艦これすとーりーず ―僕が異世界版艦これの提督になった件について―   作:謎のks

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 なんとこのお話で100話目だそうです。スゲェ。
 だからといって特に何かあるわけではないですが、しょうがないね?


最後のサイコ・サイエンティスト

 …ちょっと待って、お願いだから整理させて。

 

 南木鎮守府突入時、入り口から僕たちを見つめる影があった。それは──南木鎮守府提督、だという。

 死んだはずの彼が何故? 僕らの疑問を他所に南木提督は鎮守府内へと入っていってしまい、僕らはそれを追いかける。

 辿り着いた先は作戦司令室だった、福数のコンピュータの並ぶその部屋の床には謎の死体があった…!

 

 ──それと同時に謎の声が響くと、コンピュータに映し出されたのは…死体として倒れていた白衣の人物と「同一人物」の顔だった。

 

 一見すると眼鏡を掛けてインテリっぽい雰囲気を出してる、正に研究者って出立ちだけど…問題は「声」だ。

 

『やぁ〜君が特異点だネェ! 会えて光栄だヨヴェイビー、こんな状態になる前に会えてたらもっと良かったんだけどネ!』

 

 …台詞から察して下さい。いや、ね? こんな終盤もしゅうばんによくこんな「爆弾」を入れて来たね?! 下手したら雰囲気台無しだよ!! 敢えて言うと…花○君じゃねーか! 流石にあの個性的な髪型はしてないけどボサボサって感じだけど!?

 

「…タクト、さっきからニヤついてるけど…どうしたの?」

 

 金剛が僕を心配…いや訝しんで聞いてくる、お願いだから聞かないで…言っちゃいそうだから、ちび〇〇子ちゃんって口走りそうだから。

 

「な、何でもないよー、アハハ…ッ!」

『ン~! 無理もないよネェ、死体として倒れているぼくを見た矢先に、コンピューター内に同じ顔のぼくが在るんだからサ! 許してくれたマエこれもぼくが天才すぎるせいなのサヴェイビー!』

「(そっちじゃないんだよなぁ…;)」

「コマンダン…どうなされたのですか?」

「あぁうん、本当に大丈夫だから…それにしても、あそこの人の喋り方とか、野分とキャラが被っちゃうんじゃないの? ナルシシストというか」

「あっ、それ私も思った!」

「私も…ただでさえキャラが濃いのにそれが二人分なんて…正直止めてほしいわ」

「っ!!? ボクは皆さんから見たら”あんな感じ”なのですか?! …そうですか……少しショックです」

 

 僕らの総意に野分が項垂れていると、コンピューター内の人(?)がそれを否定した。

 

『チッチッチッ! ナルシシストとか聞こえたけど安心したマエ、自分で言うのもなんだけどぼくは自分に酔いしれてはないヨ、研究には熱が入ってるけどネヴェイビー!』

「やかましいよ!?」

 

 いかん、彼結構ノリが良い。というか胡散臭さの方が勝ってるんだけど!?

 僕らが突然のことで困惑していると、映写型通信機からユリウスさんの通信が入る。僕はダイヤルをユリウスさんに回すと、程なくユリウスさんの映像が映し出された。

 

『…こんなことだろうと思っていた』

 

 流石ユリウスさん、一瞬で状況を理解したようだ。同じ研究員同士みたいだし取り合えずユリウスさんに任せようと、僕はコンピューター内の人物へユリウスさんを見せる。

 

『おぉ! 我が友のユリウス君じゃないカ、久しぶりだネェ~元気だったカイ?』

『おかげ様でな? 矢張り始末はされていたようだが…まさか「AI」となってデータ内に潜んでいたとは』

『ぼくのオリジナルが殺されることを想定して作成したのサ、プロテクトを掛けてブラックボックスに隠れていたから、ドラウニーアでもぼくを見つけられなかったみたいだネェ。頃合いを見て通信を通して暗号を送っておいたんだケド、上手く行ったみたいだネヴェイビー!』

「ユリウスさん、あの人? は一体…?」

 

 僕が疑問を零すと、ユリウスさんは眼鏡の位置を直しながら答えた。

 

