた。

 

「何時の間に…」

 

「オレは最初、分身の術で分身をした。

手っ取り早く頭数を増やして効率よく戦うために…一番最初の分身は何処にいった?」

 

達也と光國が交代し、相手はお前じゃないとクリプリスは達也の元へと向かおうとするのだが三メートルはありそうな落とし穴に落ちてしまった。

こんな穴が何故あるのか分からない顔をしているので、ランドドラゴンウィザードリングを見せる。

 

「最初の分身はモノリスを守りにいった。

そしてそこでなにをしたのか、落とし穴を掘った。カメラはクリプリスを撮したい、カーディナル・ジョージを撮したい、いや、撮さなければならなかった…身体能力とか上げて物理的にお前達が砲撃戦を繰り返す真下で地中深くを掘り進んでいた」

 

『ハイパー!!』

 

なんとしてでも勝たなければならないクリプリス。

テレビ局側もクリプリスやジョージを相手にどこまで善戦するのかを撮したがっていた。

複数の光國がいるんだから、一個ぐらいは見落としても仕方なかった。

 

「終わりだ、クリプリス」

 

『マグナムストライク!!』

 

ミラージュマグナムを両手で持ち構えると、ミラージュマグナムの鏡面から飛び出る赤い粒子の塊のキマイラ。

光國の周りをグルリと一周すると、光國へと戻り、光國を伝ってミラージュマグナムへと送信されるのだが

 

「待て、手塚!!」

 

何処からどう見ても、人を殺せそうな感じだった。

威力違反かどうか上手く見抜けないのだが、威圧感はとてつもなくヨシヒコの本能がまずいと叫ぶ。

 

「いや、待たない…さぁ、最後の晩餐だ!!」

 

 

ヨシヒコの制止を聞かず、ミラージュマグナムの銃口に術式を浮かばせる光國

 

「…さらばだ、原型(アーキタイプ)

 

「まさか…そんな、それはダメよ!!」

 

クリプリスこと一条将輝を殺す。

そうすれば九島はおしまいで、光國も九島と言う存在からは抜け出すことが出来る。

一条に殺されるのか、九島に殺されるのか、社会に殺されるのかは分からないが現状を脱出して大きく変わることは出来る…が、そんな事はしない。

 

「達也、とどめはお前にくれてやる!!」

 

ミラージュシューティングは完全なるフェイク。

化物を殺すべく作られたものであり、人に本気の一撃を向ける事はしない。

光國はただただ、待っていた。クリプリスが最後に残り、ここで終わりかと諦めてしまう絶体絶命の瞬間を。

 

「見ておけ、クソジジイ!!コレが本当の意味で、キマイラを真に解放することだ!!」

 

ミラージュマグナムを持てる力全てを振り絞り上空へと投げ捨てる。

観客達はここからまだあるのかとなるのだが、既に光國の手札は切れている。ここから先には光國のステージではない。

 

『コネクト、GO!』

 

「…そう…それが本当の意味での解放なのね…」

 

「リーナ、どうして泣きながら笑っているの?」

 

コネクトで取り出した自身の知らない槍を見てなにをするのか分かったリーナ。

不思議か涙が溢れており、深雪はその事に気付く。

 

「後で、全てを話して貰うぞ」

 

そして達也は自ら落とし穴に飛び降りる。

クリプリスの耳元に手を伸ばして、指パッチンをすると同時に音を増幅させる魔法で意識を奪う。達也の頭にはクリプリスの事はない。質問タイムの際に、どの様な質問をするかと考えていた。

 

「うぉおらあ!!」

 

クリプリスを倒した事により、この時点で第三高校は敗北し第一高校のモノリス・コード新人戦優勝に終わる…が、その為のブザーが、アナウンスがまだ響かない。

使った事の無い槍を、ハーメルケインを光國は握りしめてミラージュマグナムを真っ二つに切り裂いた。

 

「ピンチはチャンス…まさか、こんな時が来るなんてな!!」

 

光國は槍の刃の部分を自分に向けた。

 

「…切腹!?」

 

光國は切腹をした。

いや、正確にはベルトにハーメルケインの刃を突き刺した。

 

「一条の首を頂いた落とし前、確かにつけさせて頂やした…って、言えばカッコいいんだがな」

 

今までどんな魔法をぶつけても、どんな攻撃を加えても傷つかなかったビーストドライバー。

ビーストドライバーを抉る様にほじくると苦しむ声をあげ

 

「ぬぅおぁあああああ!!」

 

ベルトからキマイラが出現をし、光國の変身は解除された。

 

「…どうした、さっさと勝利宣言をせんか!!」

 

倒れる光國の側に寄るキマイラ。

一条達、第三高校の面々は戦闘不能となっており、光國も動けなくなっていた。

 

『第三高校の選手、全てリタイアをしました!よって、モノリス・コード新人戦は第一高校の優勝です!!』

 

