魔法科らは逃げれない。   作:アルピ交通事務局

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日本不思議発見

光國に想子を与える役割を買って出たリーナはあの後、九島烈に第一高校に行きますと光國と共に報告、それらしい理由を適当にでっち上げて日本に住めるようになった。

住めるようになれば、次は家だと九島の持つ家を用意したのだが光國がそれを拒否、広すぎると逆に無理だと拒み、今時こんな部屋あるんかいと思える様なアパートが偶然に見つかって二人で暮らしをはじめてかれこれ数ヵ月がたった 

 

「……!?」

 

 

この数ヵ月でリーナは光國の貧乏人を舐めんじゃねえぞ、グォルァと言う台詞が身に染みた。

先ずはベッドで寝ない、旅館の様にモッフモフの布団ではなく、薄っぺらい布団の上で寝る。炊事等をするロボことHALがない、先進国だとメジャーだが金が掛かると家には無いらしく基本的に自炊。PC等の電子機器は旧型の据え置き型と言った本当にこんなの今時あるんだと思える様なも事ばかりなのだが、特に苦じゃなかった。尚、音声認識と言う便利な電子機器がこの時代にはあるのだが関西弁等に対応をしていないと言う事実に光國は軽く苛立ちを覚えたことはリーナは知らない。

 

人間、楽になりたいから楽になる物を作るのは当然だが楽しすぎるのも如何なことだと言うのをリーナは学んだ。割と旧世紀の生活でも問題ない。

 

「光國、どこ!?」 

 

本日は日曜日。

ゆっくりと起きれる日だと目覚めると何時も隣で寝ている光國がおらず、意識が一瞬にして覚醒して体を起こす。 

 

「百年たってもウォシュレット以降が無いのか…どしたん、リーナ?」 

 

光國が居ないと慌てているとトイレから出てきた光國。

寝起きに出すものを出していただけなのだが、リーナは慌てて光國の側に駆け寄る。

 

「…大丈夫、生きてる」

 

「毎日毎日、飽きひん?」

 

ちょっとトイレにいったりするだけで、慌てるリーナ。

一緒に暮らしていこう、ずっとこんな調子で光國は困っている。

 

「…じゃあ、首輪を…じゃないと光國が死んじゃうかも…」

 

「勘弁してくれ…」 

 

依存してるのか、過保護なのか分からない。中々に無いことで対処の仕方が分からない。 

 

「あ、今日はまだしてないわね…おはよう、光國」

 

「魔力供給…いや、なんでもない」

 

想子を与える事の出来る指輪があるが、一度も使っていない。

朝、目覚めるとキスをするのが日課になっているのが二人である。一度やめようと言ったら、じゃあ血液交換ねとなったので妥協した。 

 

「やっぱ時代劇は昔の方が良いわね、必殺仕事人のBGMは心が踊るわ」 

 

炊事等を終え、真っ昼間から時代劇を見て寛ぐリーナの姿は最早おばちゃんだ。

どうにかして光國を手に入れるべく、想子の補充役を担っているのを完全に忘れて時代劇を見る。

 

「光國も、勉強ばかりじゃ体に毒よ。たまには気分を変えないと」

 

「お前と違って、魔法に関する英才教育を一切受けとらん。

加えてCADを使った魔法は何にも特化してなくて、平凡なオレは今から追い込まんと受かるものも受からんわ、落ちたらオレ、隔離されんねんぞ」

 

「いや、でもまだ中1でしょ?」 

 

「アホぬかせ、小6で入る高校決めとるやつは当たり前の様におるんやぞ」 

 

「ブラック、ブラックよ!日本の受験戦争は!!」 

 

「なにを今更なことを、学歴社会になった時点で世界中ブラックや。

それに気晴らしに時代劇は見いひんつーか、見るよりもやってみたいわ、日光江戸⚫に行きたい」 

 

「あ、分かるわそれ。

私も一度で良いから、印籠を出してハハァ!ってやってみたい…九島って、家紋があったかしら?」 

 

「絶対クソジジイに怒られるからやめろ。

姿を偽装する魔法でも使って、普段は城下町で遊び人をやってて事件を起こした悪人の前で余の顔を見忘れたと言うのかと言って正体を現した方が良い」

 

お転婆(ポンコツ)のリーナにはそれがちょうど良いだろう。

と言うか九島の魔法にそんな感じのあった筈だから、ベストマッチだろうと考えるのだが 

 

