「どうしたもんかな…」
世の中には関わって良い主人公と関わってはいけない主人公がいる。
推理物の主人公とは関わってはいけないと思いがちだがむしろ関わらないと犯人に殺される可能性がある。
まぁ、なにが言いたいかと言えばお兄様なんていう地雷と関わってられるかと入学式では別の席に座り、音を消し、気配を完全に消していた。
「…」
司波達也二科生御一行と仲良くならず、学校内をぶらつく光國。
部活動紹介等は数日後にあるのだが、それでも活動している部活動はあった。
「やっぱりここにいたのね、光國」
「リーナ、か…」
部活の様子を眺めていると、リーナが司波兄妹+二科生女子を引き連れてやって来た。
何時の間にか仲良くなっている、コミュ力たっけーな、おい!出来れば仲良くして欲しくなかった…と光國は考える。
「帰るなら、先に帰っていてくれ。
オレはちょっと見てからいくから…どうせ早く帰っても銭湯開いてないし」
「銭湯…銭湯!?」
「家は家賃が安くて第一高校が近いが、風呂だけはついていないから銭湯通いだ。
と言うか、大家がその銭湯を経営しているから確実に狙って作っている…年間定期券と言う物があるから確実だろうな」
「それ引っ越した方が良いわよ!」
「いや…それは出来ない。
仮に風呂がある家に引っ越した場合はなにかの拍子で風呂あがりのリーナと鉢合わせする可能性がある。」
「「え!?」」
活発そうな二科生の女子とおしとやかなこの時代では珍しい眼鏡娘(巨乳)が固まった。
それを見てリーナはドヤ顔で胸をはって一緒に暮らしている事を言った。
「魔法師としての勉強も大事だけど、色々と楽しまないといけないわよ」
ワンランク上の女感を醸し出すリーナだが光國は別の方向を振り向いた。
「あ、自己紹介がまだだったわね!私は千葉エリカ、エリカって呼んで!」
「柴田美月です、美月と呼んでください」
「…手塚だ、お前達と同じ1-Eだ。
オレはちょっと見てから帰る…だから、リーナを連れ回してくれ。
高嶺の花過ぎるのか、オレに構ってるせいか、友人らしい友人を作ることが出来なくてな…」
活発そうな女子ことエリカと眼鏡娘(巨乳)と自己紹介を済ませるとリーナを任せようとする。
しかし、リーナは光國も同じでしょ!と腕を引っ張るのだが、微動だにしない。
「先程からなにを御覧になっているのですか?」
「…別に…」
なにを見物しているか気になった深雪。
光國に聞いたが、答えてはくれなかったが
「深雪、この辺はテニス部が使っている場所だ」
お兄様がフォローをした。
「そう言えば、エリカ達はなにか部活動をするつもり?」
そしてその上にリーナはフォローをした。
余り触れてはいけない部分に触れそうなので、話題を変える。
「私?私はテニス部に入るつもりよ!」
「…そ、そうなのテニス部にね…」
「リーナ、余計な気遣いは無用だ」
変えた先に待ち構えていた地雷を踏み抜いたが、特に怒りはしない光國。
「あ、手塚もテニス部に入るつもりなの?
男子の方、今年から東京のテニスの名門校にプロ顔負けの奴が入ったらしいから激戦になるわよ」
「清純だろう、知っている…行くか」
地雷を踏み抜いた末にテニス部の見物をやめる光國。
これ以上、ここにいても無駄だと司波御一行に加わる。
「オレが居ないと両手に花どころの騒ぎじゃないな。
同性の友人ではなくいきなり異性の友人を作るとは…お前の兄はプレイボーイなのか?」
「少し、黙ってください」
そして妹を煽った。
春風が涼しいどころか寒く若干だが霜が出来た。
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魔法科高校に入学して二日目。
二科生である光國は一科生であるリーナと登校してきたのだが、何故こんな奴と一緒にと言う視線を向けられている。
「スクールカーストは何処にでもあるけれど、ここまで堂々としているといっそ清々しいわね」
「…成果主義の学校だからな」
「光國がもっと堂々としてれば変わったかもしれないわよ?」
「…」
普段は青学の柱(眼鏡なし)で老け顔のおっさん扱いをされる彼は余り目立ちたくないので二重のマスクに伊達眼鏡をつけており、近付けにくい雰囲気を醸し出している。
隣にいるリーナとの組み合わせは二科生から見れば、八方美人が陰キャの面倒を見ている状態である。
「オレ、証明写真を取る際に年齢確認をされたんだが」
「ップ…お、大人びているって証拠よ!」
「お前、毎年オレが審査に引っ掛かってるのを忘れたとは言わせんぞ」
リーナの実家に向かう度に引っ掛かる入国審査。
必死になって笑いを抑えているリーナを見て、少しだけ怒るが直ぐにその怒りは消える。
校舎に入り、リーナと分かれて教室へと向かった光國は直ぐに寝たふりをする。寝たふりをした直後にエリカ達の声を聞いたのでセーフと安心して寝たふりをする。
「(…どーっすっかなぁ…)」
