夏休みは一番重要な行事。
部活動にバイトにとにもかくにも魔法科高校生は大忙しだが、なにも魔法科高校生だけが忙しいのではない。
例えば中学三年生、今年魔法科高校を受験する受験生は大忙し。
特に
は国の重要機関ではあるものの、学校であり光國が騒ぎを大きくしたので今一度良く見てから受験してほしいと場を、ざっくりと言えばオープンハイスクールを設けた…が
「吸血鬼はメジャーなものばかり…」
市原には、と言うか生徒には特に関係なかった。
九校戦が終わり、部活動に勤しみやっと終わったのにいきなりオープンハイスクールの手伝いを押し付けるほど、学校も鬼ではない。
と言うよりは、むしろなにかやらかしたら困るのでしないでほしいと止められている。
「地方のマイナーな伝説が関連している…」
学校の端末を使い、吸血鬼について調べている。
市原は光國が託した手帳に書かれていた【ドキドキ!カミツキ!キバットバット!ガブッと変身、バンパイア】の意味を少しだけ理解した。
バンパイアは吸血鬼、そして変身は光國やリーナが仮面ライダービーストになる際に言っていた変身だと気付いた。
つまり、吸血鬼に関連するなにかに変身する方法だと言うことなのだが、全くといって出てこない。過去に聖職者と吸血鬼が戦ったとか、吸血鬼はゴブリン等を絶滅させたとかそれぐらいだ。
「少し息抜きをしますか」
色々と探すも、正しい答えには辿り着かずに停滞する市原。
少し疲れたので一休みするべく校舎を出て、外の空気を吸いに出ると紗耶香と会う。
「あ、市原先輩」
「壬生さん、休憩ですか?」
「はい…皆、必死になってます…光國くんのお陰で」
光國本人がやったことはネットで悪口を言いまくって炎上させたのと、森崎をテニヌでボコった事であり、一次被害よりも二次被害の方がすごかった。
非魔法系の部活動はやる気を出したりして、傲慢な魔法系の部活動の鼻を明かしたりした。
「…今頃は、何処かの会社の人にスカウトされてるんですかね?」
「…」
光國のベルトの事と出ていったキマイラがなにか知っている二人は、何となくだが気付いていた。光國はもう魔法師じゃないって。
魔法なんて最初から必要ないと言い切る、それ以外で努力してそれで生きてきた彼にはそっちが良い…のだが、心のモヤモヤが二人にはあった。
もっと一緒に居たいと言う強い愛なのだが、無理矢理引きとめては光國の幸せを壊すことになる。
「せめて、最後に顔を…」
「それなら夏休み中に会う筈ですよ。
どちらにせよ、自主退学の手続きを取らなければならないので……?」
会いたいと言う思いが強い紗耶香。
学校をやめて、自分達の前から消えるには取り敢えずは学校をやめる手続きをしなければならない…のだが
「…じゃあ、なんでこれを…」
それならば手帳を九校戦で渡す必要は無かったんじゃないかと考える。
下手すれば周りは敵だらけと言う、なんか怪しい奴等が裏でコソコソとしている時にこんな重要な物を渡すのはかなり危険な事だ。
「まさかもう誰かに監視を…いえ、それはない…」
「どうしたんです?」
「…ちょっと、テニス部に行ってきます」
もしかしたら、なにか痕跡を残しているかもしれない。
光國が一番関わっていたテニス部へと市原は足を運びだし、壬生もついていくのだが
「あれ、誰も居ない?」
コートには誰も居なかった。
壬生は何処かのクラブに行ってるのかと考えるが、そう言う日じゃなかったし肝心の部長と副部長が居ないので試合は出来ない。
「お前達、テニス部員は今、演習場にいるぞ」
「十文字会頭!?」
何処だと探していると十文字が現れ、居場所を教えてくれた。
突然の登場にビクッと固まってしまう紗耶香だが、そう固まるなと言われ肩の力を抜いたのだが
「…演習場?」
直ぐにおかしな点に気付いた。
「演習場、ですか?」
「ああ…演習場だ…それも森や渓谷と言った場所全てを使用している」
念のために聞き返すと、頷きながら何とも言えない顔で答える十文字。
市原はもしかしてと貰ったメモ帳を取り出し、テニス部員の特別練習(死)の項目に目を通した。
「戦っているのですか、他の部活の部員と?」
「ああ…SSボード・バイアスロン部と戦っている。
テニス部員は風船を一つくくりつけ、演習場のそこかしこに隠されたテニスボールを拾ってSSボード・バイアスロン部員にぶつけ、SSボード・バイアスロン部はテニス部員が持つ風船を空気弾で割ると言う特殊な勝負をしている」
なんだろう、私の知っているテニス部じゃない。
一時期洗脳されてはいたものの、他の非魔法系の部活と手を取り合っていた紗耶香。
テニス部の事情は知っていたんだけど、たった数ヵ月でここまで変化していたと言う。