「…なにそれ?」 

 

リーナがなにを言っているか理解していなかった。

 

「あ、でも遠山の金さんみたいに身分を隠すのも面白そうね。

奉行所でこう、桜吹雪の彫り物を見せるシーンって一度やってみたいわ」

 

「いや、彫ったら風呂屋いかれへんって…刺青になるから。

それやったら貧乏旗本の三男って言って、火消しのめ組にお世話になった方が」 

 

「光國、さっきからなんの話をしているの?」

 

「いや、だから暴れん坊将軍…?…」 

 

「そんな時代劇、聞いたこと無いわよ?」

 

「…?」

 

水戸黄門から子連れ狼まで色々な時代劇を見ているリーナだが、暴れん坊将軍などと言う時代劇を見たこと無いと言う。 

 

「ほら、持ってる時代劇にそんなの無いわよ」

 

ピッとリモコンを操作してテレビに入れている時代劇のリストを見せるリーナ。

桃太郎侍、必殺仕事人、遠山の金さん、水戸黄門、忠臣蔵、JIN、他にも色々な時代劇があった。しかし、そこには無かった、暴れん坊将軍が。そしてJINは時代劇なのかと一瞬考えてしまった。 

 

「…」

 

 

「きっとなにかと間違えたのよ。

それよりも次、なにを見ようかしら、全部見たことあるから…ちょっと変わったのが、あ、これ面白そう!」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「光國、時には実戦経験も積まないとダメよ。

今日は複数の魔法を使って徳川のまいぞ…宝探しよ!」 

 

「今、徳川の埋蔵金言いかけたやろ…」

 

暴れん坊将軍が無いことを知った翌週のこと、リーナと一緒に群馬のとある山にやって来た。

現場で魔法をちゃんと使いこなす演習で来たのだが、それは建前である。徳川の埋蔵金を探しにやって来た。 

 

「なにを言っているのよ!

過去にこの近くを掘ってたけど、徳川の埋蔵金なんて全くと言って出てこなかったわ」

 

「…リーナ、あっち系を見たな…」 

 

掘ってたと言う言葉に徳川の埋蔵金を探す旧世紀の数世代前に流行った番組を見てしまったと分かった。

 

「…ええ、ええ、見たわよ!

でもそれがなにか問題でも?別にいいじゃない!

魔法を使って、徳川の埋蔵金を見つければ貴重な経験を得られて尚且つ大金が手に入るのよ!私達の将来の為のお金は国家予算でも足りないぐらいだわ!」

 

「いや、徳川の埋蔵金は国の物になるぞ…」

 

「え…嘘…」

 

「まぁ、でも…徳川の埋蔵金かどうか分からなければ埋蔵金の二分の一の額の金が貰えるらしいからな…」 

 

「あ、ならよかった」 

 

なにがだよとは言えない光國。

どういう意味か聞くほど、彼は馬鹿ではないし、賢くは無かった…そして欲望は大きかった。

 

 

「でも、どないすんねん。

当時ショベルカーとか使って徳川の埋蔵金探したんやで…まさかやと思うけど、キマイラ頼るのか?」

 

『ドライバーオーーン!』

 

どうやって徳川の埋蔵金を探すかどうかの話になり、魔法で探しても昔のやり方が少しグレードアップしただけだと言いながらもベルトを起動させるとパカッとベルトが開く。

 

 

「我にその様な事は出来ん」 

 

「なんだ、出来ないのね…見た目ライオンらしいから匂いを見つけれないかって思ったのだけれど」

 

「たわけ!我とて好き好んでこの様な獣ではない!我は本来は人であった!」

 

「っ!?それ、どういう意味!?」

 

 

キマイラの口から語られし驚愕の真実に珍しく食い下がるリーナ。

ベルトに顔を近づけてキマイラに問うがキマイラは答えなかった。

 

「全く、若い者は常に答えのみを知りたがる。

答えは自分の手で見つけるがよい…とは言うものの、この様な時代では見つけることは不可能に等しくはあるがな!!」

 

 

ヒントらしいヒントを残し、ベルトが閉じた。

 

 

「キマイラが人間だったって事はキマイラを作ることが可能…いえ、でもその理論でいくと一人の人工魔法師に対して一人の、いや、でもニオール文明があった時代では命は安かったりするし…ああ、もうわけわかんないわね!私、こう言うの専門外だから後で頼んでおこう」 

 

「…リーナ」

 

「え、あ…ああ、うん!

