恐縮です。
皆さまがイメージしているレクター博士で間違いありません。ポッター世界に転移したタイミングは、映画「ハンニバル」が始まる前あたりになります。
小生、レクター博士は映画・ドラマの人物では1番気に入っていまして、よく色んなシチュエーションを妄想しておりました。ちなみにドラマ版の博士はいいですよ。ファンとしてお勧めしたいです。
しかし小説に起こして書いたことは無いので、稚拙な文章になってしまいますことをお許しください。
できる限り、博士に無礼と思われぬよう努力して書いていきます。よろしくお願いします。
ホグワーツの手紙を受け取り、新たに魔法界という世界へ足を踏み入れることに決め、ダイアゴン横丁にて入学準備の買い出しを行なった。
そして明日には列車に乗り込み、ついにホグワーツの校舎へと訪れるのだ。
「これまで」と「これから」が明確に変化する。
その変化について考察すべく、ハンニバルはこれまでの経緯を再整理していた。
(私がこちらの世界に"移って"から数日が経ったが、未だにこの現象が何なのかは理解を超えている。夢でもなければ、洗脳されているわけでもない。紛れもなく現実だ。)
あの時。
突然、目の前の景色が変わったのだ。
本の積まれたデスクは勉強机に。
聞いていた室内音楽は途絶え、代わりに年頃の子供が聞きそうなジャズが流れてきた。
他に匹敵する者がいないほどの聡明なる頭脳を持ってしても、状況の理解には数十分を要した。
いや、状況は理解できる。
自分の置かれた環境、自分の新しい身体を認識することは簡単にできる。
しかし因果関係が破綻していた。
あらゆる仮説を立てたが、どれも現実に起きた現象とそぐわない。
結局、まさに神のいたずらとでも呼ぶべきことが起きたのだと、結論づける他になかった。
(神もまた酔狂なことをするものだ。これまで私がいた世界と、この世界はほとんど変わらない。年号まで同じ歴史を辿っている。
しかし存在しているはずの人物は、いない。社会的に同じ組織、同じ役割は存在しているが、役割を担う人物は全く別人になっている。私の知る人々は、この世界にはいない。)
彼の知る人も、彼を知る人もいない。
それは彼の残虐さを認識できている者が、この世にはいないことを意味していた。
さらに、2つの世界には共通項は多く、記憶の宮殿にある知識はそのまま使えることも分かった。
ならば金や身分などは、自分であればいくらでも手に入れられるだろう。若い身体に、綺麗な戸籍もある。
まさに、人生をやり直すのに必要なものが全て揃っていた。いくらでも計画通りに人生を送ることができる。なぜなら既に、この社会を攻略する知恵は身につけている。
しかし、「この社会」が「マグル」と呼ばれていることは知らなかった。
(フクロウが手紙を運んできた時には驚いた。これほどの芸を為せる人物とはどのような者か、興味があった。
だがマクゴナガルと名乗ったあの女性。まさか猫から人へ変身するとは……こうも理解できない現象が続くとは。
だが人知を超えた出来事が連続で起きたことから、この"新しい現実"には物理法則ではない別の法則が存在していることがわかった。
私はこの法則を操れるだろうか?)
ハンニバルは新しい現実を受け入れた。
そして、
この世界にて自分が何を思い、どう行動していくのか、この世界に存在している法則とはどのようなものなのか。
興味があった。
(未知を前に心が躍るなどずいぶん久しぶりだ。)
情報の整理を終えたハンニバルは翌日に備え眠る。
キングスクロス駅 9と4分の3番線と書かれたチケットについてのみ、答えが出ていないが、駅まで行けばどうにかできるだろう。何でもヒントになる。気づけばいい。
明日以降の自分が想像できないことへの愉しみを感じながら、眠りに落ちた。
ハンニバルはキングスクロス駅のホームに来ていた。
9と4分の3番線。この謎は解けていなかったが、全ての入学者に配られているであろうことを考えれば、あまりに難しい謎というわけでもないだろう。
魔法を行使しなくとも何とかなるはずだ。
そう考えながら周囲を見渡す。するとフクロウやネズミ、猫のペットを籠に入れて運ぶ者が数名いることに気づいた。
(制服は着ていないが、荷物の量もそれほど変わらない。年齢も10代のみ。ホグワーツの生徒である可能性がある。)
すると、どうしたことだろう。
目をつけていた若者は、柱を曲がって進んでいくのではなく、柱に向かって曲がり進んでいった。
…そして、柱の中へと入っていってしまった。
その柱は、9番ホームと10番ホームの間にある4本の柱のうち、ちょうど3番目。
(そういうことか。)
ハンニバルは現実のみ受け入れる。