「当初の予定では風船に肉かなにかを縛り付けて鷲や鷹に襲わせる予定だったが…動物愛護法の点で問題になってな」
それ以外の問題があるが、それが一番の問題でやれやれと言った顔をする十文字。
「因みにだが、7:3の割合でテニス部が勝っている。
だが、勝利の時は大抵手塚や千葉と言った猛者が参加しており、猛者抜きでは4:6の割合で負けている…そう言った時は高確率で北山と光井が参戦しているが。
しかしまぁ、よくこんなものを考えたものだ。山岳地帯や森での特訓は普通の特訓よりも効率が良く、本当に必要な部分を鍛える事が出来る」
一見、馬鹿に見える特訓だが効率はそこそこ良い。
基礎練習に練習試合だけでは得られない特殊な訓練をしており、成果はそれなりに出ていた。
「ところで、どちらか手塚の電話番号を知らないか?」
「え、光國くんのですか…どうして急に」
「…これは内密に願いたいが、奴を次の部活連会頭に指名する」
「!?」
九月になれば世代交代、各役職次の代に託さなければならない。
生徒会長を押し付けられた達也はやっと止めることが出来て選挙に、風紀委員長は次の誰かが指名され、部活連会頭も次の代に移るのだが
「何故、手塚くんを?」
クビになった元副会長の服部ではなく、手塚を指名したことは意外だった。
元副会長の服部は達也に一度ボコられており一科、二科と言う考えを改めたには改めたのだが、それでも持っていた生徒だった…が、少なくとも能力においてはこの学校でも上位に入る。改心しているので、人間的な問題は無い。
もし光國が調子に乗っているので縛る鎖を作るために部活連会頭を指名すると言うのならば、ビンタの一発でもくれてやろうかと物騒なことを考える市原。
「そう睨むな。
俺は次の部活連会頭が服部よりも、手塚が相応しいと思っているだけだ。
そこに余計な感情はない。確かに手塚の行動は目に余るが、ああいう奴は司波兄妹とは別の方向性で天才で、これから先、必要な人材だ」
「…」
光國は部長職を一学期の間は仕方なくやっていたものの、部誌をはじめとする様々な事は真面目にやっていた。
オジイと言う優秀な顧問を用意したり、変わった練習メニューを用意したりと色々とやっており、十文字はそこを評価している。
「逃げる可能性が出てくるからな…事前に頼んでおきたい」
しかし、光國はあくまでもその気になったらちゃんとどころか物凄くやるだけである。
テニスは何だかんだで好きで、部員も楽しいから好きだからやっているので真面目に部長職をしているだけであり、部活連会頭となれば話は別である。
やる時はやるがやらない時はやらないのが彼のもっとーであり、部活連会頭なんて面倒なものはごめんだと断るのを予想している十文字は交渉に移ろうとするが、肝心の光國が居ない。
連絡しようにも、学校側に登録している連絡先は住んでいる所の固定電話で携帯に直接繋がる番号ではなかった。
「…」
光國はこの夏休み中に学校を止めに来ると読んでおり、どうしたものかと考える市原。
一条に七草に一色を倒して勝ち逃げするのは許されない、魔法師じゃないと言うちゃんとした理由を言えば良いのだが、そうなれば人工魔法師がバレる。
紗耶香も同じ事を考えており、どう誤魔化そうかと考えていると
「ここがテニス部か!!」
魔法科高校じゃない、何処かの中学校の制服を着た男子がテニスのコートに現れた。
「…あいつは確か…」
オープンハイスクールをやっており、自由時間があり開放されてる部活動を部分限定で好きに見て回れと言うことでやって来た一人の男子。
十文字は見覚えがあり、やって来た男子が生徒が全然居ないのに気付き十文字達の事に気付く。
「あんたは確か…」
「お前は、七宝…」
十師族候補であり十師族に選ばれなかった十八の家の一つ、七宝家。
来年高校生になる、七宝琢磨社交界かなんかで顔を見たことあるなと思い出していると、此方に歩み寄ってきた。
「え~っと…」
「…どうも、七宝琢磨です」
いったい誰なのと状況が読めない紗耶香。
七宝は紗耶香の方を向いてペコリと一礼をした。
大きな声で叫んだと思えば、礼儀はちゃんとできてる。あ、育ちが良いんだとなる。
「いきなり現れたと思えば、大声で叫んで…幸い今この場にはテニス部員達は居ないが、仮に試合中だったら迷惑行為にしかならないぞ」
「うぐっ…」
しかし、叫んで現れたことはダメだと普通に怒られる。
「テニス部なら、今は演習場に居ますが…手塚くんは居ませんよ?」
悪いことをしたと反省した七宝を見て、話を進める市原。
此処に来た理由は大方、光國に用事があったか傘下にくだれとか言うどうでも良い事を言いに来たのだろうと予測。