『彼はマサムネ、私とドラウと同じ元TW機関研究員の一人だ。このとおり超科学を使いこなせるほどの天才的頭脳の持ち主だ。もう理解していると思うが南木提督が匿っていた研究員とは彼のことだ、一見優男にしか見えないだろうが…コイツは「一部の道徳観が欠如している」と言っていいだろう』

「それは「目的の為なら悪事も働く」ということですか?」

『そうだ。マサムネは研究者としては優秀だが、規律を遵守する心が「破綻している」。つまり研究以外の物事はどう転ぼうが、コイツにはどうでも良いんだ。おそらく翔鶴君の過去の出来事にも一枚噛んでいるだろう』

「…何ですって?」

 

 翔鶴はユリウスさんの言葉に当然の怪訝な反応を見せるが、マサムネさんはそれに柔(にこや)かに反論した。

 

『酷いなぁ、ぼくは確かにドラウに研究場所の確保を条件に、南木鎮守府を陥れるため彼女の提督に接近したケド、悪気はないのサ。ドラウニーアから南木提督が死んだって言われた時は、流石の僕も怒ったサ! 人殺しは駄目だよネ? まぁドラウが「言うこと聞かないならお前も殺す」なんて言って凄むカラ、まぁ仕方ないよネって気持ちを切り替えてたのサ』

 

 …駄目だ、重要なことを喋っているはずなのに、微塵も反省の色が見られない。本当に人格破綻者みたいだ…サイコパスとかソシオパスとかあの辺かな? まぁだからとはいえ「悪者」と決めつけるのは早計だけど。ユリウスさんの様子を見ると「()()()()()()()()()()()()()()」みたいだから。

 

『ドラウは彼の能力を買っていたので、何らかの形で関わっていたのは予想出来ていた…だがその様子だと、アイツに「反逆」して殺されたようだな。予測だが死後AIとなっているのは我々に接触することがアイツに手痛いダメージを与えることになるから。裏切ろうとしたのは、それだけドラウを見限れるだけの「何か」をされたためだろう』

「マサムネさん、貴方の目的は何ですか? 何故僕たちをここへ?」

 

 僕が改めて問いかけると、マサムネさんは「待ってました!」と言わんばかりに満面の笑みを浮かべて回答した。

 

『ぼくは君たちに取り返しのつかないことをした…殺される少し前にそれに気づいたのサ。だから「罪滅ぼし」がしたいと思ってネ!』

「…罪滅ぼし?」

『そうさ特異点…いいやタクト君。君がデイジー島で鎮守府崩壊事件について調べていたのは、超科学を利用した「ステルス・モニタリングシステム」で聞いていたぼくには筒抜けなのサ!』

「すて…何ですか?」

『ステルス・モニタリングシステム。ある一定の範囲内かつ特定の場所での会話を「盗み聞く」ことが出来るシステムだな、どうやらデイジー島での君たちの会話を盗聴していたらしい』

「と、盗聴…!?」

 

 ユリウスさんが説明してくれたけど、サラさんとの会話のこと言ってるのかな? …えぇ、そんなことしてたんだ。変なこと喋らなくて良かった…;

 

『その時ぼくは気づいたのサ、過去の真実を暴くことに当事者の翔鶴君じゃなくて君が躍起になっているということは、それだけ重要な問題だということに。それならぼくはAIになってでも真実を告げようと決めたのサ! それがドラウへの「仕返し」にも繋がるだろうし、ぼく自身の罪滅ぼしにもなるのサ!』

 

 言いたいことは理解出来るけど…イマイチ信用出来ないというか、まだ分からないことがある。

 

「…一つ聞かせて頂戴、貴方…どうしてドラウニーアと結託して提督を嵌めようとしたの? 仕返しするぐらいなら、あいつと縁を切るべきじゃなかったの? そのぐらいの時間はあったでしょう」

 

 翔鶴も彼の言い分に納得出来ないらしく、何故と疑問を追究していく。マサムネさんもそれに回答する。

 