何のためらいもなく、自分も柱に入っていった。
柱を抜け、9と4分の3番ホームに到着すると、先ほど目をつけたようなホグワーツの生徒たちで溢れかえっていた。
それぞれが大量の荷物と、ペットを連れ運んでいる。
年齢は10代のみ、様々な国から来ているようだ。
この人間たちの中に、怪物は入り込む。
この列車に乗り込んだ瞬間から…
列車に入り、誰もいない席を見つけ座る。
汽笛が聞こえるとともに、窓の外の景色が流れ出した。
コンッコンッ
列車が出発して間もない頃、
少しぽっちゃりとした男の子がコンパートメントのドアをノックしてきた。
「ねぇ、ここ空いてたら座ってもいい?他の席が埋まってて。」
「もちろん。」
頼りなさげな抑揚で頼んできた男の子は、許可を得て安心するかのように席に座った。
「君も僕と同い年ぐらいだけど、ホグワーツの新入生なの?」
「その通りだ。ハンニバルという。同い年と言うと、君も新入生かな。」
「うん。ロナルド・ウィーズリーっていうんだ。よろし
コンッコンッ
ロンが話していると、またノックされた。
見ればダイアゴン横丁で出会った、栗毛の少女がいた。
「ねぇ、ヒキガエ…あらあなたハンニバルじゃない!こんなところで会えるなんて奇遇ね!」
「ハーマイオニー。また会えたね。何かいいかけてたけど?」
「あっそうなの。ヒキガエルを見なかった?ねぇハンニバル、悪いけど一緒に探してもらえない?」
「探したいのは僕もだが、全てのコンパートメントをノックして回るのは迷惑じゃないかな?みんなが降りる時に列車内を全て探せばいい。」
「そうかもしれないけど…。あっ、突然訪ねて嫌だった?」
「そうじゃないよ。ただそう思う人がいるかもと考えただけだ。それに人が降りた後の方が、細かい所まで探しやすい。僕も手伝うから、到着してから一緒に探すのはどうかな。いったんここで話をしようよ、せっかく奇遇に会ったんだ。」
「うーん、そうね。ネビルには悪いけど…少しお話ししていくわ。」
「ハンニバル、この子は知り合いなの?」
「そうだ。この間、ダイアゴン横丁で知り合った。本屋でね。」
「ハーマイオニーよ。よろしくね、ロン。そうだハンニバル、あれから教えてもらった通りにやったわ。1番思い入れのある部屋と、廊下なら、いつでも細かい所まで思い出せるようにしたわ。」
「教えた記憶術だね。そのまま、部屋を増やしていくんだ。既にある部屋を何度も歩いて堅固な記憶にしながらね。」
ハーマイオニーとハンニバルにしかわからない話題が始まり、ロンが少し難しい顔をしていたが、ハンニバルはあえて無視していた。ハーマイオニーは気づいていなかった。
やがて、ロンの居心地の悪さが大きくなりつつある段階で、ハンニバルはロンにも話を振った。
「ああ、すまないロン。本屋で会った時の話が終わってなかったんだ。こちらだけで話してすまない、無礼だった。」
「気にしないでよ。じゃあハーマイオニーも新入生なのか。2人とも、どの寮に入るか決めたの?僕はグリフィンドールかな、兄弟揃ってグリフィンドールだし」
「私もグリフィンドールがいいかな。レイブンクローもいいけど…」
「僕は決めていない。どう選別されるのかに興味があるからね。」
「性格で選ばれるって話だぜ。いい奴はグリフィンドール、ひねくれた奴はスリザリンに入るんだ。」
「手段を選ばない者が集まるだけあって、風評が良くないようだな。考えものだ。」
「純血主義が多すぎるんだよ。おかげで嫌な奴が固まって、もっと嫌な奴になる。パパもよく言ってるよ。」
周囲の目とは大事なものである。
大衆には悪を悪とばれてはならないのだ。
狡猾なのはいいが、信頼性の低い寮に入るか、否か。
恐らく放っておけばスリザリンに入ることになる。
似たような性格の者が集められることから、操りやすい人間は多いだろう。
しかし純血主義に傾倒することはあまり良いことではない。そんな小さな枠組みを押し付けられるつもりは無かった。まぁ、ハンニバルはそんなものいくらでも煙に巻けるのだが。
「そうなのか。でも一方的に罵るのは良くないんじゃないかな。これでは陰口だ。僕までグリフィンドールには入れなくなってしまう。」
ロンを煽る。
「うっ…でも純血主義は本当のことなんだ。マグルを忌み嫌ってる奴が他の寮より多いのはほんとだよ。」
「そうか。組み分けがフェアに行われることを祈ってる。」
雑談は続き、列車は走り続ける。
ホグワーツに着いた時、ネビルのヒキガエルは見つかっていたようだ。ハーマイオニーがカエルを再び探そうとした時には、少し疲れたネビルの顔があった。
ハーマイオニーは全力で探そうとしていたよ、とハンニバルは声をかけたが、ネビルの反応は薄かった。カエルを忘れて楽しそうに談笑する彼女の姿をネビルは見ていたのだ。
