艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について― 作:謎のks
「…あ、あれか!」
僕は目の前に見え始めた大きな船に向かって叫んだ。そこには商船とそれを襲う深海棲艦の姿が…!
甲板や、僕らから見えた船の上には少なくとも人らしき影はない、恐らく中に避難しているのだろうが、ところどころから小規模な爆発が…このままいけばどうなるか分からない。
「先ずはこちらに注意を向けさせる…金剛!」
「イエス! バーニングゥラァアアアブ!!」
天龍の号令(提督は僕ナンダケドナー)により、金剛の艦砲から威嚇射撃が撃たれ、敵と僕らの間に水柱が建たれ轟音が鳴り響いた。
『……!』
それに気づいて振り返ったのは空母ヲ級。よしよしちゃんとヲ級が旗艦……んん?
『……』
「なんか二体いるような…?」
「それよかアレのが一番厄介なんじゃね?」
望月が指差す方向には、ヲ級たちの間の小さな影…いや”Wヲ級”より厄介なのそうそう居ない…け……ど…。
『レレレノレ〜☆ (レ級)』
………(殺意)
「テートクの顔が一瞬で殺意に溢れてマース!?」
「拓人さん、気を確かに〜」
「誰のせいだと思ってんの!? もうアレだ、怒りを解放してスーパー野菜人ツーになっちゃうよ僕!!」
「それだけ喋れたら、大丈夫ですね〜?」
「いや何が!?」
…はい、状況整理。僕らの目の前に立ち塞がるのは、空母ヲ級エリート×2、そして旗艦であろう「戦艦レ級」。そう、あの歩く殺戮兵器(リーサルウェポン)の彼女である。
駆逐艦ぐらいの背丈の少女、黒いパーカーにフードを被った異様な出で立ち。どこか憎めない雰囲気に騙されるなかれ、彼女は姫クラスと同等の、いや下手な姫よりチョーツヨである。
装甲、火力、航空爆撃、先制雷撃…と「まるでボス要素てんこ盛り」のバカジャネーノな性能の彼女、どんな艦娘だろうと一撃必殺、一千万回(聖戦的な)。とにかく絶対に相手にしたくない相手だと言うことは、お分かりいただけたでしょうか?
「マジふざけてるの!? アレ出されたら無理ゲーだって言わなくても分かるでしょ!! レベル1のパーティで裏ボスに挑むようなものだよ!!?」
「いや〜、この世界観なら大丈夫でしょ〜? このメンバーならラスボス級にグレードダウンしますから〜☆」
「それでも無理難題だよね!?」
「もういい…。はなっから期待はしていない。離れていろ、少し激しくなるだろう」
天龍は僕を後ろに下がらせると、眼前のニヤついた顔の幼女を見据える。
冷たい緊張感が走り、艦隊と深海のモノたちの因縁の戦いが始まろうとしていた…。
・・・・・
──敵艦補足、合戦準備 …
◇
拓人
金剛
天龍
望月
綾波
野分
翔鶴
vs
戦艦レ級
空母ヲ級elite×2
駆逐イ級×3
◇
勝利条件:敵艦隊の殲滅。
敗北条件:艦隊の全滅、又は商船の完全破壊。
…戦闘開始 !
敵は戦艦レ級率いる水上打撃部隊。内訳はレ級(旗艦)、空母ヲ級二隻、そして…イ級だっけ? ザコ駆逐艦三隻。ぶっちゃけ名前とか一文字違いだし、シルエットも大差ないからなんとなくだけど。あぁ確か口が開いていた出っ歯だったなぁ…的な?
というか、レ級がいる時点で詰みゲーなのによく耐えれたなあの商船の人たち? レ級たちが遊んでたのかな? まぁどっちでもいいか?