『君の言うとおりサヴェイビー、ぼくも前から怪しいとは思っていたけど…ぼくにはある目的があってネ? 彼と居ればそれが叶うと信じていたのサ』

「目的?」

『ふむ、それはお前がいつも言っていた「研究」だな?』

 

 ユリウスさんの言葉を肯定して、マサムネさんは事情を説明する。

 

『ぼくは自分の研究、マナに代わる「新たなエネルギー開発」に本当に生涯を賭けていたのサ。マナはこの世界から確実に無くなりつつある、昔はマナの穢れをマナの代替えに使えないかと言われていたぐらいだからネ、皆不安だったのサ! だから…最初はぼくの研究に興味を示したドラウと一緒に、マナの穢れを別のエネルギーに「変換」出来ないかと、共同で実験を繰り返していたのサ』

 

 エネルギー問題か…確かに連合の尽力で科学が浸透し始めているけど、やっぱり皆昔の「マナに溢れた何でも出来る世界」に戻りたかったんだろうね。そういう意味では彼もドラウニーアと目的は同じだった。

 でもあくまで自分の「研究」が第一であっただけで、ドラウニーアと手を組んで南木鎮守府を崩壊させたのは「不本意」だったと言いたいのか?

 僕はそう問いかけると、マサムネさんは頷いて肯定し話を続ける。

 

『だけどそのための機械を造るためには、整った整備環境や広い施設が必要だったンダ。しかしぼくらはその時既に連合から追われる「お尋ね者」の立場だったからネ? どうしても研究場所の確保が必要だった、そんな時に南木鎮守府には立派な工廠があると聞いてネ? 鎮守府なら研究スペースも十分だし、その工廠を研究所として使うことが出来れば、ぼくは研究を完遂出来ると踏んだのサ!』

「…そんなことのために南木鎮守府を、皆を陥れたの? 貴方たち…最低ね」

 

 翔鶴はマサムネさんに向けて静かな憎悪の眼を向けるが、彼はお詫びを入れながらも釈明する。

 

『すまないネヴェイビー! 君たちには悪いことをしたとは思うケド、ぼくは自分の研究成果が世の中の役に立つことが出来れば、ぼく自身が犯罪者と言われても仕方ないと考えていたのサ。偉大な功績は「誰も通らない道」にこそ存在してるからネ! どんなことをしてでも成し遂げる気持ちを持てば、いずれ世界を変える発見を生み出す。これこそが科学者もとい「探究者」の本質というものサ! ねぇユリウス君?』

『一緒にするな、と言いたいところだが理解出来てしまう自分が歯痒いな。まぁ…コイツに善悪の観念は存在しない、コイツはただ己の目的のために動いただけだ。悪気は…理解はあるだろうが「命の価値観が全く違う」から、怒っても意味はないと思うぞ?』

「そのようね、はぁ…怒る気も失せるわ。全くとんだマッドサイエンティスト!」

『誉め言葉として受け取っておくヨヴェイビー!』

「ええい、喋るな! 鬱陶しいわね…」

 

 なるほど、彼にはかれなりの信念があって動いていたのか。分かりやすく言うと「少数の犠牲を出してでも世界を救う」ということかな? でもそういうのって…大抵上手くいかないんだよなぁ?

 まぁ僕はその考えの一部は理解出来るし、翔鶴も一応納得してくれたみたいだから文句はない。問題は…どうして僕らに「協力」する気になったのか。彼とドラウニーアがまだ繋がっていることだって考えられる。

 僕はその疑問を問いかけると、マサムネさんは変わらずニコニコしながら話し始める。…関係ないけど、サイコな性格って分かったからこの「微笑み」が違う意味に見えて…不気味だ;

 

『君たちから南木鎮守府を奪った後、ぼくはここを研究所として使い始めたのサ! 幸い連合はこの海域を封鎖したみたいだから、邪魔が入ることもなかったしネ! そして…ぼくはドラウと協力して「マナの穢れを別のエネルギーに浄化(変換)する装置」を作った! ……と思ったんだけどネェ』

「もしかして…それがゼロ号砲だった?」

 

 ぼくの回答に、マサムネさんは「それ!」と指を差して肯定した。いちいちリアクションがウザイな…;