「…コレって…コレって…」

 

ベルトを破壊したことにより、現れたキマイラを撮す立体映像。

魔法師じゃない光國の力の源とも言うべきキマイラがベルトから光國の体内から出ていった。

それがどういった意味かを知らないほど、響子は馬鹿じゃない。しかし念のためだと隣にいるオーディンに聞こうとするのだが、そこには居なかった。

 

「…っ」

 

「そう怯えるな…今の我は気分が良い。

普段なら貴様達を餌としか見なさんが、特別に見逃してやる」

 

試合が終わったには終わったのだが、喜ぶに喜べないヨシヒコ。

それほどまでにキマイラの威圧感や存在感は大きく、襲ってきそうと言う恐怖感があった。

しかしキマイラはそんなつもりはなく、ただただ光國を見つめて光國を口で掴む。

 

「手塚!!」

 

「我の下僕ならば、下僕らしくしっかりとしろ」

 

食うつもりなのかとヨシヒコは動くが、背中に乗せただけだった。

ついでだと言わんばかりに、乱雑に達也とヨシヒコも乗せるキマイラ。

 

「コレがお前の秘密か?」

 

「…」

 

キマイラを解析するが、分からない事だらけで光國に聞くが答えない。

レオやエリカ達も知る事が出来る質問タイムのその時まではお預けだと、リーナ達がいる場所へと戻ってきた。

 

「達也、幹比古、ごめん…」

 

「僕の名前は…手塚?」

 

「もしかしたら、反則負けかもしれん…私利私欲に走った…」

 

優勝したのに、静かすぎる会場。

キマイラの存在が全てを黙らせてしまい、反則敗けになったのかと考える。

すると、心地好い風が靡いてゆっくりとゆっくりとジャージが光國の元へと落ちていく。

 

「よっこらせと…」

 

「…来たか」

 

体を起こした光國。

それと同時にやって来た九島烈。

 

「優勝、おめでとう…とでも言うべきか?」

 

「御祝いの言葉なんて、いらない…じゃあな」

 

光國はジャージを腰に巻くと走り出した。

何処に行くかは決まっている。九島烈もそれを知っており、見逃した。

 

「先に言っておくが、我の存在を反則とするならば精霊魔法全てが反則になる!我も精霊の一種だ!」

 

バッサバッサと羽ばたくキマイラ。

乗っているヨシヒコと達也を落とし、ひたすらに九島烈を睨んだ。

 

「何時の日か、貴様を食い殺す日がやってこよう。

光國の愚か者はメインディッシュだと言っていたが、あの程度では精進料理となんら変わらん!迸る味を我は好む…さらばだ!!」

 

キマイラは壊れて落ちているミラージュマグナムと光國が付けたままのビーストドライバーを消した。別次元に隠した。

 

「匂う、匂うぞ!ヘルヘイムの果実の匂いが!!」

 

キマイラは飛んでいき、姿を消し去った。

 

「…」

 

今すぐにキマイラを追いかける…なんてことはしない。

どれだけいてどんな種類があるのか世界中の魔法師が協力しても数や実体が分からない精霊をピンポイントで見つけ出すのは不可能な事だ。

九島烈は分かっている。手塚光國がまだまだ様々な事を隠しているのを。様々な知識を授かったことを。キマイラが去り際に叫んだ、ヘルヘイムの果実がなんなのかも知っていることを。

人工魔法師が不可能になっても、第二第三のプランはちゃんと練っている。ブラカワニコンボのコアメダルがその為の第一歩だ。

 

「…何処に行くつもりなの?」

 

全てが終わった。

手塚光國の魔法師としての人生は終わり、普通の人へと戻ったのを見てリーナは席を立った。

 

「試合が終わったのよ…部屋に帰るわ。

タツヤ達だって、試合をして疲れてるし汚れてるんだから、突撃して誉めに行くよりも休ませないと…」

 

真由美に聞かれたので答えるリーナ。

光國の元へと向かうつもりはなく、確かめたい事があると自身の部屋へと戻る。

真由美達は達也とヨシヒコを誉めにいった…

 

「…あった」

 

そして、部屋に戻ったリーナは見つけた。

見つけたと言うよりは、部屋に入ってすぐに目に止まった。

 

「全く、あの時よりもヘタクソじゃない…試合を見に来てって、誘えばよかったのに…」

 

机の上にある手帳に挟まれているチケットを手に取るリーナ。

それは光國が向かったU-17の大会関係者の特別観戦チケットだった。

 

「…あれ、コレって…」

 

チケットを手に取ったリーナ。

手帳の方にも仕掛けはあることに気付き、市原先輩に渡してくれと書かれており少しだけ中身を見てしまうリーナ。

 

「【日本の地獄は自慢の地獄、全部合わせて272もある】【未来を予告、邪馬台国】…なにこれ?」

 

その手帳には大事な部分が欠けている大きなキーワードのみが載っていた。





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