金剛たちはレ級たちを商船からなるべく離すべく、レ級たちとは反対方向に舵を切る。レ級は…何考えてるかわからないニヤニヤした嗤いで艦隊を追う…よしよし、食いついたか。
「じゃあ僕も…」
「ダメですよ〜? 貴方は商船の皆さんの無事を確認しないと〜」
「あ、そっか。うー、向こうが気になるんだけどなぁ…?」
艦娘と深海棲艦との戦い、という絶好の機会に後ろ髪引かれながら、僕は商船へと駆け寄る。
「…えっと、鎮守府連合から派遣された者ですー! 無事を確認したいので、生存者は甲板に顔出して下さいー!!」
大声で叫び、船の乗員に呼びかけてみる。辺りに反響音が響いたが反応がない、やられちゃった? それとも聞こえてないとか? 普段から大声出しているワケでもないし。
「…っ! お、おーい!! アンタだろ、今叫んだの!!」
少しして、甲板から中年のガタイのいいおっさんが僕を呼んだ。
「えっと、貴方は?」
「ああ! 俺はこの商船の船長だ! 娘が助けを呼んでくれたんだな! あの化け物たちも居なくなってらぁ!」
船長を名乗る男はホッとしたような顔で僕らの到着を喜んだ。
「えっと、深海棲艦は僕らが相手しますから、この隙に逃げて下さい!」
「分かった! …しかしアンタ提督だろ? 最近の提督は海の上立てるんだなぁ?」
「あはは、この身体は特異体質で…それより早く避難を!」
「よし! ありがとよ旦那! いつかアンタとも取り引きさせてくれ! とびっきりのアイテムを紹介するぜ!!」
ニカッと厳つい顔とはギャップがある子供のような笑顔を浮かべながら、船長は船内へ戻っていく…ほどなく船が動いてその場を離れていき、僕はその後ろ姿を見送った…。
「…旦那、かぁ」
「拓人さんは「クソガキ」って言われてもおかしくないですのに〜」
「うるさいよ!? …はぁ、でもこれで………っ!?」
遠くの水平線から水柱と轟音が鳴り響いた…アレ、金剛たちが?
「…行かなきゃ!」
僕は滑りながら、彼女の元へ急ぐ…何故なら。
「金剛の勇姿を…この目に焼き付けなきゃ!」
「でぇすよねぇ〜〜〜ww」
カメラ小僧の気持ちってこうなのかな? と暢気に考えながら、僕は金剛たちの様子を見に行く…。
・・・・・
──金剛たちは、商船を襲うレ級たちを引き離すために、レ級たちの気を引きながら商船と離れたポイントへ移動した。
レ級たちと対峙する艦隊、金剛の牽制射撃、天龍の人頭指揮、その他メンバーも各々の能力を遺憾なく発揮する…しかしながら。
「…どうにもきな臭い」
天龍は、戦場を渡り歩く「傭兵」である。ある時は国同士の戦いに、またある時は国に反旗を翻したレジスタンスの一員として、はたまたある時には、艦娘として国の防衛戦にも参加した…ありとあらゆる戦いの状況を経験した、その「眼」が映した結論は…「罠」。
「…ふむ」
敵旗艦であろうレ級を見やる天龍、ポーカーフェイスとはまた違う「意思を汲み取るのが難しい」…一貫した嗤いを浮かべながら、レ級はある一点を見つめた。
「もう少しデース! 皆さーん! 頑張っていきまショー!!」
それは、こちらの旗艦である「金剛」だった…ただでさえ狂気じみたその顔を更に歪ませ、黒いフードの狩人は獲物を見据え嗤う。
天龍は視線をレ級の口元に落とす、ここからだと何を言っているか聞こえないが、口の動き(読唇術)で何を呟かんとするか思考する。
『…イ………テ……』
…成る程、と天龍はあの狂ジンが何を言わんとするか理解する。であれば…?