とにかく、徳川の埋蔵金を魔法で探すわよ!」

 

最早、隠す気は0なリーナは徳川の埋蔵金探しを再開する…が光國はジッとリーナを見つめたままだった。

 

「リーナ…」

 

「なにかしら?」

 

「…無茶はせんくてええで。

ここじゃなくてもリーナやったら、なにをやっても輝けるからさ、オレを見捨てても別にうらまんよ…」

 

 

「……」

 

 

リーナが裏でなにかとんでもない事をやっているのを知っている。

それが自分の為だと言うのも分かっているが、やはり無茶だけはしてほしく無いと言うもの。

 

 

「…光國は魔法師としては輝けないわよ」

 

「返し方、ひどない!?いやまぁ、せやけども…はぁ」

 

なにをしているかは教えてくれないリーナを見て諦め、埋蔵金探しを再開する。 

 

「ふぅううううう…」 

 

息を大きく吸い、五感を研ぎ澄ませる光國。

ただやみくもに探していてはいけない、魔法師らしく考えるのではなく感じて動こうと指輪を取り出す。

 

 

『ドルフィ!ゴーッ!ドッドッドッドッ、ドルフィー!』

 

 

 

指輪をベルトの左側の挿し込み部分に挿入すると魔法陣が出現し、光國の肉体を通過した。

するとどうだ、光國の体はゆっくりとゆっくりと地面の中へと沈んでいった。

 

 

「なんだろう、一種の罰ゲームを受けてる気分だ」 

 

頭だけを地面の上に出し、体を地面の中に入れている光國はリーナに見下ろされている。

リーナはとんでもない物を見る目で光國を見ており、なんだか自分が哀れだと思ってしまった。 

 

「それ、どうなってるの?」 

 

「魔法師としては無知に近いオレが知っていると思うか?」 

 

「なら、早いところ出なさい。

どういう理論か分からない魔法を使うのは危険よ…いいから、早く!」

 

 

「ちょ、そないキツく言わんくてもええやんか…ん?」

 

リーナがキツく言ったので、余程の事だなと体をゆっくりと浮上させるのだが足元に違和感を感じた。

 

 

 

「なんかここに埋まっとる」

 

 

「…え、それってもしかして…」

 

 

「と、取り敢えず掘り出して見た方が早い…」

 

 

「そ、そうね…」

 

 

出る際に箱らしき物に触れたので、もしかしたらと思い互いに汗を流しながら会話をする。

まさかまさかとスコップを手に掘り進む、魔法で探すなんて最早、どうでもいいと肉体を酷使させ

 

 

 

「…印籠と同じ紋章だわ!!」

 

 

 

おせちが入っている重箱ぐらいの大きさの徳川の家紋がついた箱が出てきた。

マジか!?と一緒に箱を持ち上げるリーナと光國、箱は物凄くずっしりとしていて重かった。

 

 

 

「…私、何度かおせちを食べたことあるけど重箱ってこんなに重くは無いわよね…」

 

 

「あの、アレだ。

山吹色のお菓子が入っているパターンや…」

 

 

「…ど、どうしましょう

まさかこうもあっさりと出てくるなんて、思いもしなかったわ!?

最後にこう、江戸時代に作られたなにかを発見レベルで終わるかなって…取り敢えず、開けてみましょう」

 

「そ、そうだな…」

 

 

 

結構な重さの重箱。

小判一枚でサラリーマンの初任給を越えることが出来るので、それがかなり入っていると心を踊らせて箱をゆっくりとゆっくりと開いた 

 

「!?」

 

「なにこれ?」 

 

箱を開いたリーナはキョトンとした。

中身が昔は貴重だった塩とか胡椒とか言うベタなオチはなく、かといって大量の山吹色のお菓子でもなかった。

 

 

 

「メダル…よね?」

 

 

 

中には三枚のオレンジ色に近い色のメダルがかなり古い和紙と共に入っていた。

リーナは馴れた手つきで真っ白なハンカチを取り出して、メダルを触る。

 

 

 

「なにかは分からないわね…取り敢えず、紙の方を…光國、パス」

 

 

「これ、オレ達が勝手に見てエエんかな…」

 

 

 