 

『そのとおりだヨヴェイビー! まさか僕の世紀の発明がゼロ号砲だなんて恐ろしい代物になってるなんて、完成するまで気づかなかったのサ!』

「アンタがゼロ号砲造ったのか、いやでも分かるでしょ普通!?」

『ン~確かにおかしいなとは思ったヨ、本来の浄化装置はマナを取り込める「艦鉱石」を利用して、穢れの毒性を相殺しつつエネルギーを抽出する流れだったんだケド、途中から「寧ろ穢れを増幅する」ことに気づいてたサ! でもドラウに聞いても「穢れの魔力を増大させねば、浄化してもエネルギーは殆ど残らない」と言ってて、ぼくもそれに「一応」納得してたのサ』

「いや…そう言われたら納得するかもだけど?」

「じゃあ…貴方がゼロ号砲を造ったのは、ドラウニーアに言い含められてアイツの真意に気づかなかったから?」

 

 金剛のズバリな回答に、マサムネさんは嬉しそうに喋っていた。

 

『そうさレディー、ドラウニーアはプライドの高い性格だケド他人の才能の良し悪しは認めてるのサ。機械の開発はぼくの得意分野だったから、彼はぼくを騙してでもゼロ号砲を完成させたかったみたいだネェ。でも随分前から怪しかったから、ぼくも殺される前提で対策を進めていたということサ!』

『それで「AIになること」を含めた準備が整ったお前は、ドラウニーアを問い詰めた矢先ヤツに始末された…と?』

 

 ユリウスさんが纏めると、マサムネさんは深く大きく頷いた。

 

『ドラウニーアがぼくを騙していたと理解した時は、流石のぼくも”参ったな”と後悔したヨ。君たちに分かりやすいよう言い換えれば、研究の成果というのはぼくにとっては「息子」のようなモノなのサ、それを歴史に残る大発明とかじゃなく、悪魔の兵器として利用されることがどうしても許せなかったのサ!』

「マサムネさんは、ドラウニーアがやろうとしていたことは知らされていなかったんですよね?」

『そうなのサ、ユリウスも言っていたケドぼくは研究以外どうでも良かったんだヨ。だからこそ南木鎮守府の諸君を「犠牲」にしてしまった以上研究を完遂させなきゃと意気込んでたのサ! その裏でアイツが世界滅亡だとかを考えているとは…全く、そんなことをして何の意味があるのか理解出来ないヨ。ぼくも大概だとは思うケド、彼はぼく以上に狂っていたみたいだネヴェイビー!』

 

 彼もまた被害者だった…ということか。騙されていることに直前に気づいた彼は死んでもドラウニーアに報復することを選んだのか。それにしても…?

 

「自分の発明が悪用されたから、それに対して死んでも報復するなんて…とんでもない執念だなぁ」

『我々研究者にとっては、それだけ研究成果が大切であるということだな。その成果が人類の進化を大きく前進させることだって有り得るのだから。…無論お前の場合は自業自得ではあるがな?』

『相変わらず辛辣だネェヴェイビー! 堅物過ぎて三人の中では一番研究成果が出せなかった君だからこそだろうけどネ!』

『………タクト君、データの削除方法を知りたいなら私が今すぐにでも教えてあげるよ(暗黒微笑)』

「お願い出来ますか(真顔)」

『あぁっ、やめたマエ君たち! 冗談で済む内が花なのサ!?』

「おめぇいい加減にしやがれ下さいよ、協力するならそれでもいいけど真面目にやって下さいね!」

『もちろんサヴェイビー! データを消されたらぼくも堪ったものじゃないしネ!!』

 

 なんかいまいち釈然としない部分もあるけど…そういう理由があって協力してくれるというなら、こっちも吝かじゃない。

 

「僕は彼に手伝ってもらおうと思うけど…どう翔鶴?」

「えぇ、本気? はぁ…まぁ言ってることはほぼ真実みたいだし、罪滅ぼしがしたいというなら、してもらおうじゃないの」

『感謝するヨヴェイビー! 君の信用に必ず応えると約束するヨ!』

「もう分かったから、とにかく静かにやってよ…ふぅ」

 

 翔鶴も訝しげだがマサムネさんの協力を受け入れたようだ。

 しかし…今更だけどどうするつもりだろうか? まさか彼が過去の真実を語ってくれるというのか? だとしたらちゃんと喋ってくれるのか不安。

 

『安心したマエ、ぼくは切っ掛けを与えるだけサ』

 

 そう言ってマサムネさんは、コンピュータの中で指を鳴らした。すると…!