十師族と言うか、名字に十以下の数字を持つ師族候補二十八家は根本的に仲が悪い。
特に同じ数字を持っている家同士はもう本当に仲が悪い、と言っても親同士、親戚同士で仲が悪く、特に気にしてない人物(一色愛梨)とかもいるのだが本当に仲が悪い。
人間、相性が悪く犬猿の仲になりどうあがいでも仲良く出来ない奴が居るには居るのだが、そう言うカテゴリーじゃない、しょうもない腹の読みあいをしたり、充分なのに更に力求める馬鹿が多く、世間から嫌われたり反感を持たれたりして当然じゃないかと市原は最近思い始めた。
「そうか、じゃなくてそうですか…」
光國が居ない事をしょんぼりとする七宝。
「光國くんになんの用だったの?」
「…それは」
「此処がテニス部ね!!」「ちょっと、大声で叫んだら迷惑ってあれ?」
七宝の目的を聞こうとすると、なんかさっきと同じ展開が起きた。
今度は双子の女であり十文字は、市原はその双子が誰なのか知っている。
七草真由美の妹で、七草香澄と七草泉美。七草の双子とか言う双子なだけで異名をつけられた二人であり、その手にはラケットを握られていた。
「…七草ぁ…」
「あれは…なんだ七宝か」
「え~っと、一応聞くけどなんの用なの?」
七草の双子を見ると強く睨む七宝。
七草香澄はどうでもよさげな顔をしており、一触即発な空気を読み取った紗耶香は直ぐに間に入った。何となくだが、予想できるのだが用件を聞いた。
「決まってるじゃありませんか…」
「お姉ちゃんの敵討ちだ!!」
着ていた服を脱ぎ捨てると、漫画の様にテニスウェアに着替えていた七草の双子。
敵討ちでテニスウェアとなると考えられることは一つ。
「クラウド・ボールを挑みに来たの?」
光國が真由美をストレートのフルボッコにしてから一週間ぐらいしかたっていない。
ここ最近、真由美を見ていないし結構ヤバい感じで怒られたり、泣いたりしていて敵討ちに来たと考えるのだが
「クラウド・ボールじゃなくて、テニスもしくはテニヌです。
相手の最も得意としている事で打ち負かす、それが最も最高の勝利で、お姉さまを励ますものになります…」
目に憎しみが宿っている泉美。
ネットの炎上で魔法師が冷たく見られ、姉は生徒会長の座を奪われ、七草は無能と思われ、個人技を発揮する九校戦ではストレートに負け、十年に一人の天才と言われた真由美は色々と哀れ。
ただまぁ、十年に一度とか一人とか言うのは二、三年に一回は出てくるので信用できないが。
とにもかくにも、こんな事になったのは全て手塚光國が悪いのだとなった。実際のところは今まで貯まった魔法師の負の遺産が解き放たれただけなので、光國も国も七草も全部が全部悪い。
「テニスだがテニヌだか知らないが向こうは一人でそっちは二人か?ルール知ってるのか?
いや、悪かった。七草の双子は二人で一人前でどうあがいても姉には一人じゃ勝てないんだったな」
「…それは七草に」
「そこまでだ」
このままだと魔法を使う喧嘩になると判断した十文字は止めた。
これ以上は本当に、特にオープンハイスクールで色々と来ている中でやったらおしまいだ。
「お前達は手塚に用事があるのだろう?それならば、先ずは本人が現れてからだ…市原」
「…分かりました」
こうなった以上は連絡するしか無いなとテレビ電話をかける市原なのだが…
『お掛けになった番号は現在使われておりません』
「え?」
電話は繋がらなかった。
現在電波の届かない所に居るのではなく、番号が使われていないと来た。
どう言うことかと、もしかして自分達と完全に縁を切るつもりなのかとショックを受ける。
「た、大変よって貴女達!?」
「お、お姉さま…」「お、姉ちゃん…」
「なんでこんな所にって、今はそんな暇はないわ…大変なのよ」
「どうした、七草?
…やはり、司波兄妹の飛行術式は問題だったのか?」
どう言うことだとショックで固まっていると、慌ててやって来た真由美。
泉美と香澄は無断でテニス部に来ており、ヤバいと言う顔をするのだが怒らずに苦虫を噛みしめた表情になる。
十文字は手塚が去った後に行われたミラージ・バット本選で達也が発表されたばかりの飛行魔法を深雪用に調整して使わせた事が問題だったのかと考える。
飛行魔法は凄いのだが、ミラージ・バットのルールを根底から覆すものであり、運営もその辺の調整が出来ていない。
来年辺りから禁止になるかミラージ・バットそのものが無くなるんじゃないかと危惧しており、苦情が入ってミラージ・バット優勝取り消しになったんじゃとなるのだが真由美は首を横に振る。そんなものよりも、とんでもない事
「まだ確かな証拠とかは無いんだけど……手塚くんが、死んだって……」
手塚光國の死を教えた。