魔法科高校の劣等生、記念すべき第一話と言うか記念すべき第一編。
初の流石ですお兄様はなんと学校にテロリストがやって来ると言うクソみたいな展開。
魔法師全体が化物扱いされるのはどうだって良い、魔法師の顔とも言える連中が傲慢な奴等が多かったりするので自業自得な部分が結構多い。
入学して早々にテロリストに襲われる学校ってどうよ?と真剣に考える。
自分が嘗て魔法師じゃなくてよかったと思えるのは、入学して早々にテロリストがやって来るのが一番の要因だろう。
「起きろ、手塚」
「なんだ、達也…と、西城だったか?」
あれこれ考えていると達也に起こされる光國。
達也を見ると隣に、会話をしたことのない男子生徒が居たが名前を知っているので呼んだ。
「お、知ってるのか?」
「細かなのは無理でも顔と名前は調べれるからな…流石に覚えておかないと失礼だろう」
「いや、普通はそこまでしねえよ。
っと、自己紹介がまだだったな!俺は西城レオンハルト、レオで良いぜ!」
「手塚だ…飴ちゃんを舐めるか?」
「お、サンキュー!」
ポケットから取り出した飴を舐めるレオ。
原作キャラと特に歪な関係にはならず、普通に仲良くできるなと安心して寝たふりをしようとする光國だが達也が止めた。
「飴を持ち歩いているのか?」
「油断すると体重維持が出来なくなるからな…キャラメルもある、甘い物は大事だぞ」
「体重維持か…」
飴がポケットに入っている理由を聞き、キャラメルを貰う達也。
嘗て世界最強と言われていた魔法師、九島烈の遠縁だが九島と言う十師族の血を継いでいるアンジェリーナ=クドウ=シールズ。
魔法師としてのセンスは勿論のこと妹の深雪と同等とは言わないが群を抜いている美しさを持ち、一科生、二科生と言った差別的な考えをしない人格者と言える魔法師だ。
そんな彼女と共にいる手塚光國とは何者なのか?達也とは方向性は違えども、一部の生徒もそれが気になっていた。
自分と深雪の会話を少しだけ聞いて、自分が実戦向きだと言われ、自分と同じタイプだとリーナは言っていた。更にはより実力がわかる試験方法を考えていた。
マスクや眼鏡で顔を隠しているが、名前と素顔の写真は学校の端末を使えば簡単に手に入り、素顔はどう見ても高校生には見えない、25歳のサラリーマンと言っても違和感がない顔である。むしろ高校生の方がおかしい。
なにか裏があると思った達也はレオとの自己紹介を出しにして、聞き出そうとするといきなり引っ掛かった。
油断すると痩せる、体重維持、更には飴の事を飴ちゃんと言った。
本人は気付いているかどうかは不明だが、そんな事は普通の人は言わない。
油断すると痩せる程の動きをしている人だと、飴ちゃんなんて普通の人は言わない、潜入捜査でやって来た九島のスパイかと考察する。
初対面のレオの名字と顔を知っているのも、それだと違和感がない。
「!?」
「因みにそれはジンギスカンキャラメルだ」
「うげっ、それってアレだろ…北海道で一番クソ不味い食べ物って言われる」
レオも食べたので自分も食べておかないと怪しまれるなとキャラメルを口にする達也。
その瞬間、今までに食べたことのない味がして口の中が不愉快になってしまった。
「百味ビーンズを一人で全て食べきった後に食べれば…まぁ、不味いが、こう言うのも馴れておかないと…何時いかなる時にとんでもないものを食わされるか分かったもんじゃない…後、こう言うのってたまにチャレンジしたくなる…+クソジジイへの嫌がらせ」
三年前に見たイギリス料理は今でも鮮烈だった。
「クソジジイ?」
「九島のクソジジイ」
「!?」
光國の口からでたとんでも発言に驚く達也。
日本のそれなりの魔法師ならば絶対に敬意を払う存在である九島烈との関係は愚かクソジジイ呼ばわり。祖父と孫の関係でもそんな事を言う魔法師はいないだろう。
「オレみたいなのがリーナと一緒に居るのが謎で気になってるんだろ?
…仲のよさはともかく、お前と深雪は兄妹だから一緒に居ても極普通だか、オレとリーナは全く違うからな。オレとお前は似た感じの様に見えるが、全然違うからな」
「…ああ、悪いな。少しだけ気になっていたんだ」
九島烈をクソジジイ扱いした際に表情を変えてしまい調べに来ている事が見抜かれたが、方向性が違っていたと内心ホッとする達也だが、調べに来ている事を光國は気付いている。
「まぁ、色々とあった…オレは説明するのがはずか…面倒だからリーナに聞いてくれ。」
「…ああ…」
はぐらかされたと感じるが、寝たふりをした光國を起こしてしまうのもどうかと思った達也はそれ以上は聞かなかった。
詳しいことはリーナに聞けばもしかすると教えてくれるかもしれないと言う希望に託そうとする。
「あ、そろそろ時間だ」
「え、マジ?」
もう終わろうとしたその矢先飴を舐め終えたレオが、授業開始だと気付き席に戻ると光國は起きた。なんとも締まらないはじまりだった。