 

「──っ! ここは…?」

 

 ん? 何だろう、南木提督が急に辺りをキョロキョロし始めた。

 

『…エーテル粒子安定、外殻形成完了、自律感情自制機構も問題ないみたいダ。さぁ皆注目して! この人は鎮守府崩壊事件の悲劇の主役、南木鎮守府の「提督」なのサ!』

「ど、どういうこと…?!」

 

 僕らはマサムネさんの言っていることが分からずにいると、ユリウスさんが驚きながら補足してくれた。

 

『何だと…エーテル粒子、高密度のマナの塊じゃないか! 固形化させるだけでも精一杯だったのに、まさか人型を形作れるまでになっていたとは。更に自律感情自制機構…なるほど、その手があったか』

「ユリウスさん…この状況は一体?」

 

『タクト君、今君たちの目の前にいる男性は「南木鎮守府提督」と言っても良いだろう。マサムネは超科学の力を結集して…南木鎮守府提督を一時的に「生き返らせた」と言っても過言ではない!』

 

「…はあぁっ!?」

『少し訂正させてもらうヨ、厳密には今の彼は「データで記憶を引き継いだ、限りなく本物に近い仮初の存在」なのサ! 本当に復活したわけじゃないけど、それでも生き返ったと言っても差し支えはないカナ!』

 

 生き返らせた?! そんなこと──…いや待てよ、確かに可能かもしれない。

 自律感情自制機構と言ってたけど、それはエリの内に居る「先代金剛の精神」やボウレイ海域の「艦娘騎士団団長」と同じものだろう。二つの事例とその精神の再現率が高いことは、もう分かりきっている。

 身体さえ用意出来れば、超科学で死者を疑似的に甦らせることも…可能ということ!

 

「…っ! 翔鶴…翔鶴、なのか?」

「…っ!!」

 

 南木提督は辺りを見回して翔鶴を見つけると、驚きを隠せないまま声を掛けた。翔鶴は提督さんに掛けられた言葉、その声に…疑念と喜悦の混じった表情を浮かべる。

 

「てい、とく……!」

 

 彼女自身これが現実のことなのか、まだ理解が追いついていない様子だ。それでも…彼女のココロは、目の前の「彼」を南木提督と認めたようだ。

 一歩いっぽ踏みしめるように歩き出す翔鶴、提督さんの元へ近寄ろうとすると──

 

「──来るな!」

 

 提督は何故か翔鶴を制止して自身も後ずさる、その光景に翔鶴は一瞬ショックを受けるが…直ぐに彼の行動の意味を理解する。

 提督さんは後ろのコンピュータに映るマサムネさんを見つけると、怒りの形相で言葉をぶつけた。

 

「マサムネ…お前の仕業か! どういうつもりだ…()()()()()()()()()()()()しているのか、一体何を企んでいる!?」

『落ち着きたマエヴェイビー、ぼくはもう君を騙す義理はないのサ。…っふぅ〜、ヴェイビーたち説明を頼むヨ。ぼくじゃ上手く言えないだろうからネ』

 

 マサムネさんの言葉に了承すると、僕たちは南木提督に事情を説明した──

 

 

 

 

 

 

 最初は疑心暗鬼というか「何言ってんだコイツ」みたいな顔だったけど…暫く話していたら向こうも落ち着きを取り戻したみたいだ。

 

「──成る程、本来の俺はもう死んでいて今この場の俺はデータで作られた仮初の存在だと」

「えぇっと…分かって頂けましたか?」

「あぁ、意味は解らんが状況は理解したよ。アイツらの超科学とやらが如何に凄まじいかは嫌でも見てきたからな、それに…仮初の命とはいえ、翔鶴にまた会えることが出来て良かった」