コンパートメントの窓から見ていたネビルを、顔は知らなかったがハンニバルはカエルの主人だと気づいていた。その上で、放置していた。
ハンニバルが同級生とどう関わっていくか、だんだんと決まりつつあった。
「それでは新入生歓迎会を始める前に、組み分けを行います!呼ばれた者は組み分け帽子を被るように!」
1人1人が帽子を被り、寮を告げられていく。
中には時間がかかる者もいた。
生き残った男の子などがそうだ。
ハリーと呼ばれたその子が呼ばれた途端、周囲は水を打ったように静まり返っていた。例のあの人の影響力が伺える。
その静寂も長く続いたが、最後にはグリフィンドールと告げられ、寮の席に着く。グリフィンドールの席は祭りのような騒ぎになっていた。
(あの組み分け帽子の仕組みは開心術か。それなら人によって瞬時に答えを出せたり、迷ったりする理由も納得だ。)
「ハンニバル・レクター!!」
とうとう名が呼ばれた。
上品な雰囲気を漂わせながら、椅子まで歩く。
まるで少年とは思えない優雅さを感じさせる。
大抵の子供には緊張や好奇心というものが見えたが、その佇まいは上品さと優雅さにより塗りつぶされていた。
その子供とは思えぬ雰囲気に、反応した者がいた。
老人は目を見開く。あの若き少年に、かつての若き闇の帝王を幻視した。ただ歩くだけのその姿に。
ハンニバルは椅子に座り、組み分け帽子を被る。
そして、話しかけた。
(組み分ける前に、ひとつ尋ねたいことがある。)
「ほぅ…これは珍しい。私に心を読ませて会話しようとする者などはじめてだ。質問とは、何かね?」
(寮分けとは、性格のみで決めているのか?もしそうなら、ポッターのように悩んだりはしないはずだ。では、性格の他には何を?才能か?)
「たしかに、主に性格だが、彼には本人の意思があった。スリザリンは嫌だと、呟いていたものでな。希望の寮に入れてやった。」
(なるほど。では私も希望したい。何も望まなければスリザリンに入るのだろうが、私は自分のあり方をスリザリンに染めたくはない。グリフィンドールのような場所で6年間を過ごしたい考えている。)
「むぅ…難しい。希望をくむのは簡単だ。そして確かに、何も言われなければスリザリンに入れていたのも確かだ。しかし君の言うことには感情を感じない。意図が、読めぬ。」
(どのような意図であれ、私はスリザリンではなくグリフィンドールを希望する。狡猾より騎士道を取りたいと望む新入生に、逆の道を歩ませるのか?)
「……そう言われては仕方あるまい。
………グリフィンドール!!!」
ハンニバルは満足そうにグリフィンドール席へ迎えられていく。
組み分け帽子は苦虫を噛み潰したような表情をしていた。帽子が、さらにしわくちゃになっただけなのだが。
「同じ寮ね!よかったわ!」
「君もグリフィンドールだと思ってたよ!よろしく!」
ロンとハーマイオニーが祝福する。
校長席に座った老人は判断に困っていた。
(一瞬じゃが、トムとあの子を重ねてしもうた。あの子にそういう要素があるのか…?グリフィンドールと告げられ、友と笑い合うあの子に…?なぜ、あのハンニバルという子に寒気を覚えるのじゃ?)
組み分けた帽子は判断を終えていた。
(彼はとても普通の子供ではない。ハリーのように訴えて寮を希望したわけでもなく、マルフォイのようにそれ以外にはあり得ぬという意思があったわけでもない。ただ、淡々と私にグリフィンドールと叫ばせた。
開心術で見えたのは、愛の感情、その先にはうっすらと闇。彼の言うスリザリンではなくグリフィンドールに身を置きたいという言葉とも一致する。
だが、毎年のように新入生の心を覗いてきた。だからこそ、あのような心象の構造はあり得ぬと知っている。…開心術を見越してこの私を操った、か?
考えすぎか?だかそれでも、あの子は危険だ。)
ハンニバルの記憶の宮殿は応用が効く。
愛に関する部屋を訪れ、その感情を味わいながら椅子に座った。己の感情をコントロールすることなど、ハンニバルには容易だった。
感情に加えて考え方を操れば、心を読まれるという状況を利用して嘘を信じ込ませることもできる。
(組み分け帽子は私を信用してはいなかった。これは開心術が私の予想を上回っていたためか、組み分け帽子としての経験からか。後に確かめておく必要がある。)
そして、ハンニバルは事態を掌握していた。
そして何も気づかぬ生徒たちは、組み分け困難者と言えるハンニバルを心から歓迎していた。
彼がグリフィンドールにきた理由が、スリザリンよりもからかった時の反応が楽しめそうだから、という気まぐれである事も知らずに。
羊たちは、羊の皮を被った怪物を歓迎した。