「狙いは…最初から"アイツ"だった……っ!」
この状況そのものすら、敵が作り出した”虚事”…天龍が事態の深刻さを感じた瞬間、レ級に動きがあった。
『…キヒ! キヒヒヒヒ!!!』
レ級は何もないはずの手の平を広げると、黒い靄が彼女の右手に集束されていき…「何か」を形作った。
「…!」
それは黒い靄を纏った「大鎌」。波動を鎌の形にしたモノのようだが、レ級がそれを振り回すと、ヒュンと空気が切れる音が聞こえる…切れ味は抜群のようだ。
『キヒヒヒヒ!!』
「驚いた…ここまでとは」
天龍は内心仰天していた。最近になって脅威として現れた深海棲艦、艦娘以外のありとあらゆる力を無効化する異能を有する。つまりは「海魔」と同列の存在と断定され、艦娘たちは人類の守護者として深海棲艦と戦い、今に至る。
海魔ほどの脅威ではなくとも、この灰色のモノたちは未だに得体が知れない。死人が化け物に成り果てた…そう、まるで「艦娘」のような彼女たちは、この世界で独自の進化を遂げた艦娘たちと同じく、この特異な環境が、彼女らに変化をもたらしたのかもしれない。
「だとしても…」
そう、姫クラスならまだしも一介の戦艦クラスがここまでの力を手に入れるとは…天龍は訝しんだ。何か「異変」が起きているのか?
『キッヒヒヒヒ!』
死神は答えずただ嗤う。そう、死神。その鎌で獲物を狩りたくて刈りたくてカリタクテ仕方ない、黒衣のフードに身を包む幼気な少女。しかしその大きく瞠いた眼(まなこ)には、敵対に値する狂気が滲み出ていた。
『キヒャア!』
レ級は飛び上がり、降下ざまに手にした得物を力一杯振り回す、勢いに任せた一撃を受け止めたのは、綾波。
「…相殺」
同じく得物の斧をブン回す。巨大な二対の斬撃が弧を描きぶつかり合った、鉄と鉄を激しく打ち付けたような重い金属音が、辺り一面に不気味に木霊した。
『キヒヒヒヒ!』
ケタケタと嗤う死神は、その鎌刃を再び綾波に向けて振り下ろす。
「…不味いな」
このままではジリ貧、相討ちもあり得る。助けに入ろうとする天龍たちの前に、ヲ級たちから発艦した深海艦載機が。
「…っち!」
「不意打ちとは卑怯な! 美しくない、実に醜い!!」
野分は自身の怒りを彼女なりの言葉で表現する。金剛たちは投下された爆弾をそれぞれ回避しながら立ち往生していた。
『……ッキ!!』
その時、レ級の尻尾がおっ立つ、先端には凶々しい艦砲型の化け物(彼女の深海艤装と思われる)の口が開いていた。その刹那、圧縮されたエネルギー弾が発射される。狙いは…
「…っ!」
「ショーカク!?」
翔鶴、艦隊の戦力中枢にいる空母を叩いて弱体化させる作戦。
しかし天龍はあの程度なら避けられると確信していた、彼女の実力は演習時に周知済みだ、高機動性に長けた彼女なら柳に風と受け流すであろうと…しかし事実は違った。
「………」
翔鶴は…構えを解き、棒立ち同然となった。
「っ!? ショーカク! 避けて!!」
「何をやってる! 動け! 沈んでしまうぞ!!」
天龍は叫んだ、しかし届かない。金剛は駆け寄るがおそらく間に合わないだろう。
「………」
「ショーカク!!!」
金剛の悲鳴に似た叫びも虚しく、レ級の凶弾は刻一刻と翔鶴の艦体を破壊せんと迫る。しかし翔鶴は──むしろ喜びに満ちた表情で──天を仰いだ。
「…あぁ、これでようやく終わるのね? やっと……貴女のところに逝けるわ」
彼女がなぜそう呟いたのかは分からない、しかし"結末"はすぐそこまで来ていた…。
「…!?」
──「彼」の結末は。
「……っ!!」
「テートク!?」
まさかの展開。提督は寸でのところで翔鶴の前に壁として立ち塞がり、そのままレ級の砲撃を受けた。
「テエエエトクウウウ!!!」
金剛のやり切れない怒りと無念が混じり合った顔は、その場の悲壮感を表していた………。