「提督…ごめんなさいっ!」

 

 南木提督の変わらない言葉に、翔鶴は深く頭を下げて謝った。

 

「私、貴方の気持ちを何も解ってなかった。貴方が苦しい思いで私たちを送り出したというのに、私は…貴方に裏切られたと勝手に思い込んでしまった。本当に…ごめんなさい」

「翔鶴…」

「こんなこと、データの貴方に言っても仕方ないかもしれないけど。でも…貴方に一言謝りたかった…っ!」

 

 頻りに謝罪する翔鶴に対し南木提督は、彼女に近づくと…肩を優しく叩いて穏やかに諭した。

 

「悪いのは君じゃない、俺があの時ドラウニーアの思惑に早く気づけていれば、こんなことにはならなかったんだ。だから…君に恨まれても構わないが、どうか笑顔を見せてほしい。君の笑顔が…俺にとって希望だったんだから」

「提督…っ!」

 

 翔鶴は南木提督の温かい言葉に、頭を上げた翔鶴は瞳を潤ませて喜び、提督さんもそれを見て柔らかい笑みを浮かべていた。

 感動的な場面だけど、僕はどうしても引っ掛かる部分があったのでマサムネさんに尋ねた。

 

「あの、普通に南木提督が翔鶴に触れてるんだけど、さっき言ってたエーテル粒子とかと関係が?」

『そうサヴェイビー、エーテル粒子とは本来流動的な素粒子のマナをくっつけて大きくした魔法元素の一つサ。マナは目には見えないけど確かに存在している、他の物質と同じく質量があるのサ! 更にマナは極微量の熱があるカラ密度を高めることによって、常人の体温と同じぐらいになるんダ。つまり──』

「つまり、エーテル粒子とかで人体を作ることは可能…ですか?」

『そのとおりサヴェイビー! この場合の身体は魔法生物と同じ構造になるけどネ?』

 

 マサムネさんの言葉に、僕は南木鎮守府崩壊時の不明瞭な部分に対しある「仮説」を立てた。まさかとは思うけど…如何にもアイツがやりそうなことだしね?

 僕は頭の中で整理しようとすると、マサムネさんが急かすように話す。

 

『ヴェイビー。何か思うところがあるようだケド、エーテル粒子はそれだけで大量のマナを消費する、長くは保てないヨ。その間に用事を済ませることだネ!』

「おっと、分かりました。あの…提督さん、少しお話が」

 

 僕は南木提督に話し掛けると翔鶴の改二について話し、それをするために鎮守府崩壊事件の真相を聞いて回っていることを説明する。

 

「そうか、なら俺は翔鶴にあの時何があったか話せば良いんだな? …分かった、それが翔鶴のためになるなら」

「良かった。ところで…提督さんはどこまで記憶を覚えてます?」

 

 この質問には提督ではなく、マサムネさんが答えてくれた。

 

『彼には「殺されるまでの記憶」をインプットしてある、ぼくの知っている限りの情報ではあるけどネ?』

「確かに由良に胸を貫かれたことは覚えているが…それは、お前が話した方が早いんじゃないかマサムネ?」

『ヴェイビー! ここまで来てそれは言わないお約束サ! 非業の死を遂げた事件の中核的存在、更にヒロインと親密な関係を築いた君だからこそ語ることに価値があるのサ!』

「(妖精さんみたいなこと言ってる…;)」

「全く…お前を許したつもりはないが、今は何も言わないよ」

『許してほしいとは思うケド、ぼくも自分が何をやったかは理解しているつもりサ。だから…手前勝手なのは承知の上で、どうか彼らに協力してあげてほしい。ぼくが君たちに何をしたのか…君の口からネ?』

「お前に言われなくてもそのつもりさ、だが…この場を設けてくれたことには、素直に感謝するさ?」

 

 何だか良く分からない展開になって来たけど…でもこれで事件の核心が分かるぞ。

 僕らはいよいよ語られる真相に、固唾を呑んで耳を傾ける。そして──

 

 

 ──遂に、()()()()()()()()()()

 

 

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