「このメダル、貴方のベルトと同じ聖遺物(レリック)だと思うわ…多分」

 

 

メダルを見て古代に作られた魔法を補助する道具と見抜いたリーナ。

普段がポンコツなだけに時折見せる鋭い洞察力等はこの世界の住人の中では郡を抜いていた。

しかし、紙に書いてある字は読めなかった。そこが読めればカッコよかったのに。

 

 

 

「えっと…この奇妙な銭、伴天連の国に伝わりし王家の宝の一つなり。

江戸幕府八代将軍徳川吉宗への献上品の一つではあるが、ただの宝では非ず。我が国の国宝と同様、力を秘めし宝なり」 

 

「やっぱり…これは聖遺物(レリック)の類なのね。」

 

「様々な陰陽師達に調べさせるも成果はなにもない。

これを書き記している今でこそ、平穏なる世だが奇妙な銭を貰った際には全国に妖魔が蔓延っており退治する術を探していた。

この時は平安より続く人と鬼との境界線を操る者達の手により納まったが、また何時魑魅魍魎蔓延る時代になるかは分かるまい。

人と鬼の境界線を操る者達は吉宗公の故郷である紀伊の国に伝わる愛重き乙女に近く、これを読んでいる頃には滅んでいる可能性がある…えっと…あ、はいはい…この銭の研究を未来に託す的なアレか…え、これどうすんねん……」

 

 

埋蔵金を掘り当てようとした結果、埋蔵金よりも価値がありそうな物を掘り当てた。

しかし、これはいったいどう扱っておくのが正しいのか分からない。埋蔵金ならば少しだけ貰ってから、掘り当てたと言うのだが相手は埋蔵金ではない。

 

「ちょっと閣下に連絡をしてみるわ…」

 

リーナはメダルを箱に戻し、携帯を取り出して会話を聞かれない為に少しだけ距離を取った。

その間、光國はジッと見つめる。メダルを、コアメダルを。

光國はこれがなんなのかを知っている、これも仮面ライダーが変身するのに必要な道具だ。

特定の条件を満たした人間だったらベルトを使えば変身出来る系で、錬金術師が作った物で徳川吉宗に献上されたメダルで映画で主人公が徳田新之助から託され、このコアメダルを使って変身している。

 

 

「…嫌なパターンだ」

 

 

 

言うまでもないが、仮面ライダーはフィクションである。

この世界もどちらかと言うとフィクションであるが、現実でコアメダルなんてものは最初から存在しない。この世界にそんなものは最初から存在しない。

彼の持つビーストドライバーも存在しない…筈なのに、何故か今ここに存在している。

 

「…今は考えない方が良いか」

 

 

既に自分は仮面ライダービーストだ。

仮面ライダーオーズではないし、オーズに変身するのに必要なオーズドライバーはここには無い。

 

「連絡をしてきたわ。

直ぐにその手の専門家を連れて向かうから、厳重にしておけって」 

 

「そうか…」 

 

「色々と小言を言われたけど、物凄く驚いていたわ」 

 

当然と言えば当然の答えを持ってきたリーナは光國と一緒に腰を下ろした。

 

「リーナ…」 

 

「なに?」 

 

「実はこの手紙には続きがあるんや」 

 

「え?」

 

さっき報告したばかりだと言うのに、また報告しないといけないのと頭が一瞬だけフリーズをするリーナだが光國は気にせずに箱に触れる。

 

「このメダルと紙を入れても、例え江戸時代の重箱だろうがこんな重さはありえん。

メダルと紙、そして徳川の家紋に圧倒されていたのと箱の色のせいで気付きにくいが、底上げがされている」

 

蓋の方にコアメダルと紙を置き、パカッと重箱の上げ底を取る

 

 

「…!?」 

 

「手紙の方にな、研究費用と共に託すって書かれとんねん…」

 

 

 

中には千両箱ほどとは言わないが、小判が乱雑にザクザクと入っていた。

 

 

 

「……」

 

 

 

「……」

 

 

 

小判を見たリーナと光國は特に言葉を交わさず、小判を手にし…パクった。

1時間後にやって来た九島烈と専門家にバレるかバレないかの量をパクってしまった。

 

 

 

「お金の魔力は恐ろしいわ、きっと精神干渉魔法を常時発動しているのね」

 

 

 

リーナと光國は徳川の埋蔵金(仮)を見つけた人として世間を騒がせるのだった。


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